元JKと元あむぴ
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地獄を越えて数時間。降谷さんの指揮下にある作業班の会議に同級生にして大恩人(彼の懇切丁寧な指導がなければ大学のランクは二つほど下がっていた)の現役私立探偵がどういう訳か同席していたけど、先輩方の誰も突っ込まないので私も何も言わないことにした。触らぬ神に何とやら、である。工藤くんはドン引きとしか言いようのない顔でおずおずと呟いた。
「……つうか公安大丈夫なんですか?顔半分死んでるんですけど」
「これくらいはよくあることだ、問題ない」
そう言い切る降谷さん、目の下の隈がえげつないです。あのあと何だかんだで六時間たっぷり睡眠をとった私は割としゃっきり元気いっぱいだけど降谷さん含め諸先輩方並びに上司の皆様はたぶんそうでもないだろう。なんか申し訳ない気もする。そう呟くと風見さんが首を横に振った。
「いや、新人の君こそしっかり休むべきだ。自分の限界を掴めないうちに無理をするのはよくない」
「風見さん……チョコレート魔人が行き過ぎて次の検診で引っかかるんじゃないかって陰で言われてるあなたにだけは言われたくなかったですけどありがとうございます、優しい上司に恵まれて私幸せ」
「ちょ、なんでそれを……」
「……風見、僕は言ったよな?チョコレートは食事にはならないと」
「い、いえ、その……少々立て込んでいるときのエネルギー補給としてですね……」
そして風見さんは何の申し開きも許されずに降谷‘sブートキャンプ入りが確定したらしい。具体的に言うと降谷さんに栄養管理から運動管理までガチガチにされるやつらしい。何てそれお母さん。やってることはハートマン軍曹に練乳ひとたらしかけたくらいのやつらしいけど。降谷さんとハートマン軍曹の違いは実質スラングの有無と顔くらいだそうだ。つまり鬼具合は変わらない。
そして降谷さんは軽く腕を組んで徐に辺りを見渡し口を開いた。
「……さて、今回の捜査により確保した残党だが、押収した資料と取り調べで奴らの資金源の割り出しに成功した。クロの可能性は九十パーセント、ただし証拠は出ていない」
そう、今回ド派手なカーチェイスの末に確保をした通称「カラス」こと某組織の残党は、違法薬物の販売で資金を調達していたらしい。そしてその一件に名探偵もひょんな形で関係していたのである。
「――別件の依頼でここに行った時に妙だったんですよ。そのときは依頼人が同行していたこともあって深入りはできませんでしたが、違法薬物絡みなのは推測できたので念の為降谷さんに連絡したら、こう」
そんな工藤くんの連絡ですべては繋がった。その辺りは以前から薬物取引の噂のあった地域であり、調べればカラスの残党との接触が多かった売人が拠点にしていることがわかったのだ。工藤くんからの連絡があったライブハウスの近辺を調べればざくざくと怪しい背景事情が垣間見え、そして今回の会議に至った。
「……正直工藤くんのその情報は非常に助かった。だがそれ以上は危険なので深入りしないように。君は自分で思ってる以上に顔が売れているんだからな」
「分かってますよ。だからここに情報持って来たんじゃないですか」
ちなみに工藤くんは新婚さんである。大学を卒業するや否や蘭ちゃんにプロポーズ、式は同級生や友人が集まり大変賑やかに執り行われた。FBIやCIAからの祝電に会場がざわめいたのは記憶に新しい。そして毛利蘭改め工藤蘭ちゃんは第一子を妊娠中である。
――つまり今は絶対に危険なことはできない、ってことだろう。工藤くんも高校時代はある事件を追いかけているうちに深入りしすぎてFBIへ捜査協力兼保護されたこともあったそうで、その頃を考えると彼も大人になったものだ。
「ああ、協力に感謝するよ。君の情報は目いっぱい活用させてもらう。――つまりここで我々が行うべきことは証拠固め、ありとあらゆる手段を用いて奴らと売人のつながり、そして違法薬物密売の証拠を押収する。いいな」
「了解!」
警視庁公安部の降谷さん直属の作業班はバラエティ豊かな人材が揃っている。ハッキングを始めとする情報収集のプロから潜入の神と称えられる圧倒的モブ顔捜査員、コミュ力おばけで協力者の獲得と管理が異常に上手い人たらしまで様々だ。そこの実質的リーダーを任されている風見さんは本当にすごいと思うしドMじゃないと務まらないと思う。配属時に「降谷さんの作業班は大変だろうが学ぶことも多いはずだ」と言われたのは本当に嘘じゃない。ありとあらゆる尖った技術持ちからそれらを纏める管理役まで多種多様な学びがある。そして何よりそこに君臨する圧倒的万能のイケメン降谷さんである。大体あの人ひとりいればなんとかなるといえばなるのだからすごい。
私もすぐにああはなれなくても作業班の一人として一戦力になるくらいは目指したい。まだまだひよっこなのだけど。
「……風見さん、そうなると今回も私は風見さんのサポートで?」
この間のカーチェイス確保大作戦も私はギリギリまで風見さんと後方業務に当たっていた。所謂予備兵力というやつで、最終局面でバイクと共に投入された。結果的に一台廃車にしたけどこの手で一人確保できたのは自分でも正直びっくりした。風見さんもびっくりして褒めてくれた後に廃車になったバイクを見て頭を抱えていた。
だからまたそんな感じかなあ、と思って小声で尋ねた私の疑問に返事をしたのはまさかの降谷さんだった。
「いや、今回お前には潜入してもらう」
「……え?」
潜入。つまりそれは数年前まで降谷さんがやってたアレ、である。
「二代目あむぴ……?」
「なんでそうなるんだ、普通に潜入だ。客層がちょうどお前くらいなんだ、不審に思われない。それにまだお前は公安警察として顔が割れていないからな」
……なるほど?なんだろうか。でも私は配属半年のぺーぺーである。こんなのに任せて本当にいいのだろうか。変装も演技もど素人なのに?そりゃ研修で叩きこまれはしたけれどさ。そんな不安を口にすると降谷さんは黙って首を横に振った。
「お前はそのままで十分潜入できる、安心しろ」
「そんな」
「……俺もそう思うぜ。大丈夫、オメーを見て潜入捜査官と思う奴はいない」
「工藤くんまで!?ねえちょっとそれはひどくないかな?」
ただ風見さんだけは少し心配そうな顔をしていた。
「……降谷さん、確かに任務自体は刑事部でも良く行われる張り込みレベルのものですが、新人の佐々木に軸を担わせるのはさすがに……」
「問題はない。……こいつの度胸と能力、上に売り込むにはいい機会だ。いやらしい言い方にはなるが点数稼ぎはやれる時にやっておいた方が後々自分のためになる」
「ああ……彼女も稼いだ点数を一瞬でご破算にしそうですしね……」
「え、風見さんそれどういう意味です……?」
風見さんに返事の代わりにバイクの修理見積もりを突きつけられて私は口をつぐまざるを得なかったし、笑ってた降谷さんもRX-9で同じことを食らって二人揃って黙る羽目になった。点数稼ぎ大事、わたし覚えた。
「……つうか公安大丈夫なんですか?顔半分死んでるんですけど」
「これくらいはよくあることだ、問題ない」
そう言い切る降谷さん、目の下の隈がえげつないです。あのあと何だかんだで六時間たっぷり睡眠をとった私は割としゃっきり元気いっぱいだけど降谷さん含め諸先輩方並びに上司の皆様はたぶんそうでもないだろう。なんか申し訳ない気もする。そう呟くと風見さんが首を横に振った。
「いや、新人の君こそしっかり休むべきだ。自分の限界を掴めないうちに無理をするのはよくない」
「風見さん……チョコレート魔人が行き過ぎて次の検診で引っかかるんじゃないかって陰で言われてるあなたにだけは言われたくなかったですけどありがとうございます、優しい上司に恵まれて私幸せ」
「ちょ、なんでそれを……」
「……風見、僕は言ったよな?チョコレートは食事にはならないと」
「い、いえ、その……少々立て込んでいるときのエネルギー補給としてですね……」
そして風見さんは何の申し開きも許されずに降谷‘sブートキャンプ入りが確定したらしい。具体的に言うと降谷さんに栄養管理から運動管理までガチガチにされるやつらしい。何てそれお母さん。やってることはハートマン軍曹に練乳ひとたらしかけたくらいのやつらしいけど。降谷さんとハートマン軍曹の違いは実質スラングの有無と顔くらいだそうだ。つまり鬼具合は変わらない。
そして降谷さんは軽く腕を組んで徐に辺りを見渡し口を開いた。
「……さて、今回の捜査により確保した残党だが、押収した資料と取り調べで奴らの資金源の割り出しに成功した。クロの可能性は九十パーセント、ただし証拠は出ていない」
そう、今回ド派手なカーチェイスの末に確保をした通称「カラス」こと某組織の残党は、違法薬物の販売で資金を調達していたらしい。そしてその一件に名探偵もひょんな形で関係していたのである。
「――別件の依頼でここに行った時に妙だったんですよ。そのときは依頼人が同行していたこともあって深入りはできませんでしたが、違法薬物絡みなのは推測できたので念の為降谷さんに連絡したら、こう」
そんな工藤くんの連絡ですべては繋がった。その辺りは以前から薬物取引の噂のあった地域であり、調べればカラスの残党との接触が多かった売人が拠点にしていることがわかったのだ。工藤くんからの連絡があったライブハウスの近辺を調べればざくざくと怪しい背景事情が垣間見え、そして今回の会議に至った。
「……正直工藤くんのその情報は非常に助かった。だがそれ以上は危険なので深入りしないように。君は自分で思ってる以上に顔が売れているんだからな」
「分かってますよ。だからここに情報持って来たんじゃないですか」
ちなみに工藤くんは新婚さんである。大学を卒業するや否や蘭ちゃんにプロポーズ、式は同級生や友人が集まり大変賑やかに執り行われた。FBIやCIAからの祝電に会場がざわめいたのは記憶に新しい。そして毛利蘭改め工藤蘭ちゃんは第一子を妊娠中である。
――つまり今は絶対に危険なことはできない、ってことだろう。工藤くんも高校時代はある事件を追いかけているうちに深入りしすぎてFBIへ捜査協力兼保護されたこともあったそうで、その頃を考えると彼も大人になったものだ。
「ああ、協力に感謝するよ。君の情報は目いっぱい活用させてもらう。――つまりここで我々が行うべきことは証拠固め、ありとあらゆる手段を用いて奴らと売人のつながり、そして違法薬物密売の証拠を押収する。いいな」
「了解!」
警視庁公安部の降谷さん直属の作業班はバラエティ豊かな人材が揃っている。ハッキングを始めとする情報収集のプロから潜入の神と称えられる圧倒的モブ顔捜査員、コミュ力おばけで協力者の獲得と管理が異常に上手い人たらしまで様々だ。そこの実質的リーダーを任されている風見さんは本当にすごいと思うしドMじゃないと務まらないと思う。配属時に「降谷さんの作業班は大変だろうが学ぶことも多いはずだ」と言われたのは本当に嘘じゃない。ありとあらゆる尖った技術持ちからそれらを纏める管理役まで多種多様な学びがある。そして何よりそこに君臨する圧倒的万能のイケメン降谷さんである。大体あの人ひとりいればなんとかなるといえばなるのだからすごい。
私もすぐにああはなれなくても作業班の一人として一戦力になるくらいは目指したい。まだまだひよっこなのだけど。
「……風見さん、そうなると今回も私は風見さんのサポートで?」
この間のカーチェイス確保大作戦も私はギリギリまで風見さんと後方業務に当たっていた。所謂予備兵力というやつで、最終局面でバイクと共に投入された。結果的に一台廃車にしたけどこの手で一人確保できたのは自分でも正直びっくりした。風見さんもびっくりして褒めてくれた後に廃車になったバイクを見て頭を抱えていた。
だからまたそんな感じかなあ、と思って小声で尋ねた私の疑問に返事をしたのはまさかの降谷さんだった。
「いや、今回お前には潜入してもらう」
「……え?」
潜入。つまりそれは数年前まで降谷さんがやってたアレ、である。
「二代目あむぴ……?」
「なんでそうなるんだ、普通に潜入だ。客層がちょうどお前くらいなんだ、不審に思われない。それにまだお前は公安警察として顔が割れていないからな」
……なるほど?なんだろうか。でも私は配属半年のぺーぺーである。こんなのに任せて本当にいいのだろうか。変装も演技もど素人なのに?そりゃ研修で叩きこまれはしたけれどさ。そんな不安を口にすると降谷さんは黙って首を横に振った。
「お前はそのままで十分潜入できる、安心しろ」
「そんな」
「……俺もそう思うぜ。大丈夫、オメーを見て潜入捜査官と思う奴はいない」
「工藤くんまで!?ねえちょっとそれはひどくないかな?」
ただ風見さんだけは少し心配そうな顔をしていた。
「……降谷さん、確かに任務自体は刑事部でも良く行われる張り込みレベルのものですが、新人の佐々木に軸を担わせるのはさすがに……」
「問題はない。……こいつの度胸と能力、上に売り込むにはいい機会だ。いやらしい言い方にはなるが点数稼ぎはやれる時にやっておいた方が後々自分のためになる」
「ああ……彼女も稼いだ点数を一瞬でご破算にしそうですしね……」
「え、風見さんそれどういう意味です……?」
風見さんに返事の代わりにバイクの修理見積もりを突きつけられて私は口をつぐまざるを得なかったし、笑ってた降谷さんもRX-9で同じことを食らって二人揃って黙る羽目になった。点数稼ぎ大事、わたし覚えた。
