「だからその手を捕まえる」
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施設襲撃の明朝から行われた電撃作戦は、昼過ぎの今、半ばまでは成功していた。最大目標であったラムの確保に成功し、幹部も遠距離攻撃を得意とするスナイパーはおおむね無力化に成功した。だがあくまで半ば、である。組織の拠点の一つであった廃工場から赤井の車に飛び乗り脱出しながらコナンは軽く舌打ちをした。
「ジンは一筋縄ではいかなかったか……!」
「ウォッカに手傷を負わせたはいいが共々逃げられた。……奴は周囲を信用せず自分だけで事を運ぶクセがある。結果的に単独での作戦遂行能力は非常に高い。……厄介だな」
「ああ。ところでベルモットは……」
「君と爆発に巻き込まれたんだったな。生きている。ジョディが捕え病院に搬送したそうだ」
「……あいつ、なぜかあの爆発の直前に俺を庇った。友人の息子だから、にしたって……」
「その理由は分からん。だがDNAの簡易鑑定で九十パーセント本人と確定した。組織側の変装術は封じられたとみていいだろう」
古参の大幹部の一人、ベルモットは確保に成功した。爆発に巻き込まれ重傷を負い今も治療を受けているが、命に別状はないらしい。だがもう一人の古参幹部の行方はいまだに知れていない。車にハンズフリーの状態で固定されたスマートフォンには絶え間なく情報が流れ込んでくる。
「――キールの方は上手く事が運んだようだ」
「ああ、裏切り者とバレたことを利用して狙撃手を引きつけてくれたんだっけ。……無事?」
「勿論。バイクで壮絶なチェイスの末にキャンティに重傷を負わせ、コルンを跳ね飛ばして確保したそうだ」
「……あの人もなかなかこう、すごいよね」
「裏切り者の手首を噛み砕いて銃を奪い撃ち殺した、そんな話が信用されるくらいにはな」
今のところこの一連の騒ぎはキールこと水無玲奈にの裏切りによるものと組織は見ているらしい。FBIと通じ赤井秀一と謀って今回の件に及んだ、と。結果的に主だった戦闘員は彼女の方に集中し、付近で待ち構えていたCIAとFBIに確保された。日頃は決して仲の良い組織同士ではないが、彼女の弟の保護や彼女自身の潜入にFBIが一枚噛んでいることもあってこの協力体制は作られた。罠と気づいて脱出を図ったキャンティとコルンは水無本人がバイクで追跡をかけ力技で押さえ込んだとか。結果的にこの大作戦もFBI主導であると思われているようだ。
「……公安の方は?」
「順調だ。さすがは彼らのホームグラウンド、リストにあった構成員の八割を特定、そして半数を確保しているそうだ」
「じゃああとはジンを捕えれば……」
コナンがそう呟いたその時、スマートフォンがけたたましく鳴り、着信を告げた。公安部からだ。運転中の赤井に代わって操作すると、何度か顔を合わせたことのある公安刑事、風見の声。彼はあまりに意外なことを告げた。
『……降谷さんが意図的に自身の情報を組織側に流しました』
「え!?」
思わず赤井の顔を見る。前方を見据えたまま彼は軽く舌打ちをした。
「――囮になる、ということか」
『そのようです。……公安では組織側に伝えていた降谷さんの拠点や関係各所の防備を固めており、釣り出された構成員の特定と確保が進んでいます』
「だがそれで釣られるのは下っ端だけのはずだ。……彼の真の狙いは」
『ジンと名乗る大物幹部に組織の末端を通して自身の居場所をリークしたようです』
ジンは裏切り者を許さず、そしてバーボンとは不仲であった。……釣られない訳がない。コナンはある端末を取り出した。昨晩ずっと使い続けだったので充電が少々心もとないがなんとかなるだろう。
『……はい、二三一一』
「お姉さん、安室さんの居場所は?安室さんにたぶん発信機――いや何か生存を確認できるようなもの、つけてるんだよね!?」
『え、な、なんでそれを……』
「今は後!安室さんが組織に自分の居場所をリークして囮になろうとしてる。何でもいいから分からない?」
がたがたと何かをひっくり返すような音、そして着信音。
『はい、風見さん……あ、はい、今聞きました。コ……FBIから、ええ。とりあえず脈拍と体温は正常の範囲内、たぶん無事です。GPS機能を立ち上げて公安とFBIの端末に共有します』
ぴこん、という通知音。そして彼女の言葉通り現在地が地図上に現れる。その場所は。
「……ここから東に直線距離で五キロ、海岸沿いの……たぶん倉庫!」
「五キロか。……経路、それから渋滞情報は分かるか?飛ばせばすぐだ」
「……道は空いてるみたい。赤井さん、どれくらいかかる?」
「……二分だな。間に合わせる」
ぐん、とマスタングが加速する。その反動でコナンは助手席の背もたれに体を押し付けられる。電話の向こうでは彼女が誰かと、おそらくこちらの通話を切った風見とやりとりしているのが微かに聞こえた。
『……そうですね。今一番近いの、赤井さんたちのようです。公安は位置関係上、急行しても五分はかかるそうです』
「そうか。……最悪でも時間を稼げば吊られた奴も数の暴力で抑え込めるな」
「……奴には聞かなきゃいけないことが多すぎる。それにあんな奴でも生きたまま捕らえるべきだ」
「ジンは一筋縄ではいかなかったか……!」
「ウォッカに手傷を負わせたはいいが共々逃げられた。……奴は周囲を信用せず自分だけで事を運ぶクセがある。結果的に単独での作戦遂行能力は非常に高い。……厄介だな」
「ああ。ところでベルモットは……」
「君と爆発に巻き込まれたんだったな。生きている。ジョディが捕え病院に搬送したそうだ」
「……あいつ、なぜかあの爆発の直前に俺を庇った。友人の息子だから、にしたって……」
「その理由は分からん。だがDNAの簡易鑑定で九十パーセント本人と確定した。組織側の変装術は封じられたとみていいだろう」
古参の大幹部の一人、ベルモットは確保に成功した。爆発に巻き込まれ重傷を負い今も治療を受けているが、命に別状はないらしい。だがもう一人の古参幹部の行方はいまだに知れていない。車にハンズフリーの状態で固定されたスマートフォンには絶え間なく情報が流れ込んでくる。
「――キールの方は上手く事が運んだようだ」
「ああ、裏切り者とバレたことを利用して狙撃手を引きつけてくれたんだっけ。……無事?」
「勿論。バイクで壮絶なチェイスの末にキャンティに重傷を負わせ、コルンを跳ね飛ばして確保したそうだ」
「……あの人もなかなかこう、すごいよね」
「裏切り者の手首を噛み砕いて銃を奪い撃ち殺した、そんな話が信用されるくらいにはな」
今のところこの一連の騒ぎはキールこと水無玲奈にの裏切りによるものと組織は見ているらしい。FBIと通じ赤井秀一と謀って今回の件に及んだ、と。結果的に主だった戦闘員は彼女の方に集中し、付近で待ち構えていたCIAとFBIに確保された。日頃は決して仲の良い組織同士ではないが、彼女の弟の保護や彼女自身の潜入にFBIが一枚噛んでいることもあってこの協力体制は作られた。罠と気づいて脱出を図ったキャンティとコルンは水無本人がバイクで追跡をかけ力技で押さえ込んだとか。結果的にこの大作戦もFBI主導であると思われているようだ。
「……公安の方は?」
「順調だ。さすがは彼らのホームグラウンド、リストにあった構成員の八割を特定、そして半数を確保しているそうだ」
「じゃああとはジンを捕えれば……」
コナンがそう呟いたその時、スマートフォンがけたたましく鳴り、着信を告げた。公安部からだ。運転中の赤井に代わって操作すると、何度か顔を合わせたことのある公安刑事、風見の声。彼はあまりに意外なことを告げた。
『……降谷さんが意図的に自身の情報を組織側に流しました』
「え!?」
思わず赤井の顔を見る。前方を見据えたまま彼は軽く舌打ちをした。
「――囮になる、ということか」
『そのようです。……公安では組織側に伝えていた降谷さんの拠点や関係各所の防備を固めており、釣り出された構成員の特定と確保が進んでいます』
「だがそれで釣られるのは下っ端だけのはずだ。……彼の真の狙いは」
『ジンと名乗る大物幹部に組織の末端を通して自身の居場所をリークしたようです』
ジンは裏切り者を許さず、そしてバーボンとは不仲であった。……釣られない訳がない。コナンはある端末を取り出した。昨晩ずっと使い続けだったので充電が少々心もとないがなんとかなるだろう。
『……はい、二三一一』
「お姉さん、安室さんの居場所は?安室さんにたぶん発信機――いや何か生存を確認できるようなもの、つけてるんだよね!?」
『え、な、なんでそれを……』
「今は後!安室さんが組織に自分の居場所をリークして囮になろうとしてる。何でもいいから分からない?」
がたがたと何かをひっくり返すような音、そして着信音。
『はい、風見さん……あ、はい、今聞きました。コ……FBIから、ええ。とりあえず脈拍と体温は正常の範囲内、たぶん無事です。GPS機能を立ち上げて公安とFBIの端末に共有します』
ぴこん、という通知音。そして彼女の言葉通り現在地が地図上に現れる。その場所は。
「……ここから東に直線距離で五キロ、海岸沿いの……たぶん倉庫!」
「五キロか。……経路、それから渋滞情報は分かるか?飛ばせばすぐだ」
「……道は空いてるみたい。赤井さん、どれくらいかかる?」
「……二分だな。間に合わせる」
ぐん、とマスタングが加速する。その反動でコナンは助手席の背もたれに体を押し付けられる。電話の向こうでは彼女が誰かと、おそらくこちらの通話を切った風見とやりとりしているのが微かに聞こえた。
『……そうですね。今一番近いの、赤井さんたちのようです。公安は位置関係上、急行しても五分はかかるそうです』
「そうか。……最悪でも時間を稼げば吊られた奴も数の暴力で抑え込めるな」
「……奴には聞かなきゃいけないことが多すぎる。それにあんな奴でも生きたまま捕らえるべきだ」
