空にサヨナラ
変換設定
一括名前変換一括名前変換です
それぞれ名前を入力して下さい
苗字は登場回数が少ないため固定となっております
この小説の夢小説設定一括名前変換です
それぞれ名前を入力して下さい
苗字は登場回数が少ないため固定となっております
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
やはり怒られた。
いくら痛かったからとはいえ力任せに神機を床に叩きつけて訓練所に穴をあけたのはマズかった。
たっぷりしっかりこってりとツバキさんに怒られ始末書と反省文まで書かされる事になり、なんとかならないかとリンドウに泣き付いてみたけど『俺もあの人には逆らう気が起きない』とか言って見捨てられた。
もちろんそんなものシカトしてやろうと考えたが、『両方書き上げるまでは任務には出さない』とツバキさんに言われてはやるしかなかった。
「終わった…やっと書き終わった……」
ツバキさんに書き上げた物を提出し、なんとかお許しが出た。
さてこれで任務に出られると意気込む俺にツバキさんが声をかける。
「ああ、ソウキ。お前は通常任務をこなす前にまず、リンドウと一緒に新人についてもらうぞ」
「えぇ!?そんな話聞いてな」
「忘れたのか?お前は新しく新型神機を持つ事になったんだろう。
新型神機の使用マニュアルは送ったから読んだと思…読んでないな」
流石ツバキさん、俺の表情だけで読んでないことがバレるなんて。
「い、いえ…一応、目は通しました…」
嘘は言ってない。目は通した。通しただけだが。
そんな俺をみて、ツバキさんはため息。
「…とにかく。使い慣れていない神機だ、何が起こるかも分からない。だからいきなり前線には出せない、分かるな?
幸い、一緒に行動してもらう新人も新型適合者だ。初心に返ったつもりで新しい神機の使い方を1から体に叩き込んでこい」
そんなことを言われたら、俺に残された答えは『Yes』だけだった。
「わかりましたー…」
渋々ながら返事をする俺に、ツバキさんが苦笑を浮かべながら言う。
「まぁ、早く任務に出たいという気持ちは分からないでもない。だが、焦るな。
さて…任務は、この後すぐだ。準備をして出撃ゲートで待機。新人を連れてリンドウが来るはずだ」
了解しました、と答えて俺は準備に向かった。
本音を言うと新型だろうがなんだろうが、取り合えず剣形態で殴っていればいつも通りではないかと思っていたのだ。
しかしツバキさんの言葉はもちろん正論だし、もしそんなことをここで言ったら…殴られそうな気がする。
エントランスでヒバリちゃんに声をかけ、事情を話してミッションを受注してもらう。話が通っていたのか、すぐ手続きは終わった。
任務の内容は贖罪の街でオウガテイルを1体討伐。
新人にはちょうど良いだろう。俺は神機の試し斬りくらいに留めて、新人に少し任せた方が良さそうだなと考える。
ターミナルで準備を整え出撃ゲート前でしばらく待機すれば、リンドウと新人とやらが現れた。
「早いな、ソウキ」
「遅いよ、リンドウ」
リンドウがひらひら片手を振りながら声をかけてくる。後ろについて来てるのは女の子だ。
「あねう…教官から話は聞いてる。しばらくは演習みたいだな」
「まぁな。そういう事だからよろしく頼む…で、早く紹介してくれよ」
そう言ってちらりと視線を向ければ、居住まいを正す彼女。
「お、そうだな。
彼女は新型神機使いのシュリ。で、こっちがこれまた新型神機使いのソウキだ。コイツは新人じゃないがな」
「えっと、極東支部に配属になりました、暮宮シュリと申しますっ。
ソウキさん、よろしくお願いします!」
「じゃあ、シュリちゃんって呼ばせてもらおうかな。紹介の通り、俺は空夜ソウキ。
一応神機使いとしてはそこそこ経験有だけど…まぁ諸事情でしばらく君たちと一緒に行動させてもらうよ。よろしくな」
軽い自己紹介を済ませて出撃ゲートをくぐる。そこで各々の神機を受け取り、車に乗り込んだ。贖罪の街はアナグラからもそう遠くはない。
「え、じゃあソウキさんって元々は旧型使いだったんですか?」
移動中の車の中で、軽い雑談をと自分の経歴やらなにやら色々と話していた。
そこで俺の話になったのだが、シュリの声には少し驚きが混じっている。
「そうそう一応優秀な神機使いなんだけどな、コイツこの前神機ぶっ壊しちまったんだよ」
「リンドウうるさい。それと一応、は余計だ!」
「…神機って、壊れちゃうんですか…」
けらけら笑いながら言うリンドウを軽く小突いてやる。
「大丈夫だよ、普通なら壊れない。俺の場合はちょっと特殊だったみたいで…それに多少壊れても、アナグラには優秀な神機整備の人達がいるしな」
「お前はその優秀な整備士にしょっちゅうお世話になってるけどな」
「…リンドウ?」
笑顔で拳を握れば、リンドウは両手を上げて降参のポーズを取ってみせる。そんな俺達のやり取りを見て、クスクス笑うシュリ。
そんなやり取りをしていると、車は目的地に到着したようだった。
すっかり荒廃した大地に、無人の建物が乱立する。
少し高くなった場所から周囲を見回し、一言。
「うーん、荒れたよなここも…」
「そうだな…さて、実地演習だ。命令は3つ」
リンドウが緊張した面持ちで神機を握りしめているシュリを見てそう言う。
「死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで、隠れろ。
運がよければ不意をついてぶっ殺せ」
「…それじゃ4つだぞ」
「ん?まぁ細かいことは気にするな。どうだシュリ、分かったか?」
「は、はいっ」
懐かしい命令だ。俺も配属されたての時に…確かあの時はツバキさんに言われたんだったか、同じようなことを命令された。
一部の好戦的な奴らには腰抜けとか言われるこの命令だが、死んだら元も子もない。それは俺も散々見てきたから知っている。
「んじゃ一応俺からもアドバイス。とにかく無理はしないこと。
もしも怖かったら、そう言えばいい。俺達がサポートする」
「良いこと言うじゃないかソウキ。
コイツの言う通りだ。ゴッドイーターになったからには、いつまでもアラガミにビビってる訳にはいかない…が、初めてなら仕方ないことだしな」
『恐れ』は大事な感情だと、俺はそう学んだ。
「っと、ちょいと時間くっちまったかもな…敵さんのお出ましだ」
リンドウが示す先には、今回の討伐目標のオウガテイルの姿があった。
「まずは俺が行ってアイツの注意を引く。シュリは隙を見つけて攻撃しろ。ソウキはそのサポートにつけ」
「了解です!」
「はいはーい」
リンドウが高台から飛び降り、神機を構えて敵へと向かう。俺達は一拍遅れてそれに続いた。
リンドウが上手く攻撃を誘発させて、シュリがその隙にロングブレードで薙ぎ払う。俺はそれを見守りながら、シュリが狙われそうになるとオウガテイルの邪魔をしてやった。
「あ、やべっ逃げる!」
「任せて下さい…!」
体力の回復を図ろうとしたのかオウガテイルが逃げ出した。
シュリがすかさず神機を銃身へと変型させ、逃げる背中へとバレットを発射する。それは見事に全弾命中し、オウガテイルは断末魔の叫びをあげて息絶えたようだった。
「おお、やるなシュリちゃん」
「よかった…ちゃんと当たった」
「いや、立派なもんだ。さすが新型ってとこだな…それに比べて」
何故かじとっとこちらを見てくるリンドウの視線にソウキは慌てる。
「な、なんだよ」
「お前な…なんのための新型だよ」
「あ。」
それはもう綺麗さっぱり忘れていた。
新型とはいえ、今の俺の神機には前に使っていたのと同じショートタイプの刀身が装備されている。
振り回していても特に違和感がなかったものだから、持っていたのが新型だと意識していなかった。
「……忘れてたわ」
呆れたようなリンドウのため息とシュリの小さな笑い声だけが、荒れた大地に響いた。