― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

言葉を話せない代わりにジェスチャーで伝えて来る彼女の意味が伝わらなかったらしく、コクレイは驚いた様に身をビクッとさせた。
「Σお?おお、どうしたお嬢ちゃん!?お腹減ったのか!?」
「続きが気になるらしいよローゼは」
「な、なるほど!ええと…俺は直接会った事が無いんですけど支部長が言うには…金髪で橙眼をしている方で、丸眼鏡で白いコートが良く似合う方だとか。名前は確かー…」


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「ミコトさーーん」

少し日が陰り始めたBlue Rose管轄内市街地。
整った花壇のある公園にクロアは急いだ足取りで駆け付けたので少し息を切らしてはいたものの、ベンチに座っていた彼の姿を見つけるとパッと表情が明るくなり、名を呼びながら駆け寄ると、彼も同じように微笑んだ。
『こんにちわ。クロア嬢』

「す、すみませんミコトさん…お待たせしちゃったでしょうか?」
『ふっくくく。お気になさらずクロア嬢 ワタシだって今さっき来たばかりですので…ですが、お待たせされた方が、貴女に会えた時の喜びも大きいという物です』

 恥ずかしそうに忙しく動く視線を見つめ、喉をくっくと鳴らして笑ながら、言葉を終わると同時に軽くクロアの手を取ると躊躇いも無く手の甲へ挨拶代わりのキスを行った。
ただそれだけでクロアは今にも破裂しそうな位に心拍数が跳ね上がり、顔は真っ赤に染まった。
『それでは…ここにいても仕方がありませんので、少し歩きましょうか?さあ、お手をどうぞクロア嬢』
「あ、ありっ…ありがとう…ございますです///」
ミコトと呼ばれている青年に手を引かれながらクロアは共に市街地を歩きはじめた。 ぎこちなく歩くクロアに歩調を合わせて共に歩く姿は傍から見れば恋人のようにも見えた。
 しばらく歩いていると、見せの隙間にある少し薄暗い路地に差し掛かり、ミコトは一度そこで足を止めた。
『ここは…ああ、懐かしいですねぇ。ワタシはここで貴女に助けて頂きましたっけ』
「あの時は驚きました…夜に偶然パトロールしていた事で被害はありませんでしたが…ミコトさんが無事で安心しました」
『ええ、あの時はワタシもダメかと思いました…ですが、クロア嬢のおかげで魔物は浄化されましたし…こうやって、貴女とも知り合う事が出来ました』
魔物に襲撃された頃を思い出し、ミコトはクロアと繋いでいる手に少し力を込めると、心配した様な表情で何も言わない代わりに空いた手で包む様にして手を添えた。
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