「中に入って休んだら？ご飯もあるしよかったら食べて？」

　後ろを向くと綺麗な金髪に水色の瞳の少女が声をかけてくれた。促されるまま家に入るとエドやアルは既に椅子に座ってて不思議そうにこっちを見ていた。

「どうしたの？具合でも悪かった？」

　勝手に引け目を感じて外に居ただけなのにアルは優しい。それがツラい時もあるけれど、今みたいに。

「……せっかくの家族だし私居ない方がいいかなって……というかこんな空気久しぶりで羨ましくなっちゃった。ごめん」

　そう呟くとエドは思いっきり眉間に皺を寄せて横の椅子を乱暴に引いた。

「お前何言ってんだよ。お前も家族みたいなもんだろ。さっさと座れよ。というかウィンリィとか妹ができる！って勝手に喜んでたぞ」
「ちょっ……！何勝手に言ってんのよこのバカエド！」
「……へ？」
「ハル、僕達血は繋がってないけどもう大事は妹みたいに思ってるんだよ。だからほら……一緒にご飯食べよう？僕もいつか絶対に一緒に食べるから」

　エドがウィンリィさんにスパナで殴られてる間にアルがシチューを持ってきてくれた。
　ここはリゼンブール。アメストリスの東部に位置するのどかな場所。エドやアル、彼らの幼なじみのウィンリィさんとおばあちゃんのピナコさん。彼らが育った場所。温かくて眩しい場所だった。エドの機械鎧（オートメイル）の整備をする為に私も着いてきた。どこかホテルをとろうと思ってた矢先、ズルズルと引きづられて遂には食卓を囲んでいる。

「……美味しい」

　ピナコさんが作ってくれたシチューは濃厚で、具だくさんで、とっても美味しかった。エドが好きだと言うのも分かる。ふと、視線を感じて見上げるとウィンリィさんがこっちを見ていた。

「改めて、はじめまして。私はウィンリィ・ロックベル。良かったら私とも仲良くして欲しいな。ここでは機械鎧（オートメイル）技師をしてるの」
「えっとはじめまして。ハロルド・フォーサイトです……彼らの護衛をしています。よろしくお願いしますウィンリィさん」
「そんなさんなんていらないわ！ウィンリィって呼んで！私たちより若いのにこんなバカの護衛なんて大変でしょう？ごめんなさいね」
「いやそんなことは……」

　それからウィンリィとたくさんお話をした。エドたちの小さい頃やここでの生活。機械鎧（オートメイル）についてもたくさん教えてもらったし、ご両親が医者だったと聞いて家にある医学書も見せてもらいながらいろいろ教えてくれた。本当にたくさん話した。お姉ちゃんが出来たみたいでとても嬉しかった。そう言うとウィンリィはとても嬉しそうに笑ったんだ。



　ふと、目を開けると真っ暗な天井が見えた。ここは……違う。
　ああ、こんな幸せな時の夢を見るなんて。ベッドから身を起こして膝をかかえると瞳から一筋涙が溢れた。