降谷零(安室透・バーボン)
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「俺と結婚しないか」
私の彼は日本を守る警察官だ。だけどどこでどんなことをしてるのかは全く知らない。なんとなく特殊な部署に配属されてることだけは察している。帰ってきたと思ったら怪我していたりするのに何も教えてくれない。心配しかさせてくれない。とはいえ、少し前までは何年も会えていなかった。自然消滅か振られたのかと思っていたくらい。だけど時折来る宛先不明のメールから彼を感じていた。今では同棲も始めて一緒に過ごせるようになった。帰ってこない方が多いけどあの数年に比べたらマシ。会えるようになっただけ幸せだよね。
自己暗示をかけるように心の中で呟く。さっき見た光景を羨ましく思ってしまった。今日、結婚を機に仲の良かった同期が退職すると教えてもらった。今月までしかもういないらしい。会社は違えど結婚報告を聞くのは今月だけでもう3回目。自然とそういう話題になることも増えた。私は――するつもりはない。自分の立場は分かっている。警察として危険な仕事に就く彼の恋人だ。彼自身あんなに傷ついてる。私みたいな弱みを増やしたくないだろう。だから大丈夫だと、気にしてないと私は振る舞うしかない。
結婚した同期がせっかくだから駅までみんなで行こうと声をかけてくれた。久しぶりに数人の同期と集まれてなんだか嬉しい。部署が違うと話さないものだ。今度お昼に集まろうなんて約束もできて嬉しい。懐かしい会ったばかりのことを話しながら会社から出る。
「茜?」
愛しい声が聞こえた。思わず振り向くとそこには彼の愛車と同じ車が。運転席から降りてきた姿を見てまず浮かんだものは疑問。なんで彼がここにいるのか分からない。そんな私に気づいているのかいないのか。彼、零くんは私の傍に立って腰を抱き寄せた。
「いつも僕の彼女がお世話になっています」
この状況が理解できない。相も変わらずここ数日顔も見ることが出来なかった彼がなぜここにいるのか。近くからイケメーン!若っ!とかなんとか聞こえるけどそれどころじゃない。彼の顔を見ながらあとかえとか意味もない言葉が溢れる。そんな私に優しい笑顔を向けて零くんは同期たちと向き合った。
「もし良かったらみなさん送りましょうか?僕車なので」
人のいい笑顔を浮かべながら私の同期たちに何事もないかのように話しかけている。こんなこと今までなかった。とはいえこの状況を見て何かあって来たというようにも見えない。そう思うとどこか嬉しい。彼が迎えにしてくれるとか普通の恋人みたいだ。
「いやいや大丈夫です!私たちのことは気にせずに!サプライズなんて素敵ですね!」
なんて同期がそそくさと帰ろうとしている。待ってと声をかけようとした時そのうちの1人と目が合った。そっと私の傍に寄って顔を近づけられる。
「お迎えなんてラブラブじゃん茜」
耳打ちしてきた同期の目を慌てて見た。私の顔はきっと真っ赤になってる。そんな私にウィンクをひとつ残してみんな帰ってしまった。私と零くんの2人が取り残される。
「じゃ僕らも帰ろうか」
「えっと、そうだね」
いつも通り振る舞う零くんは助手席のドアを開けてくれた。ありがたくそのまま乗らせてもらう。この車に乗るのもいつぶりなんだろう。久しぶりな気がする。
「――びっくりしたよ。お迎えなんて初めてだったから」
「今日は珍しく仕事が早く終わったんだ。迷惑だったか?」
「そんなわけない!嬉しいよ。ありがとう」
夜の街を零くんの運転に揺られながら帰路に着いた。助手席から見る零くんがどこか緊張しているように見えたのは気のせいであってほしい。
この日家に帰ると零くんお手製の夕ご飯が準備されていた。彼はとても料理が上手い。あまりの嬉しさにいつもより多く食べてしまった自信がある。それからこれまでの日常が少し変わり始めた。例えば朝起きて彼の姿を見れる日が増えた。それだけじゃなくて朝ご飯まで一緒に食べる日が増えた。それに、長い間見てすらいなかったお弁当箱の中身が詰められている。そして――。
「茜お疲れ様」
迎えに来てくれることが多くなった。同期どころか同僚にまで零くんのことは知られた。あんなスパダリ見たことないって、羨ましいって。その後にはいつも同じ言葉が続く。結婚はいつするの?って。まるで結婚しないなんてありえないみたいに。だけど私にはもっと心配なことがある。
「ねぇ零くん」
「ん?どうしたんだ?」
迎えに来てもらって家に着いた。リビングのソファに2人、ゆったりとした時間が流れる。私が見たいと言っていたドラマを録画したんだと嬉しそうに話す零くんに声をかけた。
「――また、いなくなっちゃうの?」
ここ最近の零くんは今まで以上に恋人として100点満点だ。凄く嬉しいし始めは私も楽しみにしていた。今日はお弁当なにかな?お迎えあるかな?また一緒に起きれるかな?なんて。だけどそんな純粋に楽しめなくなったのはある可能性に気づいてから。また帰ってこなくなるのかもしれない。だから最後の思い出とでも言うようにこんなに良くしてるんじゃないかって。危険なことはして欲しくない。
「なっ!?そんなわけないだろう!」
本気でびっくりしている零くんの顔がよく見える。だけど私の不安な気持ちは変わらない。俯いた私から慌てて寝室に向かう零くんの足が見えた。浮かんでしまいそうな涙を唇を噛むことで堪える。
「本当はもっとちゃんとした所で言いたかったんだが……」
そんな声と共に私の顔を覗き込む零くんが目の前に来た。困ったように眉を下げて笑う零くんの青い瞳。いつもと変わらない美しいそれと目を合わせる。零くんの手が伸びてそっと私の唇に触れた。ゆっくり添えられた親指から固く閉じた口を思わず開く。そんな私を見て満足そうに彼は笑った。
「俺と結婚しないか」
跪いた彼が差し出すのはベロア素材のリングケース。私の立場とかそんなこと頭から抜けていた。今回は涙を堪えることなんてできるはずがない。
私の彼は日本を守る警察官だ。だけどどこでどんなことをしてるのかは全く知らない。なんとなく特殊な部署に配属されてることだけは察している。帰ってきたと思ったら怪我していたりするのに何も教えてくれない。心配しかさせてくれない。とはいえ、少し前までは何年も会えていなかった。自然消滅か振られたのかと思っていたくらい。だけど時折来る宛先不明のメールから彼を感じていた。今では同棲も始めて一緒に過ごせるようになった。帰ってこない方が多いけどあの数年に比べたらマシ。会えるようになっただけ幸せだよね。
自己暗示をかけるように心の中で呟く。さっき見た光景を羨ましく思ってしまった。今日、結婚を機に仲の良かった同期が退職すると教えてもらった。今月までしかもういないらしい。会社は違えど結婚報告を聞くのは今月だけでもう3回目。自然とそういう話題になることも増えた。私は――するつもりはない。自分の立場は分かっている。警察として危険な仕事に就く彼の恋人だ。彼自身あんなに傷ついてる。私みたいな弱みを増やしたくないだろう。だから大丈夫だと、気にしてないと私は振る舞うしかない。
結婚した同期がせっかくだから駅までみんなで行こうと声をかけてくれた。久しぶりに数人の同期と集まれてなんだか嬉しい。部署が違うと話さないものだ。今度お昼に集まろうなんて約束もできて嬉しい。懐かしい会ったばかりのことを話しながら会社から出る。
「茜?」
愛しい声が聞こえた。思わず振り向くとそこには彼の愛車と同じ車が。運転席から降りてきた姿を見てまず浮かんだものは疑問。なんで彼がここにいるのか分からない。そんな私に気づいているのかいないのか。彼、零くんは私の傍に立って腰を抱き寄せた。
「いつも僕の彼女がお世話になっています」
この状況が理解できない。相も変わらずここ数日顔も見ることが出来なかった彼がなぜここにいるのか。近くからイケメーン!若っ!とかなんとか聞こえるけどそれどころじゃない。彼の顔を見ながらあとかえとか意味もない言葉が溢れる。そんな私に優しい笑顔を向けて零くんは同期たちと向き合った。
「もし良かったらみなさん送りましょうか?僕車なので」
人のいい笑顔を浮かべながら私の同期たちに何事もないかのように話しかけている。こんなこと今までなかった。とはいえこの状況を見て何かあって来たというようにも見えない。そう思うとどこか嬉しい。彼が迎えにしてくれるとか普通の恋人みたいだ。
「いやいや大丈夫です!私たちのことは気にせずに!サプライズなんて素敵ですね!」
なんて同期がそそくさと帰ろうとしている。待ってと声をかけようとした時そのうちの1人と目が合った。そっと私の傍に寄って顔を近づけられる。
「お迎えなんてラブラブじゃん茜」
耳打ちしてきた同期の目を慌てて見た。私の顔はきっと真っ赤になってる。そんな私にウィンクをひとつ残してみんな帰ってしまった。私と零くんの2人が取り残される。
「じゃ僕らも帰ろうか」
「えっと、そうだね」
いつも通り振る舞う零くんは助手席のドアを開けてくれた。ありがたくそのまま乗らせてもらう。この車に乗るのもいつぶりなんだろう。久しぶりな気がする。
「――びっくりしたよ。お迎えなんて初めてだったから」
「今日は珍しく仕事が早く終わったんだ。迷惑だったか?」
「そんなわけない!嬉しいよ。ありがとう」
夜の街を零くんの運転に揺られながら帰路に着いた。助手席から見る零くんがどこか緊張しているように見えたのは気のせいであってほしい。
この日家に帰ると零くんお手製の夕ご飯が準備されていた。彼はとても料理が上手い。あまりの嬉しさにいつもより多く食べてしまった自信がある。それからこれまでの日常が少し変わり始めた。例えば朝起きて彼の姿を見れる日が増えた。それだけじゃなくて朝ご飯まで一緒に食べる日が増えた。それに、長い間見てすらいなかったお弁当箱の中身が詰められている。そして――。
「茜お疲れ様」
迎えに来てくれることが多くなった。同期どころか同僚にまで零くんのことは知られた。あんなスパダリ見たことないって、羨ましいって。その後にはいつも同じ言葉が続く。結婚はいつするの?って。まるで結婚しないなんてありえないみたいに。だけど私にはもっと心配なことがある。
「ねぇ零くん」
「ん?どうしたんだ?」
迎えに来てもらって家に着いた。リビングのソファに2人、ゆったりとした時間が流れる。私が見たいと言っていたドラマを録画したんだと嬉しそうに話す零くんに声をかけた。
「――また、いなくなっちゃうの?」
ここ最近の零くんは今まで以上に恋人として100点満点だ。凄く嬉しいし始めは私も楽しみにしていた。今日はお弁当なにかな?お迎えあるかな?また一緒に起きれるかな?なんて。だけどそんな純粋に楽しめなくなったのはある可能性に気づいてから。また帰ってこなくなるのかもしれない。だから最後の思い出とでも言うようにこんなに良くしてるんじゃないかって。危険なことはして欲しくない。
「なっ!?そんなわけないだろう!」
本気でびっくりしている零くんの顔がよく見える。だけど私の不安な気持ちは変わらない。俯いた私から慌てて寝室に向かう零くんの足が見えた。浮かんでしまいそうな涙を唇を噛むことで堪える。
「本当はもっとちゃんとした所で言いたかったんだが……」
そんな声と共に私の顔を覗き込む零くんが目の前に来た。困ったように眉を下げて笑う零くんの青い瞳。いつもと変わらない美しいそれと目を合わせる。零くんの手が伸びてそっと私の唇に触れた。ゆっくり添えられた親指から固く閉じた口を思わず開く。そんな私を見て満足そうに彼は笑った。
「俺と結婚しないか」
跪いた彼が差し出すのはベロア素材のリングケース。私の立場とかそんなこと頭から抜けていた。今回は涙を堪えることなんてできるはずがない。
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