りぼゆめ
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見えない、聞こえない、関係ない。そんなシラを切った所で目で追いかけてしまう。今もほら、彼女の後ろ姿を見ただけでずき、ずき、左心房がこんなにも、痛い。手を伸ばせば届く位置に居たのに、いつの間にか遠く遠く、小さい背中はもっと小さくなっていた。気が付けば、細くて綺麗な左薬指には透き通ったダイヤモンドの指輪。彼女に似合う指輪だと思ったが、それがまた凄く憎らしかった。
その指輪を外してください、僕の元に来てください。言い掛けた言葉を飲み込んで切って貼った様な微笑みで棒読みの祝福。なんて未練たらしいのだろうか。手を振り別れる事が此処まで辛いとは思わなかった。棒読みなのは、きっと彼女も気付いている。
「綺麗ですよ、とても」
「ありがと」
「‥なまえを妻に迎える事が出来た男は、幸せ者だ」
「‥」
純白のドレスを纏う彼女はほんのりのせたブラウンの瞼を静かに伏せて、僕の右手に両手を添えた。これから晴れ舞台だと言うのに、小さな肩は小刻みに揺れている。緊張で震えてるならそれでいい。そうであって欲しい。
「‥わたしは」
「‥」
「わたしは、幸せなんかじゃない‥」
「‥」
「むくろ‥。わたしは、骸が」
「‥もう式が始まる」
これ以上言わせない様に手を離す。だが、再び強く握られる。愛してると紡いだその唇で一瞬だけの口付け。聞き間違いであって欲しい、このキスも嘘であって欲しい(本当はそんな事、思ってもいないのに)
静かに離れると、彼女の頬が濡れているのに気付いた。だけどそれを拭ってやるのは、もう僕の役じゃない。
お幸せに、と言って去った後の話は判らない。なまえはもう、隣には居ない
恋しいって呟いたあなたの唇が、僕を哀れむ嘘であって欲しかった(それすらも嘘でいて)(なんて、矛盾だ)
口付けの名残は無かった。ただ激しい嫌悪感と虚無感が僕を嘲笑っていた。
070919