― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

すうっと軽く息を吸いこむと、意を決したようにその衣装の人物へとなりきった。
「どうだろうか?主に言われたとおり、この衣装に着替えてみたのだが…似合っているだろうか?」
『あ…えっとその…と、とてもカッコイイですよクロア嬢』
「むー…何だか違いますねぇ…その衣装の時は、遠慮なく私の事は呼び捨てにしてくださいよ!“みんなの主”と言う感じの方なのでもっとこう貫禄を…」
『つ、次は御期待に添える様に致しますね…さ、クロア嬢もお座りください。こうやって着替えも良いですが…少しお話したいので』
「!!はい!そうしますね//」
 やれやれ、と言いたげに溜め息を吐く彼の向かい側の席に座って楽しそうに微笑む姿は、外の陰り始めた日光が反射している事もあってより一層輝いて見え、それがミコトの心をかき乱す。


穢れも憎しみも何も知らない新しい青薔薇姫。
 だからこそ目を付けて只一つの目的であるマリアネットの為の世界を創り変える為に必要な情報源として居るだけなのに…
自身が利用されているなんて事は一切気が付かないのに自分に何かあれば自身の事の様に深刻そうに心配したり、無邪気に幸せそうに笑ったり… 

だからこそ時々勘違いしてしまう。
彼女は目的の人物の情報を聞き出す為だけの駒でしか無い筈なのに、その笑顔を見る度に気を許して、マリアネットから返されなくなった愛情を求めてしまいそうになる

 このまま身分を偽り続けて求めれば手に入りそうな物だが彼はそれ以上進む事はしない。
マリアネットに対する絶対的な崇拝心と大切にしていた呪術師の少年によって最期に掛けられた呪い。

それらによっていつの間にか壊れてしまった彼の『心』

壊れているからこそクロアが向けているであろう好意も伝わらない。壊れているから犠牲になった者の嘆きも聞こえない。
そう信じそう強く考えているからこそ彼はそれ以上求める事が出来ない。


 ぼんやりと外を眺めながら、無意識的にあの時彼に言われた言葉を口にする。
『この先イザヨイが僕以外の誰かに“愛して貰えない”ように最期に呪いを掛けてあげる…か。』
ふと無意識的に口にした言葉はクロアには聞こえていなかったらしいが、いつの間にか互いに黙ったままの気まずい空気が流れていたので、話をするついでに、前に放っておいた魔物について聞いてみる事にした。
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