― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

本人は気が付いていないようだったが、汚れか何かが付いていると思ったクロアは少し首を傾げながら手を取り、顔を近づけて確認しようとしたが、それに気づき、今までにない慌てた様子で声を張り上げたまま手を払ったが、直ぐに我に返ると、困惑したようにこちらを見るクロアへ直ぐに深く頭を下げて謝罪した。
『すみませんクロア嬢…どうしてもこの手袋の中身は見られたくなかった物でして…どうかこのワタシをお許しください…』
「い、いえ…私もミコトさんに迷惑かけちゃいましたので、…これでおあいこですね」
『お許し頂き感謝致しますクロア嬢。…さて…まずは聞いても良いですか?一体その…衣装はどうなさったのかと』
「これはその…前に大事な先輩が亡くなられて…ずっと落ち込んでいた時期がありまして、その時に側近から最初“双子ファッション”を勧められて…各国を回ってはいろんな方の衣装を買っては着ていらっしゃる方の口調や仕草を真似るのがとても楽しくて… 気が付いたら執務室が洋服でいっぱいになっちゃったのでここを別邸として借りて時々お着替えしているんです!!
 それに、この前はレト先輩にも選んで頂いたり同じ様に着替えて頂いたり…それに、ミコトさんはレト先輩と体格も似ていますし…衣装に問題は無さそうなのでミコトさんにも是非お着替えを一緒にして頂きたいですっ!例えば…この大きめの王冠と黒い羽毛のファー付き白いケープの“ラガー=スダット”王ファッションとか!とても良く似合うと思いますよ!!」

(色々な意味で)聞かなければ良かった。と後悔しても今更遅く、楽しそうにテンションが急上昇している彼女を止められる筈も無く、疲労と苛立ちで崩れそうになる表情を必死に保ちつつ、クロアの衣装チェンジにしばらく一緒に付き合う事にした。


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 二人だけの衣装チェンジ大会が繰り広げられていたが、5着目で流石に疲れたらしく、ぐったりとした様子をしていた。
今の彼は深紅色の中世騎士風のロングコートと黒のロングブーツの“ヘル=セメンテリオ”の衣装を着せられ、交代で適当に選んだ服をクロアが着替えている間。さっきの椅子に腰かけて紅茶を一口。 爽やかな甘みが口いっぱいに広がり、疲れきっている今の自分には嬉しい。と和んでいると、目の前のカーテンが引かれ、そこからは薄紫色の結晶の形をした髪飾りに、首元までしっかりと留められたケルティック紋様の豪華な装飾が施され、胸元には数えきれない程の勲章が付いた中世騎士風の真っ白なコート。黒いゴシックパンツと焦げ茶色系の膝丈程のブーツの“深時 水晶”の格好をしたクロアが姿を現した。
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