入学
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イー娘として最後のコンサート、いわゆる卒業コンサート。
それは、勉強・個性の訓練に加えダンスレッスンやボイトレ、ライブリハなどもある上、卒業間近ということもあり取材やら番組オファーが立て込みかなりの多忙となった。そんな多忙な日々を数ヶ月乗り越え、迎えた最後の大舞台、卒業コンサートのチケットは全部の会場で10分以内に売り切れという売れ行きとなった。
コンサートグッズは会場販売では混雑と売り切れ続出でまるで回らなかった為後日インターネットでの追加販売が決定した。
最後ということもあり私のグッズはイー娘在籍中で最高の売上となった。
多くのファンが風舞莉紗というアイドルを愛してくれたんだなと実感すると寂しくもありこれで終わりだと思うと悲しい気持ちになってくる。
そして迎えた卒業コンサート最終日。
念願の武道館で行われた。
今日は私の家族と轟家が総出で見に来てくれてる。
精一杯踊り、精一杯歌い..今日を最高のコンサートにしたら私はアイドルの人生に終止符を打ち、今度はヒーローを目指す。
「皆さんご存知かと思いますが、イー娘を結成時から4年間一緒に作り盛り上げ、支えてくれたりんりんこと、風舞莉紗が今日のコンサートを最後に卒業となります」
グループの子が、私に前に出るよう誘導し私はみんなより前に出た。
『イブニング娘としての4年間。デビューして1、2年は中々努力が結果に繋がらず、頑張った人が報われる世界じゃないって頭では分かって居ても何度も気持ちが押し潰されそうになりました。
辛いこと、苦しいこと色々あったけれど、でもこのグループで、このメンバーと一緒にファンの皆さんに囲まれてこの4年間を笑って振り返ることが出来てとても幸せです!
アイドルとしての私は今日で終わります。
これからは、ヒーローを目指して今度公に出てくる時はプロヒーローとして皆さんの前に出てきます!』
シーン...
会場が急に静まった。
『ていう衝撃的な発表は、やっぱりテレビよりも先にファンの皆に1番最初に伝えたかったので今日が初めての告白です!』
見渡したファンの皆は明らかに、ポカーンとしていたが私の言葉を聞いてたくさんの声援をくれた。
「頑張れー!」
「個性はどんな個性?」
「プロヒーローとしてのりんりん楽しみにしてるよー!」
「アイドル辞めてもずっと応援してるよ!」
その言葉達を聞いてMC中、溢れそうになりながらもせき止めていた涙が溢れてしまった。
芸能界は運の世界。
努力した人が報われる世界じゃない。
タレントとも違う。
アイドルは選ばれなきゃなれない。
自称でアイドルは語れない。
アイドルは夢を与える仕事。
けど、その夢を求める人がいなければ存在意義はない。
だからこそ、私をアイドルとしての地位を固めてくれたファンの人達は私の宝物。
だから、たとえ涙が溢れても私ができる恩返し。それは..
『私をアイドルにしてくれて、ありがとうございました!!』
ありったけの思いを込めた笑顔を届けること。
『ヒーローを目指す、これからの私をどうか応援していてください!4年間ありがとうございました!』
無理に涙を止めようとはしなかった。
この涙は、私がこの4年間メンバーやスタッフ、ファンの人たちと紡いできた絆の形だと思うから。
涙が止まらなくても最後まで歌いきる。最後まで踊りきる。
4年間の私の集大成。
アイドルとしての、風舞莉紗の最後を。
皆の記憶に焼き付けて貰うために。
幕が降りる最後の瞬間まで....全力で。
コンサートのMCでヒーローを目指すということを宣言したことは翌日にはトピックニュースとなりSNSでもかなり話題になり、ニュースも雑誌もその話題で持ち切りになってしまった。
覚悟はしていたし、黙っていたって雄英に通ってればいずれバレて風舞莉紗が雄英にいる?!ってなるんだから早いか遅いかの違いなんだけれども。
「ヒーローを目指してヒーロー科に進学するというのは本当ですか?」
『本当です』
「もう進学先はきめてらっしゃるのですか?」
『プライベートな事ですし学校にも迷惑がかかるので公表はしません』
「ヒーローを目指すと公表したのはなぜですか?」
『ヒーロ―科の学校に入ればどこかで必ずバレて、こういう騒ぎになってしまうと思ったからです。
で、何が言いたいかというと...
生半可な気持ちではなくかなり真剣にヒーロー目指してますし、仕事で個性の特訓も勉強も疎かになったものを取り返さなきゃいけないので、今日を機に切実にそっとしといてください。お願いします。学校がもし判明したとしても他の生徒の方への影響もありますので、学校まで押しかけて来たりしないように心からお願い申し上げます』
「ヒーローを目指すきっかけは?!」
『子供の頃からの夢です。事情があって芸能界に入りましたけど、やっぱりヒーローになりたかったので』
卒業発表後の記者会見の倍の3時間はかかったであろう今日の記者会見。ここまでお願いしても尚メディアは押しかけてくるんだろう。伊達に4年間芸能界にいない。メディアはそういうもの。
人の心情や事情なんて全くもって知らんぷりでスクープ取る事ばかり。中にはそうじゃない人もいるんだけど。
けど、私を入れる事で何かと不利益や迷惑が掛かることを承知で受け入れてくれる学校の為に私が出来る事はこれくらい。
そして、ヒーロー科に通えば今度はビルボチャート32位でそれなりに認知度はあるプロヒーローシンギ―の娘としても目立ってくる。というよりも、イー娘の風舞莉紗はシンギ―の娘だった!っていう衝撃度の方が高いか。
何はともあれ、私に出来る事は全てやった。
後は、入学の日を待つだけだ。
これで私のアイドルとしての人生は本当に終わった。
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