Season4
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
リューキュウがナイトアイに会議を始めるよう告げるとナイトアイが静かに話し始めた。
サー「あなた方が提供してくれた情報のおかげで、調査が大幅に進みました。死穢八斎會という小さな組織が何を企んでいるのか、知り得た情報の共有と共に協議を行わさせて頂きます」
切島「俺、完全に置いてけぼりなんすけど、八斎...なんすか?」
ファット「悪いこと考えてるかもしれないから、みんなで煮詰めましょのお時間や。お前らも、十分関係してくるで」
そして全員が席に着き、ナイトアイ事務所のサイドキックのバブルガールが進行のもと会議が始まった。
その内容と言うのが、ナイトアイ事務所が約2週間前から死穢八斎會という指定ヴィラン団体について独自調査を進めていた所、死穢八斎會はここ1年の間に全国の組織外の人間や同じく裏稼業団体との接触が急増しており、組織の拡大・金集めを目的に動いてる様子の話。そして調査開始からすぐに、ヴィラン連合の1人。分倍河原仁、ヴィラン名トゥワイスと接触し、尾行を警戒され追跡は叶わなかったが警察の協力の元、組織間でなんらかの争いがあったことが確認出来たとの話し。
バブル「このような課程がありHNで協力を求めたわけで..「そこ飛ばしていいよ」
聞きなれない言葉に莉紗達が疑問符を浮かべた。
麗日「えいちえぬ..?」
波動「ヒーローネットワークだよ。プロ免許を持った人だけが使えるネットサービス。全国のヒーローの活動報告が見れたり、便利な個性のヒーローに協力を申請したりできるんだって!」
ロック「雄英生とは言え、ガキがこの場にいるのはどうなんだ?話しが進まねぇや。本題の企みにたどり着く頃には日が暮れてるぜ」
ファット「ぬかせ!この2人はスーパー重要参考人じゃぞ!」
そう言ってファットガムが指したのは切島と天喰先輩だった。
切島「俺..達?」
天喰「ノリがきつい...」
ファット「とりあえず、初対面の方も多いと思いますんでファットガムです。よろしくね!」
麗・蛙「「丸くてかわいい..ww」」
サー「八斎會は認可されていない薬物の捌きをシノギの一つにしていた疑いがあります。そこでその道に詳しいヒーローに協力を要請しました」
ファット「昔はゴリゴリにそう言うのぶっ潰しておりました。そんで先日の烈怒頼雄斗デビュー戦。今までに見たこともない種類のもんが環に撃ち込まれた。個性を壊す薬」
"個性を壊す"
ファットガムが発したその言葉にその場にいた誰もが目を見開いた。
通形「えぇ?!環、大丈夫なんだろ?」
天喰「ああ、寝たら回復したよ。見てくれ、この立派な牛の蹄」
『(牛..の蹄?)』
通形「朝食は牛丼かな?」
『(...牛丼?)』
ロック「回復すんなら安心だな。致命傷にはならねぇ」
サー「いえ、その辺りはイレイザーヘッドから」
相澤「俺の抹消とはちょっと違うみたいですね。俺のは個性を攻撃してるわけじゃないので。基本となる人体に特別な仕組みが+αされたのが、個性。その+αが一括りに個性因子と呼ばれています。俺のはあくまで、その個性因子を一時停止させているだけでダメージを与えることは出来ない」
ファット「環が撃たれた直後、病院で見てもらったんだがその個性因子が傷ついてたんや。幸い今は自然治癒で元通りやけど」
サー「その撃ち込まれたものの解析は?」
ファット「それが環の体は他は異常なし。ただただ個性だけが攻撃された。撃った連中もだんまり、銃はバラバラ!弾も撃ったきりしか所持してなかった。ただ、切島くんが身を呈して防いだおかげで、中身の入った1発が手に入ったっちゅーわけや。そして、その中身を調べた結果。むっちゃ気色悪いもんが出てきた。人の血や細胞が入っとった」
リューキュウ「つまりその効果は人由来..個性ってこと?個性による個性破壊」
「さっきから話が見えてこないんだが、それがどうやって八斎會と繋がる?」
ファット「今回切島くんが捉えた男。そいつが使用した違法薬物な、そういうブツの流通経路は複雑でな。今でこそかなり縮小されたが、色んな人間..グループ組織が何段階にも卸売りを重ねてようやっと末端にいきつくんや。八斎會がブツを捌いとった証拠はないけど、その中間組織と八斎會は交流があった」
サー「先日リューキュウたちが対峙したヴィラングループ同士の抗争。そのグループの元締めが、その交流のあった中間売買組織だった」
リューキュウ「巨大化した一人は、効果の持続が短い粗悪品を撃っていたそうよ」
その時サーナイトアイがモニターに移した写真を見て緑谷と通形が反応した。
サー「若頭 治崎の個性はオーバーホール。対象の分解・修復が可能という力です。分解、一度壊し直す個性。そして、個性を壊す弾。
治崎には"壊理"という名の娘がいる。出生届もなく詳細は不明ですが、ミリオと緑谷が遭遇した時には手足におびただしいほどの包帯が巻かれていた」
『(まさか、でしょ...?)』
リューキュウ「まさかそんなおぞましい事を...」
グラントリノ「超人社会だ。やろうと思えば、誰でも何でもできてしまう」
ウィンドリア「だからってやろうと思わないけどね」
切島「な、なに...何の話しっすか?」
ロック「やっぱガキはいらないんじゃねぇの?分かれよな。つまり治崎って男は、娘の体を銃弾にして売り捌いてんじゃねぇってことだ」
「「「!!」」」
切島「そ...」
麗日「そんな...」
『..........』
サー「実際に銃弾を売買しているのかは分かりません。現段階では性能としてはあまりにも半端です。ただ、仮にそれが試作段階にあるとして、プレゼンの為のサンプルを仲間集めに使っているとしたら..確たる証はありません。だが、全国に渡る仲間集め・資金集め。もしも弾の完成系が完全に個性を破壊するものだとしたら...。
悪事のアイディアがいくつでも湧いてくる」
ファット「想像しただけで腑煮え繰り返る...今すぐガサ入れじゃ!」
ロック「ケッ、こいつらが子供保護してれば一発解決だったんじゃねぇの?」
『(なんだ、こいつ....無責任な事言うな)』
ウィンドリア「学生の身分で監督者の指示なくそんな事出来るわけないわ」
サー「その通り、全て私の責任だ。2人を責めないで頂きたい。知らなかったこととは言え...いいえ、2人ともその子を助けようと行動したのです。緑谷はリスクを背負いその場で保護しようとしたし、ミリオは先を考えより確実に保護できるよう動いた。
今この場で1番悔しいのは、この2人です」
その時、緑谷と通形がガタンと大きな音を立てて立ち上がった。
緑谷「今度こそ必ず壊理ちゃんを..!」
緑・通「「保護する!」」
サー「そう、それが私達の目的となります」
ロック「ケッ、ガキが粋がるのも良いけどよ」
『あいつマジムカつく....』
小声で言ったものの、隣に座る母さんには聞こえていたらしく苦笑いしながら落ち着いて、と諭された。
ロック「推測通りだとして、若頭にとっちゃその子は隠しておきたかった核なんだろ?それが何らかのトラブルで外に出ちまってた。あまつさえガキンチョヒーローに見られちまった。素直に本拠地に置いとくか?俺なら置かない。攻め入るにしてもその子がいませんでした、じゃ話しにならねぇぞ。どこにいるのか特定出来てんのか?」
リューキュウ「確かに。どうなの?ナイトアイ」
サー「問題はそこです。何をどこまで計画しているのか不透明な以上、一度に確実に詰み叩かねばならない。そこで八斎會と接点のある組織、グループ及び八斎會の持つ土地。可能な限り洗い出しリストアップしました。みなさんには、各自その場所を探って頂き、可能な限り拠点となり得るポイントを絞ってもらいたい」
「それで俺たちのようなマイナーヒーローが呼ばれたのか」
「どう言う事だ?」
「見ろ、ここにいるヒーローの活動地区とリストがリンクしてる。土地勘のあるヒーローが選ばれてんだ」
『(だからおじさまの所は呼ばれてないのか。No.1の事務所にチームアップの依頼いかないのはおかしいと思ってたけど....)』
ファット「オールマイトの元サイドキックの割に、随分慎重やな。回りくどいわ!こうしてる間にも壊理ちゃん言う子が泣いてるかもしれんぞ!!」
サー「我々はオールマイトにはなれない。だから分析と予測を重ね、助けられる可能性を100%に近づけなければ..」
グラン「焦っちゃいけねぇ。下手に大きく出て捕らえ損ねた場合、火種が大きくなりかねん。ステインの逮捕劇が連合のPRになっちまったようになぁ。むしろチンピラに個性破壊なんつー武器流したのも、そういう意図があったのかもしれん」
ナイトアイに続き冷静に言うグラントリノにファットガムは食い下がらんとした態度に声を上げた。
ファット「考えすぎやろ!そないな事ばっか言っとったら、身動き取れへんようになるで!」
相澤「あのー、1つ良いですか」
激昂してるファットガムを遮るように力ない声を出し手をあげたのは緑谷達の担任、相澤だった。
相澤「どういう性能かは存じませんが、サー・ナイトアイ。未来を予知出来るなら、俺たちの行く末を見れば良いじゃないですか。このままでは少々、合理性に欠ける」
サー「それは、出来ない」
相澤「....?」
サー「私の予知性能ですが、発動したら24時間のインターバル..つまり、1日1時間。1人しか見ることが出来ない。そしてフラッシュバックのように一コマ一コマが脳裏に映される。発動してから1時間の間、他人の生涯を記録したフィルムを見ることが出来る..と考えて頂きたい。ただし、そのフィルムは全篇人物の視覚からの視点。見えるのはあくまで個人の行動と僅かな周辺環境だ」
相澤「いや、それだけでも十分すぎるほど色々分かるでしょう。出来ないとは、どういう事ですか?」
相澤の追撃にナイトアイはメガネを直しながら続けた。
サー「例えば、その人物に近い将来、"死"。ただ、無慈悲な死が待っていたらどうします?私の個性は、行動の成功性率を最大まで引き上げた後に勝利のダメ押しとして使うものです。不確定要素が多い中で闇雲に見るものじゃない」
ロック「はぁ?死だって情報だろ!そうならねぇ為の策を講じられるぜ!」
サー「占いとは違う。回避出来る確証はない」
ロック「ナイトアイ!よく分かんねぇな!良いぜ、俺を見てみろ!いくらでも回避してやるよ!」
サー「ダメだ!!」
これまで常に冷静に話していたナイトアイが声を荒らげた。
ロック「ナイトアイ....」
その様子からこれ以上は無駄だと判断した一同はそれ以上ナイトアイの個性について口にするものは居なかった。
ウィンドリア「とにかく、このままにはしておけない以上動くしかないわ」
リューキュウ「そうね、とりあえずやりましょう。困ってる子がいる...これが最も重要よ」
トップに名をつらねる2人がそう言ったことでその場の空気は一気に変わった。
サー「娘の居場所の特定、保護..可能な限り角度を高め早期解決を目指します。ご協力、よろしくお願いします」
ロック「もう一ついいか?ウインドリアさん。あんたの娘さん、神野の時に攫われた子でしょ。ヴィランに狙われたのに、ヴィランが関わってるかもしれねぇこの案件に参加させるつもりなんすか?」
『(来た....)』
ウィンドリア「ええ」
ロック「普通しますかね、んな事。大体、職場体験じゃないんだ。こっちは子守りの仕事が1つ増えるようなもんなんすよ」
ウィンドリア「心配しなくても娘の安全は親の責任の元で同行させる。この子の能力が今回の案件に有効打だと職場体験でこの子を見ていたエンデヴァーと親である私が判断したうえの事。参加させる事はナイトアイも了承済みよ」
ロック「ハァ..そうっすか。俺は子守りはしませんよ」
ウィンドリア「結構よ」
**
会議が終わった後、学生たちは相澤先生から話があると言われ別室の椅子に座って相澤先生が来るのを待った。
自分達が参加しようとしている案件の重大さに、皆が神妙な面持ちでそれぞれが考え事をしている。
そんな中、ずっと俯いていた緑谷が食いしばるように事の経緯を呟き出した。
緑谷「あの時、強引にでも保護していれば...今頃壊理ちゃんは」
切島「そうか..。そんな事が、クッ。悔しいな」
麗日「デクくん..」
『悔やむな、とは言わないけど。あまり思い詰め過ぎたらダメだよ、緑谷』
緑谷「けど..」
『もしそこで、緑谷達がその子を保護していても、保護しきれなかったかもしれないし。仮に壊理ちゃんは助けられてても、別の問題が起こっていたかもしれない』
緑谷「え...」
『その子を取り返す為の敵側からの奇襲やヒーロー側への報復。もしかすると、一般人すら巻き込んで理不尽な虐殺だってあるかもしれない』
麗日「莉紗ちゃん...!!」
あまりにも脅すような物言いに思わず麗日が莉紗に制止をかけたが莉紗は言葉を止めようとはしなかった。
『ケガした子を手当するだけの人助けとは違う。そうなった場合の責任を私達は取れる立場も力もない。
万が一戦争にでもなったら、それに備えるだけのパイプだって、ただの学生である私達にはない。助けるという行為もさ、助けるその瞬間だけじゃなくて助けたその先の事にも責任を持たなきゃいけないんだと思うんだ。
だから、プロなんだと思う」
麗日「莉紗ちゃん...」
『ヴィランに襲撃された時、私なりに今出来る力を出し切って戦ったつもりだった。だけど、爆豪は攫われ、自分も奴らの手に落ちた。
そして、神野でたくさんのプロヒーローたちに救出された。私達の救出の為に多くの人が傷ついた。それで私は気づいた。
どんなに頑張ったって、資格未取得で何の責任も取れない私達は、生かされて守られるだけの、ただの子供なんだって事』
莉紗のその言葉は、多くのプロや警察の手を煩わせ守られた莉紗だからこその言葉だった。
その言葉は皆にとって重みがあり、誰もその言葉には反論出来なかった。
相澤「その通りだ」
突如聞こえたその声に皆が入口の方に目をやると相澤が姿を現した。
相澤「通夜でもしてんのか」
生徒達の重苦しい雰囲気を感じ相澤が眉を顰めて言った。
蛙吹「ケロ、先生..」
相澤「あー、学外ではイレイザー・ヘッドで通せ。いや、しかし..今日は君たちのインターンの中止を提言する予定だったんだがな」
相澤のその言葉に一同が驚愕した。
切島「今更何で?!」
相澤「ヴィラン連合が関わってくる可能性があると聞かされたろう。風舞、お前はヴィランから狙われ誘拐されたという実害があんだ。親であるウィンドリアさんがああ言った手前その場では何も言わなかったが。学校としては当然、話が変わってくる」
『それは...そう、だけど』
相澤「ただなぁ、緑谷。お前は、まだ俺の信頼を取り戻せていないんだよ」
相澤のその言葉に皆の脳裏に浮かんだのは入寮の時に言った相澤の言葉だった。
"正規の手続きを踏み、正規の活躍をして信頼を取り戻してくれるとありがたい"
相澤「残念な事に、ここで止めたらまた飛び出してしまうと確信してしまった」
相澤は緑谷の目の前に屈み、緑谷に視線を合わせた。
相澤「俺が見ておく。するなら精一杯の活躍をしよう、緑谷。分かったか?問題児」
静かに言ったその一言と共に相澤の拳が緑谷の胸にポスッと叩きつけられた。
緑谷「っ、はい!」
相澤「風舞、お前もだ。利口なようでお前も案外ムチャして飛び出す所があるからな。自分が、ヴィランに狙われ周りに不必要な心労と労力をかけてしまう立場だって事をわきまえてしっかりやれ」
『先生...はい!』
そして、それらの言葉達に背中を推されたのは通形も同じだった。
相澤「気休めを言う。掴み損ねたその手は、壊理ちゃんにとって必ずしも絶望だったとは限らない。
前、向いて行こう」
緑谷「はい!」
麗日「相澤先生!」
相澤「ここではイレイザーだ」
切島「俺!イレイザーヘッドに一生ついて行きます!」
相澤「一生はやめてくれ」
切島「すんません!!」
麗日「切島くん、声デカいよ...」
『切島に教師は無理でしょ』
切島「いや、あー...まあ...んー、って風舞に言われたくねぇ!」
1年組がいつもの調子を取り戻して盛り上がっていると、通形が緑谷を呼んだ。
通形「今度こそ必ず!」
緑谷「はい!必ず!」
.