Season4
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緑谷「じゃあ僕、検査と診察あるからここで」
『ん、私みんなのお見舞い行ってくるね』
緑谷と別れた私は、最初に切島の所に向かった。
『切島?』
ノックすると元気な返事が聞こえたからドアを開けると中には顔面まで包帯ぐるぐるでもはや目しか見えていない切島がベッドの上であぐらをかいて座っていた。
切島「おぉ、風舞!お前、大丈夫だったか?」
『切島と比べたら全然大したことないよ』
切島「そっか、それは良かった」
『切島こそ、大丈夫?』
切島「おう!見た目はこんなだけど元気だぜ!」
『..そっか。良かった』
安心してホッと肩を撫で下ろすと、いつも明るい切島が途端にしんみりとして不思議に思った私は首を傾げた。
切島「お前が床に伏せるような重傷負わなくて良かったよ」
『!』
切島の言葉の意味は単に私のケガの事だけじゃない。私に何かあった時の焦凍くんの事も気にかけて言ってくれてるんだ。
いつも分け隔てなくクラスの皆を見て、気にかけている優しい奴だから。
『ありがとね、切島』
切島「? 何がだ?」
『切島が、轟くんの事教えてくれたから。無理するなって言ってくれたから...頑張れた』
切島「!!
そっか。ダチの力になれたんなら良かったぜ」
そうニカッと笑って言う切島を安心させるように私も今出来る精一杯の笑顔を見せた。
結局、八斎會との戦いを終え、全員治療と検査のため入院した私達インターン生は翌日リカバリーガールに治癒してもらい通形先輩を除いた全員が一足先に退院することになった。
『あ、切島。緑谷』
帰宅する為病院の外に出ると、緑谷と切島が制服姿で話していた。
切島「おう!風舞!身体大丈夫か?お前も結構重傷だったって聞いたぜ!?」
『うん、大丈夫。痕までキレイに消えたから。二人も大丈夫?』
緑谷「うん、傷は完治したよ」
切島「俺もだ!」
『そっか』
お互いの無事を改めて確認し合いホッとしていたのも束の間。
帰ろうと歩き出したその目の前にはパトカーが止まっていて警察に呼び止められた。
八斎會との抗争についての詳細を聴取する為警察署への任意同行を求められた。
**
警察での聴取を終えた私達はその後それぞれのインターン先に出向きやらなければならない手続きがあるとの事で一度別れた。
インターン先はエンデヴァー事務所だけど、今回の死穢八斎會の件に関してはグルーガン事務所への派遣という形でグルーガン事務所が私の監督責任者となってる為私はグルーガン事務所に向かった。
『すいません、インターン生の風舞莉紗です』
エンデヴァー事務所はどちらかといえば縦に大きな事務所だけど、グルーガン事務所は横に大きな事務所のようで普通の学校とグラウンドを足したくらいの敷地面積がある3階建てだった。
「莉紗さん、待ってましたよ。所長は3階の所長室でお待ちです。そこのエレベーターからどうぞ」
『ありがとうございます』
柔らかい笑みで対応してくれる受付の人に軽く会釈をして誘導されたエレベーターに乗り込み3階のボタンを押した。
チンと言う音と共にエレベーターのドアが開くと仰々しいほど大きなドアが目の前に広がった。
数回ノックをして中から聞こえた返事。静かにドアを開けると、机と睨めっこをしていた父さんが私を見た。
寛治「莉紗、急に来てもらってすまんな」
『別にいいけど。用事は?』
寛治「今回の事件に関与した全員がしなければならない手続きや記入書類があってな。疲れてるところ悪いな」
『必要な事なんでしょ?仕方ないよ』
父さんが手渡してきた書類を受け取り、目を通しながら必要事項を記載しているとふと父さんに名前を呼ばれた。
『何?』
寛治「よく無事に戻ってきてくれた」
ふと頭に乗った重み。
想像もしていなかったし、今まで聞いた事も無かった声のトーンに思わず父さんを見た。
その表情は、見たこともないほどに穏やかで優しい表情だった。
幼少の頃はどんなケガを負っても心配すらされなかった。
褒めて貰ったことも、抱きしめてもらったことも頭を撫でて貰ったこともなかった。
なのに今父さんは、私の無事を喜んでいる。
寛治「ご苦労さん。母さんを守ってくれて、無事に帰ってきてくれてありがとな莉紗」
ああ、うちも...本当に普通の家族になったんだ。
目の前の書類に視線を戻し、そんなことをぼんやりと思っていた。
**
それから寮に戻ったのは夜だった。
麗日「デクくん!切島くん!莉紗ちゃん!」
寮に入ろうとしたところを名前を呼ばれ振り返るとお茶子ちゃんと梅雨ちゃんが走ってやってきた。
切島「麗日!梅雨ちゃん!」
緑谷「麗日さん達も今戻ってきたの?」
麗日「うん!」
蛙吹「リューキュウ事務所で色々と手続きがあったの」
切島「こっちもだよ」
『書きすぎで肩凝った』
麗日「ハハ..苦笑
何か、久しぶりに帰ってきた感じがするね」
5人で寮の中に入ると、クラスの仲間達が駆け寄ってきた。
峰田「帰ってきたぁ、奴らが帰ってきた!!」
皆が一斉に声をかけてくるもんだからどれに反応すればいいか困りもんだったけど自分達の身を案じてくれていたという事が嬉しくて5人は顔を見合わせた。
透に抱きしめられながらガトーショコラを食べる私達女子。
『(あ、焦凍くん....)』
皆の一番後方でポケットからスマホを取り出しムスッとした表情で画面を注視し寮の外に出て行った焦凍くんが気になったけどあの顔は多分おじさま関連。自分が気にしても仕方ないと自分達を取り囲んでくれる他のクラスメイト達と言葉を交わし合った。
飯田「みんなー!心配だったのは分かるが、落ち着こう!報道で見たろ。あれだけの事があったんだ。級友であるなら、彼らの心を労わり静かに休ませてあげるべきだ。身体だけでなく、心もすり減ってしまっただろうから」
飯田の言い分が最もだと思ったのかクラスの皆が途端に静かになった。
緑谷「飯田くん、ありがとう。でも、大丈夫」
そういう緑谷の表情は、どこか吹っ切れたような清々しい表情をしていた。
飯田「じゃあ、いいかい...」
とっても心配だったんだぞ!!と激しく緑谷を揺さぶり始めた飯田。
瀬呂「おめぇが一番激しい!」
『..........』
記憶に残るのは、サーナイトアイが救急車に乗せられる時に緑谷に見せた笑顔。
そして、自分を庇い重傷を負った母の姿。
母は一命を取り止めたものの傷が深く1度のリカバリーでは治しきれず未だに入院している。
自分は役目を果たせたんだろうか...
自分の存在は、今回の案件に必要だっただろうか...
1人ぼんやりと考える私の頭の中では病院での会話が思い起こされた。
『..庇ったでしょ、あの時』
楓子「え?」
『.........』
楓子「そりゃ、庇うよ。だって、大事な娘だから」
『........』
楓子「今更何言ってんだ、って言いたくなるだろうけどね...。
今の私達に出来ることは、莉紗がヒーローになるための道の障害物を払う手伝いをしてあげること。私達の力が必要な時、莉紗がそれを求めてくれることがあったら全力でそれに応えること。それが、家庭を...子供を省みない最低な親だった私達がしてあげられる償いだと思ってるんだ」
そう言って笑って言う母の顔は、焦凍くんを大切に、そして心から愛するかつての冷さんの表情とよく似ていた。
***
『相澤先生...』
母と話した事で、さらに私の中にはもやもやした気持ちが残った。
どうにか気持ちの整理をつけたくて、入院中の相澤先生の部屋に来た。
相澤「どうした」
『.....いえ』
相澤「...良かったな、ウィンドリアさん。大事に至らなくて」
『...私が一緒じゃなきゃあんな傷負ってなかったですけどね』
相澤「ヒーローはどんな状況でも危険がつきものだ。
お前も、無事でよかったよ。風舞」
『.....先生は、ああ言ってくれたけど。私、分からないです。
私の役目って...一体何だったの?』
私がそう尋ねると、先生は何か考え込むように私の顔を見た後窓の外に視線を移した。
相澤「.....風舞。お前の目指すヒーロー像って何だ」
『え...?』
相澤「それが、お前の役目だ」
私の目指すヒーロー像....。
私が目指すもの...。
そう言えば、私って何でヒーロー目指したんだっけ?
焦凍くんがヒーローを目指したから?
焦凍くんを支えるため?
じゃあ、焦凍くんに私が必要なかったら...。
私がヒーローでいる理由は...。
上鳴「なあかっちゃん、素直になれって!」
最近の癖になりつつある自分の世界に入り込んで考え込む癖。
またもやボーっと考え込んでいたら、上鳴が爆豪にみんなの輪に入らないのかといじり倒している。そんな上鳴に爆豪は寝る!と言って部屋に向かっていった。
そこに爆豪と入れ替わるように寮に戻ってきた焦凍くん。
轟「緑谷、麗日、切島、蛙吹、風舞....悪いが俺も」
上鳴「うぇっ?!早くね?老人かよ!」
蛙吹「爆豪ちゃんはともかく、轟ちゃんまでどうしたのかしら?」
耳郎「あいつら、明日も仮免の講習なんだ。..にしても早いけど」
『(そっか、仮免講習..始まってたんだ)』
ぼんやりと部屋に戻っていく焦凍くんの後ろ姿を眺めているとスマホが振動しているのに気づき私は画面を確認した。
そこには、エンデヴァーの文字が...。
『(おじさま...?)』
私は電話してくる、とみんなに声をかけて寮の外に出た。
『もしもし』
《莉紗、身体は大丈夫か?》
『え、あ。うん、大丈夫』
《そうか》
『明日からまたお願いします』
《ああ、だがあんな事があった後だ。明日もインターン活動は休みにする》
『あ、はい。分かりました..』
《それでだな...。
その、明日なんだが...俺に付き合ってくれないか?》
『..どこに?』
《少し用事があってな》
『(その用事は言わないんだ...)
分かりました』
《じゃあ、明日の9時にそちらに迎えに行く》
『はーい』
電話を切った私は空を眺め、明日起こる事を想像した。
『何だろう...』
**
『め、目立ってる目立ってる....』
翌日、おじさまが待つという校門前にやってきた。インターンは今日は休みだと言っていたがおじさまは仕事なのだろうか。何故かコスチュームを着て校門前に立っていた。
休みとはいえ生徒が全く寮の外に居ないわけもなく近くを通る生徒がおじさまを見ては、近づいては来ないけど「エンデヴァーがいる!?」「何でNo.1が?!」なんで会話があちこちで聞こえ、思いっきり注目されていて気まずくなり注目を浴びるのがそもそも好きでは無い私は俯きながら急ぎ足で車に乗り込んだ。
『めちゃくちゃ目立ってますけど...何でコスチューム?』
エンデヴァー「ああ、すまん」
『んで、今日の用事は?』
エンデヴァー「ああ、一緒に来てもらいたい」
『どこに?』
エンデヴァー「...仮免講習の会場だ」
少し間を置いたおじさまが放った言葉。
『は?』
エンデヴァー「俺が直々に講習の様子を見ようと思ってな」
『はぁ...で?』
エンデヴァー「だが、焦凍はあまり来てほしくないようでな」
『(でしょうね...ん?)
行くって焦凍くんに直接言ったの?』
エンデヴァー「ああ、昨日の夜電話をした。だが、途中で電話を切られてしまってな」
『....(おじさま関連だとは思ってたけど、あの険しい顔にはそんな理由があったのか)』
エンデヴァー「このまま俺が見に行ったら焦凍は怒るんじゃないかと思ったからお前に来てもらったわけだが」
『意味が分からない。私居たって怒るときは怒るよ』
エンデヴァー「そ、そうか...」
それを聞いて少し焦ったのか額から汗が流れている。
『大体、焦凍くんの知らない所で私の事連れ回してるの知ったら焦凍くんもっと怒るよ?』
エンデヴァー「.....」
黙ってしまった...。ちっともNo.1の威厳ないな、おい。
『まあ...私も焦凍くんの講習見たい気持ち、ちょっとあるから付き合うのは良いけどさ』
エンデヴァー「! ありがとう、莉紗」
**
会場について、飲み物を買ってくるとおじさまに一言告げて自販機を探しに行った私。
『あ...』
爆豪「あっ?!クソアマ!!」
轟「お前...何で...」
ばっちり遭遇してしまった。
『あー..アハハ...あ、何か飲み物でも買ってあげるよ!爆豪何が良い?』
爆豪「...ミルクティ」
『了解~』
要らねぇ、とは言わんのかいと思いながらも誤魔化すようにお金を入れてミルクティのボタンと緑茶のボタンを押し、取り出した飲み物を手渡した私。
轟「なあ」
『あ、いいのいいの。餞別がてら受け取っといて?』
話しを逸らすように振り返る私の背中越しに焦凍くんから一言。
轟「お前、親父に連れて来られただろ」
前に出そうとした足が固まった。
『(バレてるー...;)』
バレてしまっているなら仕方ないと焦凍くんに向き合って静かに頷いた私。
轟「ハァ..しょうがねぇな、あいつは。悪りぃな」
『まあ、暇だったからいいんだけどね』
爆豪「勉強してろや」
至極痛烈な一撃を撃ち込んでくる爆豪。
『う、ごもっとも..』
爆豪「ケッ、朝からテンションだだ下がりだぜ」
そう言って憎まれ口を叩くとミルクティをポンポンと宙に浮かせながらその場を離れてった爆豪。
『ごめんね、何か...全然距離置いてあげらんなくて』
轟「え?あぁ、それは大丈夫だ。むしろ...」
『むしろ?』
轟「お前見てんなら、もう情けねぇとこは見せるわけにいかねぇから。気合入る」
どこか遠いところを見ながら柔らかい笑みを浮かべる焦凍くん。
何気なしに言ってるであろう焦凍くんのその言葉は、私を喜ばせるには十分すぎた。
今すぐにでも焦凍くんに触れたい。
触れて欲しい。
抱きしめて欲しい。
キスしてほしい。
そんな衝動に駆られるほどに愛しさがこみ上げくる。
『.....焦凍くん』
轟「ん?」
でも、約束したから。
困らせたくないから。
『...頑張ってね。行ってらっしゃい』
今私に出来る最大限の笑顔を見せて送り出した。
轟「...おう」
私の言葉に焦凍くんは一瞬悲しそうな表情を浮かべたがすぐにいつもの顔で一言呟き私の横を通り過ぎ更衣室に向かっていった。
きっと私の作り笑いに気づいたんだろうな。
焦凍くんは天然だけど、鈍感だけど..。
私の事に関しては鋭いから。
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