劇場版 2人の英雄
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食事を終えた2人はホテルに戻り順番にシャワーを浴びて、正装の準備を始めた。
轟「莉紗、着替え終わったか?」
シャワーは終わったらしいが、30分前からシャワールームに籠りっぱなしの莉紗に声をかけた轟。
『あ、うん。もう終わる!』
そして、ガチャっとドアが開く音がしてそちらに視線をやると中から莉紗が出てきて轟が絶句する。
轟「..........」
普段見たことのない幼馴染の姿に思わず呆然と見てしまった轟。そして、轟の正装姿を見て莉紗もまた、轟を見つめた。
轟「(こいつ、こんな可愛かったか...?)」
『(焦凍くんって、こんなかっこよかったっけ...?)』
それぞれ思う所があるようで沈黙してしまったその空気を取り払うように莉紗がどもりながらも口を開いた。
『あ...に、似合うね...///』
青のワイシャツにグレーのジャケットを羽織り、赤いネクタイを締めている轟はいつも以上に大人っぽくまた男らしさを感じさせ莉紗は頬を染めた。
轟「あ、ああ...お前も」
一方莉紗は、普段あまり好んで着ないようなオフショルダーのパステルピンクのドレス。普段のたくましさからは想像出来ない女性らしい肩が象徴されている。そして、足首まで丈のあるAラインドレスと肩からレースのショールをかけていて女性らしさが強調されている。髪型は夜会巻きでまとめてあるが、両サイドに編み込みが施されていて、右側に白い花飾りがついてるためそれほどかっちりした感じでもなく全体的に大人女子な雰囲気が漂っていた。
『そんな...見ないでよ...//』
恥ずかしそうに顔をそらした莉紗。薄く化粧をしているためかその横顔すらも知らない女のようで轟も段々と逸る心臓を止められなかった。
轟「いや、なんつーか...か」
何かを言おうとして轟は言うのをやめ、自分の口元に腕を押し当てた。
『.....?』
轟「..いや。お前そんなの持ってたんだな」
『これ冬ちゃんの借りたの。家にあるの全部親が選んだやつだから着たくなくて..』
轟「姉さんのか..」
『ガラじゃないって言いたいんでしょ?分かってるけど..』
不貞腐れたように言う莉紗に轟は何か言いたげにしたもののその口から言葉が紡がれる事はなかった。
しかし、その頬は彼の真っ赤な髪と同じくらいに赤く染まり莉紗はそれに気づきキョトンとして、呟いた。
『もしかして..焦凍くんも、照れくさいの?』
轟「っ....見んな」
そう言って轟は莉紗の頭を引き寄せ自分の胸板に押し当てた。
『っ、...////』
轟「...行くぞ」
小さく息を吐いた後にそう言った轟に莉紗も小さく頷いた。
『うん..』
赤く火照った頬は熱を帯び、逸る心臓も落ち着かないままに2人は視線を逸らしながら時刻はそろそろ18時になろうとしていた為、2人はホテルを出発した。
**
セントラルタワーにつくと、飯田とEXPOで臨時バイトをしている上鳴と峰田がいた。
飯田「やあ、轟くん!風舞くん!」
上鳴「おい...男前女子代表の風舞が、なんかすげー色っぽいぞ」
峰田「女は衣装で変わるもんだぞ、上鳴」
『お前ら...そこに直れ』
余計な一言が莉紗の火をつけ、上鳴と峰田はパーティー前にこってり締め上げられた。
その後18時30分を過ぎても他のメンツが来ず、飯田がそわそわと落ち着かなくなってきていよいよ緑谷に電話をかけた。
緑谷「ごめん遅くなって!って、あれ..他の人は?」
飯田「まだ来てない。団体行動をなんだと思ってるんだ」
緑谷が来てから程なくして麗日がやってきた。
麗日「ごめーん!遅刻してもうた!」
上・峰「「おおーっ!!」」
麗日はピンクベースのドレスを着ていた。肩出しでスカート部分は膝上丈でフリルがついていて女の子らしい。
『お茶子ちゃん、かわいい...』
麗日「あ、ありがとう..///
莉紗ちゃんは大人っぽいねー!すごく素敵!」
『ありがと』
そして程なくして..
八百万「申し訳ありません、耳郎さんが...」
黄緑色の肩出しロング丈のワンピースにいつものポニーテールをしている位置で毛先をくくりあげ落ち着いた華やかさに仕上げている八百万。一方の耳郎はショッキングピンクのドレス。裾が広がり腰元にリボンが付いていて黒のボレロを着ている。
髪も右側をかき上げドレスと同じ色の花のコサージュをつけている女の子らしい仕上がりだ。
耳郎「ウチ、こういう格好は...その..なんというか..」
上鳴「馬子にも衣装ってやつだな!」
峰田「女の殺し屋みてぇ...」
そう呟いた2人の耳に耳郎のジャックが刺さり容赦ない攻撃が成された。
耳郎「黙れ」
上鳴「何だよぉ、俺褒めたじゃんよぉ」
耳郎「『褒めてない』」
『響香、可愛いよ』
耳郎「あ、ありがと...///
でも莉紗と並ぶの嫌だな...」
『え』
耳郎「だって莉紗...可愛すぎるから....//」
頬を染めて言う耳郎に、一瞬ポカンとすると耳郎をぎゅっと抱きしめた莉紗。
『.....あんた、可愛いわ』
そんなやり取りをしてると....
上・峰「「ん?おおっー?!」」
デク達を案内していたメリッサが入ってきた。
メリッサ「デク君たち、まだここに居たのー?パーティー始まってるわよー?」
小走りで走ってきた美少女のメリッサ。
峰田「真打登場だぜっ!号泣」
上鳴「やべーよ、峰田。俺どうにかなっちまいそーだよどうしよぉぉぉ!」
耳郎「『どうにでもなれ..苦笑』」
爆豪と切島が来ない為、連絡を取ろうとしたその時...
セントラルタワー内に警報が鳴り響いた。何かあったのかと周りを見回していると、爆発物が設置された為警戒モードに移行すると言う放送が流れ出入口になりそうなドアや窓が全てシャッターが降り封鎖されていった。
轟「携帯が圏外だ。情報関係は全て遮断されちまったらしい」
峰田「ま、マジかよ..」
耳郎「エレベーターも反応ないよ」
峰田「マジかよー!」
メリッサ「爆発物が設置されただけで、警備システムが厳戒モードになるなんて...」
緑谷「..飯田くん。パーティー会場に行こう」
飯田「何故だ?」
緑谷「会場にはオールマイトが来てるんだ」
麗日「オールマイトが?!」
峰田「なんだー、それなら心配いらねぇな!」
緑谷「メリッサさん、どうにか会場までいけませんか?」
メリッサ「非常階段を使えば、会場の近くまでいけると思うけど」
緑谷「案内をお願いします!」
緑谷と耳郎がメリッサの案内のもと、パーティー会場に向かった。
しかし、目の前に広がった光景は予想とは全く異なる光景だった。
パーティ会場では武装したテロリストらが、プロヒーローたちを拘束していた。オールマイトも拘束されている1人だった。
耳郎のイヤホンジャックでオールマイトからのメッセージを確認。
その内容は、ヴィランがこのタワーを占拠している為危険だから逃げるようにとの内容だった。緑谷たちはすぐにそのことを伝えにクラスメイト達の元に戻った。
飯田「オールマイトからのメッセージは受け取った。俺は、雄英高教師であるオールマイトの言葉に従い、ここから脱出することを提案する」
八百万「飯田さんの意見に賛同しますわ。私達はまだ学生、ヒーロー免許もまだないのにヴィランと戦うわけには...」
上鳴「あ、なら脱出して外にいるヒーローに..」
メリッサ「脱出は困難だと思う...ここはヴィラン犯罪者を収容するタルタロスと同じレベルの防災設計で建てられているから..」
上鳴「じゃあ、助けが来るまで大人しく...」
耳郎「上鳴...それでいいわけ?」
上鳴の隣にしゃがんでいた耳郎が立ち上がり上鳴に向かって問いかけた。
上鳴「どういう意味だよ?」
耳郎「助けに行こうとか思わないの?」
峰田「おいおい、オールマイトもヴィランに捕まってるんだぞ?!オイラ達だけで助けに行くなんて無理すぎだっての!」
『私達に出来ること、ホントにないんだろうか...?』
隣にいた莉紗がぼんやりと呟いた言葉を聞き、轟が自分の手のひらをじっと見た。
轟「俺らはヒーローを目指してる..」
八百万「ですから私達はまだヒーロー活動は...!!」
轟「だからって...何もしないでいいのか?」
八百万「そ、それは...」
轟の言葉に、その場にいた誰もが自分が今どうすべきか..どうしたいと思ってるのか心の中で自問自答した。
緑谷「助けたい...」
麗日「デクくん...?」
緑谷「助けに行きたい!」
峰田「ヴィランと戦う気か?!USJで懲りてないのかよ、緑谷!!」
緑谷「違うよ、峰田くん!僕は考えてるんだ...ヴィランと戦わずに、オールマイト達を..みんなを助ける方法を!」
上鳴「気持ちは分かるけど、そんな都合のいいこと....」
緑谷「それでも探したいんだ!今の僕たちに出来る最善の方法を探して、みんなを助けに行きたい!」
麗日「デクくん...」
メリッサ「Iアイランドの警備システムはこのタワーの最上階にあるわ。ヴィランがシステムを掌握してるなら、認証プロテクトやパスワードは解除されているはず。私達にもシステムの再変更が出来る。ヴィランの監視を逃れ、最上階まで行くことが出来れば...みんなを助けられるかもしれない!」
緑谷「メリッサさん...」
耳郎「監視を逃れるって..どうやって?」
メリッサ「現時点で私達に実害はないわ。ヴィラン達は警備システムの扱いに慣れていないと思う」
轟「戦いを回避してシステムを戻すか..なるほど」
上鳴「それならいけんじゃね?!」
耳郎「だよね!」
八百万「しかし、最上階にはヴィランが待ち構えていますわ」
緑谷「戦う必要はないんだ!システムを元に戻せば、人質やオールマイト達が解放される!そうなれば状況は一気に逆転するはず!」
『戦わずして、私達の全精力を持って警備システムからヴィラン達の気を逸らさせることが出来れば...その間に再認証させられる!』
確信を持ったように隣にいた轟の顔を見ながら言った莉紗。轟もそれを聞いて力強く頷いてくれた。
麗日「デクくん!行こう!」
緑谷「麗日さん!」
麗日「私達に出来ることがあるのに、何もしないでいるのは嫌だ!そんなのヒーローになる、ならない以前の問題だと思う!」
緑谷「うん!困ってる人達を助けよう!人として、当たり前のことをしよう!」
麗日「おー!」
轟「緑谷、俺も行くぜ」
『私も』
耳郎「ウチも!」
緑谷「轟くん、風舞さん!」
麗日「響香ちゃん!」
飯田「これ以上は無理だと思ったら、引き返す...その条件が呑めるなら、俺も行こう」
緑谷「飯田くん!」
八百万「そういうことであれば、私も」
上鳴「よしっ!俺も!」
麗日「八百万さん!」
緑谷「上鳴くん!」
峰田「...あー!!!もう分かったよ!!行けばいいんだろぉぉ!!泣」
緑谷「ありがとう、峰田くん!!」
満場一致で警備システムを取り戻すために、最上階を目指すことになった緑谷たち。
緑谷「メリッサさんはここで待っていてください」
メリッサ「私も行くわ!」
緑谷「え?でも..メリッサさんには、個性が...」
メリッサ「この中に、警備システムの設定変更が出来る人がいる?」
上鳴「あ...」
メリッサ「私はアカデミーの学生、役に立てると思う!」
緑谷「あ、でも!」
メリッサ「最上階に行くまでは..足手まといにしかならないけど...私にも、みんなを守らせて!」
『考える余地なんてない。メリッサさんがいないと最上階に行く意味もないもんね』
緑谷「...そうだね。分かりました。行きましょう!!みんなを助けに!」
飯田「行くぞ!」
「「「「おう!(はい!)」」」」
非常階段を使いひたすらに階段を登って最上階を目指し、30階までたどり着いた一行。
飯田「これで30階..」
緑谷「メリッサさん、最上階は?」
メリッサ「..200階よ」
上鳴「マジか!?」
峰田「そんなに昇るのかよ..」
八百万「ヴィランと出くわすよりマシですわ」
厳しい訓練を受けているヒーローの卵と言えど、その数字は果てしない。同じヒーロー志望とはいえ体力のある者と無い者ですら既に差が出始めている。むしろ、メリッサがよくここまでついてこれてるものだと莉紗は内心、関心していた。
ひたすら階段を登り続ける一行。80階までたどりつくとメリッサの足は止まり始めた。
麗日「メリッサさん!ウチの個性使おうか?!」
メリッサ「ありがとう、でも大丈夫!その力はいざという時にとっておいて!」
そう言って靴を脱ぎ捨てたメリッサ。
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