― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

 その次の日。イザヨイの狙い通り魔物の一羽はBlue Roseを襲撃していた。(もう一羽は何処かへ)狙われたのは運悪くテラスで共に外の景色を眺めていたクロアとローゼだった。
 探知用の眼が反応したおかげで不意打ちを受ける事は無かったものの、自分一人で浄化してしまうべきか考えたが、今は無防備なローゼを早く棺桶の方へ戻す事が先だと考え、開いたままの棺桶の方へと彼女の手を引っ張って逃げ出した。 もうすぐで戻れる。そう思ったが、それよりも早く目の前に数本の羽が地面に撃ち込まれ、それ以上進む事は叶わず、反射的に振り返ると、強靭な鳥の足の先にある鋭い鉤爪を構えた魔物が勢いよくローゼめがけて迫って来たので、直ぐに彼女を遠くに突き飛ばし、自分は頭を抱える様にしてしゃがみ込んで防御の体勢に入った。 
 大怪我は免れないのは覚悟していた。が、クロアに怪我は無かった さっきまでの風を切る様な素早い音は全く聞こえず不思議に思い恐る恐る眼を開けるとそこにはコクレイがいつの間にか居て、腰に携えていた剣で魔物の攻撃を防いでくれていた。

「コク…レイっ!?」
「お怪我はありませんかっ?支部長~」
「わ、私は大丈夫だけれど…コクレイは確か…レト先輩を探しに行ってたはず…」
「行ってましたよっ…見つけて報告して…途中で目が光ったから探してみたら支部長が危険な状態だったので壁を登ってきましたっ!!!」
 一気に力を込めて攻撃を押し戻すと、魔物はその反動で弾かれたものの、それを利用して軽くその場で一回転すると彼女との間合いを取った。
「飛ぶ相手は俺苦手なんですよねー…攻撃当たらないですし。あ、支部長はちゃんと俺の後ろにいてくださいよ?何とかしますので」
「う、うん…あ、でもレト先輩は何処に…?」
 言われたとおりに背に隠れ、魔物と睨み合ったままのコクレイへちょっとした疑問を投げかけると、彼女が答えるよりも先に二人の目の前に勢いのいい白い箱のような物が放たれ、そして魔物に直撃して壁へと叩きつけられた。
呆然としたまま投げられた方へと視線を移すと、さっき投げた物を回収するリオンの姿があった。

「レ、レト先輩っ!!?いつの間に…」
「あ、おかえりなさいです~」
「話は後だ。逃げられる前に捕える 良いな?ローゼ」
(任せれ!!)
冷淡な様子でそう言うと、ちゃんと棺桶に戻れていたローゼは了解の意を示す為に両手で大きく円を示して見せた。 それに一回だけ頷くと、先程と同じ要領で鎖に繋がれている棺桶を投げると、もう一度直撃が来ると思ったのか魔物は何とかその場から逃げ出そうとしたが、それよりも先に棺桶内からローゼの変化した赤紫色の巨大な腕が伸びて魔物を強く掴んだ。 逃げようと必死にもがく魔物を、もう片方の手でしっかりと掴み直すと棺桶内へと引きずり込んで行った。
引きずり込み終えると同時に扉が閉じられたが、扉の内側に付いた無数の針が魔物へ突き刺さり白かった棺桶は紅く染まり、アイアンメイデンを思わせる棺桶内部からは骨を砕き噛み付く音が響いた。
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