空にサヨナラ
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新種のアラガミの群れからなんとか撤退したソウキ達一行は、大きな動揺をアナグラへともたらした。
今まで多くの敵を倒し、隊員を生還させ続けた極東支部でも屈指の実力を持つ、第一部隊隊長――リンドウの消息不明。
誰が話を始めたか定かではないが、アリサがわざとリンドウを窮地に陥れたのだと、そんな噂までもが囁かれていた。
そして急激に増えていく新種のアラガミの発見、遭遇。
それらは、アナグラ内に暗く重い不安と悲しみを連れてきた。
それでもアラガミの襲撃は止まず、悲劇は様々な爪痕を残しつつも、日常の中にゆっくりと沈もうとしていた。
「ヒバリちゃん。任務受注したいんだけど…いいかな」
「ソウキさん!怪我は大丈夫なんですか?」
ここ数日姿を見せなかった人物がふらりとカウンターに姿を見せた。
その顔色はまだ少し悪く、ヒバリは心配そうな表情を浮かべる。
ソウキに限らず、最近のアナグラは誰もが疲れた表情をしていた。
「まぁ怪我は…なんとか。リハビリがてらになんか軽いのでも受けようと思ってな」
「そうですか…無理は、しないで下さいね」
怪我が全快していないのは明らかだ。しかしヒバリには強く止めることも出来ず、受注書の束を手渡した。
「んー…あのさ、贖罪の街での任務って無いかな?」
受注書に一通り目を通し終わったらしいソウキは、ぺらぺらと紙をめくりながらヒバリに尋ねる。
「あ、贖罪の街は・・・例の事件の調査隊が現在調査中につき、任務やその他一切の理由での立ち入りを禁止する、との通達です」
「…ふーん、そっか。
じゃ、こっちでいいや。すぐに出るから、ヘリの手配よろしく頼むね」
「はい、了解しました」
ヒバリにそう言うと、ソウキは装備を整えるため階段を上りターミナルへと向かった。
「これでラスト…っと」
捕喰形態の神機を倒れたオウガテイルから引き抜き、ソウキは小さく息をついた。
結局、受注した任務は愚者の空母でのオウガテイル討伐だった。
先日の怪我もまだ完治した訳ではないので、簡単なものを受けた。特に新種に遭遇することもなく仕事を終える。
「調査中につき立ち入り禁止、ねぇ…不自然だな…」
調査隊がいようといまいと、アラガミはお構いなしに現れ続ける。
今までにも調査隊が現地に入ることは何度もあったが、その地域全域が立ち入り禁止になり任務の受注も許可されないというのは初めてである。
今日も、本来ならば任務という名目で贖罪の街へ行こうとしていたのだが、それは叶わなかった。
今回の事には、どうも納得出来ない事が多すぎる。
「アリサの様子…見に行ってみるか…」
あの後アリサはすぐに医療班によって運ばれてしまった。
側についていたのは、アリサと一緒にロシアから来たという医者だ。新型神機についての研究を行っているとかで、サカキと会話している所を少し聞いた程度だが確かに詳しかった。
ただ、その医者が話す内容は新型神機が人体に与える精神的な影響だとか、偏食場がどうだとか、小難しくてあまり覚えていない。
「・・・ん?」
ふと、誰かの視線を感じた気がしてソウキは振り返る。
だがそこには座礁し破損した空母の残骸とその向こうに広がる海、そして沖にぽつりと浮かぶ建設途中の人工島…エイジスしか無かった。
「気のせい、か…疲れてんのかな、俺も」
こんなところに人がいるわけもない。もしアラガミであれば、気配を感じていられるはずだ。
遠くからヘリのエンジン音が聞こえてきて、ソウキはひとまず考える事をやめる。
神機を担ぐとヘリの降りてくる地点へと、早足で向かっていった。
「ん?なんだ…」
ヘリでアナグラへと帰ってきたソウキがエントランスに足を踏み入れると、なにやら下が騒がしい。
何をしているのかと上から覗こうと手すりへと近付くと、ツバキがすぐ横を通り過ぎていった。
声をかけようとしたが、すれ違いざまに見えたその表情は思いのほか固く、ソウキはそのまま黙ってツバキを見送る。
「どしたの、皆揃って」
手すりから顔を覗かせ、ひょいと下を見下ろすとそこには第二部隊のメンバーが揃って立ち尽くしていた。
「あ…ソウキさん」
振り向いたのはカノンだった。それにつられるように、うなだれていたタツミとブレンダンも顔を上げる。
「なんか騒がしいなーと思って。どうかしたのか?」
階段を降りながら再び問いかけると、カノンの表情が曇る。
「…ツバキ教官に、リンドウさんの捜索に俺達も参加できるよう、頼んでいた」
「正規の部隊が行動してるから報告を待て、って…!調査隊が派遣されてしばらく経つってのに、情報1つ入りやしない」
答えたのはブレンダンで、タツミは悔しそうに拳を強く握りしめてそう吐き捨てるように言う。
「ツバキさんも…辛いのは分かってるんです…でも…」
カノンは瞳に涙を溜めて、今にも零れそうなそれをなんとか堪えている様子だった。
「…ま、今は暗くなっても仕方ないし。
正式に捜索に参加出来ないなら、任務のついでとか、帰り道とか、寄り道とか・・・ちょこっと勝手に、捜しちまえばいいんじゃね?」
沈んだ空気を吹き飛ばすかのように、ソウキはあえて明るく振る舞う。
自分自身、ろくに捜索にすら関われないこの状況に不満を抱いてはいる。
だからといって不満を漏らしたところでどうなるものでもない。
ならば自分で勝手にやってしまえばいいのだと、そう考える事にした。
「ついで、ね…おいソウキ。お前もバレるんじゃねーぞ?」
「もちろん」
タツミがニヤリと笑みを浮かべる。ソウキもそれに答えるように笑った。
「よっし!カノン、ブレ公、行くぞ」
「あ、あの、行くってどこに…」
「今日は外部居住区周辺の対アラガミ装甲のチェックと巡回だろ?
…で、そのついでに、ちょーっと足を伸ばして『探し物』する。
ほら、すぐ準備しろって」
「ふっ…了解だ、隊長」
「えーっと・・・ああ!なるほど、了解です!すぐ準備しますねっ」
急に元気の良くなった3人は、足早にその場を離れていってしまう。
残されたソウキはいってらっしゃい、と右手を振りながらその後ろ姿を見送ったのであった。