「遊び半分でハッキングしてたら同級生と入籍していた」
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本人目の前にしてのハッキングといいくすぐり勝負といい、その日の午後は非常に無駄な時間を過ごした。間もなく三十路突入カウントダウンの我々にその後夕食の準備をする気力体力はなく(降谷くんはあったのかもしれないけど)、珍しくレトルト食品メインのご飯となった。非常食としておいてあったレトルトのハンバーグ咀嚼しながら降谷くんが呟いた。
「……久しぶりにこういうの食べたな」
「あんなに忙しいのによくやるよね。なんだっけ、前に日本酒フランベだっけ?そういうのとかさ」
「そう。料理は基本だからな。それにこの国のものはやっぱり好きだから」
降谷くんの日本愛も大概だと思う。彼の何がそこまでこの国への愛を駆り立てるのかさっぱりわからない。私は別に嫌いではないけどそこまで好きでもなくて、ワールドカップやオリンピックのときだけややテンションのあがるタイプの人間だ。
「……昔ヒロと組んでたときはよく食べた。あいつが用意すると大体レトルトでさ、しかも海外だと日本食とかまず無理で。すごい色のカレーとかをなぜかバケットで食わされた。しかもたまの外食も幹部連中の好みのとこばっかで」
「あー、なんかすごいお洒落なところ連れてかれそうだよね。だって幹部の一人がクリス・ヴィンヤードでしょ?絶対セレブ食だわ」
「日本に戻ったらまず白米食べ放題の店を探した」
「……大変だったねえ」
「でも、あいつがいたからな。……死んでからは一人のことも多くて、時間が許せば好きなようにできたけど」
ときどき見せる迷子のような目。元が綺麗な色をしているからガラス玉のように見えてどきりとする。――どこかに行ってしまうんじゃないか、なんて思うのはいつだって私の方。
「結構一人で食べるのって虚しくて、作ったものも風見やお前にやることが多かった」
「……まあ、そうだよね」
「誰かと食べるとこんなのでも美味いと思うんだよな。……不思議なことに」
一人ぼっちのご飯は寂しい。もしかして降谷くんがポアロに私を呼んだのはそう言う理由もあったのかもしれない。ちょっと自惚れ過ぎかなっても思うけど。でも実際その通りで。一人で作って一人で食べるハムサンドはむなしかった。でも今はまったく手のかかっていないレトルトハンバーグと冷凍マッシュポテトが不思議と美味しい。
「……そういうものじゃない?だって梓さんのカラスミパスタは梓さんがいるから美味しいし」
「ポアロはまた今度な。あそこ、組織の残党がうろついてる」
「それ大丈夫なの?梓さんとか、あと蘭ちゃんとか」
「逆にそこに張り込んで片っ端から捕まえてる。コナンくんも片っ端からボール叩きこんでるようだな。この分だと来週頃にはむしろ寄り付かれなくなるな」
「まあそうだね……。じゃあさ、」
「来週には連れてってやる。一応は本業の方でやっていけそうだから辞めるって体で話は済ませてあるしな」
ポアロは居心地がよくて、そこに溶け込む降谷くんも楽しそうだった。最後まで仮面をかぶらなきゃいけないのはちょっぴり寂しくもあったけれど。でもまあ、それは仕方ないこと。梓さんたちのためにも。
「了解。じゃあ久しぶりに安室さんの恋人役ね」
「いや。……婚約者役で」
しばしの沈黙。婚約者ってなんだっけ。
「……すっ飛ばしてるわ。もう既に婚約じゃないわ」
「まあとりあえずは指輪買いに行こう」
「えー、なんか指輪ってタイピングの邪魔になりそう……」
「ロマンの欠片もないな」
「いつの間にか入籍させてた人に言われたくないよ。……まあ出来れば細身のがいいかなあ。つけてるの気にならなそうだし」
「却下。だってそれじゃ意味ない」
「意味?何の?」
「……つけてるの気になればその……俺のだって意識するだろ」
「高校生のインスタか。……いやほんとそれ聞いてますます華奢系にしたくなった。むしろピアスにしよ、ピアス。最近あるみたいだよ」
「やだ。俺開けてないし。というかお前塞がってるんじゃないのか?つけてるの見たことないし」
「別にこれから開け直すし……あ、じゃあ腕時計とかどう?いつでもつけられるよ?」
「それでまたそこに発信機でも仕込むのか」
「……やだなーそんなことしないよー」
仕込むのならスマホにする。なぜならスマホはGPS機能にマイクにカメラに使える機能がざっくざく、勿論警戒はされてるだろうけどそこだけは私の方が上だ。――だから捕まった訳で。
降谷くんが、いや零くんが私の左手を取った。薬指をゆっくりと撫でる。そこにはめる指輪に夢を持ったのなんてもう十年近く前のことで忘れていたけれど。もうそんな憧れは自分の中にないと思っていたけれど。
「――指輪、受け取ってくれるか?」
「……零くんもたまにはつけてね」
そう言ったらぱあっと笑ってもちろん、と頷いたので、そんな顔するならこの人との結婚も悪くないかなあ、なんて思っちゃう私は大概流されやすいチョロ人間だと思う。でもそんな人間でもこの人は好きだって、必要だって言ってくれたんだからこの手を離さずに掴んでいようと思う。ずっと。この先も。
『遊び半分でハッキングしてたら同級生に捕まった』・完
「……久しぶりにこういうの食べたな」
「あんなに忙しいのによくやるよね。なんだっけ、前に日本酒フランベだっけ?そういうのとかさ」
「そう。料理は基本だからな。それにこの国のものはやっぱり好きだから」
降谷くんの日本愛も大概だと思う。彼の何がそこまでこの国への愛を駆り立てるのかさっぱりわからない。私は別に嫌いではないけどそこまで好きでもなくて、ワールドカップやオリンピックのときだけややテンションのあがるタイプの人間だ。
「……昔ヒロと組んでたときはよく食べた。あいつが用意すると大体レトルトでさ、しかも海外だと日本食とかまず無理で。すごい色のカレーとかをなぜかバケットで食わされた。しかもたまの外食も幹部連中の好みのとこばっかで」
「あー、なんかすごいお洒落なところ連れてかれそうだよね。だって幹部の一人がクリス・ヴィンヤードでしょ?絶対セレブ食だわ」
「日本に戻ったらまず白米食べ放題の店を探した」
「……大変だったねえ」
「でも、あいつがいたからな。……死んでからは一人のことも多くて、時間が許せば好きなようにできたけど」
ときどき見せる迷子のような目。元が綺麗な色をしているからガラス玉のように見えてどきりとする。――どこかに行ってしまうんじゃないか、なんて思うのはいつだって私の方。
「結構一人で食べるのって虚しくて、作ったものも風見やお前にやることが多かった」
「……まあ、そうだよね」
「誰かと食べるとこんなのでも美味いと思うんだよな。……不思議なことに」
一人ぼっちのご飯は寂しい。もしかして降谷くんがポアロに私を呼んだのはそう言う理由もあったのかもしれない。ちょっと自惚れ過ぎかなっても思うけど。でも実際その通りで。一人で作って一人で食べるハムサンドはむなしかった。でも今はまったく手のかかっていないレトルトハンバーグと冷凍マッシュポテトが不思議と美味しい。
「……そういうものじゃない?だって梓さんのカラスミパスタは梓さんがいるから美味しいし」
「ポアロはまた今度な。あそこ、組織の残党がうろついてる」
「それ大丈夫なの?梓さんとか、あと蘭ちゃんとか」
「逆にそこに張り込んで片っ端から捕まえてる。コナンくんも片っ端からボール叩きこんでるようだな。この分だと来週頃にはむしろ寄り付かれなくなるな」
「まあそうだね……。じゃあさ、」
「来週には連れてってやる。一応は本業の方でやっていけそうだから辞めるって体で話は済ませてあるしな」
ポアロは居心地がよくて、そこに溶け込む降谷くんも楽しそうだった。最後まで仮面をかぶらなきゃいけないのはちょっぴり寂しくもあったけれど。でもまあ、それは仕方ないこと。梓さんたちのためにも。
「了解。じゃあ久しぶりに安室さんの恋人役ね」
「いや。……婚約者役で」
しばしの沈黙。婚約者ってなんだっけ。
「……すっ飛ばしてるわ。もう既に婚約じゃないわ」
「まあとりあえずは指輪買いに行こう」
「えー、なんか指輪ってタイピングの邪魔になりそう……」
「ロマンの欠片もないな」
「いつの間にか入籍させてた人に言われたくないよ。……まあ出来れば細身のがいいかなあ。つけてるの気にならなそうだし」
「却下。だってそれじゃ意味ない」
「意味?何の?」
「……つけてるの気になればその……俺のだって意識するだろ」
「高校生のインスタか。……いやほんとそれ聞いてますます華奢系にしたくなった。むしろピアスにしよ、ピアス。最近あるみたいだよ」
「やだ。俺開けてないし。というかお前塞がってるんじゃないのか?つけてるの見たことないし」
「別にこれから開け直すし……あ、じゃあ腕時計とかどう?いつでもつけられるよ?」
「それでまたそこに発信機でも仕込むのか」
「……やだなーそんなことしないよー」
仕込むのならスマホにする。なぜならスマホはGPS機能にマイクにカメラに使える機能がざっくざく、勿論警戒はされてるだろうけどそこだけは私の方が上だ。――だから捕まった訳で。
降谷くんが、いや零くんが私の左手を取った。薬指をゆっくりと撫でる。そこにはめる指輪に夢を持ったのなんてもう十年近く前のことで忘れていたけれど。もうそんな憧れは自分の中にないと思っていたけれど。
「――指輪、受け取ってくれるか?」
「……零くんもたまにはつけてね」
そう言ったらぱあっと笑ってもちろん、と頷いたので、そんな顔するならこの人との結婚も悪くないかなあ、なんて思っちゃう私は大概流されやすいチョロ人間だと思う。でもそんな人間でもこの人は好きだって、必要だって言ってくれたんだからこの手を離さずに掴んでいようと思う。ずっと。この先も。
『遊び半分でハッキングしてたら同級生に捕まった』・完
