花剣に捧ぐ
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「いやー良かったよまだ開いてて」
4人で囲んだテーブルはテラス席で通りがよく見える。テーブルの上にエドがメニュー広げ始めた。レイに苦手なものを確認してから適当に頼む事にする。とりあえず私はスープがあればいい。エドはよく食べるしレイもきっと同じくらいだろうから食べるだろう。
「エラさ、何日ぶりに食うの?」
「んー3日?まだマシだけどとりあえずスープだけ食べるよ。あとサラダ」
「は?3日ぶり……?」
ありえないと言った顔でこっちを見るレイに苦笑しか出来ない。食べる暇があったら研究したいからね。図書館とホテルに籠ってたんだと言うとレイは天を仰いだ。それからレイがメニューを見ても分からないという事で私とエドとアルで勝手に決めた。飲み物は決めてもらったけれど。気前のいいおじさんに注文してしばらくした後、エドが口を開いた。
「つーかさ」
「ん?」
「レイのことどーすんだよ。飯はいーけどさ。クソ大佐にでも保護してもらえんじゃねーの」
クソ大佐って……なんてつっ込むけどエドのこの口が治った試しは無い。そしてレイをどうするか。クソ大佐、もといロイに頼んでもいいとは思ったけれどロイは忙しい。若いながらに大佐の地位についた男だ。私が小さい頃から気にかけてくれた兄貴分のような存在としてとても頼りにしている。が、私としては何でもかんでも頼りたいわけではない。
「いや、ロイの所には連れていく予定はないよ。会わせてもいいが保護は頼まない」
「んでだよ」
「急に来てしまったなら急に帰るかもしれないからな。それと、根無し草の私らの方が情報は入ってくるでしょ?」
そういうとまぁそうだなとちょうど届いたコーヒーをすすり出した。レイと私の前にもコーヒーと紅茶が置かれる。ソーサーに置かれていた砂糖はどかしてカップを手に取る。
元の世界に帰す。正直手探りもいいところだ。異世界へ人間を飛ばしたような人は実際誰もいないだろう。何がトリガーになったのか、いつ帰れるものかも分からない。これからホテルの部屋を増やすのもできるか聞いてみよう。出来れば向かいの部屋か隣がいい。レイのことももれなく私の護衛対象のように思っている。そんなことをツラツラ口にしているとレイと目が合った。
「僕が言うのもなんですけど」
薄い青の瞳が私のと合う。
「ん?なんだ」
「警戒心をもっと持った方がいいのでは?」
「おっ!言ったれレイ!エラ俺が言ってもアルが言っても聞かねーから!」
「ほらー姉さん会ったばっかの人にも言われてるよ?分かった?せめて初対面の人くらい警戒しよう?」
「僕は貴方たち全員に言ったんですけど……」
まさか私に矛先が向くとは。レイは全員のつもりだけどエドとアルは全く聞いていない。別に警戒心がない訳では無いと思う。人より薄いかも知れないが、それは自分で対処できるから。それに。
「まだ私らをこんな警戒してる人にどう警戒しろと?大丈夫だって私は伝えたいだけ。少なくともここにいる間、私が安全を保証するよ」
「いや……そうだけどそうじゃねーんだよ……」
「中佐!?もしや、レオンハルト中佐ですか!?」
料理が運ばれて来たその時、通りの方から名前を叫ばれた。顔を上げると憲兵が2人走ってきた。随分慌てているようで息が上がっている。
「どうした?」
「はっ!発言失礼致します!この先の通りで連続通り魔が現れ中佐殿に目撃情報を共有します!」
「通り魔で……?あー憲兵が襲われたんだろ」
「兄さん!シッ!」
エドとアルの声は聞こえないことにしておこう。まぁ正直言わんとすることは分かる。この国の軍はことがある程度大きくならない限り動かないからな。現に軍から指令は来ていない。上から届く前に私に来たってことは報告より先に近くにいたからという感じだろう。それもこの慌てぶり、憲兵が刺されたのは直近と考えてもいい。
「それで?どこに行けばいい」
「エラ!」
「兄さん諦めよう……いつもの事だよ」
憲兵の話によるとまだ周囲に居るはずだと。黒髪青眼に猫背の男だそうだ。エドとアルを憲兵にお願いして路地に目を向ける。逃げるなら路地裏からだろう。憲兵曰く血がついているようだから。
「じゃ、なんかあったら呼んで。ご飯 は食べといて」
「ちょっと待ってください!エラさん1人で行くんですか!?もう暗いのに女性1人なんて危ないですよ!」
踵を返してすぐ聞こえてきたレイの言葉に思わず足が止まった。思わず振り向いてしまう。そんな心配をしてくれる人なんて初めてかもしれない。エドとアル、憲兵だって何言ってるんだ?って顔をしてレイを見ていた。そう、これが普通の反応。エドとアルは私が動かないわけないと思っているからだから例外だが。いや、2人も私の噂は知っていたからさほど驚いていなかった。この国の人間で、私に危ないなんて言う人がいるだろうか。いないだろうな。それが私だから。
「レイ。心配しないで。私はそんなに弱くないから」
ね?と笑いかけてから次こそ足を踏み出した。靴をちゃんと変えてきた自分を褒めたい。タンタンとリズミカルに足を鳴らす。足元に広がるは私の錬成陣と火花の様な錬成光、バチバチ鳴る錬成音。次の瞬間、私は宙にいた。
認めよう。飛ぶ必要性はなかったよ。でもレイが不安がってたし大丈夫だってこと見せたかったしかっこつけたかったし……なんて心の中で言い訳をする。さてと、まだ家の灯りがついている家がほとんどだ。血痕を追って行けばすぐに見つかりそう。迅雷の錬金術師に恥じないよう、雷の速さで終わらせてやる。
とそこまでせずともあっさり通り魔は見つかった。動機だとかそんなものは知らないがとりあえず捕まえて気絶させた。私まで刺されたらたまったものじゃない。
「ただいまー。これで合ってる?」
「中佐!お疲れ様です!ありがとうございます!」
「いいってことよ。何かあればまた言って。あっでもそれの報告は任せる」
「もちろんです!お休みのところ失礼しました!ありがとうございます!」
そう言いながら帰っていく憲兵たちに適当に手を振る。テーブルに目を戻すとあまり手をつけられていない料理たち。エドはもう口にしているしレイが食べてないんだろう。私がサラダに手を伸ばすとようやくフォークを手に持ったようで食べ始めた。もしかして待っていた?
「少しお聞きしたいのですが」
「ん?どうした?」
サラダを摘んでいるとレイが改まったように声をかけてきた。視線だけレイに向けて首を傾げる。行儀は悪いかもしれないが流石に目の前に食べ物があったら空腹だって思い出す。
「エラさん中佐って呼ばれてましたけど……軍人なんですか?大佐ともお知り合いのようですし」
思わぬ発言に固まって瞬きを数回してしまった。でも異世界から来たんだ。そりゃ知らないか。そこでようやく私たちが何か何も説明していないことに気づいた。エドとアルに関してはどこまで話していいか私には分からない。
「なら私の事から少し、話そっか」
エラ・レオンハルト。アメストリス国軍東方部司令部在籍の中佐。兼、国家錬金術師。二つ名は迅雷の錬金術師。ロイ・マスタング大佐の部下で現在の指令は国内を旅している鋼の錬金術師ことエドワード・エルリックとその弟の護衛。
「それにレイの保護と元の世界に帰すことが今の私の立場かな」
簡単に話してみたけど東部にいた時より楽だ。書類に追われるからなあそこは。ロイのせいで。あの若さで大佐はやっかみが多い。そんなことしてる暇があれば少しでも軍人としてやることやればいいのに。治安なんてまだ悪いところたくさんあるんだから。
それからエドとアルが戦争で腕をなくしたこと。その腕を戻すために錬金術を研究し歩いていると説明していた。――持っていかれたなんて言えないからね。アルの鎧は趣味ってことに相変わらずなった。面白すぎる。どうにか笑わないように紅茶で隠しながら話を聞いた。エドが私たちとどんな場所を旅したのか、何をしたのか楽しそうに話していて私も懐かしいなんて感傷に浸る。東部いた時には想像もつかないようなことを沢山してきた。護衛なんていらないとエドが言っていたのを覚えている。ロイがなんと説得したかは知らないが、結果エドたちと旅をさせて貰えて私は幸せだ。
それからレイも自分のことを話してくれた。日本という国の大学に通ってると。今は夏休みという長期休暇の最中で大学に行かなくてもある程度居ないことはバレないのと。幼馴染みで親友のヒロという男が心配しそうなことが気がかりだ。
話は弾んだ。私たちは知らない日本という国のことをたくさん聞かせてもらって。大学は専門性を待ったことを学べるらしい。楽しそうだと笑ったエドの顔が眩しかった。ある意味国家錬金術師というのは研究者みたいなものだが、人から教わることはほとんどない。それぞれ自分の錬成陣があるためだ。私はロイに少し、エドとアルは師匠であるイズミさんから学んだとはいえ結局は自分でやるしかない。それも錬金術しか私たちは知らない。様々なことが学べるなんていいなと私もエドと笑った。
それからレイは警察、というものになりたいこと。強くなりたいと言っていた。国を守るために、か。私とは違う。国を守るために警察になりたい。そう夢を語るレイはとても幸せそうで眩しかった。――早く日本に帰してやりたい。その気持ちが強くなった。
テーブルの料理もなくなってきた頃、私はすっかり冷めた紅茶を口にした。エドはさっきから錬金術についてレイに説明している。レイはきっとものすごく頭がいいんだろう。すぐに理解して分からないところはエドに質問している。それでよりエドが楽しそうに説明をしてアルも一緒に話している。正直エドの説明は分かりやすいとは言いきれない。しかし、それでもしっかり話を聞いて考えるレイを見ていると、良い奴なんだななんて改めて感じた。
席を立って店主のおじさんの元へ行く。御手洗を借りてから先に会計を済ませておいた。
「ご馳走様でした。とても美味しかったです」
「おう!自慢の料理だからな。また来てくれ!」
「ええ、必ず」
実際お世辞なんかではなく美味しかった。おじさんも優しいし鎧姿のアルだって拒否されなかった。彼が怪訝な顔をされてしまうのはよく見る。アルは食べられないから一緒にいないといけないわけではない。けど1人にするなんてできるわけがない。
心の中でもう一度お礼を伝えてテラスへ出た。嬉しそうに話す3人が見える。私が守りたいものはきっとこの光景だ。
「それじゃみんな。帰るよ」
ホテルまでの道を月が照らしてくれた。
4人で囲んだテーブルはテラス席で通りがよく見える。テーブルの上にエドがメニュー広げ始めた。レイに苦手なものを確認してから適当に頼む事にする。とりあえず私はスープがあればいい。エドはよく食べるしレイもきっと同じくらいだろうから食べるだろう。
「エラさ、何日ぶりに食うの?」
「んー3日?まだマシだけどとりあえずスープだけ食べるよ。あとサラダ」
「は?3日ぶり……?」
ありえないと言った顔でこっちを見るレイに苦笑しか出来ない。食べる暇があったら研究したいからね。図書館とホテルに籠ってたんだと言うとレイは天を仰いだ。それからレイがメニューを見ても分からないという事で私とエドとアルで勝手に決めた。飲み物は決めてもらったけれど。気前のいいおじさんに注文してしばらくした後、エドが口を開いた。
「つーかさ」
「ん?」
「レイのことどーすんだよ。飯はいーけどさ。クソ大佐にでも保護してもらえんじゃねーの」
クソ大佐って……なんてつっ込むけどエドのこの口が治った試しは無い。そしてレイをどうするか。クソ大佐、もといロイに頼んでもいいとは思ったけれどロイは忙しい。若いながらに大佐の地位についた男だ。私が小さい頃から気にかけてくれた兄貴分のような存在としてとても頼りにしている。が、私としては何でもかんでも頼りたいわけではない。
「いや、ロイの所には連れていく予定はないよ。会わせてもいいが保護は頼まない」
「んでだよ」
「急に来てしまったなら急に帰るかもしれないからな。それと、根無し草の私らの方が情報は入ってくるでしょ?」
そういうとまぁそうだなとちょうど届いたコーヒーをすすり出した。レイと私の前にもコーヒーと紅茶が置かれる。ソーサーに置かれていた砂糖はどかしてカップを手に取る。
元の世界に帰す。正直手探りもいいところだ。異世界へ人間を飛ばしたような人は実際誰もいないだろう。何がトリガーになったのか、いつ帰れるものかも分からない。これからホテルの部屋を増やすのもできるか聞いてみよう。出来れば向かいの部屋か隣がいい。レイのことももれなく私の護衛対象のように思っている。そんなことをツラツラ口にしているとレイと目が合った。
「僕が言うのもなんですけど」
薄い青の瞳が私のと合う。
「ん?なんだ」
「警戒心をもっと持った方がいいのでは?」
「おっ!言ったれレイ!エラ俺が言ってもアルが言っても聞かねーから!」
「ほらー姉さん会ったばっかの人にも言われてるよ?分かった?せめて初対面の人くらい警戒しよう?」
「僕は貴方たち全員に言ったんですけど……」
まさか私に矛先が向くとは。レイは全員のつもりだけどエドとアルは全く聞いていない。別に警戒心がない訳では無いと思う。人より薄いかも知れないが、それは自分で対処できるから。それに。
「まだ私らをこんな警戒してる人にどう警戒しろと?大丈夫だって私は伝えたいだけ。少なくともここにいる間、私が安全を保証するよ」
「いや……そうだけどそうじゃねーんだよ……」
「中佐!?もしや、レオンハルト中佐ですか!?」
料理が運ばれて来たその時、通りの方から名前を叫ばれた。顔を上げると憲兵が2人走ってきた。随分慌てているようで息が上がっている。
「どうした?」
「はっ!発言失礼致します!この先の通りで連続通り魔が現れ中佐殿に目撃情報を共有します!」
「通り魔で……?あー憲兵が襲われたんだろ」
「兄さん!シッ!」
エドとアルの声は聞こえないことにしておこう。まぁ正直言わんとすることは分かる。この国の軍はことがある程度大きくならない限り動かないからな。現に軍から指令は来ていない。上から届く前に私に来たってことは報告より先に近くにいたからという感じだろう。それもこの慌てぶり、憲兵が刺されたのは直近と考えてもいい。
「それで?どこに行けばいい」
「エラ!」
「兄さん諦めよう……いつもの事だよ」
憲兵の話によるとまだ周囲に居るはずだと。黒髪青眼に猫背の男だそうだ。エドとアルを憲兵にお願いして路地に目を向ける。逃げるなら路地裏からだろう。憲兵曰く血がついているようだから。
「じゃ、なんかあったら呼んで。ご飯 は食べといて」
「ちょっと待ってください!エラさん1人で行くんですか!?もう暗いのに女性1人なんて危ないですよ!」
踵を返してすぐ聞こえてきたレイの言葉に思わず足が止まった。思わず振り向いてしまう。そんな心配をしてくれる人なんて初めてかもしれない。エドとアル、憲兵だって何言ってるんだ?って顔をしてレイを見ていた。そう、これが普通の反応。エドとアルは私が動かないわけないと思っているからだから例外だが。いや、2人も私の噂は知っていたからさほど驚いていなかった。この国の人間で、私に危ないなんて言う人がいるだろうか。いないだろうな。それが私だから。
「レイ。心配しないで。私はそんなに弱くないから」
ね?と笑いかけてから次こそ足を踏み出した。靴をちゃんと変えてきた自分を褒めたい。タンタンとリズミカルに足を鳴らす。足元に広がるは私の錬成陣と火花の様な錬成光、バチバチ鳴る錬成音。次の瞬間、私は宙にいた。
認めよう。飛ぶ必要性はなかったよ。でもレイが不安がってたし大丈夫だってこと見せたかったしかっこつけたかったし……なんて心の中で言い訳をする。さてと、まだ家の灯りがついている家がほとんどだ。血痕を追って行けばすぐに見つかりそう。迅雷の錬金術師に恥じないよう、雷の速さで終わらせてやる。
とそこまでせずともあっさり通り魔は見つかった。動機だとかそんなものは知らないがとりあえず捕まえて気絶させた。私まで刺されたらたまったものじゃない。
「ただいまー。これで合ってる?」
「中佐!お疲れ様です!ありがとうございます!」
「いいってことよ。何かあればまた言って。あっでもそれの報告は任せる」
「もちろんです!お休みのところ失礼しました!ありがとうございます!」
そう言いながら帰っていく憲兵たちに適当に手を振る。テーブルに目を戻すとあまり手をつけられていない料理たち。エドはもう口にしているしレイが食べてないんだろう。私がサラダに手を伸ばすとようやくフォークを手に持ったようで食べ始めた。もしかして待っていた?
「少しお聞きしたいのですが」
「ん?どうした?」
サラダを摘んでいるとレイが改まったように声をかけてきた。視線だけレイに向けて首を傾げる。行儀は悪いかもしれないが流石に目の前に食べ物があったら空腹だって思い出す。
「エラさん中佐って呼ばれてましたけど……軍人なんですか?大佐ともお知り合いのようですし」
思わぬ発言に固まって瞬きを数回してしまった。でも異世界から来たんだ。そりゃ知らないか。そこでようやく私たちが何か何も説明していないことに気づいた。エドとアルに関してはどこまで話していいか私には分からない。
「なら私の事から少し、話そっか」
エラ・レオンハルト。アメストリス国軍東方部司令部在籍の中佐。兼、国家錬金術師。二つ名は迅雷の錬金術師。ロイ・マスタング大佐の部下で現在の指令は国内を旅している鋼の錬金術師ことエドワード・エルリックとその弟の護衛。
「それにレイの保護と元の世界に帰すことが今の私の立場かな」
簡単に話してみたけど東部にいた時より楽だ。書類に追われるからなあそこは。ロイのせいで。あの若さで大佐はやっかみが多い。そんなことしてる暇があれば少しでも軍人としてやることやればいいのに。治安なんてまだ悪いところたくさんあるんだから。
それからエドとアルが戦争で腕をなくしたこと。その腕を戻すために錬金術を研究し歩いていると説明していた。――持っていかれたなんて言えないからね。アルの鎧は趣味ってことに相変わらずなった。面白すぎる。どうにか笑わないように紅茶で隠しながら話を聞いた。エドが私たちとどんな場所を旅したのか、何をしたのか楽しそうに話していて私も懐かしいなんて感傷に浸る。東部いた時には想像もつかないようなことを沢山してきた。護衛なんていらないとエドが言っていたのを覚えている。ロイがなんと説得したかは知らないが、結果エドたちと旅をさせて貰えて私は幸せだ。
それからレイも自分のことを話してくれた。日本という国の大学に通ってると。今は夏休みという長期休暇の最中で大学に行かなくてもある程度居ないことはバレないのと。幼馴染みで親友のヒロという男が心配しそうなことが気がかりだ。
話は弾んだ。私たちは知らない日本という国のことをたくさん聞かせてもらって。大学は専門性を待ったことを学べるらしい。楽しそうだと笑ったエドの顔が眩しかった。ある意味国家錬金術師というのは研究者みたいなものだが、人から教わることはほとんどない。それぞれ自分の錬成陣があるためだ。私はロイに少し、エドとアルは師匠であるイズミさんから学んだとはいえ結局は自分でやるしかない。それも錬金術しか私たちは知らない。様々なことが学べるなんていいなと私もエドと笑った。
それからレイは警察、というものになりたいこと。強くなりたいと言っていた。国を守るために、か。私とは違う。国を守るために警察になりたい。そう夢を語るレイはとても幸せそうで眩しかった。――早く日本に帰してやりたい。その気持ちが強くなった。
テーブルの料理もなくなってきた頃、私はすっかり冷めた紅茶を口にした。エドはさっきから錬金術についてレイに説明している。レイはきっとものすごく頭がいいんだろう。すぐに理解して分からないところはエドに質問している。それでよりエドが楽しそうに説明をしてアルも一緒に話している。正直エドの説明は分かりやすいとは言いきれない。しかし、それでもしっかり話を聞いて考えるレイを見ていると、良い奴なんだななんて改めて感じた。
席を立って店主のおじさんの元へ行く。御手洗を借りてから先に会計を済ませておいた。
「ご馳走様でした。とても美味しかったです」
「おう!自慢の料理だからな。また来てくれ!」
「ええ、必ず」
実際お世辞なんかではなく美味しかった。おじさんも優しいし鎧姿のアルだって拒否されなかった。彼が怪訝な顔をされてしまうのはよく見る。アルは食べられないから一緒にいないといけないわけではない。けど1人にするなんてできるわけがない。
心の中でもう一度お礼を伝えてテラスへ出た。嬉しそうに話す3人が見える。私が守りたいものはきっとこの光景だ。
「それじゃみんな。帰るよ」
ホテルまでの道を月が照らしてくれた。
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