― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

二頭馬車に揺られる事数十分。辿り着いたのは支部の管轄内にある市街地の一画。外観は質素で横に長い二階建てレンガ造りの建物で、入り口以外は柵で囲まれていた。
「どこだここ…実家…では無さそうだけれど」
「ふっふ~ん♪ちょっとした物置みたいなものですよ。支部にはちょーーっと置きにくい私物を、ここに別邸として借りて置いているんです」
「基本的に出入りするのは私とコクレイだけで、他の部下達には一切話していないのですよ。…出来る事なら女の子隊員全員としてみたいですが…」
「??…」
二人の会話内容が理解できず首を傾げていると、先に馬車から降りたクロアに手を引かれてリオンも渋々馬車から降りた。
「それでは、お楽しみくださいね~。こういう時は先輩後輩水入らず。ってのが一番でしょうし、俺は支部の修繕に行って来ますね」
「ありがとうコクレイ。それじゃあい、行ってみるね!レト先輩もぜーったいにお付き合いくださいよ!!?」
「Σえっ!?あ、ああ…」
今まで以上に目を輝かせて顔を寄せてきたクロアの勢いに圧され、今から起こる事に対して何も聞けないまま承諾してしまった。 (一応)貰えた了承に気持ちが高揚し、その場で軽く二、三回飛び跳ねると、手をしっかりと握りしめて別邸の中へと二人は駆けて行った。

 一人その場に残ったコクレイは、お疲れ様の意を込めて馬車を引いていた二頭の馬を軽く撫でると、もう一度所定位置へと乗り込んで馬車を操り、さっき来た道を帰宅して行った。
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