Season4
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相澤「えー、今日は臨時授業があります」
「「「「??」」」」
A組一同がインターンについての最終決断が出ず、やきもきしてる中教室に現れて早々、なにやら不穏とも思える単語を放った相澤にA組に緊張が走る。
切島「(臨時....)」
上鳴「(授業....)」
瀬呂「(嫌な響きだな、おい..)」
相澤「時間は有限。コスチュームを着て演習場αへ集合だ。そこで話す」
**
相澤「今日は他校との実戦訓練だ」
・・・・・
「「「「えぇっ?!」」」」
相澤「睨」
「「「「シーン.....」」」」
『軍隊か....苦笑』
莉紗が目の前で繰り広げられた担任とクラスメイト達のやり取りに苦笑いを浮かべていると向かいから見知らぬ団体が近づいてきた。
相澤「今日は傑物学園の2年2組と実戦形式の演習を行う」
耳郎「傑物学園って...」
蛙吹「仮免試験の時の....」
ジョーク「よお、イレイザーに雄英諸君!」
緑谷「Msジョーク!」
そこに登場したプロヒーローのMrジョーク。2回目とはいえ、生でプロヒーローを見れたことの興奮を隠し切れない緑谷。
真堂「やあ、また会ったね」
そして、仮免試験の時に共闘した真堂が爽やかスマイルで現れた。
上鳴「相変わらずストレートな爽やかイケメンだな~」
瀬呂「轟と良い勝負だな」
轟「?」
「焦ちゃーん!!」
そこに誰かのあだ名らしき名を呼びながら絵に描いたようなボンキュボンな女が1人走って来て、あろう事か轟に抱きついた。
「会いたかったよぉ、焦ちゃん」
轟「!? お前....」
『............』
轟に抱き着いた女を見て表情を歪ませた莉紗。
芦戸「何これ、修羅場?!」
麗日「芦戸ちゃん、楽しそうやね...」
上鳴「昼ドラみてぇ!!」
瀬呂「それ言うなら韓流じゃね?」
違う意味で盛り上がるメンバーを横に切島がすぐ近くにいた莉紗の名を呼んだ。
切島「あの人誰?」
『私に聞くな
(ぶっちゃけ知らないフリしたい)』
そんな莉紗と切島の会話を聞いて轟が少々驚いた顔で莉紗の顔を見た。
轟「お前、覚えてねぇか?」
『.......いや(中学の時に会ってんだから覚えてないわけないでしょうが)』
「なんや、俺ら忘れられてしもたんか。寂しいなぁ」
そんな2人の会話に、今度は男が横やりを入れてきた。
轟「お前も居たのか...」
「よ、久しぶりやな。焦凍、莉紗」
『.........』
「俺らはTVでお前ら見てたから知ってたけど、お前らは俺ら見る機会あらへんかったからな」
緑谷「向こうは風舞さんの事知ってるみたいだけど....」
『...ハァ。あいつらは轟くんのいとこ』
切島「いとこ?」
轟「ああ、花巻
幼少期、時折轟家にやってくる2人の兄妹がいた。
瑠花「しょうちゃーん!」
焦凍「うわ!るか!急に抱きつかないでよ!」
『るか、しょうとくん困ってるからはなして』
瑠花「そんなこと言ってりさ、しょうちゃんをひとりじめする気でしょ!」
『しょうとくんはものじゃない』
接「りさとるかって似たもの同士だね?しょーと」
焦凍「う、うん」
「『にてない!』」
氷叢冷の姉の子供で2人より年齢は1学年上。いわゆる焦凍のいとこにあたる2人は時折冷の姉に連れられて轟家にやってきていた。
炎司が不在の時に来てくれていた為、父親の目を盗み焦凍は瑠花や接、そして莉紗と遊んでいた。
瑠花「しょうちゃん、大きくなったらるかとけっこんしてね!」
焦凍「え、けっこん?」
瑠花「うん!けっこんってね、すきな人とするんだよ!るか、しょうちゃんの事だいすきだから!」
接「るか、けっこんはお互いすきじゃないとできないよ」
瑠花「でもしょうちゃんだって、るかの事すきだもんね?」
焦凍「え、うん..すき、だけど」
接「しょーとはりさとけっこんしたいもんね?」
焦凍「え、そ、そんなこと..!!」
『しょうとくん、別にむりしなくていいよ』
焦凍「む、むりはしてない!」
瑠花「むぅ...ダメ!しょうちゃんはるかの!」
幼い頃から顕著に轟焦凍に対する好意を示していた瑠花は、同じ屋根の下で暮らしいつも焦凍と一緒にいる莉紗に対し、何かと対抗意識を燃やし食いついて来たものだった。
『(うるさいのが出て来たなー...)』
麗日「あれ、でもこの前仮免試験の時は...」
接「あー、俺ら関西のヒーロー科の学校進んでたんやけど訳あって数日前ここに転校したんや」
『それで関西弁もどきになってんのか』
接「もどきってなんやねん、失礼やな」
瑠花「莉紗、あんたはいつ見ても気に食わない!」
対抗心を燃やし突如として莉紗を指差した瑠花に対し表情を変えない莉紗。
『安心して、私もだから』
周りからはどう見ても瑠花が一方的に莉紗に絡んでいるようにも見える光景に、この2人の間に一体何があるのか気になって仕方がない様子のA組。
接「瑠花は昔から焦凍が大好きでな。だからいつも一緒にいた莉紗に対して未だに敵対心を持っとるんや」
瀬呂「へぇ、恋敵ってやつか!」
『普通にソリが合わないだけだし』
上鳴「青春だな」
『言い方がオヤジ臭い』
芦戸「修羅場!」
『どんだけ修羅場好きだよ』
峰田「轟の野郎....あー、ちきしょう。俺もあの顔とあの身長とあの個性があったら..」
『お前は性格の問題な』
相澤「お前ら、いい加減にしとけ」
盛り上がっていた生徒達だが、日頃軍隊のように沈黙の調教をされているA組は相澤の一瞥で静まり返った。
相澤「今日は傑物学園の2年2組の皆さんと合同訓練だ。お前らより1年長く訓練している分吸収出来る事は多くあるだろう。気張っていけ」
「「「『はい!』」」」
**
くじ引きでチーム分けをし1:1のチーム戦を行うことになった傑物学園と雄英高校。莉紗・麗日・瀬呂・砂藤が一緒のチームだった。
麗日「莉紗ちゃん一緒なんやね!心強い!」
『よろしく』
瀬呂「風舞いんならわりかし大丈夫そうだな!」
砂藤「上手く俺を使ってくれ!」
『砂藤....超他力本願』
莉紗達の対戦相手は、真堂と瑠花がいた。
瑠花「莉紗、ちょうどいいわ。どっちが焦ちゃんにふさわしいか勝負よ!」
『(昔から焦凍くんの意思は無視なんだよなぁ、こいつ)』
この合同訓練の目的はある程度見知った者同士の即席チームでいかに連携プレーが出来るかを試すため、開始前の作戦タイムは設けずに顔合わせ後すぐに対戦が始まった。
ルールは、時間制限15分の間で緑林の演習場全体を使い両チームのフラッグをそれぞれが任意の場所に立て、自分チームのフラッグをいかに守りつつ先に相手チームのフラッグを取るかを競うもの。
勝利条件は相手のフラッグを破壊するもしくは取る事、敗北条件はフラッグを破壊もしくは奪取されること。
相澤「フラッグを立てる場所は自由だ。フラッグがきちんと立っていれば場所は問わん」
ジョーク「ただし、抜けないように細工したり隠したりするのはルール違反とする」
莉紗が脳内でどう攻略していくか考えていく時ふと瑠花が両手のひらを広げているのが見えた。
『砂藤、始まったらすぐに向こうの足場壊してくれる?』
砂藤「おう!」
[演習レディGO]
砂糖「シュガードープ!」
開始の合図と共に、砂藤が個性を発動し相手チームの足場の地面を破壊した。
『まずは先制!』
そこに莉紗が水流で相手チームを水で覆った。
『皆、距離取るよ!』
莉紗の掛け声で、その場を離れると相手チームの視界から外れ身を潜めた。
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緑谷「風舞さん達は一旦身を引いたね」
飯田「作戦を立てる時間を稼いだんだろう」
峰田「なぁ轟。お前の従姉妹ってどんな個性なんだ?」
峰田が一緒にモニターを見ていた轟に尋ねた。
轟「瑠花の個性は"花"だ。花を自在に扱う事が出来る」
緑谷「"花"?」
轟「ああ、中学の頃は花びらを操作して目くらましをしたり、花そのものの特徴を利用したりしていた」
緑谷「特徴?」
轟「薔薇の棘を形態変化させて武器として使ったり花びらの花粉を使って敵の動きを抑えたり」
峰田「地味に怖ぇ個性だな、おい....」
緑谷「操作する花びらの量によっては派手さを演出して仲間から意識を逸らさせたりもできるし、逆に隠密化でも活用出来そうだし。どんな状況下でも活躍できそうな個性だ....」
耳郎「始まった」
蛙吹「始まったわね」
お決まりのぶつぶつが始まったのを周りも慣れた様子でモニター画面に視線を戻した。
轟「..............」
緑谷「轟くん、風舞さんも彼女の個性については知ってるの?」
轟「知ってる。だが、あいつが知ってるのは花を扱うというかなり大雑把な情報だけだ。花びらを操作してるところは見た事あるが、花の特徴そのものを武器として扱えるところまでは知らねぇ」
八百万「その情報を持ってるかどうかはかなり影響は大きいですわね...」
轟「.............」
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砂藤「相手の個性知ってる奴いるか?」
麗日「真堂って人は確か触れたものを揺らす人だよね?」
瀬呂「お前は轟と離れたから知らねぇだろうけど、仮免試験の時は地面ぶっ壊して分断されたんだよ」
『へぇ、じゃあ個性使われたら一気に私達の行動範囲制限されるからお茶子ちゃんの個性と私の個性で空中戦に持ち込みたい所だね』
砂藤「轟のいとこの個性は?」
『瑠花の個性はフラワー、花を自在に操る事が出来る。草とかは不可能だったはず。ただお互いの個性を見たのは中学の頃数回だけだから実際にどんな風に、どれだけの量・種類を操作可能なのかは不明だし、もしかしたら個性伸ばしで草とか植物全般操れるようになってる可能性もある』
瀬呂「戦いながら探るしかねぇってことか」
麗日「フラッグを立てる場所はどうする?」
『フラッグが刺さってれば場所は問わないって言ってた。つまり刺さってさえいれば空中にあってもいいってこと』
砂藤「空中?」
莉紗は地面に手をつき、畳1枚分の土の壁を作り、そこにフラッグを立てた。
『お茶子ちゃん、これ浮かせてもらっていい?』
麗日「あ、なるほど!よっしゃ、任せて!」
麗日の個性でフラッグの刺さった地面を浮かせた。
『相手は振動で地面に作用してくるからフラッグは地面から離しておく。
瀬呂のテープと私の粘着糸を辺りに張り巡らせてトラップを作り、フラッグから少し離れて対角線上に敵を警戒しつつ向こうのフラッグを探す。遠くても見つけさえすれば私と瀬呂なら捕まえられるから。なんなら敵を捕縛してもいいしね。お茶子ちゃんは空中から敵を警戒して。砂藤はフラッグの守備』
砂藤「おう!」
麗日「わかった!」
そうこう話していると突如遠くから大きな揺れを感じた。
瀬呂「おい...向こう動き出したぜ」
『私達も動こう』
先ほどの作戦通りに配置につき莉紗は空中浮遊し周囲の様子を探った。
『(少し手荒いけど、向こうから出てきて貰おう..)
竜巻乱舞 改!!』
1度地面に降りると改良版の竜巻乱舞を自分達の前方8方向に向けて飛ばした莉紗は間髪入れずに体育祭で見せた超広範囲突風を前方に向かって放ち再び空中浮遊した。すると、右斜め前方の遠くの方で白い壁が突如現れた。
『あそこね。
瀬呂!ターゲットの1人発見したから離れるよ!』
瀬呂「了解!」
そう瀬呂に声をかけると莉紗は白い壁に向かって風の力で空中移動した。
白い壁に近づくと何やら嗅いだ事のある独特の匂いがし、コンクリートととも岩とも違う物体である事に気づいた。
『これは...ボンド?』
目の前の壁に一瞬意識を向けた時、突如葉っぱや枯れ木などが巻き起こり莉紗の周りを囲った。
『瑠花の個性か。やっぱ個性伸ばしで操れるもの増えてるな』
自分に向かってくる葉っぱや枯れ木を、突風を起こしていなした莉紗は更に上空に移動し、下の光景を見下ろした。
『(真堂さんの個性をあまり使って来ないところを見るとこっちが空中戦に持ち込もうとしてるのを見抜いてるか...)』
莉紗が攻める手順を考えていた、その時。虫の大群が莉紗に襲いかかった。
『虫?!え、ちょ、やだ..!!』
すぐに突風を出して虫の大群の進行を阻止した莉紗だが虫達は再び莉紗に向かって飛んでくる。
『ちょ、気持ち悪いって!!』
時折後方に突風を抱きながら後退して行く莉紗。
『瀬呂ー!』
瀬呂「血相変えてどうした..?」
『虫ー!!キモイー!!』
文章ではなく何故か二語文になっていて瀬呂は莉紗が言いたいことがイマイチ伝わらない。
瀬呂「虫?キモイ?あー、そうだな。こんな森の中だし仕方ねぇよな」
『違う!虫、来る!!』
瀬呂「えっ..」
莉紗の言葉を聞いて瀬呂が莉紗の後方に注目すると気味が悪いほどの大量の虫がこちらに向かってきていて瀬呂も莉紗と同様逃げ回った。
『ヤバい!このままお茶子ちゃん達の方行ったら向こうの思うツボだ!』
瀬呂「だろうな!!このままフラッグに向かわせるのもあれだから一旦身を隠そうぜ!」
『んー..仕方ない!』
莉紗はそう思うや否や土の壁を四方と天井に作りその中に瀬呂と身を隠すことにした。
『ハァ...口田が恋しい...』
瀬呂「ちげぇねぇな...」
『虫を操る個性..なのかな。虫嫌い相手には最強の個性だね』
瀬呂「虫嫌いじゃなくてもあの数はキモいっつーの...」
『バランス良いのはウチのチームだけじゃなかったか』
瀬呂「バランス?」
『うん、空中戦が得意な私たちと地上でのパワー勝負に強い砂藤に、空中戦・地上戦とフィールドの選択権を握る事が出来るお茶子ちゃん』
瀬呂「確かにバランス良いな」
『だけど、向こうも地上を支配できる真堂さんに空中を支配出来るこの虫を操る個性。そしてそのどちらもサポートしつつ敵に攻め入ることも出来る瑠花の個性』
瀬呂「そう言われてみりゃそうだよなぁ。あと1人の個性がわかんねぇけど」
『いや、私が捜索中ボンドみたいなもので出来た壁が出てきたんだ。もう1人の個性は多分ボンドを扱うものかなと思う』
瀬呂「峰田っぽい個性かぁ?くっついたら取れねぇぞ、みたいな」
『分からない。けど、向こうは私の突風攻撃に対し3人がかりで抑えに来た。警戒されてるんだと思う。単純な個性の相性的に言えばとりあえずはボンドの奴以外の3人の個性は私がいなせるか、もしくは抑えられる』
瀬呂「つまり?」
『私が1人で3人を抑えにかかってボンドの奴は砂藤が力推しで抑えに行く。そして瀬呂とお茶子ちゃんでフラッグ回収。相手チームの頭ん中では私達はこんな感じで動くと考えてると思う。実際、これが一番効率が良い。それに対して向こうは私に瑠花を当てて残りの3人の総戦力で瀬呂達を抑えに行くんじゃないかと思う。
虫達で撹乱させてボンドの壁で閉じ込め真堂さんの個性で動きを止める』
瀬呂「なるほどな。確かにさっき虫達に追いかけられた俺たちの動きを考えたら理にかなってる」
『だから私達の作戦はこう。
向こうにも空中戦タイプがいる以上砂藤は1人にしない方がいいから瀬呂はお茶子ちゃん、砂藤と合流して。私は向こうの気を引きながら辺りの木を倒して武器を蓄えとく。その間にお茶子ちゃん達とフラッグを探して。フラッグを視認出来たらお茶子ちゃんと瀬呂の個性を合わせて蓄えた武器で敵に奇襲をかけて。そしたら向こうはボンドの壁で守りに入るだろうから砂藤はそれをひたすら壊す。その隙に瀬呂はテープでフラッグを。ダメでも派手などんぱちで私も場所が分かるから瑠花をどうにかする、もしくは誘導しながらすぐにそっちに向かってフラッグが見えたら粘着糸飛ばす』
瀬呂「おめぇ、あの虫から逃げてる間にそんなん思いついたのかよ...」
『思い付いたのはここに閉じこもってからだけどね。それから、あの虫達だけどもしかしたら虫達を通して視角の共有や敵の会話を盗み聞き出来る偵察可能な個性かもしれない。ここは壁を分厚くしてるから大丈夫だと思うけどここから出た後は作戦は口にしない方がいい。だから、ここを出た後に私が何らかの作戦を話した時。それは、相手チームへのトラップと考えてね。
お茶子ちゃんと砂藤には伝えられないけど、向こうは私が1人になるのを狙ってるはずだから。最終的には私がフラッグを持って1人になって敵を私の所に引き付ける作戦。だから武器は使い切らずに残しておいてね。』
瀬呂「了解!」
『よし、じゃあ作戦開始』
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虫の大群に追われる莉紗と瀬呂を見てモニターを見ていたA組一同も表情を凍らせた。
緑谷「虫を操る個性...口田くんの個性に近いものなのかな」
峰田「んだよあの数...背筋が凍るぜ...」
芦戸「トラウマになりそう~」
飯田「轟くん、風舞くんはどうすると思う?」
轟の隣に立っていた飯田が、意見を求めて轟に聞いた。
轟は表情を変えずに「さあな」と口にした。
轟「こういう時のあいつの発想は俺も読めねぇ。ただ..」
緑谷「ただ?」
土の壁から恐る恐る出てくる2人。
モニターに映る莉紗の表情は焦りや動揺...不安などは見えず、むしろ強気で攻めようとしている表情だった。
轟「あいつのあの顔は、もう既に何か策を講じてる時の顔だ」
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莉紗は木よりも高い場所をダッシュウィンドを使い移動しながら敵チームを探し回った。
『(瑠花が花以外の植物を操れるようになってたとしても根本的に私の個性との相性が悪いのは向こうも重々承知してるだろうから、私と真っ向勝負はしない...なんて事はない。むしろ逆に相性を鑑みて私が瑠花とのサシを狙ってると向こうは考えてるでしょうね。
先制での水流ブッパは効いてる。ボンドの壁に、虫の大群。私の個性の汎用性を理解して、向こうは完全に私を警戒してる。私に意識を向かせて瀬呂達に死角からフラッグを取らせる....)
突風
莉紗は広範囲の突風を起こした後に、
居場所を突き止められないようにだろうか。先ほどよりも小さいボンドの壁を四方で囲んだ、まるで籠城のようなものがいくつか点在していて、上空では虫の大群が莉紗の進行方向と同じ方向に逃げて行った。
『(箱への籠城は居場所をピンポイントで把握させないためのフェイク。そして、虫は囮...だな)』
その時、辺りに倒れていた木が次々と浮遊した。
麗日が個性で浮かし、それを瀬呂がテープで固定し、空中で牽引しているようだ。
相手が動きを見せてこない事、そして単なる籠城は自分達の視界も遮る愚策であるため何かしら向こうにも奥の手があるんだろうと考え莉紗は1度地面に降り近くにいた瀬呂の元に近寄った。
『瀬呂、木倒しまくって武器そこら辺にあるからあの箱達に向かって投げつけて。そしたらお茶子ちゃんに個性を解除してもらって』
瀬呂「おう、どうすんだ?」
『まずは姿を現して貰わないと。砂藤にはあのボンドの箱を1個ずつ片っ端から壊してって貰って。敵を視認出来たら瀬呂とお茶子ちゃんの攻撃ね。それからお茶子ちゃんにはフラッグお願いして、そのまま浮かせておいてもらって。そして瀬呂もお茶子ちゃんを視認出来る程度の距離まで離れて』
瀬呂「ラジャー」
『(ボンドの箱はフェイク、あの中には誰もいない。地上戦に持ち込むための向こうの作戦。そして、あの虫達を通してこちらの様子を確認できているなら私達がやろうとしている事を把握してるだろうし、会話も筒抜けになってると考えた方がいい。まずは向こうの策に乗ったフリをする)』
そして瀬呂と麗日も自分のミッションを果たすべく莉紗と離れた。砂藤は箱を壊しながら進み、視認出来ない場所まで離れていった。そろそろ敵の姿が出てくるのかと思っていたその時、突如地面が揺れた。
『!!』
遠くからチームメイトたちの叫び声が聞こえた。
声を聴く限り虫の大群に追われてるようだ。
『っ!?』
後ろから何かが近づく気配がしたため、咄嗟に後ろを振り返ると頬を何かが掠った感触がした。
瑠花「避けちゃったのねぇ。野蛮女らしい、素晴らしい野生の勘ね」
『背後からとか読みやすい攻撃して来るから。ていうか、1人なんだね』
瑠花「っ...読めても避けられなきゃ意味ないでしょ!あんたなんか私1人で十分!」
瑠花の周りに花や植物が集まりそれは次第に形を成していき巨人を模した。
瑠花「あんた、突風攻撃ばっかりで...私の個性があんたと相性が悪いから真っ向勝負はしないと思ってたでしょ?」
『.............』
瑠花「でも、薄っぺらい花びらや草もね。これだけ密集すれば丈夫な盾になんのよ」
植物で形成された巨人は歩き出しその手に倒れていた木を手にし、莉紗の頭上で振り上げた。
避けようとした莉紗だったが背後からボンドの壁が出てきて莉紗の身体を捉えた。元がボンドだからか莉紗は壁から離れる事が出来ず身動きが取れなくなった。
『っ!
(ボンドってだけあってくっついたら離れない...峰田系の個性だ)』
瑠花「あんたの敗因は私との個性の相性にかまけて余裕を見せた事!」
巨人が大木を振り下ろそうとしたその時、巨人の体を横向きの竜巻が貫き巨人はばらばらの花びらに戻った。
瑠花「なっ?!」
空中で支えのなくなった大木はそのまま瑠花の頭上に落ちていく。空中の大木に瑠花が一瞬意識を離した隙に莉紗が粘着糸で瑠花を拘束し引き寄せた為瑠花は難を逃れた。
『あんたの敗因は私の個性を昔のままの認識でしか想定出来なかった事と粘着糸の存在を忘れた事』
瑠花「何で....」
『個性伸ばしで操作できるものが増えたから初見殺しで決めようとしたんでしょ。だけど、個性伸ばしで出来ることが増えたのは残念ながらあんただけじゃない。それに私の個性を知ってるくせに余裕かましてたのはあんたの方。こんな拘束したって手が自由な私が風の個性を使わないわけがない』
悔しそうに表情を歪める瑠花の身体にどんどんと粘着糸を巻き付けていく莉紗。
『虫達を通して私達の言葉が筒抜けだったでしょ。そう思ったからフェイクの作戦をあんた達に聞かせてあげてた。だからあんた達が追ったフラッグは実際は私が持ってるの』
瑠花「はあ?!」
『上』
莉紗が指差した先を見ると浮いてる大木の中に畳1枚程の土の壁の一片があった。
それがなぜかゆっくりと地面に向かって下りてきた。
瑠花「な、フラッグ!」
『お茶子ちゃんに無重力にしてもらって、私が粘着糸で引いてたの。さっき瀬呂にはお茶子ちゃんにフラッグ浮かせといてもらってって話したからね。その言葉通りに他の3人はお茶子ちゃんを追ったでしょ』
瀬呂「どうやらうまくいったな!」
一方の麗日達。真堂対策で麗日の個性で無重力になりそれぞれ倒れていない木の陰に隠れて高い場所から様子を伺っていた。遥か上空には同じく無重力にした大木がいくつも浮かんでいて機を待っている。
真堂と虫を操る個性の
真堂「その作戦はバレてるよ!」
凡戸のボンド壁が大木から真堂達を守っている。
先ほどの作戦会議で莉紗達が話していた内容を虫を通して聞いていた真堂達は自分達が接近した際に大木が降ってくるのを予測していた為ボンドの壁で防ぎ麗日達が武器を全て使い切った後に攻め入る事にした。しかし...。
「真堂!」
真堂達の目前に瀬呂のテープが現れた為3人がテープを避けた。
しかし、それは囮で今度は真堂達の背後から土の壁が迫ってきていたが、気づいた時には既に遅く土の壁に激突した。真堂は壁から離れようとしたものの離れる事が出来ず辺りを見渡していると突如壁ごと宙に浮きどんどんと地面から離れていく。
真堂「何だ、..?」
瀬呂「へっへー、さっきの壁は風舞の粘着糸を全面に貼り付けた特性の粘着ボードっスよ。俺のテープで引っ張り上げたんです」
麗日「たくさん使ってそこら辺に置いておいたんです!そして私が個性で浮かせました!」
砂藤「それでトラップにかかってくれれば良し、それ自体で捕らえられなくても瀬呂の個性で背後から捕らえられるっていう」
瀬呂「浮かせられたら真堂さんは個性使えるものないっすよね!」
王蟲「俺は関係ないね!」
王蟲が虫を操り傑物チームのフラッグを探しに行った瀬呂達を追った。
そして全員が拘束をされて身動きが取れなくなった傑物学園チーム。
莉紗も合流し、風で虫達を飛ばしながらフラッグを捜索。15分ほどの捜索の末、傑物側のフラッグを無事に発見しこの勝負は雄英チームの勝利となった。
**
真堂「いやー、やっぱり素晴らしい実力の持ち主だ!」
『..............』
莉紗を呼び、目の前にやってきた真堂が莉紗の手を取り一人で盛り上がってぺちゃくちゃと何か語り始めてる。
『(この人普段はこのキャラで通してるんだなー...キレたらあーなのに)』
そういう莉紗の脳内には仮免試験の時に夜嵐と轟にキレていた真堂を思い出していた。
中瓶「ちょっと揺くーん?」
瑠花「焦ちゃん、またしばらく会えなくなっちゃうね..」
登場の時と変わらず轟の腕に引っ付きながら分かりやすい程の猫撫声で轟に甘えている。
轟「あぁ、そうだな」
接「莉紗、また会おな」
『私は別に会いたいわけじゃないんだけどね』
接「お前冷たいなぁ、機嫌悪いんやろ?」
芦戸「あはっ、風舞轟取られて悔しいんだ!?」
『違います、疲れただけ』
接「まあ、莉紗も瑠花に負けず劣らず昔から焦凍大好『良いから切り刻まれたくなかったらさっさと行け...』
瑠花「莉紗!今日の勝負はこっちが負けたけど焦ちゃんの花嫁は譲らないからね!」
『(花嫁って....)』
接「ハイハイ、行くで」
傑物学園は騒がしい2人を引き連れて雄英を後にした。
『あー、もう。疲れたな』
葉隠「莉紗ちゃんの恋のライバルか~」
耳郎「いや、でも轟全然相手にしてなかったじゃん」
上鳴「やっぱ轟モテんな~」
峰田「クッソー、轟!テメェその顔1日くらい貸せ!!」
轟「? 顔は貸せねぇだろ」
切島「お前、ホント揺らぎねぇな....」
相澤「よし、お前ら教室戻るぞ」
彼らは今日も各々の目指す理想のヒーローを目指して精進を重ねていく....。
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