― An EvilPurify Ⅰ― 退魔師物語

片方の角が食べ終わったので、もう片方も圧し折ろうと手を伸ばした時、少し遠くの方で聞こえた絶叫に気が付いて、急にトレイタが暴れだした。頭上に居たリオンを振り落とした。 口元の剣も振り落とし、マリアネットの方へと慌てて進んで行くが来た時にはもう遅く、カインの銃から白い煙が上がり、彼女の肩を撃ち抜いていた。
 ドサッとその場に座り込むと、焦点の合わない瞳のまま傷口の方を見る。 何が起こったのか自分でもまだ理解出来て居ないのか傷口を押さえたまま動こうともしない

「悪ぃ…ありがとな オレもあんな場面で躊躇うなんて思って無かったんだ」
「そうね、特攻していたリックがいきなり伏せて呼ぶから大変だったのよ?」
「ごめん…近づけば近づくほど威圧感が凄くってさ」
「まあ良いわ。幸いだけどあの子のペットはまだここには来てー…っ!!リック!」
 しばらくは安心だろうと剣を鞘に納めて油断している彼の後ろでトレイタがリックめがけて尻尾の先端で貫こうとしていたので、力の限り彼を突き飛ばした。 その代わりに彼女は左胸を貫かれた
突き飛ばされた時に咄嗟に受け身を取っていたので特に平気だったが、銃が落ちる音に気が付き、前を向くとリックは戦慄した。 彼女の胸部には貫かれた事で真っ赤に染まったトレイタの尻尾。足元には大量に流れ出る血液が地面に溜まり、そのまま力なく膝を付いて居る姿があった。
「カイ…ン?…!カイン!…」
何度呼びかけても返事が無い。何が起きたのか理解出来きなかた。だけど今はいつもの様に何かを冷静に考えている暇など無かった。早くカインをどうにかして助けないとと行動するも、それよりも先に傘を手にしたマリアネットによって回収された。そのせいで先程以上に血液が溢れ出たものの、あの時と同じ蝶が傷口に止まり、塞がった。
『トレイタ良い子……お人形はっ…これで良いそっちは…まだ…』
傘を振るって頭上の空間を歪めると、額の上に乗りこんで立ち去ろうとするマリアネットを追って、空間の中へ行こうとした際に後ろから強く手が引かれてしまい、中断された。
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