呪われた者同士
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「車に慣れてるんだな」
「少しだけよ。走り屋をしてるわけでもないし、知識もそこまでないの」
「見た感じ、かなり愛されてるんだな。このワンエイティ」
「嬉しいわ、もう10年以上も乗ってるの」
「いいドライバーといい技術者に出会えたんだな」
そう言って180sxのボンネットの淵を撫でた涼介。
「ッ!?」
だが、触れた瞬間に感じたものに涼介は咄嗟に手を離した。
すると最初見た時は見えなかった黒色のオーラが車を包み込んでいた。
それはまるで涼介を威嚇しているようだった。
涼介がそれ以上触れないことがわかったのか、次に瞬きをした時にはオーラは消えていた。
「この、車……」
「ん?どうしたの?」
「この車は、誰かから貰ったものなのか?」
「……よく分かったわね。昔の、恋人からもらった車なの」
「そう、だったのか」
その一言で涼介は先程のオーラがなんだったのか、そしてその昔の恋人がどうなったのかも全て悟った。
きっと、彼女の恋人は死んだのだ。
その時の彼女への想いがこの車には詰まってる。
この車が、彼女を守っている。
いや、彼女を呪っていると言った方が正しいのかもしれない。
彼女以外の人間がこの車に触れることを許さないかのような威嚇。
彼女は、とてつもなく愛されていたのだろう。
それに気づいてないのか、澪は悲しそうに笑いながらルーフを撫でて溜息を吐いた。
「ずーっと、一緒に走れると思ってたの。そんなわけないのにね」
その一言で涼介は先程の考えが事実であると確信した。
まるで、恋人に触れるかのように。大切な人といるかのように。
その車に触れていた。
「車に寿命はつきものだ。……人間と同じさ」
「ふふっ、そうね。ところで、涼介さんはどうしてここに?」
「たまたまさ。俺も走り屋をやってるもんでね」
「へぇ、ここでも走り屋はちゃんといるのね」
澪はルーフに両腕を乗せてその上に顎を置いた。
その視線は何処か遠くを見つめていた。
「その様子じゃ帰れないだろ?俺が送っていくよ」
「とても嬉しい提案だけれど、私一人では行けないよ」
そう言って澪は目を伏せた。
その憂いを帯びた表情に涼介は何故か己の鼓動が速くなるのを感じた。
「私はこの子と一緒にいなければいけないの。…まだ、ちゃんと廃車にもできてない」
「じゃあ、キャリアカーを呼ぼうか」
「いいの?」
「勿論。澪さんがその車をどれだけ大切にしているかわかったからね」
涼介は少し離れて携帯を取り出して何処かへと電話をし始めた。
澪は爽やかな香りと夜の山の香りに包まれてぼーっとしていた。
「澪さん、すぐに」
「ごめんね、守ってくれてありがとう」
涼介はその独り言を聞いて、その先を言うのを躊躇った。
澪はハッとすると近づいてきた涼介に笑顔を向けた。
「来てもらえそう?」
「ああ、直ぐ来るそうだ」
「そうなの、ありがとうね何から何まで」
「いいんだ。ただ、帰りは俺に送らせてくれないか?」
「ここまできたら、お願いするしかないわね」
澪はきちんと立ち、涼介に丁寧に頭を下げた。
「お願いします。それと、私の大切なワンエイティを助けてくれてありがとう」
「頭を上げてくれ。俺がやりたくてやったんだ、と言っただろ?」
「ふふ、そうね。貴方はとっても賢い人だわ」
「褒め言葉としてもらっておこう」
そこから二人は他愛もない会話をしてキャリアカ―の到着を待った。
萩野 澪。27歳女性で社会人。
埼玉で生まれ育ったが、仕事の関係で群馬へと引っ越してきた。
愛車は黒色の180sx 。
細かいメンテナンスは知り合いの整備士に任せている。
高橋涼介。23歳男性で大学生。
群馬大学医学部に入り、臨床心理学を専攻している。
愛車は白色のFC3S。
プロジェクトDという走り屋のチームを結成しており、司令塔を務めている。
そんな風に二人は互いを理解し、打ち解けてきた時。
キャリアカーが上がってくる音が聞こえた。
「来たみたいだな」
「あのキャリアカーは涼介さんの知り合い?」
「そうだよ。……それで、澪さん」
「ん?」
「この車、廃車に出すつもりなんだろ?」
澪は涼介に向けていた視線を落とす。
その顔はお世辞にも明るいとは言えなかった。
「少しだけよ。走り屋をしてるわけでもないし、知識もそこまでないの」
「見た感じ、かなり愛されてるんだな。このワンエイティ」
「嬉しいわ、もう10年以上も乗ってるの」
「いいドライバーといい技術者に出会えたんだな」
そう言って180sxのボンネットの淵を撫でた涼介。
「ッ!?」
だが、触れた瞬間に感じたものに涼介は咄嗟に手を離した。
すると最初見た時は見えなかった黒色のオーラが車を包み込んでいた。
それはまるで涼介を威嚇しているようだった。
涼介がそれ以上触れないことがわかったのか、次に瞬きをした時にはオーラは消えていた。
「この、車……」
「ん?どうしたの?」
「この車は、誰かから貰ったものなのか?」
「……よく分かったわね。昔の、恋人からもらった車なの」
「そう、だったのか」
その一言で涼介は先程のオーラがなんだったのか、そしてその昔の恋人がどうなったのかも全て悟った。
きっと、彼女の恋人は死んだのだ。
その時の彼女への想いがこの車には詰まってる。
この車が、彼女を守っている。
いや、彼女を呪っていると言った方が正しいのかもしれない。
彼女以外の人間がこの車に触れることを許さないかのような威嚇。
彼女は、とてつもなく愛されていたのだろう。
それに気づいてないのか、澪は悲しそうに笑いながらルーフを撫でて溜息を吐いた。
「ずーっと、一緒に走れると思ってたの。そんなわけないのにね」
その一言で涼介は先程の考えが事実であると確信した。
まるで、恋人に触れるかのように。大切な人といるかのように。
その車に触れていた。
「車に寿命はつきものだ。……人間と同じさ」
「ふふっ、そうね。ところで、涼介さんはどうしてここに?」
「たまたまさ。俺も走り屋をやってるもんでね」
「へぇ、ここでも走り屋はちゃんといるのね」
澪はルーフに両腕を乗せてその上に顎を置いた。
その視線は何処か遠くを見つめていた。
「その様子じゃ帰れないだろ?俺が送っていくよ」
「とても嬉しい提案だけれど、私一人では行けないよ」
そう言って澪は目を伏せた。
その憂いを帯びた表情に涼介は何故か己の鼓動が速くなるのを感じた。
「私はこの子と一緒にいなければいけないの。…まだ、ちゃんと廃車にもできてない」
「じゃあ、キャリアカーを呼ぼうか」
「いいの?」
「勿論。澪さんがその車をどれだけ大切にしているかわかったからね」
涼介は少し離れて携帯を取り出して何処かへと電話をし始めた。
澪は爽やかな香りと夜の山の香りに包まれてぼーっとしていた。
「澪さん、すぐに」
「ごめんね、守ってくれてありがとう」
涼介はその独り言を聞いて、その先を言うのを躊躇った。
澪はハッとすると近づいてきた涼介に笑顔を向けた。
「来てもらえそう?」
「ああ、直ぐ来るそうだ」
「そうなの、ありがとうね何から何まで」
「いいんだ。ただ、帰りは俺に送らせてくれないか?」
「ここまできたら、お願いするしかないわね」
澪はきちんと立ち、涼介に丁寧に頭を下げた。
「お願いします。それと、私の大切なワンエイティを助けてくれてありがとう」
「頭を上げてくれ。俺がやりたくてやったんだ、と言っただろ?」
「ふふ、そうね。貴方はとっても賢い人だわ」
「褒め言葉としてもらっておこう」
そこから二人は他愛もない会話をしてキャリアカ―の到着を待った。
埼玉で生まれ育ったが、仕事の関係で群馬へと引っ越してきた。
愛車は黒色の
細かいメンテナンスは知り合いの整備士に任せている。
高橋涼介。23歳男性で大学生。
群馬大学医学部に入り、臨床心理学を専攻している。
愛車は白色のFC3S。
プロジェクトDという走り屋のチームを結成しており、司令塔を務めている。
そんな風に二人は互いを理解し、打ち解けてきた時。
キャリアカーが上がってくる音が聞こえた。
「来たみたいだな」
「あのキャリアカーは涼介さんの知り合い?」
「そうだよ。……それで、澪さん」
「ん?」
「この車、廃車に出すつもりなんだろ?」
澪は涼介に向けていた視線を落とす。
その顔はお世辞にも明るいとは言えなかった。