― An EvilPurify Ⅰ― 退魔師物語

「本格的にヤバい事になっちまったな…逃げれない…」
「だからと言ってここで魔物を見て逃げれる程無責任でも無いからね…浄化するわよ?あのアド…何とかさん 飛行系なら任せなさいよリックはきついんでしょ?」
的を射抜かれたような気分になりつつ、それでも先陣からは離れようとはしなかった。実際、体力面においても相当な疲労は溜まって居る事は確かだが、カインも彼の意志を尊重してそれ以上は何も言わなかった。
 先程以上に嘶くと、翼を大きく広げて上空へと飛び上がり、前足の部分で引っ掴んでおいた石を二人めがけて落としてきた。当たる寸前でかわし、直ぐに銃で応戦するも悠々と飛ぶ相手にしてはそれも簡単にかわせるものでしかない 余裕そうに飛び回る姿に苛立ちを覚えたが、その苛立ちに任せてしまっては銃弾が無駄になってしまっては家計が…という邪念と共に必死に思考を巡らせている時にある事を思いつく。

「ねえリック!銃弾を節約してもしかしたら浄化出来るかもしれない方法を思いついたのよ!」
「Σこの時ぐらい節約の事は忘れてくれよ!!…で、どうしたんだよ…」
「良いから耳貸して…」
「………しゃあねぇな…もし無理だったらオレの身の安全も保障してくれよ?」
「…多分きっと…マフラーぐらいなら拾うから!」
 思いついたと言うカインの方法に絶対成功する等と言う安心感は無いものの、今この状況を打開するには賭けに出る以外方法は無く、幸い傍に居た蛇であっても今は帰って居るので、只その場で傘を差して立って居る彼女を襲撃するフリであっても今は絶好の機会と言えるだろう。
カインに一旦下がる様に言われ、(仕方無さそうに)家の隅へと戻って行く彼を確認した後 ショットガンを手に持った。 リックが帰った事が気になったのか、マリアネットは首を傾げる。
『かくれんぼ?…マリーが鬼役?』
「違うわよ。アイツの負傷が酷いから退場して貰っただけ、だから一人でそのトリさんと遊んであげようと思ってね!」
屋根の上に止まって居たアドニスに向けて一発。 当たり前だがそんなものは彼にとって当たらなければ全くの脅威では無いので、簡単に避けると鷲の足になっている前足の部分を使って勢いよくこちらに向かって飛んで来た。
 避ける間も無かったので銃でガードしているが、そう長くは持ちそうにない 銃身の部分が鈍い音を立てて砕かれそうな音が聞こえるがそれでも何とか耐え抜いて、マリアネットが近くに居る家の屋根の上にようやく到着したリックの姿を確認した。
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