空にサヨナラ
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「お、俺もう無理ですっ…!サクヤさんっ」
「なに言ってるのソウキ。まだまだこれからよ?」
「でも、ホント無理・・・っ!
・・・ぎゃぁぁぁぁぁっ!?」
目前にまで迫っていたオウガテイルの体当たりをモロに食らい、ソウキは吹っ飛ばされた。
なんとか体勢を整え直して追撃は避けたが、既に満身創痍といった様子である。
「もう!新人のコウタ君ですらもう少しまともよ?あなたがそんな調子でどうするの。
ほら、すぐに神機を構え直して」
サクヤにそう言われなんとか神機を持ち直すものの、表情には既にやる気がなかった。
ちなみに今ソウキが手にしているのは銃へと変形させた自分の神機だ。
実はつい先程、もう一人の新人であるシュリとリンドウとの演習任務を終えたばかりである。
アナグラに戻って早々、リンドウは出発直前だったサクヤを見つけると『コイツに銃の扱いを教えてやってくれ』と言ってソウキを押し付けた。
丁度サクヤは新人で遠距離神機を持つコウタと演習に出るところであり、快くそれを受け入れたのだが…
「銃の制動力とか、そういうもの抜きで…
ソウキ、あなたってコントロールがないのね…」
ストレートなサクヤの言葉に、少なからずショックを受けているソウキ。
「仕方ないじゃないですか…俺銃なんて扱ったこと無いんですよ…?」
「それはそうだけど…やっぱり新型を扱う事になったからには、ある程度の技術は必要だと思うわ」
現在地は嘆きの平原と呼ばれているドーナツ状の平野である。こちらも演習任務ということで、討伐対象は比較的小型のアラガミであるオウガテイル1体とコクーンメイデン2体。
先程のゴタゴタでサクヤがオウガテイルを仕留めたので、残りは砲台型のコクーンメイデンだけである。この敵は相手の攻撃範囲内に立ち入りさえしなければ、その場から動くこともないので比較的安全である。3人はその攻撃範囲外から相手を観察しつつ会話をしていた。
「まずはしっかりと遠距離神機の間合いを覚えないとダメよ。近距離武器とは全然違うんだから。
それに、どのタイミングで遠距離と近距離を使い分けるか…まぁ、これは私からはアドバイス出来ないんだけれど」
サクヤが苦笑を浮かべる。
当然と言えば当然、遠近を使い分けて攻撃できるのは今現在、極東支部には2人しかいないのである。可変機構を備えない旧型神機使いではそこはアドバイスしようが無い。
「とにかく、さっき散々乱射したからオラクル切れちゃったでしょう?
とりあえず、そこのコクーンメイデンを倒して補充してくると良いわ」
「はーい…」
ソウキが構えた神機を軽く振って、刀身へと変形させる。それをコウタが興味深そうな目で見ていた。
「あの、ソウキさん」
「ん?なんだコウタ」
「俺、前から気になってたんですけど…それって、どうやって変形させてるんですか?なんかボタンとか押すんですか?」
「いや…念じるというか…こう、変われ!って思うと変わる」
適当な説明に、コウタがなんとも言えない表情でこちらを見てくる。
「…疑ってるな?事実だぞ事実。気になるならシュリちゃんにも聞いてみ、同じこと言うだろうから」
そう言いながらもう一度神機を銃形態へと変化させる。がしゃん、と組み換えを行う音がして神機はまた銃へと変化した。
「でも、これ変化するスピードが遅いんだよな…話じゃ即座の組み換えも出来るらしいから、要修行ってとこか。
うし、じゃちょっくらオラクル回収してきますねー」
再び剣形態へと戻し、コクーンメイデンへと向かって駆け出す。
近距離での針攻撃に気をつけながら斬りつけ、すぐに倒すことが出来た。オラクルもしっかり補給し、忘れずに素材も回収してサクヤとコウタの元に戻る。
「オラクルの補充、完了です」
「よし、じゃあ行きましょうか。残りは1体だけだけど、気を抜かないで。私もサポートするけど、ソウキとコウタ君でなるべく倒すようにしてね」
はーい、と2人声をそろえて返事して、最後の1体を倒すべく平原を走り出した。
その後は、と言えば。
ソウキの放つバレットはことごとく、それはもうわざとやっているんじゃないかと周囲に思わせるほど、敵に当たらなかった。
わざわざエイミングしてまで狙うのだが、なぜか面白いように外れる。
それどころか必死になりすぎてコクーンメイデンの射程距離に入ってしまったソウキが、逆に相手に狙撃され続けるという事態にまでなっていた。
「いいですもう…諦めます。俺はいつも通りショートだけ振り回してます…」
戦闘が終わる頃には、普段なら考えられないほど落ち込んでそうぼやくソウキがいた。
アナグラへと帰ってくると、ソウキは近くのソファーにばたんと倒れこんだ。
普段なら何でもない任務、というか準備運動程度の敵だったのにやたらと疲れた。慣れない事はするもんじゃない、と小さく呟く。
『新型』を扱う事になったからには、それを生かした戦い方をしなければならない事は十分理解しているつもりだ。
1人で遠近両方の攻撃が出来るなら、作戦の幅は広がるだろうし、今までは複数人で行っていたミッションでも1人でこなすことが出来るかもしれない。
ただ、それが分かっていても上手く扱うことができないのはどうしようもない事実で。
「最初から新型使いだったら、まだマシだったのかもしれないんだけどなぁ」
見事なまでの自分のコントロールの無さを思い出し、思わず苦笑が浮かぶ。
「…なに笑ってやがる」
「っ!?そ、ソーマ?」
急に上から声が降ってきたことに驚き、思わず寝転がったソファーから落ちそうになる。
声のした方を向けば、不機嫌そうな顔で仁王立ちしてこちらを見下ろすソーマの姿があった。
「あ、いや…ちょっとな」
「・・・・・」
適当に誤魔化そうとしたのだが、それでは納得してもらえそうになかった。ソーマの目がすっと細くなってこちらを睨みつけてくる。
「…うーん。新型の期待は重いな、と思ってさ」
「あぁ?」
「やっぱさ、新型を扱えるようになったからには、今まで通りって訳には行かないじゃん」
自分が果たすべき役割や自分の立ち位置、それら全てが、大きく形を変えていく。
同時に自分に課せられていく期待と、義務。
それに応えようとは思うものの、上手く扱うことのできない自分に対する焦りと苛立ち。
「どうしたら、なにをすれば、上手くいくのかなって。ちょっと考え込んだ。うん、それだけ!」
言って、勢いよくソファーから飛び起きた。
「ソーマに話したらちょっとスッキリしたわ。サンキュ」
「・・・お前が」
ソーマが何か言いかけて、ソウキは歩き出そうとした足を止める。
「新型だろうがなんだろうが…お前はお前だろ。
自分の思うとおりに、やればいい。それだけだ」
それだけ言って、ソーマはふいっと立ち去ってしまった。呼び止める間もなく、その背中は人の多い夕方のエントランスの人ごみへと消えてしまう。
「…俺は俺、か。確かにそうだよな」
ふと、自分がシュリに言ったことを思い出した。
『俺たちがサポートする――』
そうだ、自分は1人じゃない。頼れる仲間だってちゃんといるのだ。
「はは、そっか。1人でウダウダ考えることは無かったな」
もしも不安な事があるなら、それを話して協力してもらえば良いのだ。きっと、分かってくれる、と思う。
「よし。明日からまたお仕事…頑張りますか!」
大きく伸びをして、ソウキは歩き出した。