― An EvilPurify Ⅰ― 退魔師物語

「ねえ母上、この前の連絡の時に思ったけれど本来ならずっとこのまま黙って居ようと思ったのに…気づいて居たなんてね?何処から知って居たんです?」
「私に隠し事が通じるとでも思って居るのか?貴様は 良いから本題に入れ。貴様の痣を見せろ」
 ギスギスした言葉が飛び交う中、仕方無さそうに一息つくと、苦々しそうな表情のまま黒い手袋を外し少しだけ服の袖を捲って見せる。白い肌には似つかわしくない杖に絡みつく蛇の模様だったが、みせられた腕にも巻き付く様にして鱗が刻まれて居る様にも見える。
驚いて声が出ない二人に申し訳なさそうな表情を浮かべると、即座に手袋をして隠した。

「醜い痣だろう?……数年前…君たちと同じように付けられた物さ…誰かにこれを見せる事が嫌で退魔師を引退したんだけど…今でも浸蝕は進み魔物に狙われる事も多くなってね…それに、これが広がり続けると腕から異形の者となって…魔物となる。
 魔物になったら自我なんてある訳無い。だから…それまでに彼女を始末するか、自分を始末しなきゃならないが…まだ初期の君らには考える時間があるか(ガシャァアン)入口の方からかな?」
会話途中で突然、近くで硝子が割れる様な音が室内に響き、外の方で人々が慌てふためく様な声が聞こえ始め、驚いて辺りを見回すリック達に対し落ち着いた様に溜め息を吐くと何が起こったのか教えてくれた。
「どうやら来ちゃったみたいだね。彼女の印を持つ者がここに三人も居たら襲撃されるのは分かって居たけど…君らはお客様だからここで待って居てくれるかな?たったの二体。直ぐに片付くよ」
「じゃ、じゃあ一般人の保護をしてきますね!」
「なら早く行くぞ 被害が大きくなる前にな」

 ついて行く事を了承して貰い、四人は入り口の方へと向かった。運よく扉だけが破壊されて居るので商品の方には特に破損は無く、今の所被害は少なかった。
「今回は少ない位か…ハァ…」
「ほう…アイツらが相手か」
ヴァレンチノが不敵に笑んだ先を見て見ると、数日前に浄化した気がするグリフォンの姿があり隣には赤い毛皮、コウモリのような皮膜の翼、サソリのような毒針が無数に生えた節のある長い尾、そして3列に並ぶ鋭い牙を持つ人面のライオンの形態をしたマンティコアがこちらに向けて威嚇をしていた。
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