― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

 投げられた瓦礫へ咄嗟にガードの体勢に入ったが、瓦礫の勢いが強すぎて、彼はその勢いのままに近くにあった本棚へ激しく叩きつけられてしまい、その反動で本が大量に落下して埋め尽くされてしまった。
「ルクトっ!おい返事をしやがれルクト!!」
「ヒガン支部長~!ただいま脱出頑張ってるのでお待ちくださいぃぃっ」
大量の本の中から微かに聞こえた声に一瞬安堵したが、更に追い打ちを掛けようとソヴァージュは左手を鋏の様な形に変化させて本棚めがけて一気に突き出そうとするが、ヒガンの使う鞭が腕に巻きつけられ、動きが制止させられた。
「てめぇっ…オレ様の許可無く勝手に所有物に手をだすんじゃねぇよ!!」
『作戦の邪魔はさせないっ!』
そう小さく呟き、縛られた方の腕を一気に手前に引くと、力負けしたヒガンが彼女の方へと引き寄せられる様にして転んでしまった。

「だっ!!何だってんだっ…魔物のくせにこの力の差は! うだぁっ!!?」
 華奢な体系とは似つかわしくない強靭なパワーに動揺していると、彼を逃げられない様にする為に上から一気に踏んで押さえつけた。
「けほっ、ごほっ。い、いい加減…放れやがれっ!」
足元で逃げ出そうともがくヒガンをただじっと見下ろしていたが、先程みたいに邪魔立てされる事は避けたかったので、鋏の様に変形させていた腕を一気に彼の首元めがけて振り降ろした。
 首元に当たる寸前の所で彼女の腕に何本もの針が突き刺さった。
予期していなかった攻撃にソヴァージュが怯み、後ろに数歩引いた事でヒガンはようやくその場から脱出する事が出来、よろよろと立ち上がった際にさっきまで大量の本に埋もれていたベヴェルクトが駆け寄って来た。
「御無事でしたか?ヒガン支部長!」
「こんなもんどうって事ねぇ…ってお前こそ大丈夫なのか!?さっき本棚に埋もれて…」
「身体の丈夫さだけは自信があるので問題ないです!それより一旦脱出しますよ!しっかり摑まってて下さいよ!」
室内でこれ以上戦うには障害物が多くてこちらに不利だと考えたベヴェルクトは外へ脱出をする為に、ヒガンを自身の肩へ一気に担ぎ上げると、バルコニーの方へと素早く駆け出し、手すりの部分へ足を乗せた瞬間。彼の動きはピタリと止まってしまった。

「おい、どうした?こんな所で止まりやがって」
「…が…それが…今の今まで言う用事もないですから黙っていましたけど…」
「Σちょっと待てルクト!今この状況で言わなきゃならないような内容だってのか!?こんな所でカミングアウトなんて「ぼぼぼ僕今の今まで言っていませんでしたが高所恐怖症なんですよぉぉお!!正直飛び降りられるとか思ってましたけれど下を見た瞬間足がすくんでっ…」(※二階)
「落ち着けルクト!良いから落ち着きやがれ!!オレ様が指示してやるから!」
「そ、それはイヤですよっ!?で、でも何とかしますから!!」
 今にも泣きそうな声を出しながら無理に気合いを出し、手すりに乗せた足に力を込めて飛び上がろうとした瞬間。背後から殺気を感じ取ったベヴェルクトは小さく「ごめん」とだけ呟くと、バルコニーから地上に向けてヒガンを投げた。
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