メーデー、愛してる
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待ちに待った土曜日、いつも通りの時間に起きてジョギングと筋トレを済ませる。そのままシャワーも浴びてさっぱりしてから部屋に急いで戻る。時間には余裕があるけど髪型ができるような気がしない。白のショートパンツに水色のシャツ。上着は迷ったけど暑いからやめた。そして右手には手袋を。右腕だけ念の為のアームカバーも忘れずに、メイクも薄いけどどうにかしてさぁアイロンを!となったところで、そもそも動画の髪型ができない。せっかく真っ直ぐに髪できたのにフィッシュボーンとかいうこの髪型ができない。今は9時半、まだ時間はある。1階に誰かいないかなーと降りてみるとミナの頭が見えた。
「ミナー!助けてー!この髪型難しいよー……機械鎧 じゃ三つ編みが限界だよー!」
「ハル!おはよう!」
「あらおはようハルちゃん」
「梅雨ちゃんもおはよう!」
それから2人に髪をいじってもらうけど思ってた以上に上手くいかない。そんなことをしてる間にお茶子や響香も来たけど髪型は動画の通りにはできなかった。
「うーんやっぱ難しいんやねぇ。これだとちょちょいってしてるけど」
「このここの編み込みがよく分からないわ」
私の髪を持ってみんなであーだこーだ言って結局出来てないけどそれはそれで楽しいからいいかと思えてきた。そのままみんなとじゃこんな髪型はー?と話していると男子棟から誰か出てきた。
「あれ?勝己?早いね!おはよう!」
「……なにしとんだ」
「髪型をねー変えようと思ったんだけど難しくてみんなとしてた!」
「見せてみろ」
後ろから覗き込む勝己に動画を見せるとそのまま櫛とゴム貸せって手渡す。そのまま動画を見ながら髪をいじられる。いつも爆破を起こしてるその手の優しさが心地いい。指示されるがまま動画を戻したり櫛を受け取ったりしていると頭を撫でられた。
「おらできたぞ」
「え!?え!?ほんと!?鏡!鏡見たい!ありがとう勝己!」
梅雨ちゃんやミナにかわいいよって言ってもらえてすごく私も見たくなった。傍にあった鏡を受け取って髪型を見る。みんなも流石才能マン!なんて勝己に言っているくらいすごく綺麗に編み込めていた。勝己に笑顔でもう1回ありがとうと伝えるとこんくらいいつでもしてやるわと笑って頭を撫でられた。時計を見るとまだ10時半くらい。思ったより時間経ったなぁなんて思う。勝己の準備どうかなと視線を向けると勝己もこっちを見ていた。
「勝己降りてくるの早かったね?それともご飯だったりした?」
「メシはもう食った。暇んなったからな」
「そうなんだね!ちなみに私あと荷物取ってきたら準備できちゃうんだけど勝己は……?」
「待ってるから取ってこいや。俺はもう持ってる」
髪型の為に持ってきたものを急いで回収して部屋に戻る。腕と足に塗り忘れた日焼け止めを塗って小さめのバックには財布とスマホをいれる。ほかにもいつも持ち歩いてるポーチとか入れる。部屋の鏡で最後の身だしなみチェック。銀時計もいつも通りベルトのところに通して、ロケットもある。メイクも美容院のお姉さんにやってもらった時みたいにはいかなかったけど悪くはない……と思いたい!そもそもすっぴんで学校行ってるしな。まぁ大丈夫だろなんて開き直りながら部屋を出る。共有スペースに降りると上鳴クンたちに絡まれてる勝己がいた。邪魔しないようにのんびり近づいていると、勝己がいきなり後ろを振り返った。
「おせぇ!いくぞ!アホ面がうぜぇ!」
「えー!いいじゃん!教えろよー!」
上鳴クンを押しのけてこっちに来る勝己と上鳴クンの様子に苦笑いが出る。とはいえ朝から爆破されるのも嫌だからすぐに傍によって遅くなってごめんねと伝える。すると舌打ちしながらも右手を取られた。その様子に見ていたミナとお茶子が黄色い声を上げる。そのままずんずん進んでしまう勝己に着いていきながらミナや梅雨ちゃんたちに行ってくるねと手を振った。
寮を出てから駅までの道を2人で歩く。10時半とかに外に出るのは久しぶりでなんだか新鮮だ。照りつける太陽に寮が恋しくもなるけど右腕を引かれたまま歩く。
「勝己」
「んだよ」
「手、左手で繋ぎたい……右手じゃわかんない」
「ん」
お願いするとすぐに左手に変えてくれた。優しい。それと……勝己がかっこいい。いや、うん、かっこいいって言うか元からかっこいいんだけどいつもと違ってかっこいいというか?キャップに白のシャツに黒の上着なのもいいんだけどあれか。いつも制服はズボンを下げているのに今日は黒のスキニーをちゃんと履いてる。ズボンちゃんと履いてるだけでかっこよく見えるって……。
「ふは!ふふっ」
「あ?どうした」
「ズボンちゃんと履いてるのが珍しくていつもよりかっこよく見えちゃうの面白いなって思って!ふふっ」
「…………うっせぇ!んなわけねぇだろ!」
ツボに入ってしまってその後も笑ってる私に勝己は舌打ちをしながらも手を引っ張ってくれた。その後も他愛もない話をしながら歩く。電車に乗ってからも仮免補習どうなるんだろうね、勝己なら大丈夫だろうけどなんて言っていると当たり前だろ、すぐ追いつくからななんて煽られた。その挑発に乗らないわけがない。できるならおいでなんて言い合う。そのまま言われるがままに乗ったのと同じようにおりるぞ、と声をかけられたところで降りる。少し歩いた先に見えてきたものは大きな建物。至る所に海の生き物のイラストが描かれている。歩調がゆっくりになって首を傾げていると勝己が振り返った。
「……好きじゃなかったんか、水族館」
「水族館……?水族館なのここ!」
「お前水族館知らねぇんか?」
「こっち来てからそういうものがあるってのは知ってた!SNSの写真とか見てたからね。でも来たことなかったの!」
初めての場所に嬉しくなって歩く速度が上がる。それを見た勝己に笑われたけど来てみたかった所なんだ。仕方がない。
「アメストリスにはねぇんか」
「なかったよー。いろんな生きてる魚が見れるんでしょ?ここ。海がある国から来た魚しか見たことなかった。だいたい調理済み」
「調理済みかよ」
なんてことを話しながらチケットカウンターと書いている方を見つけて向かおうとする。チケットを買ってから中に入る施設ってことは知ってる。そのまま行こうとすると勝己に止められた。
「勝己?チケットが必要なんでしょ?」
「もうあっから行くぞ」
「えっ!なんでなんで!」
「そこじゃなくても買えんだよ。おら行くぞ」
いくらなのか相場もわからずどうすればいいのか分からない。いくら?と聞いてもいらねぇとしか言ってくれない。また前みたいにご飯奢るかと開き直って勝己について行く。チケットを見せて入っていく勝己について行くと少し暗くて涼しい空間が広がっていた。入ってすぐにある看板には何時からイルカショーだったりペンギンの餌やりだったりいろいろ書かれている。少し立ち止まってどんなのがあるんだろうと眺める。
「行きたいのあるんか」
「えーっとねイルカショー?は気になる!時間あったら行きたいな」
そう笑うと勝己がタイムスケジュールの写真を撮っていた。それから少しスマホを操作したかと思うと私を見て悪そうに笑った。
「行くからまずはふつーにまわっぞ」
「え!いいの!ありがとうー!」
その後は順路に沿っていろんな魚を見ていった。どこにいるのかわからないのを探したり、小さな小窓のような水槽を覗いてみたり、どんどん見て回った。水槽の分厚さとそれでも魚が見やすいのにびっくりして途中に飾ってあった水槽のガラスの不思議のような展示すらじっくり見ていた。土曜日のせいか家族連れも多くて体育祭や神野で目立ってしまった分声をかけられるかもかと少し緊張していたけど暗いのもあって誰にも気づかれていない。それから順路を進んでいくと一面クラゲだけのエリアに来た。光がゆったりと色を変え幻想的な風景が広がっていた。うわぁと息を飲んでしまう。ふわふわ漂うくらげを立ち止まって眺めていると勝己に手を引っ張られた。そのまま勝己の方を見ると優しい口付けが降ってくる。そのまま受け入れると人の声が聞こえてきた。すると勝己は離れて行って行くぞと手を引っ張って進み出した。びっくりして少し立ち止まってしまっていたけど、引っ張られる手に急いでついて行く。横に並んだ時勝己の肩を叩いて少し屈んでもらう。その降りてきた頬にお返しのキスをした。そのまま勝己の手に持っているスマホに目をやる。
「あれ?イルカショーの時間?急がないと!」
「てんめぇハル!覚えてろよ!」
「なんでよ。お返ししただけじゃん!それより早く行こう!」
爆破を起こしそうな勝己の手を握り直して真っ直ぐ進んでいく。入口で見た地図ではイルカショーはこの傍のはず。順路通りに階段を上っていくと外に繋がる道を見つけた。イルカショーはこちらと看板が立っている。暗い室内から外に出ると眩しさに目がくらんでしまう。空いている席を探して真ん中辺りに座る。その間にスマホを見てみんなからのメッセージや前に見たSNSを勝己に見せようと開くと勝己が覗き込んできた。
「お前アカウントもっとったんか」
「私の家での女子会の時に作ったの。ほら!投稿は女子会でみんなと撮った写真だけ!」
女の子しかフォローしてないアイコンもないアカウントを見せる。よく使い方わかってないんだよねぇみんなの写真だけ見てるのと話しているとちょっと貸せとスマホを取られた。そのままカメラの画面を向けられる。ん?と首を傾げている間に1枚写真を撮られた。
「え!撮るつもりだったの?言ってよ!」
「はっ!間抜け面」
「待って待ってもっかいちゃんと撮りたいー!」
ねだって撮ってもらった2枚目はちゃんと笑顔で映れた。その後も少し弄られてからスマホを返された。フォローしている人の欄が開かれていて新しいアカウントが増えている。それ俺のと指差しながら教えてくれて、フォローを返そうとしたけど既にされていた。ありがとう!と伝えた辺りで放送が始まった。生まれて初めて見たイルカショーに目が離せない。飼育員のお姉さんの指示通りにボールを取ってきたり高いところにあるフープをくぐったりとすごいすごいと拍手が止まらなかった。勝己にすごいね!と振り向くとスマホを構えたままおうと答えてくれた。ショーが終わってからははしゃぎ方が前にいるガキと一緒と笑われたけど初めてなんだからしかたないじゃんと言い返してそのまま置いて先に行くと笑いを堪えながらも勝己が駆け足で寄って来て手を取られた。そして途中にあった地図で全部見て回れたことが分かった。出口の方に向かうとお土産屋さんがある。寄っていい?と聞くとそのまま連れていかれた。いろんな海の生き物のグッズやお菓子が売っていてかわいい。その中でも大きなサメのぬいぐるみに目がいった。目つきが悪くて勝己みたいた。
「みてみて!勝己みたいなサメある!」
「どこが俺みたいたよ!」
「目つきとかまんまじゃん!すごくかわいい」
抱き枕より少し小さいくらいのサイズだからベッドにおける。でもぬいぐるみにせっかくのお小遣い使うのもなと思って迷った末に買うのはやめた。それでもせっかくだから何か一緒に買いたいと思って探してみるとステンドグラスみたいなかわいいストラップが2つセットで売られていた。勝己にこれ一緒につけない?と聞くと眉間に皺を寄せたまま手からストラップを取られた。私買うよ!と背中に声をかけるも、先外出とけやと言われてしまった。また買ってもらってしまった。こんなことでワガママ言うのもなぁと大人しく店の外で待っておく。ご飯は払いたいな、他私に何ができるかなもらってばっかりだ。
「なにボケっとしとんだ」
「勝己!おかえり……ってあれ?袋大きくない?」
「やる」
ストラップだけとは思えない大きさの袋をそのまま受け取る開けるとそこにはあのサメのぬいぐるみが。驚いて勝己の顔とサメを交互に見続ける。やるってこれを?えっほんとに?また貰ってしまった。嬉しい。
「勝己ー!ありがとう!!すごく大事にする!」
「ん。飯行くぞ」
その後は調べてくれてたらしいオシャレなカフェによって遅めのお昼を食べた。それから門限まで少し時間があって、私の服を見るのに付き合ってくれた。勝己が薦めてくれる服はどれもセンスが良くて嬉しくて少し買ってしまった。これでやっとスカートが手に入った。またデートしようねって言うと当たり前だわの頭を雑に撫でられた。
「次は勝己の好きなところ行きたいな!私思ったより勝己のこと知らないから……」
「んなもんこれから嫌ってほど教えてやるよ」
悪い顔しながらそう答えられてこれからが楽しみになった。こんな時間だけが続けばいいのになんで思ってしまう。穏やかに流れる時間と窓の景色をを眺めながら寮に帰った。この時の私は帰ってからのSNSの覚えのない投稿とそのタグのことの質問攻めにあうなんてことに気づくこともなくゆったりとした時間を楽しんでいた。
私のSNSには勝己とのセルフィー、勝己のアカウントにはイルカショーを見て笑顔で振り返っている私の写真が上がっていた。
「ミナー!助けてー!この髪型難しいよー……
「ハル!おはよう!」
「あらおはようハルちゃん」
「梅雨ちゃんもおはよう!」
それから2人に髪をいじってもらうけど思ってた以上に上手くいかない。そんなことをしてる間にお茶子や響香も来たけど髪型は動画の通りにはできなかった。
「うーんやっぱ難しいんやねぇ。これだとちょちょいってしてるけど」
「このここの編み込みがよく分からないわ」
私の髪を持ってみんなであーだこーだ言って結局出来てないけどそれはそれで楽しいからいいかと思えてきた。そのままみんなとじゃこんな髪型はー?と話していると男子棟から誰か出てきた。
「あれ?勝己?早いね!おはよう!」
「……なにしとんだ」
「髪型をねー変えようと思ったんだけど難しくてみんなとしてた!」
「見せてみろ」
後ろから覗き込む勝己に動画を見せるとそのまま櫛とゴム貸せって手渡す。そのまま動画を見ながら髪をいじられる。いつも爆破を起こしてるその手の優しさが心地いい。指示されるがまま動画を戻したり櫛を受け取ったりしていると頭を撫でられた。
「おらできたぞ」
「え!?え!?ほんと!?鏡!鏡見たい!ありがとう勝己!」
梅雨ちゃんやミナにかわいいよって言ってもらえてすごく私も見たくなった。傍にあった鏡を受け取って髪型を見る。みんなも流石才能マン!なんて勝己に言っているくらいすごく綺麗に編み込めていた。勝己に笑顔でもう1回ありがとうと伝えるとこんくらいいつでもしてやるわと笑って頭を撫でられた。時計を見るとまだ10時半くらい。思ったより時間経ったなぁなんて思う。勝己の準備どうかなと視線を向けると勝己もこっちを見ていた。
「勝己降りてくるの早かったね?それともご飯だったりした?」
「メシはもう食った。暇んなったからな」
「そうなんだね!ちなみに私あと荷物取ってきたら準備できちゃうんだけど勝己は……?」
「待ってるから取ってこいや。俺はもう持ってる」
髪型の為に持ってきたものを急いで回収して部屋に戻る。腕と足に塗り忘れた日焼け止めを塗って小さめのバックには財布とスマホをいれる。ほかにもいつも持ち歩いてるポーチとか入れる。部屋の鏡で最後の身だしなみチェック。銀時計もいつも通りベルトのところに通して、ロケットもある。メイクも美容院のお姉さんにやってもらった時みたいにはいかなかったけど悪くはない……と思いたい!そもそもすっぴんで学校行ってるしな。まぁ大丈夫だろなんて開き直りながら部屋を出る。共有スペースに降りると上鳴クンたちに絡まれてる勝己がいた。邪魔しないようにのんびり近づいていると、勝己がいきなり後ろを振り返った。
「おせぇ!いくぞ!アホ面がうぜぇ!」
「えー!いいじゃん!教えろよー!」
上鳴クンを押しのけてこっちに来る勝己と上鳴クンの様子に苦笑いが出る。とはいえ朝から爆破されるのも嫌だからすぐに傍によって遅くなってごめんねと伝える。すると舌打ちしながらも右手を取られた。その様子に見ていたミナとお茶子が黄色い声を上げる。そのままずんずん進んでしまう勝己に着いていきながらミナや梅雨ちゃんたちに行ってくるねと手を振った。
寮を出てから駅までの道を2人で歩く。10時半とかに外に出るのは久しぶりでなんだか新鮮だ。照りつける太陽に寮が恋しくもなるけど右腕を引かれたまま歩く。
「勝己」
「んだよ」
「手、左手で繋ぎたい……右手じゃわかんない」
「ん」
お願いするとすぐに左手に変えてくれた。優しい。それと……勝己がかっこいい。いや、うん、かっこいいって言うか元からかっこいいんだけどいつもと違ってかっこいいというか?キャップに白のシャツに黒の上着なのもいいんだけどあれか。いつも制服はズボンを下げているのに今日は黒のスキニーをちゃんと履いてる。ズボンちゃんと履いてるだけでかっこよく見えるって……。
「ふは!ふふっ」
「あ?どうした」
「ズボンちゃんと履いてるのが珍しくていつもよりかっこよく見えちゃうの面白いなって思って!ふふっ」
「…………うっせぇ!んなわけねぇだろ!」
ツボに入ってしまってその後も笑ってる私に勝己は舌打ちをしながらも手を引っ張ってくれた。その後も他愛もない話をしながら歩く。電車に乗ってからも仮免補習どうなるんだろうね、勝己なら大丈夫だろうけどなんて言っていると当たり前だろ、すぐ追いつくからななんて煽られた。その挑発に乗らないわけがない。できるならおいでなんて言い合う。そのまま言われるがままに乗ったのと同じようにおりるぞ、と声をかけられたところで降りる。少し歩いた先に見えてきたものは大きな建物。至る所に海の生き物のイラストが描かれている。歩調がゆっくりになって首を傾げていると勝己が振り返った。
「……好きじゃなかったんか、水族館」
「水族館……?水族館なのここ!」
「お前水族館知らねぇんか?」
「こっち来てからそういうものがあるってのは知ってた!SNSの写真とか見てたからね。でも来たことなかったの!」
初めての場所に嬉しくなって歩く速度が上がる。それを見た勝己に笑われたけど来てみたかった所なんだ。仕方がない。
「アメストリスにはねぇんか」
「なかったよー。いろんな生きてる魚が見れるんでしょ?ここ。海がある国から来た魚しか見たことなかった。だいたい調理済み」
「調理済みかよ」
なんてことを話しながらチケットカウンターと書いている方を見つけて向かおうとする。チケットを買ってから中に入る施設ってことは知ってる。そのまま行こうとすると勝己に止められた。
「勝己?チケットが必要なんでしょ?」
「もうあっから行くぞ」
「えっ!なんでなんで!」
「そこじゃなくても買えんだよ。おら行くぞ」
いくらなのか相場もわからずどうすればいいのか分からない。いくら?と聞いてもいらねぇとしか言ってくれない。また前みたいにご飯奢るかと開き直って勝己について行く。チケットを見せて入っていく勝己について行くと少し暗くて涼しい空間が広がっていた。入ってすぐにある看板には何時からイルカショーだったりペンギンの餌やりだったりいろいろ書かれている。少し立ち止まってどんなのがあるんだろうと眺める。
「行きたいのあるんか」
「えーっとねイルカショー?は気になる!時間あったら行きたいな」
そう笑うと勝己がタイムスケジュールの写真を撮っていた。それから少しスマホを操作したかと思うと私を見て悪そうに笑った。
「行くからまずはふつーにまわっぞ」
「え!いいの!ありがとうー!」
その後は順路に沿っていろんな魚を見ていった。どこにいるのかわからないのを探したり、小さな小窓のような水槽を覗いてみたり、どんどん見て回った。水槽の分厚さとそれでも魚が見やすいのにびっくりして途中に飾ってあった水槽のガラスの不思議のような展示すらじっくり見ていた。土曜日のせいか家族連れも多くて体育祭や神野で目立ってしまった分声をかけられるかもかと少し緊張していたけど暗いのもあって誰にも気づかれていない。それから順路を進んでいくと一面クラゲだけのエリアに来た。光がゆったりと色を変え幻想的な風景が広がっていた。うわぁと息を飲んでしまう。ふわふわ漂うくらげを立ち止まって眺めていると勝己に手を引っ張られた。そのまま勝己の方を見ると優しい口付けが降ってくる。そのまま受け入れると人の声が聞こえてきた。すると勝己は離れて行って行くぞと手を引っ張って進み出した。びっくりして少し立ち止まってしまっていたけど、引っ張られる手に急いでついて行く。横に並んだ時勝己の肩を叩いて少し屈んでもらう。その降りてきた頬にお返しのキスをした。そのまま勝己の手に持っているスマホに目をやる。
「あれ?イルカショーの時間?急がないと!」
「てんめぇハル!覚えてろよ!」
「なんでよ。お返ししただけじゃん!それより早く行こう!」
爆破を起こしそうな勝己の手を握り直して真っ直ぐ進んでいく。入口で見た地図ではイルカショーはこの傍のはず。順路通りに階段を上っていくと外に繋がる道を見つけた。イルカショーはこちらと看板が立っている。暗い室内から外に出ると眩しさに目がくらんでしまう。空いている席を探して真ん中辺りに座る。その間にスマホを見てみんなからのメッセージや前に見たSNSを勝己に見せようと開くと勝己が覗き込んできた。
「お前アカウントもっとったんか」
「私の家での女子会の時に作ったの。ほら!投稿は女子会でみんなと撮った写真だけ!」
女の子しかフォローしてないアイコンもないアカウントを見せる。よく使い方わかってないんだよねぇみんなの写真だけ見てるのと話しているとちょっと貸せとスマホを取られた。そのままカメラの画面を向けられる。ん?と首を傾げている間に1枚写真を撮られた。
「え!撮るつもりだったの?言ってよ!」
「はっ!間抜け面」
「待って待ってもっかいちゃんと撮りたいー!」
ねだって撮ってもらった2枚目はちゃんと笑顔で映れた。その後も少し弄られてからスマホを返された。フォローしている人の欄が開かれていて新しいアカウントが増えている。それ俺のと指差しながら教えてくれて、フォローを返そうとしたけど既にされていた。ありがとう!と伝えた辺りで放送が始まった。生まれて初めて見たイルカショーに目が離せない。飼育員のお姉さんの指示通りにボールを取ってきたり高いところにあるフープをくぐったりとすごいすごいと拍手が止まらなかった。勝己にすごいね!と振り向くとスマホを構えたままおうと答えてくれた。ショーが終わってからははしゃぎ方が前にいるガキと一緒と笑われたけど初めてなんだからしかたないじゃんと言い返してそのまま置いて先に行くと笑いを堪えながらも勝己が駆け足で寄って来て手を取られた。そして途中にあった地図で全部見て回れたことが分かった。出口の方に向かうとお土産屋さんがある。寄っていい?と聞くとそのまま連れていかれた。いろんな海の生き物のグッズやお菓子が売っていてかわいい。その中でも大きなサメのぬいぐるみに目がいった。目つきが悪くて勝己みたいた。
「みてみて!勝己みたいなサメある!」
「どこが俺みたいたよ!」
「目つきとかまんまじゃん!すごくかわいい」
抱き枕より少し小さいくらいのサイズだからベッドにおける。でもぬいぐるみにせっかくのお小遣い使うのもなと思って迷った末に買うのはやめた。それでもせっかくだから何か一緒に買いたいと思って探してみるとステンドグラスみたいなかわいいストラップが2つセットで売られていた。勝己にこれ一緒につけない?と聞くと眉間に皺を寄せたまま手からストラップを取られた。私買うよ!と背中に声をかけるも、先外出とけやと言われてしまった。また買ってもらってしまった。こんなことでワガママ言うのもなぁと大人しく店の外で待っておく。ご飯は払いたいな、他私に何ができるかなもらってばっかりだ。
「なにボケっとしとんだ」
「勝己!おかえり……ってあれ?袋大きくない?」
「やる」
ストラップだけとは思えない大きさの袋をそのまま受け取る開けるとそこにはあのサメのぬいぐるみが。驚いて勝己の顔とサメを交互に見続ける。やるってこれを?えっほんとに?また貰ってしまった。嬉しい。
「勝己ー!ありがとう!!すごく大事にする!」
「ん。飯行くぞ」
その後は調べてくれてたらしいオシャレなカフェによって遅めのお昼を食べた。それから門限まで少し時間があって、私の服を見るのに付き合ってくれた。勝己が薦めてくれる服はどれもセンスが良くて嬉しくて少し買ってしまった。これでやっとスカートが手に入った。またデートしようねって言うと当たり前だわの頭を雑に撫でられた。
「次は勝己の好きなところ行きたいな!私思ったより勝己のこと知らないから……」
「んなもんこれから嫌ってほど教えてやるよ」
悪い顔しながらそう答えられてこれからが楽しみになった。こんな時間だけが続けばいいのになんで思ってしまう。穏やかに流れる時間と窓の景色をを眺めながら寮に帰った。この時の私は帰ってからのSNSの覚えのない投稿とそのタグのことの質問攻めにあうなんてことに気づくこともなくゆったりとした時間を楽しんでいた。
私のSNSには勝己とのセルフィー、勝己のアカウントにはイルカショーを見て笑顔で振り返っている私の写真が上がっていた。