空にサヨナラ
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「さて…今日は特に急ぎの討伐要請も無いし…どれ行くかな」
ソウキは受付の脇で、ヒバリから渡してもらった今日入ってきたミッションの受注書を見ていた。
ちなみにその反対側ではタツミがいつものようにヒバリに熱心に話しかけている。
大きなミッションについては何日の何時から、とあらかじめ予定が組まれていたりもするが、ゴッドイーターの出動は大半が緊急時だ。
だからアナグラにはいつでも一定数以上のゴッドイーターが待機していることになっているし、そう管理されている。
つまり今日は誰がミッションで誰が居残りか、大雑把にではあるが決まっているのだ。
特に予定が組まれておらず、かつアナグラでの待機組にされていなければ、後は自分の好きなミッションを受けられるようになっている。
「コンゴウ…んー、シユウの素材も欲しいんだけどな…うわ場所が地下街か。それは嫌だわ」
そんな独り言を呟きながら受注書をめくっていると、出撃ゲートの開く音がした。
出撃、とは言っているが結局この通路を帰ってくるから帰還ゲートでもある。どっちでもいい話だが。
その音にふと上に目をやると、開いたゲートの向こうからはシュリとソーマの姿が見える。
ソウキはばさりとカウンターへ受注書の束を置き、2人の元へと向かった。
「お帰り、お二人さん。そうか今日はソーマとの顔合わせだった・・・え?」
シュリが、いきなりソウキに飛びついてきた。あまりに突然すぎて、思わず挙動不審になってしまう。
「え?え、シュリちゃんどうしたのっ?」
問いかけてみたが答えはない。
まさかお前何かやったのか、とソーマに視線を送れば、ふいっと逸らされてしまった。
「・・・が」
「ん?」
「エリック、さんが」
シュリの声はとても小さく、震えていた。そういえばメンバー表に名前のあったはずのエリックの姿が無い。
まさか。
「ソーマ」
「…あぁ」
特に他に何を言った訳でもない。しかし、何が起こったのかは嫌と言うほど分かった。なにせこれが初めてではないのだから。
「そっか…うん。辛かった、な」
自分に抱きついたままのシュリの頭を軽く撫でてやる。
それでも、ここはそれが当たり前に起きる場所で。嫌な話だが決して珍しいことではないのだ。
「おい、ソウキ」
「リンドウ?」
名前を呼ばれて振り返ると、そこにはリンドウが立っていた。シュリもそれに気付いたようで、慌てて離れる。
リンドウはこちらに近寄ると、少し身をかがめて話しかけた。
「シュリ。大丈夫か?」
「あ、はい・・・すいません、平気、です…」
「平気そうには見えねぇな…よし、ちょっと話でもするか」
「え、でも」
「上官命令、だ。いいな?」
少し迷っていた様子だったが、シュリは結局了承したらしかった。
「リンドウ。俺の大事な後輩にセクハラすんなよー」
「バーカ。んなことするか・・・サクヤも一緒だ」
「それなら安心だな」
そんな軽口を叩くと、少しだけシュリが笑う。
行くか、とリンドウがその頭をぽんと叩いて促すと、小さく頷いてシュリは後について歩き出した。
「さてと」
移動用エレベーターに乗った二人を見送ったソウキはくるりと振り返り、そこにずっと立っていたソーマを見た。
「なんだ」
「んや、お前も辛かったかな、と」
「…弱いヤツから死んでいく。当たり前だろうが。
それに、もう慣れた」
「ま、確かに…嫌でも慣れちまうけどさ」
慣れてはいけないはずなのに、それでも日常に寄り添う死に慣れなければ、ここではやっていけない。
仲間の死を受け止められずに精神を病んだやつらも、何人か見てきた。
「よし、ソーマお前この後予定は?」
「特に無い」
「じゃあちょっと付き合えよ。ミッション行く」
「…ああ」
「うし、完了っと」
ソウキは結局ソーマを連れて贖罪の街でのコンゴウ討伐に来ていた。
「あー…だめか。まともなモンなさそ…回収班の持ってくる素材に期待かな…」
コンゴウへ喰らいつく神機を引き抜き、得られた素材を見てみたが望む物は無かった。誰に言うでもなくそう呟くと、ソウキは振り向く。
「さて。随分早く終わっちまったけど…どうする。
ヘリとの合流地点まで行って待つか?」
「…あぁ」
言葉少ないソーマを横目にソウキが歩き出すと、ソーマもその後に続いた。
しばらく無言の時間が続く。ただ足音と担いだ神機の鳴らす小さな音だけが響いていた。
「…なぁ」
「・・・」
ふいに足を止めて、ソウキが声をかける。立ち止まったものの、ソーマからの返事はない。それでもソウキは構わず話を続けた。
「俺は」
埃っぽい風が二人の頬を撫でていく。
「俺はさ、絶対にお前の前で、死なないから」
真っ直ぐにソーマを見て、静かながら強い意思を感じる声でソウキはそう言った。
それでもソーマはなにも答えない。
「…ま、そういう事だから。忘れるなよ」
返事がなくとも、自分の伝えたい事は伝えた。
なんとなくアナグラ内でこんな話をするのも気恥ずかしく、わざわざミッションへと連れ出したのだ。
ソーマは自分の目の前で誰かが死ぬ事が嫌いなのだと、ソウキは知っていた。
いくら慣れたとは言っても、仲間が死ねば傷つくのは当たり前だ。
表に出さずともソーマだって傷つく。表に出さないから、いつも誤解される。
だからソウキは決めていた。
絶対に自分は、ソーマの前で死ぬことがないように、と。
いつからそう思ったのかは、意識していない。腐れ縁というか、なんだかんだでここまでやってきた中で自然とそう思っていたのだ。
それにしても『死なない』なんて少し無責任だったかもしれない。自分達の仕事は常に死と隣り合わせで、いつ命を落としてもおかしくないのだから。
「おいソーマ、さっきの」
なるべく死なないように努力する、に変えるわ。
そう言おうと口を開きかけた時。
「…そうしてくれると、助かる」
ぽん、とソウキの肩を叩いて、横をすり抜け先に歩いて行ってしまったソーマの表情はなんだか照れているように見えて。
それが不器用なソーマなりの、自分の言葉への喜びなのだと理解したソウキは、前を歩く背中を見ながら笑って小さく呟いた。
「こりゃ、絶対に死ねないなぁ…」
沈みつつある夕日の光が、廃墟と彼らを赤く染めていた。