Season3
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[合格者は後方のモニターに50音順で名前が表示されます。ご確認ください]
モニターに名前がずらりと並んで表示された。A組のクラスメイト達が次々と歓喜の喜びを表現している側で、莉紗も風舞莉紗の名前を見つけ大きく安堵のため息をついた。
『(とりあえず...なんとか合格はした)』
莉紗は続いて轟の名前を探すも、常闇の次辺りにあるであろう名前は内藤の名前になっていた。
『(やっぱ、ない..か)』
轟「.........」
夜嵐「轟!!」
莉紗が何て声をかけようか迷っていると突然聞こえた聞き覚えのあるうるさいくらいの声に、その声の主の方を見ると主は轟の元に近づいてきた。
莉紗は試験中の事もあり自然と轟を庇うように前に出ようとしたが轟がそれに気づき手を出し止めた。
夜嵐「........」
轟「.........」
両者に試験中ほどの敵意は感じないもののお互いをじっと見合った。
夜嵐「...ごめん!!」
試験前と同じように夜嵐は頭を地面に叩きつけ頭を下げた。
轟「!?」
夜嵐「あんたが合格逃したのは、俺のせいだ!!俺の心の狭さの!!」
『(こいつのこういう所変わってないなー)』
轟「...元々俺の撒いた種だし、よせよ」
夜嵐「けど!!」
轟「お前が直球でぶつけてきて気づけたこともあるから」
2人のやり取りに、クラス屈指の実力者である轟が不合格だった事を察したクラスメイト達が驚きのリアクションを見せた。
芦戸「轟...落ちたの?」
瀬呂「うちのスリートップが2人も落ちてんのかよ...」
上鳴「暴言改めよー?言葉って大事よっ?☆」
茶化すように爆豪に言った上鳴の言葉と日頃の爆豪の態度から爆豪が落ちた理由をなんとなく察したクラスメイト達。
爆豪「黙ってろ、殺すぞ....」
峰田「両方共、トップクラスであるが故に自分本位な部分が仇となったわけである」
峰田が轟の肩に手を置き背後に立った。
峰田「ヒエラルキー崩れたり~」
どや顔で轟に言う峰田の背後に般若の顔をした莉紗が立ち峰田の頭部に縦チョップを食らわせ轟から引きはがしポイっと放り投げた。
緑谷「轟くん..」
八百万「轟さん...」
[えー..続きましてプリントをお配りします。採点内容が詳しく記載されてますので、しっかり目を通しておいてください。ボーダーラインは50点、減点方式で採点しております。どの行動が何点引かれたなど、ズラーっと並んでます]
尾白「61点...ギリギリ」
瀬呂「俺84!見てすごくね?!地味に優秀だよ、俺!」
耳郎「待って!ヤオモモ94点...」
葉隠「莉紗ちゃん、見せて見せて〜!」
『あー、うん』
渡された紙を葉隠に渡すとそれを見た葉隠、芦戸が絶叫した。
「「99点?!」」
上鳴「さっすがうちのスリートップ...」
瀬呂「むしろ残りの1点が気になるな...」
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クラスメイト達が講評用紙を見ながら盛り上がってる時に、私は高得点が書かれた自分の用紙にも素直に喜ぶ気分にはなれなかった。
『.........』
"①救助活動
トリアージ、応急処置共に正確かつスピーディーな判断と対応であった。
非常時は例え判断が正確でも、迅速力がなければ救える命も救えない状況に溢れている状況下で、冷静さを損なわず正確に、かつ迅速に対応出来たことは高評価に値する。
②ヴィラン制圧
突如起こったヴィランからの奇襲にも誰がどの役割を担うのか、今どうすべきなのが最善かをその場の状況下からしっかりと導き出すことが出来ていた。かつ、下した自身の判断に迷うことなく仲間に伝える決定力も評価に値する。
ヴィラン制圧を、との放送に誰もがヴィランを仕留める事に気を回しがちであった中、救助活動を優先させるために制圧よりも時間稼ぎを選択し、制圧能力の高い仲間少数のみをヴィランの元へ向かわせ自身たちは救助と避難を優先させた判断は素晴らしかった。
1つだけ、改善点をあげるとすれば救助活動を行う拠点ごとにチーム編成を考慮出来ていたら尚良し"
これ以上嬉しいことはないほどの高評価。
だけど、私は何を見ていたんだろう。
ずっと見てたはずの焦凍くんの心の荒波に気づけなかった。
ずっと違和感は感じていたのに間違いを犯す前に止めることが出来なかった。
そんな焦凍くんに、一人でヴィラン対応に向かわせてしまったのは私の過ちだ。
その過ちも元を正せば私に原因があった。そう、この仮免試験を通して自覚した事。
期末テストの時に、焦凍くんが言っていた言葉。
「ここ一番でお前に頼る傾向があった」
焦凍くんだけじゃなかった。
私もそうだった。
私の意識はいつも焦凍くんがいる事が前提になっていた。
1次試験だって、そう。
雄英が1番狙われ易いから1人にするわけに行かないと言う理由で焦凍くんについていった。
それは嘘じゃない。
だけど、心のどこかで焦凍くんに頼って焦凍くんに依存していた部分があるのも事実だった。焦凍くんが一緒なら...って気持ちがどこかにあった。
焦凍くんがもし、動けなかったら?
焦凍くんを頼れない状況だったなら?
ここ1番でいつも私は焦凍くんに頼っていた。
焦凍くんの言う通りだ。
"いつも俺がいるわけじゃない"
ヒーローは救助、制圧、現場整理それらを1人でやらなきゃいけないこともある。
私も、ただ焦凍くんが迎えに来るのを待つだけじゃダメだ。
目良「えー、合格した皆さんはこれから緊急時に限りヒーローと同等の権利を行使できる立場となります。即ち、ヴィランとの戦闘、事件事故からの救助などヒーローの指示がなくとも君たちの判断で動けるようになります。しかし、それは君たちの行動1つ1つにより多くの社会的責任が生じるということでもあります。みなさんご存知の通り、オールマイトというグレイト・フル・ヒーローが力尽きました。彼の存在は犯罪の抑制になるほど大きなものでした。心のブレーキが消え去り、増長する者はこれから必ず現れます。均衡が崩れ、世の中が大きく変化していく中いずれみなさん若者が社会の中心になっていきます。次は皆さんがヒーローとして、規範となり抑制出来るような存在とならねばなりません。今回はあくまで仮のヒーロー活動認可資格免許、半人前程度に考え各々の学舎で更なる精進に励んで頂きたい。
えー、そして不合格となってしまった方...点数が満たなかったからとしょげてる暇はありません。君たちにもまだチャンスは残っています。3ヶ月の特別講習を受講の後、個別テストで結果を出せば君たちにも仮免許を発行する予定です」
「「「!!」」」
『(3ヶ月後には...焦凍くんが同じ場所に立てる....?)』
目良「今私が述べたこれからに対応するには、より質の高いヒーローがなるべく多く欲しい。1次選考はいわゆる落とす試験でしたが、選んだ100名はなるべく育てていきたいんです。そういうわけで全員を最後まで見ました。結果、決して見込みがないわけではなくむしろ至らぬ点を修正すれば合格者以上の実力者になる物ばかりです。学業との並行で、かなり忙しくなるとは思います。
次回4月の試験で再挑戦しても構いませんが...」
爆豪「当然!」
夜嵐「お願いしまーす!」
轟「.......」
緑谷「やったね、轟くん!」
峰田「やめとけよ〜、んな、取らんでいいよ。楽に行こう?な?ヒエラルキ、バシッ」
またしても般若の顔をした莉紗が峰田の顔面を両側からグーの手で叩き遠くへポイッと放り投げた。
飯田「待ってるぞ!」
緑谷「うん!」
轟「すぐ、追いつく」
『(こりゃあ、うかうかしてたら追い越されちゃうな...)』
そう思いつつも莉紗はどこかホッとした顔で轟を見ると轟もその視線に気づき小さく微笑んだ。
**
合格したメンバーに、仮免許証を発行してもらい帰宅の流れに入った頃にはもう夕方だった。
ジョーク「イレイザー、せっかくの機会だし今後合同の練習でもやれないかな?」
イレイザー「ああ、それいいかもな」
夜嵐「おーい!轟!!」
遠くから大きく腕を振って夜嵐が轟の元に近寄ってきた。
夜嵐「轟!また講習で会おうな!
あ、俺正直に言うとアンタを嫌いだった理由もう1つあったんだ!」
轟「?」
夜嵐「アンタ、風舞と付き合ってるっしょ?!」
轟「え..」
『(また間の悪い話しを..)』
夜嵐「俺、中学の時風舞に10回フラれてんだ!!」
「「「「............えー?!」」」」
『....よくまあ、そんな黒歴史公衆の面前で暴露出来るよな。プライドないのか』
夜嵐「それで敵対心持ってたのもあんだ!だから正直まだ好かん!先に謝っとく、ごめん!!そんだけー!!」
言葉とは裏腹に笑顔で言いながら手を振り去っていく夜嵐。
切島「どんな気遣いだよ...苦笑」
轟「こっちも善処する」
青山「メルシー、彼は大胆というか繊細というか。どっちも持ってる人なんだね」
他の士傑高校の人達と合流した夜嵐が「あ!」と声を上げて再び戻ってきて莉紗の前に立った。
『何?』
夜嵐「LINE教えてくれ!」
『...うるさそうだから嫌だ』
夜嵐「くぁぁあっ!言うと思った!補講中に轟と仲良くなって絶対聞き出してやる!!」
『...聞くか?普通。お前やっぱアホだろ。つーか、仲良くなる目的が不純』
夜嵐「いや!轟とも絶対仲良くなる!!」
莉紗は何かを考えるようにして静かに話し始めた。
『....私はね、夜嵐。アンタのその煩くて暑苦し過ぎるところが嫌だった』
夜嵐「相変わらず毒っぷりがすごいなぁ、風舞は!!」
落ち込むことも無く笑い飛ばす夜嵐。
『劣等感もあったし』
クラスの中でもトップクラスの実力を持つ彼女の口から出た劣等感という言葉にクラスメイト達は驚いた。
上鳴「え、お前が劣等感って...何それ謙遜?!」
『違うよ、本気で。
同じ風の個性でも範囲も威力もケタ違いで、人がやろうとしたことや完成させようとした必殺技。苦戦してる私のそばで勝手にイメージパクッてあっさり完成させやがって腹立つったらありゃしない....』
段々と声にドスが効いてきて、黒いオーラが溢れていく莉紗に周りは冷や汗をかいていく。
『けど、ホントに1番嫌いだったのはそんな事思って自分でリミッターかけてた私自身。
あんたの事、自分の上位互換だと思って勝手に敵対視してた。
アンタが表も裏もなくバカ正直に相手にぶつかるような奴だから自分が物凄く醜く思っちゃうから』
夜嵐「風舞....?」
『だけど、もうアンタに対して劣等感なんてない。私の上位互換だと思わない。
私は、同じ風の個性持ちとして、アンタには負けない』
夜嵐が莉紗の言葉を聞いて急に真顔になった。
夜嵐「....風舞!!俺の事褒めてくれたんすか!?」
『...は?』
夜嵐「俺のことすげーと思ってたんだな!!感無量っす!!」
『.........』
夜嵐「俺たち今日からライバルだな!!良きライバルとして共に『さっさと消え失せろ!』」
またもや暑苦しくなった夜嵐に収拾がつかなくなりそうでその場から追いやった莉紗。
絶対LINE聞き出すからなー!と手を振って今度こそ去っていた。
『....ねぇ』
轟「何だ」
『教えたらぶっ飛ばすからね』
轟の方を見ることもなく低音で言う莉紗の声には威圧感すら感じるものがあった。
轟「......おう。(こいつが言うとシャレになんねぇ気がする)」
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