― An EvilPurify Ⅰ― 退魔師物語

「おう、どうした坊主。そっちの嬢ちゃんみたいにもうギブアップか?」
「ん?あ、あの時チノさんと話してた「オールドだ あのマダムにタダ働きさせられてるって訳さワッハッハハハハ!!退魔師権限なんて使われちゃー反論も出来ないからなぁ!」

豪快な笑い声が船内によく響く。黒くよく伸びている髭が立派な船長で青い制服がよくにあっている ハァッと大きな溜め息を吐いたリックの背中を強い目に叩くと頭をがしがしと撫でた。
「そう思いつめんな坊主。あのマダムは怒って出ていったんじゃない ま、今回はあえて自分の考えってのを押し付けるのを止めたんだろうなぁ」
「いだだだ!いだい!!オールドさん!縮む!オレの大事な身長が今まさに数ミリ単位で縮んでるってぇ!!」
ようやく話して貰えたものの髪型が可哀想な位に乱れてしまっている。だが、さっきの様な沈んだ様な表情はそこには無くいつもの様な明るい表情がそこにあった。それを見て満足したのか、二カッと笑うとカインにも同じようにしようかと思い視線を送ったが頭だけを外に出しているので流石にやめておく事にしておいたらしい。
「オールド船長!そろそろ到着しますよー!」
「おうそうかぁ!!舵を降ろす準備もしておけよぉ!」
「思ってたよりも早かったですね~ やっぱこの軍艦みたいな船のおかげかな?」
「なぁに、船の速さもあるけれど、天候がここまであったからだ!さ、到着したぞ!そこの嬢ちゃんをしっかりエスコートしといてやれよ?」

 船の馬力が良かったのかエンブレス街にはほんの数十分で到着し、未だ空はいつもの様に変わらなく青く澄んでいた。甲板の樽の上で蒼い顔をして寝込んでいたカインを連れて先に降り、少し遅れてヴァレンチノも降りて来た。
送って貰ったお礼を交わし、去って行く船を見送った後、彼女に案内されるがまま街を歩いて行くと、一軒の店にへと辿り着いた。
 店の前に一台の馬車が置いてあり、入り口には「close」と看板が掛けてあり、電気も消えているらしいので今日は定休日と言う事が分かったが、そんな事も気にしない様子でヴァレンチノは裏口へと回って行った。
「君らはそこで待って居ろ 中の奴は今すぐ叩き起こして来るんでな」

そう言うと遠慮なく裏口の鍵を開けて、店内へと入って行った。
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