Season4
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相澤「おはよう」
「「「おはようございます!」」」
相澤「HRに入る前に、風舞。お前、放課後職員室に来い」
『え?』
相澤「予約が取れた」
突然の"予約"という言葉に何の事やらと一瞬考えたら莉紗だがすぐに心当たりを思い出した。
『あー』
上鳴「予約?」
『うん、個性検査の予約』
緑谷「個性検査?」
個性届を既に出してるはずなのに個性検査の予約をとっている事情を知らないクラスメイトたちは疑問符を浮かべて莉紗を見た。
相澤「お前、こいつらにまだ話してないのか」
『あーと、そう言えば....』
葉隠「なになに?莉紗ちゃん、個性どうかしたの?」
『個性がちょっと違ってたみたいで..』
上鳴「え、"風"と"粘着糸"じゃねーの?」
『粘着糸は問題なくて。風も、風で間違いはないんだけど風以外にも使えるようになって..』
緑谷「風舞さん...まさか"自然"の個性を?!」
莉紗の後ろで緑谷が机を叩きつけて立ち上がり興奮気味に言った。
『緑谷ピンと来るの早っ!』
芦戸「"自然"の個性?」
緑谷「うん!風舞さんのお母さんのウィンドリア、ピクシーボブ、スプラッシュのネイチャーファミリーの先人は3人のお母さん、つまり風舞さんのおばあさん..ヒーロー名ナチュラリウム!その個性は"自然"で、火、水、土、雷、風の全ての性質を扱うことが出来るんだ!だけど発現が特異な個性らしくて、ウィンドリア達はそれぞれ1つの性質しか使えなくて"自然"個性の研究に国を上げて力を入れたようだけど未だ未解明な部分が多いらしいんだ。ナチュラリウム自体も現役生活5年位で引退してしまったから認知度はそんなに高くないんだけど、でもその功績は確かなもので地方のヒーロー過疎化を問題視して、地域密着ヒーローを増やす活動をいち早く始めた人なんだ!
しかも、現役中の年間依頼達成率は通年90%以上の高い水準を維持し続けたスゴいヒーローなんだよ!」
目をキラッキラさせて語る緑谷。
身内の自分よりも詳しい事に後ろめたさと相澤の視線を感じ莉紗は少しだけ肩を竦めた。
相澤「なんだ、緑谷の方が詳しいじゃねぇか」
『............』
切島「へぇ!聞いてるだけでもなんかスゲェな!」
上鳴「お前が雷とか使っちゃったら俺いらなくなんじゃん!」
瀬呂「轟の左もな!」
耳郎「轟はともかく、アンタ元々需要高くないじゃん」
上鳴「まあなァ...って、おい!!」
クラスメイト達が莉紗の個性についてわーわーと盛り上がっているのに水を差すように口を開いた。
『盛り上がってるところ悪いけど、今んとこはまだ全部使えないから』
麗日「あ、そうなん?」
『水と土だけ』
上鳴「はぁ、良かった。今んとこ俺需要ある~」
『水と土使ってみて何となく思うけど、扱えるようになっても多分上鳴や轟くんみたいな性質特化のブッパタイプじゃないと思う』
緑谷「え、つまり?」
莉紗は手のひらに水の渦を作り皆に見せた。
『全部使えたとしても多分この"自然"個性の中での性質特化はあって。私は多分"風"に特化してる気がするんだよね。私、個性発現した時に小さいけどいきなり竜巻作れたんだよね。だけど、水も土も動かすのに精一杯って感じで』
相澤「まあともかく、仮免試験で試験的に使用は許可したが個性検査で"自然"と診断され個性届けを出した暁には本格導入して行くことになる。風舞、お前も自分の個性をしっかり把握していくように」
『はい』
相澤「お前らも、今後の連携や対戦にも影響する。しっかりこいつの新しい個性も見極めていけ」
**
今日のヒーロー基礎学は対戦形式の演習。1:1での対戦を行っていく事になった。
オール「さあ!くじ引きで対戦カードの決定だ!」
俺は砂藤との対戦になり、莉紗は常闇との対戦で第一試合になった。
『体育祭以来だね、常闇』
常闇「ああ、体育祭の時のようにはいかないぞ」
『もちろん』
開始の合図と共に先制で相手に向かって走り出したのは莉紗。
轟「珍しいな」
俺がそう呟くと近くで一緒にみていた緑谷達が俺を見た。
飯田「轟くん、珍しいって何の事だい?」
轟「風舞が初手から相手にツッコんでいくの。あいつ初手は結構慎重に敵の手を探りながら戦うタイプだからよ」
緑谷「そう言われてみれば...。"自然"個性は汎用性もあるし何より僕らはその個性を知らない。初見殺しで不意をつくことも出来るからかな」
麗日「莉紗ちゃんの中に勝算があるから強気に攻め込んでるって事かな?」
轟「いや、多分逆だ」
緑谷「逆?」
轟「あいつ自身"自然"の個性はまだ未解明な部分も多い。単純な相性では水は火に強いが実際の所はあいつの水はまだ俺の火を消せないんだ。個性の扱う技量やそれに費やすエネルギー量が違うからだ。だから誰にどの個性がどんな風に有効で無効なのか分からないことが多い。
だから、多分....」
常闇のダークシャドウが妨害してくるのも構わず突風と粘着糸で常闇とダークシャドウの意識を分散させながら常闇の懐に向かって走って行く莉紗。その表情はうっすらと笑っている。
緊張なんかしてねぇ。あいつは"自然"個性を試したくてうずうずしてんだ。
莉紗はダークシャドウに向かって土の壁を出し進行を妨害した。
ダークシャドウは影だが、物理をすり抜けるわけじゃねぇ。だから土の壁はダークシャドウを妨害するのに有効。
『個性伸ばしでダークシャドウ伸ばせる範囲も広がってるんでしょ?』
今度は竜巻を4つ出しダークシャドウの四方から攻める。
肉眼では分からないが多分粘着糸も一緒に飛ばしてるんだろう。
ダークシャドウは攻防に長け、基本的に隙はねぇ。
だから体育祭の時はダークシャドウを躱しながら直接常闇に粘着糸を取り付けてダッシュウィンドを当てて場外まで持っていった。
常闇の頭ん中では1度食らってるその戦法にも警戒してるだろう。
だがその警戒すら、もしかすると莉紗の術中かもしれねぇな。
常闇はダークシャドウを一旦自分の方に戻し広範囲に広げた。おそらくどこから粘着糸が飛んでくるのか分からない事への警戒だろう。
莉紗は軽く口角を上げると、地面に手をつき水を湧き上げさせた。ダークシャドウよりも大きな波が常闇に向かって放たれ、物理攻撃有効なダークシャドウは常闇もろとも波に飲まれた。
常闇はダークシャドウを使って浮遊形態になり水の中から脱出した。
常闇「攻めろダークシャドウ!」
常闇を抱えたダークシャドウが水の中から飛び出してきて、莉紗に向かって突っ込んできた。ダークシャドウを伸ばすスピードも上がってんな。確かに莉紗相手には何かをさせる前に仕留めるのが最善だ。だが....、莉紗のあの顔は何かを狙ってる顔だ。
『ダークシャドウを攻めさせて常闇は大抵動かないよね』
ダークシャドウが伸びた所に常闇の四方周囲に土の壁を出し囲んだ。すると常闇とダークシャドウが分離し、常闇の元に戻れなくなったダークシャドウ。続けざまに莉紗は常闇を閉じ込めた土の壁に向かって旋風拳を放ち土の壁に莉紗の拳が貫通した。そして腕を差し込んだまま動かないなと思っていると、程なくして壁の中で竜巻が巻き上がりそのうち竜巻の中に巻き上げられる常闇の姿が見えた。
莉紗は同時に粘着糸を出してたようで竜巻から放り投げられた頃には常闇は拘束されていた。
『悪いね~』
常闇「クッ...今回も完敗だ」
試合を見ていたクラスの奴らが口々に感嘆の声をあげた。
切島「マジか。チートかよ、風舞」
上鳴「いや、チートだろ、あれ」
瀬呂「アイツどんどんチートキャラになってくのな..」
麗日「うひょ~。相変わらず強いわ莉紗ちゃん」
緑谷「スゴい....1つ1つは単純作業なのにあーも組み合わさるとすごい複雑なトラップだ」
**
今日の授業を終えて放課後、寮に帰る前に職員室に寄った。
『相澤先生』
相澤「おー、来たか」
相澤先生のデスクまで寄ると、引き出しから1通の封筒を出して私に渡してきた。
相澤「明日これを病院の医療連携室に出せ」
『分かりました』
相澤「それで個性検査をして、正式に診断が出れば個性届に提出する為の診断書を医師が書いてくれる。そしたら週明け役所に提出しに行け」
『...未成年一人でも受理してくれますか?』
相澤「ウィンドリアさんもグルーガンさんも付き添えなさそうなのか?」
予想はしていたけど、やっぱり付き添い必要だよね。
役所行くってそこそこ長時間一緒になるけど、まあ...仕方ないか。
『.....どうでしょうかね』
相澤「まあ、もしどうしても2人共付き添えないなら事前にどちらかに代理人承諾書を書いてもらえればうちの教師の誰かが付き添う事も可能だ」
和解したし、共闘もした。
世間話も出来るようになった。
だけど、普通の家庭みたいなフランクな関係にはまだ程遠い。
私としては先生の誰かが付き添ってくれた方が気は楽だけど...。
まあ、そんなのただの逃げだよね。逃げ。
『あー、そうなんですね。まあでも、多分大丈夫だと思います』
相澤「そうか。じゃあ用はそれだけだ。寮に戻れ」
校舎を出て寮に向かって歩く。
大分夜は肌寒くなって来た。
寒いし、軽くランニングでもして帰るかな。そう思うや否や肌を刺す冷たい風に急かされるように私の足は加速を始めた。
すると前方に見慣れたつんつんヘアの後ろ姿を見つけた。
『爆豪』
爆豪「あ?」
後ろを振り返った爆豪は私の顔を見るとケッと憎たらしい表情を浮かべすぐに前を向き直した。
『あんたもランニング?』
爆豪「悪りぃかよ」
『べっつに?』
進む方向が一緒だった為そのまま並走すると、私をちらっと見た。
爆豪「横並ぶんじゃねぇよ、クソアマ」
『帰る場所同じなんだから良いでしょ?別に。小さい事ばっか言ってたらNo.1になれないよ』
爆豪「うっせーよ、クソが」
最近の爆豪は何だかちょっと変だ。
何が変って相変わらず口は悪いんだけど、どこか静かと言うか...。
前みたいにしょーもないことでもいつでも怒鳴り散らしてる感じじゃない。
『爆豪さ』
爆豪「あ?」
『..何かあった?』
私がそう聞くと爆豪は目を釣りあげて私を見た。何か確証があるわけじゃなかった。ただ、最近の爆豪に何か違和感を感じていた。話すわけないなと思いながらも答えを待った。
爆豪「あ?何もねェわ。あってもテメェには言わねぇよ」
『そりゃそうか...』
予想通りの返答に苦笑いを浮かべた。
まあ、聞かれたくない事もあるだろうし突っ込むのはやめようか。
爆豪「テメェこそ半分野郎と何かあったんかよ」
『え?』
爆豪「最近あいつと居ねェだろうが」
『あー...』
爆豪「別れたんか」
爆豪は挑発するような笑いを浮かべながらこちらを見た。
『いや....ていうか、何で付き合ってるの知ってるの?』
爆豪「あ?テメェら隠してるつもりだったんか」
『え、そんな分かりやすかった?!』
爆豪「神野の後からテメェら急にベタベタ張っつくようになっただろーが」
『えー、ウソ...』
爆豪「つーか、クラスのヤツらも全員気付いとるわ。テメェらの脳みそ湧いてんのかよ」
周りの目にはそんな風に映っていたのかと羞恥心が湧き上がったがそれよりも...。
『あ、もしかして心配してくれてたの?』
爆豪「あ?!違ェわ、クソが!テメェが心配されるようなタマか!」
『あんたねぇ...』
全くもってこいつの優しさってのは分かりにくいけど、分かりにくいだけでホントは根は良い奴なんだよね。
クラスの皆も気遣って触れてないだけで別れたのか、って思ってるのかな。
『ありがとう、でも大丈夫。お互い自分の事に集中してるだけだから』
爆豪「ハッ、そうかよ。そりゃ残念だわ」
そう言って走るスピードをあげた爆豪はあっという間に私の前方の遥か彼方に消えていった。
何だかんだ私に合わせてたのね。
ホント、分かりにくいなあいつ。
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