救え!救助訓練!
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尾白「先生!大変です!ヴィランが!」
尾白が相澤達に状況報告をしに行ったが...
相澤「なんてこった、俺たちはまだ戦える身体じゃない」
尾白「え、じゃあ!」
13号「えっと、えっと!逃げてください!正面入り口まで!早く!」
「逃しゃしねーさ。全員まとめて!死に晒せー!」
ヴィランが左手で掴んでいた莉紗の身体を左脇に抱え、右手で抱えていた轟を左手でつかんだ。
そして、右足で地団駄を踏んだ瞬間あたりの地面は地割れを起こし、あたりにあった建物や瓦礫などは爆風でその場から飛んでいった。
上鳴「なんじゃこりゃー!!」
峰田「こんな奴がじっと潜んでたのかよ!!」
「よし...一人たりとも逃さんぞ」
13号「あー、ウソでしょ...みんな早く逃げてー!」
そこに、13号の声を聞く気もなくヴィランに突っ込んでいった爆豪。個性の爆破をぶつけようとすると簡単にいなされた。
爆豪「逃げてぇ奴は勝手に逃げろ。こいつは俺が潰してやる」
「完全に見切られておいてよく言えたもんだ」
爆豪「どりゃああっ!!」
果敢に攻めていく爆豪。
峰田「バカかよ!何で力量の差を考えねぇんだ!どう見ても格が違うって分かんだろ!」
緑谷「(違う...気性はどうあれ、かっちゃんは考えない人じゃない。かっちゃんなりにやれることを...)」
爆豪は威力で押せない分、手数で勝負をしようとヴィランに間髪入れない連続爆破攻撃を撃ち込んだ。
「痛いだろーがぁっっ!!」
飯田「危ない!」
ヴィランが腕を振り上げたその時、爆豪が空中で身体を捻り、ヴィランの腕を避け背後に回り至近距離でヴィランの身体に爆破を当てた。
爆豪「おい!人の心配するほど強ぇんか、テメェは!棒立ちしてんなら、とっととその辺の奴ら逃しとけや、雑魚が!!」
飯田「!! クッ、何で君はそう...憎まれ口しか叩けないんだ!」
切島「おいおい、爆豪。その辺の奴らってのはねぇんじゃねぇのか?」
八百万「1年A組21人」
麗日「一応全員、ヒーロー志望なんだけど!」
緑谷「みんな!」
救助役で隠れていたクラスメイト達も騒ぎを聞きつけ集まった。
「ほう、随分勇ましいな。しかし!」
ヴィランが腕を振り上げただけで辺りには突風が吹き荒れ、瓦礫が飛び散った。
青山「お任せー☆」
青山のレーザービーム、切島の硬化、砂藤のパンチ、耳郎の音波..
皆の個性を駆使して、飛んでくる瓦礫破壊していった。
そして瀬呂のテープ、八百万の大砲から飛び出した大網でヴィランを捕獲。
八百万「今ですわ!」
飯田「行くぞ!A組!」
残りのメンバーがヴィランの元に走ったが、ヴィランは力づくでテープと網を引きちぎった。その動きだけであたりにはまたもや突風が吹き荒れた。全員もれなく吹き飛ばされたA組。
「まさか全員で挑んでくるとはな。予想外だが、その程度じゃこの俺は..っ?!」
ヴィランが油断した隙に背後から爆豪がヴィランの顔面に0距離で爆破をしかけたが間一髪で避けられてしまった。
その後も爆豪は攻め続けた。
緑谷「飯田くん、峰田くん、麗日さん、あす...梅雨ちゃん。僕に考えがある!」
「さすがに疲れてきた。そろそろ締めるか」
爆豪「へっ、笑わせんな!まだまだこっからだぁっ!!」
爆豪が再びヴィランに向かって走っていった。
緑谷「今だ!」
麗日「行くよ!」
蛙吹が緑谷に舌を巻きつけ、麗日が緑谷に触れた。
緑谷「蛙吹さん!」
蛙吹「梅雨ちゃんと、呼んで!」
蛙吹が無重力になった緑谷を遠心力で投げ飛ばした。
爆豪がヴィランの顔面近くで爆破をしたが、ヴィランは爆豪のその腕を掴んだ。
「いくらやっても..ん?」
緑谷がヴィランに向かって勢いよく飛んできた。その両手に、峰田のもぎもぎを持って。
そのもぎもぎを莉紗と轟の服に取り付け、そのタイミングで麗日が個性を解除した。
ヴィランの元から莉紗と轟を救出した緑谷。もぎもぎがくっついたグローブを脱ぎ...
緑谷「スマーッシュ!!!」
デコピンスマッシュを放った。
その衝撃に耐えているヴィラン。
緑谷「だ、ダメか...」
爆豪「雑魚は引っ込んでろ!!」
緑谷の放った衝撃波に耐えているヴィランの間合いに入った爆豪が、ヴィランの身体に0距離で両手で繰り出す特大の爆発を起こした。そして、ヴィランが叩きつけられた場所には峰田のもぎもぎが。
「ぐあっ!!」
身動きが取れなくなったヴィラン。
峰田「ざまあ!!」
ヴィランとの戦闘はA組の勝利で終わった。
爆豪「トドメだ、クソヴィラン!」
「ま、待て!わたし、私!私が来てたー!」
慌ててコスチュームのマスクを脱いで決めセリフを言うオールマイト。
緑・爆「「オールマイト!?」」
オール「ワッハッハ!実はちょっとサプライズ的にヴィランが出た際の救助訓練を、と思ってね。ほらー、前あんな事が起きたばかりだし。いや、しかしみんな思いの外テキパキしててさすが有...え?」
オールマイトの周りに生徒達が集まってきた。その顔を般若と化して...
オール「....なんか、すいませんでした」
「「「「やり過ぎなんだよ!!オールマイト!!怒」」」」
生徒に怒られて萎縮するオールマイトを遠くから眺める教師陣。
13号「先輩の言う通りでしたねぇ」
相澤「やっぱ向いてないな、あの人」
13号「しかし、全員立ち向かっていくとは..驚きました」
相澤「...ああ」
2人の教師の見つめる先には切島、瀬呂、上鳴にボコボコにされているオールマイトの姿があった。
そして皆の背後から人質の2人が歩いてきた。
緑谷「あ、轟くん!風舞さん!」
爆豪「あっ?!テメェらもこのクソサプライズ共犯か!!」
轟「『.........』」
罰悪く、だんまりしてしまった2人。
そう、2人に襲い掛かったあのヴィランの奇襲は...
「これで終わりだー!!」
男が莉紗の腕を掴んだ。
『?!』
「なーんて、私だよ私。私が敵のフリして、来たー」
目の前にはコスチュームの仮面をはずしたオールマイトがいた。
『何、やってんすか...』
莉紗は騙されたことが不服でオールマイトに捕まれた腕を振り払って、不貞腐れたように聞いた。
「ちょっと、協力してほしくてね」
『協力?』
そして、莉紗を連れて息を潜めオールマイトと次に向かった場所にいたのは..
『....轟くん?』
オール「彼にも、協力してもらうんだが...その前に彼にも試練を受けてもらうんだ」
『試練?』
オール「風舞少女は、私が合図するまで気を失ったフリをしていてくれるかい?」
『....はあ』
そして...
「ヒーローの卵よ、助けられるかな?」
轟「あ?
?!莉紗...!」
「遅い!」
轟「?!」
ヴィラン扮するオールマイトが轟の氷結を掻い潜って、背後から轟を襲おうとすると轟が真後ろに氷結を伸ばし、ヴィランが莉紗を抱えてる腕を莉紗の身体毎凍らせると、それに一瞬たじろいだヴィランの腕と莉紗の身体が接してる箇所の氷だけを左の熱で溶かしその隙に莉紗を奪い返した。
轟「こいつは返してもらうぞ、ヴィラン」
莉紗を横抱きしながら、ヴィランに氷結を向かわせるも、ヴィランは宙に跳び一瞬視界から消えたと思ったら再び背後にやってきた。間に合わねぇ!と思ったその時、オールマイトが顔を出した。
「ストーップ!!ハハハ、私だよ。轟少年」
轟「........」
オール「少し協力してくれないか?」
轟「何で、あんたが風舞を...」
『ごめんね、轟くん』
突如腕の中から声が聞こえ、轟がそちらに目をやると気を失ってるはずだった莉紗の目がぱっちりと開いていた。
轟「風舞?お前...」
『私も協力者だったんだ』
轟「どういうことだ?」
『救助活動中に突如ヴィランの奇襲にあったら..っていうオールマイト考案の模擬演習だってさ』
オール「この前のヴィラン連合からの奇襲を想定してね。
だが、制圧能力の高い君たちがいると君たち2人にヴィラン制圧を任せて他は救助活動続行というプランが出来てしまう」
『そのプランを摘む為に私達が協力者なんですね』
オール「それだけじゃないぞ?1年A組の中でもトップの実力を誇る君たちが既にヴィランに敗れているという状況下において、彼らはきっとこういう思考になるだろう。"この2人で勝てなかったのに...."ってね。そう言った切迫した状況の中でいかに冷静さを損なわずに各々力を活かし対処することが出来るか。その訓練だったのさ。それに、演習が必要なのは君たちも同じだからね。協力者になってもらう前に、君たちの立ち振る舞いをチェックしたのさ」
という事情で2人はオールマイトの協力者になったのだ。
轟「悪かったな」
『謝る事?私達先生から言われて協力者になったのに』
未だ生徒にめちゃくちゃ責められているオールマイト。
そして、負傷した緑谷をリカバリーガールのところに誘導する為緑谷と共にその場を離れた麗日と飯田。
『轟くん?』
微動だにしない轟に不思議に思った莉紗が轟の名前を呼んだ。轟は返事はせずに視線だけを自分の名を呼んだ彼女に向けた。
『どうかした?なんか、隠れてるときからずっと変だけど』
気まずい雰囲気でいたことなど頭から抜け莉紗は今日の演習中ずっと思いつめていたような轟の表情が気になり声をかけた。
轟「...いや、何でもねぇ」
『........』
長い事離れていたとはいえ、幼馴染の莉紗には分かった。
今の彼の顔は、何かを思いつめている顔だという事を。
『私じゃ、頼りにならないかもだけど』
轟「.........」
『誰かに話して楽になるなら、聞くから。轟くんの場合、話したくない事の方が多いかもだけど...』
そう言ってクラスメイトや教師がいるもとに駆けて行った莉紗。轟は自分を気に掛ける目の前の少女を見た。自分はかつて彼女に本当の理由を告げることなく傷つけ突き放した。
それなのに、再会した彼女はそれを咎めることも責めることもせずこうして自分の事を気にかけてくれる。それが何故なのか、理由は轟には分からなかったし、傷つけられた相手をそこまで気にかけられる彼女が理解できなかった。轟の心の中は消化できないもやもやが残ったが、今日の救助訓練はまずまずの結果で終えた1年A組だった。
Fin
***
おまけ
莉紗と轟の戦闘中の様子。
麗日「そんな...まさか...莉紗ちゃん!轟くん!」
耳郎「うちのクラスで...1番強い2人が...」
『うちらクラスで一番強いんだね』
轟「..黙って気を失ったフリしてろ」
小声で話す莉紗に小声で制した轟。
------
尾白「先生!大変です!ヴィランが!」
相澤「なんてこった、俺たちはまだ戦える身体じゃない」
尾白「え、じゃあ!」
13号「えっと、えっと!逃げてください!正面入り口まで!早く!」
『相澤先生も13号も演技、大根すぎない?』
轟「............」
--------
「逃しゃしねーさ。全員まとめて!死に晒せー!」
『平和の象徴が超ヴィランになりきってる...うぉっ』
「風舞少女っ!しーっ!」
オールマイトが左手で掴んでいた莉紗の身体を左脇に抱え、右手で抱えていた轟を左手でつかんだ時小さく唸ってしまった莉紗だったが爆豪の爆破の音や土埃などで皆に気づかれずに済んだ。しかし、オールマイトが左手で掴んでる轟の背の上に莉紗が乗るような形で小脇に抱えられている為に轟のコスチュームの氷がもろに当たっている莉紗。
『轟くん、冷たいんだけど』
轟「我慢しろ」
------
そして、緑谷に救出され投げ出された2人は皆に気づかれぬように物陰に隠れた。2人並んで岩陰に寄りかかると莉紗は振り返り立ち膝をして戦闘の様子を眺めた。
『何か私達だけ何もしてない感じ...』
轟「.......」
皆の様子を見ながら不満げにいう莉紗。そんな莉紗の頬に左手を当てた轟。
『!え。何?』
轟「冷たかったんだろ、悪かったな」
『え...あ、や。こちらこそ...どうも...』
一緒に物陰に隠れているせいでただでさえいつもよりも距離が近いのに、轟が頬に触れてくる為その距離はさらに近くなった。
再会してからの自分達の距離感や中学の時の出来事を思い出し、急に照れくさいような気まずいような複雑な気持ちになった莉紗。
『しょ、焦凍くん!も、もう大丈夫だから..!!/////』
2人だけだからなのか、動揺して咄嗟なのか名前で呼ぶ莉紗。
轟「そうか」
轟は触れていた莉紗の頬から手を引いた。
『ありがと...///』
轟「いや」
『...さっきも』
轟「...さっき?」
いつの話しか分からずに莉紗を見た轟。
『オールマイトに捕まってるとき。助けに来てくれて』
轟「........」
バァァアンッ!!
轟「..したからな」
『え?』
ちょうど爆豪の爆発とかぶり轟の言葉は遮られ莉紗には轟の言葉は聞き取れなかった。
『ごめん、聞こえなかった』
轟「いや、別に気にしなくていい」
『..そう?』
轟「ああ」
『..そっか。あ、オールマイトバラしたよ。私達も出よっか』
轟「ああ」
皆の元に歩いていく莉紗の後ろ姿を見ながら俺の脳内には、子供の時の記憶が流れた。
「ハァハァハァ....」
エン「焦凍」
「!?」
エン「こんなとこで這いつくばってはならん。お前は、俺の最高傑作なのだから」
『おじさま、やめて!しょーとくん、ケガしてる..かわいそうだよ』
俺の前に立ち、両手を広げ俺を庇う幼い莉紗。
エン「邪魔するな、莉紗。どけろ」
そんな莉紗を突き飛ばした親父。
『きゃっ!』
「りさに乱暴するな!!」
莉紗は俺が傷ついていると、例え相手が自分より遥かに強い親父でも俺を守ろうとして前に立った。殴られても、突き飛ばされても自分が傷つく事も気にせず。
親父は相手が莉紗でも容赦なく殴るし火も出す。
俺は、それがたまらなく嫌で怖かった。
だが、幼い俺には親父から莉紗を守る力はなかった。
俺はずっと恐れていた。莉紗が親父に傷つけられることを。そのせいでずっと忘れていた。
幼いころに、交わした約束を....
「おおきくなったら、ぜったいぼくがりさの事守るから!」
『しょうとくん...じゃあ、わたしはしょーとくんが強くなるのおうえんするね!』
「うん!ぼくが強くなったらりさのこと泣かせないよ!」
端から見れば、よくあるガキの口約束かもしれねぇ。
そんなもん信じ続けるなんて、バカと笑うだろう。
だが、その口約束は紛れもない俺の決意で、俺の覚悟だった。
だから、強くなるために何だってした。だが、強くなったつもりでもやっぱり莉紗が親父に傷つけられるかもしれねぇ恐怖心はぬぐえず結局俺があいつを傷つけて、突き放して...自ら手放した。
『轟くん?』
クラスの奴らの元に出て行ってからも1人で色々考えているとふと莉紗に名前を呼ばれ、返事はせずに視線だけを彼女に向けた。
『どうかした?なんか、隠れてるときからずっと変だけど』
轟「...いや、何でもねぇ」
『........。私じゃ、頼りにならないだろうだけど』
轟「......」
『誰かに話して楽になるなら、聞くから。轟くんの場合、話したくない事の方が多いかもだけど...』
困ってる奴、泣いてる奴、傷ついてる奴...そういう奴を放っておけない世話焼き症な所は昔と変わってない。この前の襲撃の時もそうだ。こいつは、自分が傷つくことを厭わず誰かを守る。根からのヒーロー気質だ。
俺はまだ弱い。だから、さっきの言葉もあいつが忘れてるであろうこの記憶も俺の中だけに秘めておくことにした。
いつか、ちゃんとお前に面と向かって言える俺になるその日まで....。
"約束したからな、守るって"
Fin
→あとがき
尾白が相澤達に状況報告をしに行ったが...
相澤「なんてこった、俺たちはまだ戦える身体じゃない」
尾白「え、じゃあ!」
13号「えっと、えっと!逃げてください!正面入り口まで!早く!」
「逃しゃしねーさ。全員まとめて!死に晒せー!」
ヴィランが左手で掴んでいた莉紗の身体を左脇に抱え、右手で抱えていた轟を左手でつかんだ。
そして、右足で地団駄を踏んだ瞬間あたりの地面は地割れを起こし、あたりにあった建物や瓦礫などは爆風でその場から飛んでいった。
上鳴「なんじゃこりゃー!!」
峰田「こんな奴がじっと潜んでたのかよ!!」
「よし...一人たりとも逃さんぞ」
13号「あー、ウソでしょ...みんな早く逃げてー!」
そこに、13号の声を聞く気もなくヴィランに突っ込んでいった爆豪。個性の爆破をぶつけようとすると簡単にいなされた。
爆豪「逃げてぇ奴は勝手に逃げろ。こいつは俺が潰してやる」
「完全に見切られておいてよく言えたもんだ」
爆豪「どりゃああっ!!」
果敢に攻めていく爆豪。
峰田「バカかよ!何で力量の差を考えねぇんだ!どう見ても格が違うって分かんだろ!」
緑谷「(違う...気性はどうあれ、かっちゃんは考えない人じゃない。かっちゃんなりにやれることを...)」
爆豪は威力で押せない分、手数で勝負をしようとヴィランに間髪入れない連続爆破攻撃を撃ち込んだ。
「痛いだろーがぁっっ!!」
飯田「危ない!」
ヴィランが腕を振り上げたその時、爆豪が空中で身体を捻り、ヴィランの腕を避け背後に回り至近距離でヴィランの身体に爆破を当てた。
爆豪「おい!人の心配するほど強ぇんか、テメェは!棒立ちしてんなら、とっととその辺の奴ら逃しとけや、雑魚が!!」
飯田「!! クッ、何で君はそう...憎まれ口しか叩けないんだ!」
切島「おいおい、爆豪。その辺の奴らってのはねぇんじゃねぇのか?」
八百万「1年A組21人」
麗日「一応全員、ヒーロー志望なんだけど!」
緑谷「みんな!」
救助役で隠れていたクラスメイト達も騒ぎを聞きつけ集まった。
「ほう、随分勇ましいな。しかし!」
ヴィランが腕を振り上げただけで辺りには突風が吹き荒れ、瓦礫が飛び散った。
青山「お任せー☆」
青山のレーザービーム、切島の硬化、砂藤のパンチ、耳郎の音波..
皆の個性を駆使して、飛んでくる瓦礫破壊していった。
そして瀬呂のテープ、八百万の大砲から飛び出した大網でヴィランを捕獲。
八百万「今ですわ!」
飯田「行くぞ!A組!」
残りのメンバーがヴィランの元に走ったが、ヴィランは力づくでテープと網を引きちぎった。その動きだけであたりにはまたもや突風が吹き荒れた。全員もれなく吹き飛ばされたA組。
「まさか全員で挑んでくるとはな。予想外だが、その程度じゃこの俺は..っ?!」
ヴィランが油断した隙に背後から爆豪がヴィランの顔面に0距離で爆破をしかけたが間一髪で避けられてしまった。
その後も爆豪は攻め続けた。
緑谷「飯田くん、峰田くん、麗日さん、あす...梅雨ちゃん。僕に考えがある!」
「さすがに疲れてきた。そろそろ締めるか」
爆豪「へっ、笑わせんな!まだまだこっからだぁっ!!」
爆豪が再びヴィランに向かって走っていった。
緑谷「今だ!」
麗日「行くよ!」
蛙吹が緑谷に舌を巻きつけ、麗日が緑谷に触れた。
緑谷「蛙吹さん!」
蛙吹「梅雨ちゃんと、呼んで!」
蛙吹が無重力になった緑谷を遠心力で投げ飛ばした。
爆豪がヴィランの顔面近くで爆破をしたが、ヴィランは爆豪のその腕を掴んだ。
「いくらやっても..ん?」
緑谷がヴィランに向かって勢いよく飛んできた。その両手に、峰田のもぎもぎを持って。
そのもぎもぎを莉紗と轟の服に取り付け、そのタイミングで麗日が個性を解除した。
ヴィランの元から莉紗と轟を救出した緑谷。もぎもぎがくっついたグローブを脱ぎ...
緑谷「スマーッシュ!!!」
デコピンスマッシュを放った。
その衝撃に耐えているヴィラン。
緑谷「だ、ダメか...」
爆豪「雑魚は引っ込んでろ!!」
緑谷の放った衝撃波に耐えているヴィランの間合いに入った爆豪が、ヴィランの身体に0距離で両手で繰り出す特大の爆発を起こした。そして、ヴィランが叩きつけられた場所には峰田のもぎもぎが。
「ぐあっ!!」
身動きが取れなくなったヴィラン。
峰田「ざまあ!!」
ヴィランとの戦闘はA組の勝利で終わった。
爆豪「トドメだ、クソヴィラン!」
「ま、待て!わたし、私!私が来てたー!」
慌ててコスチュームのマスクを脱いで決めセリフを言うオールマイト。
緑・爆「「オールマイト!?」」
オール「ワッハッハ!実はちょっとサプライズ的にヴィランが出た際の救助訓練を、と思ってね。ほらー、前あんな事が起きたばかりだし。いや、しかしみんな思いの外テキパキしててさすが有...え?」
オールマイトの周りに生徒達が集まってきた。その顔を般若と化して...
オール「....なんか、すいませんでした」
「「「「やり過ぎなんだよ!!オールマイト!!怒」」」」
生徒に怒られて萎縮するオールマイトを遠くから眺める教師陣。
13号「先輩の言う通りでしたねぇ」
相澤「やっぱ向いてないな、あの人」
13号「しかし、全員立ち向かっていくとは..驚きました」
相澤「...ああ」
2人の教師の見つめる先には切島、瀬呂、上鳴にボコボコにされているオールマイトの姿があった。
そして皆の背後から人質の2人が歩いてきた。
緑谷「あ、轟くん!風舞さん!」
爆豪「あっ?!テメェらもこのクソサプライズ共犯か!!」
轟「『.........』」
罰悪く、だんまりしてしまった2人。
そう、2人に襲い掛かったあのヴィランの奇襲は...
「これで終わりだー!!」
男が莉紗の腕を掴んだ。
『?!』
「なーんて、私だよ私。私が敵のフリして、来たー」
目の前にはコスチュームの仮面をはずしたオールマイトがいた。
『何、やってんすか...』
莉紗は騙されたことが不服でオールマイトに捕まれた腕を振り払って、不貞腐れたように聞いた。
「ちょっと、協力してほしくてね」
『協力?』
そして、莉紗を連れて息を潜めオールマイトと次に向かった場所にいたのは..
『....轟くん?』
オール「彼にも、協力してもらうんだが...その前に彼にも試練を受けてもらうんだ」
『試練?』
オール「風舞少女は、私が合図するまで気を失ったフリをしていてくれるかい?」
『....はあ』
そして...
「ヒーローの卵よ、助けられるかな?」
轟「あ?
?!莉紗...!」
「遅い!」
轟「?!」
ヴィラン扮するオールマイトが轟の氷結を掻い潜って、背後から轟を襲おうとすると轟が真後ろに氷結を伸ばし、ヴィランが莉紗を抱えてる腕を莉紗の身体毎凍らせると、それに一瞬たじろいだヴィランの腕と莉紗の身体が接してる箇所の氷だけを左の熱で溶かしその隙に莉紗を奪い返した。
轟「こいつは返してもらうぞ、ヴィラン」
莉紗を横抱きしながら、ヴィランに氷結を向かわせるも、ヴィランは宙に跳び一瞬視界から消えたと思ったら再び背後にやってきた。間に合わねぇ!と思ったその時、オールマイトが顔を出した。
「ストーップ!!ハハハ、私だよ。轟少年」
轟「........」
オール「少し協力してくれないか?」
轟「何で、あんたが風舞を...」
『ごめんね、轟くん』
突如腕の中から声が聞こえ、轟がそちらに目をやると気を失ってるはずだった莉紗の目がぱっちりと開いていた。
轟「風舞?お前...」
『私も協力者だったんだ』
轟「どういうことだ?」
『救助活動中に突如ヴィランの奇襲にあったら..っていうオールマイト考案の模擬演習だってさ』
オール「この前のヴィラン連合からの奇襲を想定してね。
だが、制圧能力の高い君たちがいると君たち2人にヴィラン制圧を任せて他は救助活動続行というプランが出来てしまう」
『そのプランを摘む為に私達が協力者なんですね』
オール「それだけじゃないぞ?1年A組の中でもトップの実力を誇る君たちが既にヴィランに敗れているという状況下において、彼らはきっとこういう思考になるだろう。"この2人で勝てなかったのに...."ってね。そう言った切迫した状況の中でいかに冷静さを損なわずに各々力を活かし対処することが出来るか。その訓練だったのさ。それに、演習が必要なのは君たちも同じだからね。協力者になってもらう前に、君たちの立ち振る舞いをチェックしたのさ」
という事情で2人はオールマイトの協力者になったのだ。
轟「悪かったな」
『謝る事?私達先生から言われて協力者になったのに』
未だ生徒にめちゃくちゃ責められているオールマイト。
そして、負傷した緑谷をリカバリーガールのところに誘導する為緑谷と共にその場を離れた麗日と飯田。
『轟くん?』
微動だにしない轟に不思議に思った莉紗が轟の名前を呼んだ。轟は返事はせずに視線だけを自分の名を呼んだ彼女に向けた。
『どうかした?なんか、隠れてるときからずっと変だけど』
気まずい雰囲気でいたことなど頭から抜け莉紗は今日の演習中ずっと思いつめていたような轟の表情が気になり声をかけた。
轟「...いや、何でもねぇ」
『........』
長い事離れていたとはいえ、幼馴染の莉紗には分かった。
今の彼の顔は、何かを思いつめている顔だという事を。
『私じゃ、頼りにならないかもだけど』
轟「.........」
『誰かに話して楽になるなら、聞くから。轟くんの場合、話したくない事の方が多いかもだけど...』
そう言ってクラスメイトや教師がいるもとに駆けて行った莉紗。轟は自分を気に掛ける目の前の少女を見た。自分はかつて彼女に本当の理由を告げることなく傷つけ突き放した。
それなのに、再会した彼女はそれを咎めることも責めることもせずこうして自分の事を気にかけてくれる。それが何故なのか、理由は轟には分からなかったし、傷つけられた相手をそこまで気にかけられる彼女が理解できなかった。轟の心の中は消化できないもやもやが残ったが、今日の救助訓練はまずまずの結果で終えた1年A組だった。
Fin
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おまけ
莉紗と轟の戦闘中の様子。
麗日「そんな...まさか...莉紗ちゃん!轟くん!」
耳郎「うちのクラスで...1番強い2人が...」
『うちらクラスで一番強いんだね』
轟「..黙って気を失ったフリしてろ」
小声で話す莉紗に小声で制した轟。
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尾白「先生!大変です!ヴィランが!」
相澤「なんてこった、俺たちはまだ戦える身体じゃない」
尾白「え、じゃあ!」
13号「えっと、えっと!逃げてください!正面入り口まで!早く!」
『相澤先生も13号も演技、大根すぎない?』
轟「............」
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「逃しゃしねーさ。全員まとめて!死に晒せー!」
『平和の象徴が超ヴィランになりきってる...うぉっ』
「風舞少女っ!しーっ!」
オールマイトが左手で掴んでいた莉紗の身体を左脇に抱え、右手で抱えていた轟を左手でつかんだ時小さく唸ってしまった莉紗だったが爆豪の爆破の音や土埃などで皆に気づかれずに済んだ。しかし、オールマイトが左手で掴んでる轟の背の上に莉紗が乗るような形で小脇に抱えられている為に轟のコスチュームの氷がもろに当たっている莉紗。
『轟くん、冷たいんだけど』
轟「我慢しろ」
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そして、緑谷に救出され投げ出された2人は皆に気づかれぬように物陰に隠れた。2人並んで岩陰に寄りかかると莉紗は振り返り立ち膝をして戦闘の様子を眺めた。
『何か私達だけ何もしてない感じ...』
轟「.......」
皆の様子を見ながら不満げにいう莉紗。そんな莉紗の頬に左手を当てた轟。
『!え。何?』
轟「冷たかったんだろ、悪かったな」
『え...あ、や。こちらこそ...どうも...』
一緒に物陰に隠れているせいでただでさえいつもよりも距離が近いのに、轟が頬に触れてくる為その距離はさらに近くなった。
再会してからの自分達の距離感や中学の時の出来事を思い出し、急に照れくさいような気まずいような複雑な気持ちになった莉紗。
『しょ、焦凍くん!も、もう大丈夫だから..!!/////』
2人だけだからなのか、動揺して咄嗟なのか名前で呼ぶ莉紗。
轟「そうか」
轟は触れていた莉紗の頬から手を引いた。
『ありがと...///』
轟「いや」
『...さっきも』
轟「...さっき?」
いつの話しか分からずに莉紗を見た轟。
『オールマイトに捕まってるとき。助けに来てくれて』
轟「........」
バァァアンッ!!
轟「..したからな」
『え?』
ちょうど爆豪の爆発とかぶり轟の言葉は遮られ莉紗には轟の言葉は聞き取れなかった。
『ごめん、聞こえなかった』
轟「いや、別に気にしなくていい」
『..そう?』
轟「ああ」
『..そっか。あ、オールマイトバラしたよ。私達も出よっか』
轟「ああ」
皆の元に歩いていく莉紗の後ろ姿を見ながら俺の脳内には、子供の時の記憶が流れた。
「ハァハァハァ....」
エン「焦凍」
「!?」
エン「こんなとこで這いつくばってはならん。お前は、俺の最高傑作なのだから」
『おじさま、やめて!しょーとくん、ケガしてる..かわいそうだよ』
俺の前に立ち、両手を広げ俺を庇う幼い莉紗。
エン「邪魔するな、莉紗。どけろ」
そんな莉紗を突き飛ばした親父。
『きゃっ!』
「りさに乱暴するな!!」
莉紗は俺が傷ついていると、例え相手が自分より遥かに強い親父でも俺を守ろうとして前に立った。殴られても、突き飛ばされても自分が傷つく事も気にせず。
親父は相手が莉紗でも容赦なく殴るし火も出す。
俺は、それがたまらなく嫌で怖かった。
だが、幼い俺には親父から莉紗を守る力はなかった。
俺はずっと恐れていた。莉紗が親父に傷つけられることを。そのせいでずっと忘れていた。
幼いころに、交わした約束を....
「おおきくなったら、ぜったいぼくがりさの事守るから!」
『しょうとくん...じゃあ、わたしはしょーとくんが強くなるのおうえんするね!』
「うん!ぼくが強くなったらりさのこと泣かせないよ!」
端から見れば、よくあるガキの口約束かもしれねぇ。
そんなもん信じ続けるなんて、バカと笑うだろう。
だが、その口約束は紛れもない俺の決意で、俺の覚悟だった。
だから、強くなるために何だってした。だが、強くなったつもりでもやっぱり莉紗が親父に傷つけられるかもしれねぇ恐怖心はぬぐえず結局俺があいつを傷つけて、突き放して...自ら手放した。
『轟くん?』
クラスの奴らの元に出て行ってからも1人で色々考えているとふと莉紗に名前を呼ばれ、返事はせずに視線だけを彼女に向けた。
『どうかした?なんか、隠れてるときからずっと変だけど』
轟「...いや、何でもねぇ」
『........。私じゃ、頼りにならないだろうだけど』
轟「......」
『誰かに話して楽になるなら、聞くから。轟くんの場合、話したくない事の方が多いかもだけど...』
困ってる奴、泣いてる奴、傷ついてる奴...そういう奴を放っておけない世話焼き症な所は昔と変わってない。この前の襲撃の時もそうだ。こいつは、自分が傷つくことを厭わず誰かを守る。根からのヒーロー気質だ。
俺はまだ弱い。だから、さっきの言葉もあいつが忘れてるであろうこの記憶も俺の中だけに秘めておくことにした。
いつか、ちゃんとお前に面と向かって言える俺になるその日まで....。
"約束したからな、守るって"
Fin
→あとがき