― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

 周りを木々に囲まれている為。足場が悪く馬車のスピードがある程度落ち始めた時、二頭の走る先に瓦礫が落ちていたので、彼女は手綱を一気に引いてブレーキを掛けた。
「っと!ストップ。クロロにシロロ…どうやら目的地付近に辿り着いたっぽいっすね。このまま支部まで行きたい所ですがこの辺に瓦礫が大量に落ちてて移動しづらいので徒歩になりますがお二人は大丈夫ですか?」
 足元に散らばった瓦礫を踏まないよう寸前で二頭を止め、広く開いた場所に馬車を一旦止めて馬車の扉を開けると疲れきった様子の二人が降りて来た。
「お待たせしました~…って何だか疲れきっているみたいですけど大丈夫ですか?」
「もう…何も言いたくない」
「う、…うん。大丈夫大丈夫…」
今は会話は少々控えたかったらしく、適当に返事をした後は二人とも一切言葉を発する気配も無かったので、コクレイもそれ以上何も言わず奥へと進んで行った。


 辿り着いたそこは辛うじて支部としての形は留めてはいるものの、天井には巨大な穴が開き、窓は全て割れて至る所に破片や瓦礫が飛び散り、目を覆いたくなるような惨状がそこに広がっていた。 支部のエントランス前のにある黒薔薇の薔薇園が残っているおかげでここがRose“T”truthfulのBlack Rose支部だと言う事が解るが、この薔薇園も損壊していればここがBlack Rose支部だと言う事も解らなかっただろう。
想像以上の被害状況にその場に居た三人は言葉を失っていたが、ふと我に返ったクロアが支部周りの調査をリオンに指示し、コクレイには怪我人の捜索、及び救護を任せ、自身は支部長の保護を行う為に支部の周りを歩きはじめた。

「今のところ誰もいないですね~…おーい。誰か居ませんかー?」
「ドレスィドさーんBlue Roseのデルタです。どこにいらっしゃいますかー?」
のんびりとした口調で互いに呼び掛けあいながら近くを捜索していると、近くの木々が突然に揺れ、黒い姿をした物体が動いた事に驚き、近くに居たコクレイへ飛びついた。
「Σど、どうしたんですか支部長?!」
「い、い今さっきそこで何かがっ?!!」
「Σえぇぇっ?!(そう言われると俺も何か怖いんだけど…)お、俺が確認するっす!!」
腰が引けた状態のまま言われた場所へ向かうと、そこには複数の小さな切り傷を負ったヒガンが森から出て来た所だった。
「Blackの支部長さん?!一応は…無事そうですね。動けますか?」
「んな程度…何ともねぇ。オレ様の事は良い!それよりルクトだ。…ルクトは何処にいるんだ?!」
「俺達も今さっき来た所なのでまだ探してる所なんですけどねー…あ、それより近くに馬車が停めてあるので先に移動してくださいな 後は俺…私達が探しますので!」

そう説明し、ヒガンを馬車の方へと案内するべくようやくその場を立ち上がった彼の手をコクレイが引こうとしたが、その手は振り払われてしまった。
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