Katakuri
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「気がついたか、娘」
『あなたは···大臣様?!私どうしてここに?!』
カタクリが話すと全て思い出した
『は、ハハハ!私ダサいとこ見られちゃった上に助けてもらったなんて!すみません!あと、ありがとうございます』
「そのまま返すとお前の父と母が気に病む···俺はあそこの店が好きだからな···」
『お店⋯ドーナツ···?!』
カタクリを見ると手には歪な形の見覚えがあるドーナツを見つけた
『それ!あ、そんなのじゃなくて!私お礼に沢山練習して沢山作って来ますから!それは捨てて下さい!』
「勿体無いだろ···」
勿体無いと言いつつ歪なドーナツの穴に指を入れて物干し気な顔で見ているカタクリにナナシはもうそれ以上何も言えなかった。それより······
『そんな物でもいいんですか?···下手くそなのに···』
食べてもらえることがうれしかった
正直ナナシは手先が器用ではない
小さな頃から父と母の手伝いをし生地はなんとか作れるようになったものの形の成形は苦手だった
15時
「俺は今からやる事がある···別室で充分休んで帰るといい。帰りには護衛をつけよう」
その言葉に甘えしばらく手当を受け休ませてもらった
お礼を言おうと思ったが大臣カタクリは留守の様で付き人に家の近くまで送ってもらった
『ここで大丈夫です!この角を曲がったらもう家なんで···本当にありがとうございました!』
「いや、私はカタクリ殿から言い付けられて付き添っただけだ。そう言うならばここで城に帰るとしよう」
付き人は踵を返して去って行く
『あの!今度お礼にカタクリ様にドーナツ作ったら···持って行ってもいいですか?』
「好きにするといい」
それからナナシは何度も何度も練習して
やっと綺麗なドーナツを作れるようになった
それを可愛いらしい箱に詰めラッピングしカタクリの居る城へやって来た
『すみません!カタクリ様はいらっしゃいますか?』
「カタクリ様なら今
『そんな···あのドーナツ持って来たんです!渡すだけでも···』
「その様な何処の誰かも分からぬ奴が作ったドーナツなど毒が入っておるかも知れぬというのに誰がカタクリ様に渡すと思っている!帰れ!!」
このやり取りを見ていたカタクリは珍しく社の中から出て来た
「おい、門番、何を騒いでいる?」
「か、カタクリ様!この者がカタクリ様に馴れ馴れしく差し入れなどと!」
『···カタクリ様···』
「入るがいい」
カタクリは城内へ通し社の前まで連れて来た
「まだ名を聞いてなかったな···お前名は何という?」
『ナナシです。』
カタクリはナナシごと飲み込み社の中へ入った
「ナナシ、その箱は貰っていいのか?」
『はい!カタクリ様にお礼がしたくて作ったものなので!』
日頃ナナシが耳にするカタクリの噂は冷静で兄弟思い、シャーロット家の最高傑作で地に背中をつけたことなどない。そんな話しばかりで会った時もそのイメージ通りだと思って居た
だが彼と二人でこの社に入りそこで見たのは
大きな口でお菓子を頬張り寝そべって食べるまるで子供の様なカタクリ
『随分と上手くなっているな···』
寝転びナナシの作ったドーナツを持って穴から天井を覗いている
「練習したので···」
「そうか···じゃあ遠慮なく頂こう」
カタクリはナナシの作ったドーナツを一口で食べる
「穴までうまし!ドーナツ!」
それはカタクリの口にあった様で上機嫌で次々と平らげる
『私···カタクリ様はもっと怖い方かと思っていました···でも、私なんかにその様な無防備な姿を見せても良かったのですか?』
「お前に俺は殺せん。それに···お前の作るドーナツは旨い。早く食べたかったそれだけだ」
『じゃあ今見たことはカタクリ様との秘密にしておきますね』
「そうしてくれると助かる」
そして社の中でカタクリとナナシは沢山話しをした
「明日からまた国を空けねばならない。帰って来たら店に行く、ナナシの父と母に宜しく伝えてくれ」