Season3
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入寮した翌朝
窓から差し込む日差しで目が覚めた莉紗。
『ん...ん?』
目を開けると見覚えない場所でキョロキョロしてしまったが寝ぼけていた頭が清明になると、ようやくここは寮の部屋だということを認識した。
『あ、そうだ...昨日から寮生活なんだ』
今の時間を確認しようとすると、起きようとしていたアラーム時間の3分前だった。
『...ちょっと悔しいよね、コレ』
**
寝巻からジャージに着替えて、トイレを済ませ共同スペースに降りると半数くらいの人が既に起きて朝の準備に取り掛かっていた。
葉隠「莉紗ちゃん、おはよう♪」
上鳴「おう!風舞はよ!」
『おはよ』
本日の朝は、入寮して間もなくということでランチラッシュの朝食が提供された。
今後は、クラス内で話し合って食事や掃除等について決めて行かなければならないらしい。ひとまず、顔を洗って食事をとった莉紗。
切島「なあ、轟いなくねぇか?」
芦戸「あ、ほんとだ」
上鳴「合宿の時も初日起きてこなかったよな?」
切島「そろそろ起きねぇとやばくねーか?」
『初日から起きないってどんな神経してんだあいつは...』
瀬呂「風舞、頼むな!」
『もう...』
そして、莉紗にたたき起こされ無事に起きた轟も朝食を食べてから着替えをしに自室に戻っていってから15分が経過した頃。
クラスメイト達が、そろそろ登校しようと口々に話している時...。
轟「なあ」
『ん?』
やっと準備を終えて降りてきた轟の片手にはネクタイがあった。
轟「ネクタイ、してくれねぇか?」
『は?』
轟「未だにネクタイだけは締めれねぇ」
『今までどうしてたの?』
轟「姉さんにやってもらってた」
『...あー。まあ、凝中は学ランだったもんね』
轟のネクタイを手に取り轟の首に巻くと手際良く結んでいく莉紗。
上鳴「お前らそうやってると夫婦みたいだな!」
とんでもない爆弾を落とした上鳴の言葉にネクタイを結んでいた手が止まった莉紗。
『..............』
轟「そうか?」
峰田「リア充爆発しろ!!」
『......../////』
轟「? お前、どうした?」
莉紗の赤くなった頬を見て首を傾げた轟に何でもない、と素っ気ない返事をし莉紗はキュッとネクタイを締めあげた。
『(っていうか何にも言ってないのに気づけばクラス公認みたいになってる....解せん)』
**
相澤「昨日話したと思うが、ヒーロー科1年A組は仮免取得を当面の目標とする」
「「「「『はい!!』」」」」
相澤「ヒーロー免許ってのは、人命に直接関わる責任重大な資格だ。当然、取得の為の試験はとても厳しい。仮免といえど、その合格率は例年5割を切る」
峰田「仮免でそんなきついのかよ...」
相澤「そこで君らには1人最低でも2つ...必殺技を作ってもらう!」
相澤のその言葉と共に、教室にミッドナイト・エクトプラズム・セメントスが入ってきた。
芦・上「「学校っぽくて、それでいて!!」」
切・瀬「「ヒーローっぽいのキター!!!」」
エクトプラズム「必殺...コレ即チ、必勝ノ型、技ノ事ナリ」
セメントス「その身に沁みつかせた技。型は他の水髄を寄せ付けない。戦闘とは、いかに自分の得意を押し付けるか」
ミッドナイト「技は己を象徴する。必殺技を持たないヒーローなど、絶滅危惧種よ」
相澤「詳しい話しは実演を交え合理的に行いたい。コスチュームに着替え、体育館γに集合だ」
--------
in体育館γ
相澤「体育館γ..通称、トレーニングの台所ランド。略してTDL」
芦・麗「「え..」」
緑谷「(TDLは..まずそうだ..)」
『先生たち結構おかしなネーミング、サラッと言うんだよなぁ...』
轟「ああ」
セメントス「ここは俺考案の施設。生徒1人1人に合わせた地形や物を用意できる。台所ってのはそういう意味だよ」
飯田「質問をお許しください!!何故仮免許の取得に必殺技が必要なのか、意図をお聞かせ願います!!」
相澤「順を追って話すよ、落ち着け。
ヒーローとは、事件・事故・天災・人災..あるゆるトラブルから人々を救い出すのが仕事だ。取得試験では当然その適性を見られることになる。情報力、判断力、機動力、戦闘力...他にもコミュニケーション能力、魅力、統率力など別の適性を毎年違う試験内容で試される」
ミッドナイト「その中でも戦闘力は、これからのヒーローにとって極めて重視される項目となります。備えあれば憂いなし。技の有無は合否に大きく影響する」
セメントス「状況に左右されることなく安定行動を取れれば、それは高い戦闘力を有していることになるんだよ」
エクトプラズム「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハナイ。例エバ、飯田クンノ、"レシプロバースト"。一時的ナ超速移動、ソレ自体ガ脅威デアル為、必殺技ト呼ブニ値スル」
飯田「あ、あれ必殺技でいいのかぁ..泣」
砂藤「なるほど、自分の中にこれさえあれば有利・勝てるって型を作ろうってことか」
ミッドナイト「その通り」
相澤「中断されてしまったが、林間合宿での個性を伸ばす訓練は、必殺技を作る為のプロセスだった。つまり、これから後期始業まで、残り10日余りの夏休みは個性を伸ばしつつ、必殺技を編み出す圧縮訓練となる。
なお、個性の伸びや技の性質に合わせてコスチュームの改良も並行して考えていくように。プルスウルトラの精神で乗り越えろ。準備は良いか?」
「「「「『はい!!』」」」」
そして必殺技の習得に向けエクトプラズムの分身が生徒一人一人に付いた。
エクトプラズム「君ハ既ニ、自ラ必殺技ヲ複数作ッテイタナ。イメージハアルカ?」
『体育祭前に少し特訓してたけど、まだあまり伸びてないことが..』
エクトプラズム「言ッテミロ」
『私の風の攻撃は、相手へのけん制や防御・足止めを一手に担えますが風自体に攻撃力がないんです。
今までは、それを補うために強化してきた肉弾戦と、風の形態を工夫して地面に落下させたり平衡感覚を失わせたり吹き飛ばしたりすることで足りない攻撃力をカバーしてきました。
何とか攻撃力を上げようと竜巻の範囲を極限まで細くして高密度の渦にすることによってかまいたちのような攻撃性能のある風を生み出す特訓をして最近かまいたち自体は作れるようになったんですけど今度はそれのコントロールが難しくて行き詰まってました』
エクトプラズム「ナルホド..。デハ、君ノ得意ナ肉弾戦ト掛ケ合ワセテミテハドウダ?」
『肉弾戦と掛け合わせる?』
エクトプラズム「拳ニ高密度ノ小サナ竜巻ヲ纏ワセ、拳カラノ打撃力ト竜巻ノ殺傷力デ攻撃ヲ加エツツ、風力デ相手ヲ吹キ飛バス。攻撃ヲ加エツツ、敵ヲ自分カラ離スコトデ、粘着糸デ捕縛スルナリ次ノ攻撃ニ繋ゲルナリスレバ攻撃ノパターンニ幅ガ生マレル」
『あ...!なるほど』
エクトプラズム「身ニ纏ワセルコトハデキソウカ?」
『やってみます』
エクトプラズムの言った通りに、まずは大きさや密度は関係なく右の拳に竜巻を纏わせてみる莉紗。
拳の周囲に竜巻らしいものは発生するものの、拳を纏ってる..という感じではなく、むしろ今まで意識した事がなかった竜巻の軸....今で言う腕の存在を意識することで今まで当たり前のように出していた竜巻も渦の動きが不規則になってしまった。
エクトプラズム「マズハ、安定シテ拳ニ竜巻ヲ纏ワセラレルヨウニ集中訓練ダナ」
『先生、ありがとうございます。これ、習得出来たらその後も色々使えます』
エクトプラズム「ト、言ウト?」
『今一つ思いついたのは、相手に間合いを詰められたときに自分の身体を軸に竜巻を発生させて自分に纏わせることによって敵を自分に触れさせないようにする防御としての使い方を思いつきました』
エクトプラズム「ナルホド、1ツノ事カラ幾ツモイメージヲ繋ゲル事ガ出来ルノハ、君ノ戦闘センスノ高サヲ表シテイル。君ナラ、ヒタスラ数ヲコナセバ出来ルダロウ」
『はい、ありがとうございます』
とにかく、何度も何度も拳を軸に竜巻を作る練習をした莉紗。元々個性のコントロールや扱い方が際立って上手い莉紗は30分ほど経った頃にはイメージに近い形で拳に竜巻を纏わせる事が出来るようになっていた。
オールマイト「やってるねぇ。今日は私が呼ばれてないけど、特に用事もないので来たー!」
相澤「いや、療養しててくださいよ」
オールマイト「必殺技の授業だろ?そんなの見たいに決まってるじゃないか。私も教師なもんでね」
相澤とオールマイトが隅でそんな会話をしていると派手な爆発音が聞こえ、教師陣がそちらに目をやった。
そこには既に必殺技の形が出来上がっている爆豪。
エクトプラズムの分身をなんなく倒した。
オールマイト「彼はすごいな..」
相澤「ええ、もっと強くなりますよ。あれは..あと」
オールマイト「ん?」
相澤「あいつも」
相澤が見たのは、莉紗だった。
相澤「元々学生の中でも個性のコントロールや扱い方が際立ってましたが、今じゃ下手なプロよりもよっぽど上手いです。だから自分のやりたいイメージがすぐに形になる。
あいつ、あれでも30分前までイメージすら出来上がってなかったんですよ」
相澤の言葉を聞き、オールマイトが少女を見つめながら静かに話し始めた。
オールマイト「相澤君...彼女の素質には時折恐怖すら感じないかい?」
相澤「...言いたい事は分かりますよ」
オールマイト「彼女は考え方も志も根からのヒーロー気質だ。もしヴィランに...なんて考えたことはないが、彼女も家庭環境は色々あったようだしね。もし、あの子がヴィラン側に堕ちてたら..と考えたら、恐ろしいよ」
相澤「けど、あいつはちゃんとヒーロー目指してます」
オールマイト「...ああ」
『(拳に竜巻を纏わせ...その竜巻をギュッと圧縮。回転数を上げて威力アップ...そして撃ち込む!!!)』
セメントスの造った岩に向かって竜巻を纏わせた拳を叩きつけるとその部分は拳が当たった箇所だけえぐれていた。
『出来ました!』
エクトプラズム「サスガ、速イナ。ヨリ素早クソノ状態ニ出来ルヨウニ、ヒタスラ練習シヨウ」
『はい!』
ほとんどのメンバーがイメージが定まっていない中、もうすでに必殺技が出来上がってきている爆豪と莉紗にクラスメイト達が感嘆の声を上げた。
麗日「2人とも気合入ってる~」
砂藤「あいつらもう必殺技のヴィジョンたくさんあるんだろうな」
葉隠「入学時から技名付けてたもんね!」
峰田「オイラだって、ガキん時から暖めてるグレープラッシュっつー技あんぜ」
上鳴「つーか、誰でも1度は考えるだろ。俺、電撃ソードとか考えてた!それをこうやって実現できるんだから、テンションあがるぜ!!」
**
放課後
『(不二達にサポートアイテムの件相談してみるかなー)』
※不二達...サポート科在籍の中学の時の友人2人。
HRが終わり皆が帰り支度を始めている中...。
轟「帰れるか?」
『あ、うん。帰れるよ』
轟「お前、必殺技もう出来てたか?」
『土台はね、まだ実戦で使うには完成度50%ってところ。威力も低いし、発動までの時間も結構かかるし、不安定だし』
轟「お前イメージすんの早いよな」
『イメージ提示してくれたのエクトプラズム先生だけどね。風自体を攻撃の武器にしたいって言ったんだ。そっちはどんな感じ?』
轟「とりあえず左右の同時発動の練習」
『あー、左がネックなんだね』
轟「ああ、中々右に追いつかねぇ」
『左使わなかった期間長いもんね。試練って感じだね、頑張って』
轟「おう。体育館の使用許可取っといたぞ。1時間しか取れねぇらしい」
『あ、そうだ。許可取らなきゃならないの忘れてた。ありがと』
轟「19時からだけど大丈夫か?」
『うん、大丈夫。ご飯前にする?後にする?』
轟「腹減ったから飯食ってからにする」
『んじゃ、そうしよう』
手早く夕食を済ませ、それぞれ準備をして19時に体育館に合流した2人。
『大分竜巻に火は纏えるようになってきたけど....まだ大分散るね』
轟「もう少し絞れるか?」
『うん、やってみるね』
今度は、竜巻を細くして少し回転数を下げて見た。
すると先ほどよりも竜巻が火を纏っている感じには出来上がった。
轟「イメージっぽくはなったが..」
『ちょっと、弱そう...難しいなぁ』
轟「最低条件は、敵を竜巻の中に閉じ込めることだからこれじゃ条件満たせねぇな」
『イメージしてることが悪いのかな?』
轟「いや、火と風の使い方だと思うぞ」
『おじさまと母さん、何かやったことないかな?』
轟「あったとして自分から聞きてぇか?」
『んー...いや、ちょっと聞きたくない』
轟「とりあえず、このまま数打ちしてくか」
『ん』
1時間の使用時間の中でイメージ通りになることはなく今日の特訓はお開きとし、寮に戻り風呂を済ませ部屋でくつろいでいた莉紗はさっそくサポート科にいる友人に電話をかけた。
不二【もしもし】
『もしもし、夜にごめん』
不二【いや、良いんだ。どうしたんだい?】
『サポートアイテムの相談をね』
不二【改良かい?】
『いや、新規』
不二【イメージは?】
『1つは粘着糸を使う時に、敵に確実に取り付けるためのスコープ的なのが欲しいなって..ライフルとかについてるあんなイメージでいいんだけど。出来ればいちいち覗くモーションがないほうがありがたい』
不二「うん、なんとなくイメージは分かった。2つ目は?」
『今、拳に風を纏わせてそれを敵に撃ち込む特訓をしてるんだけどそれを攻撃の軸にするとなると敵と撃ち合いになったり相殺することになる場合に負傷する可能性があるから負荷軽減や反動軽減が出来るサポーターとかグローブが欲しいかな。粘着糸の発動に支障をきたすから指先は露出しててほしい。
あと、今まだ拳に纏う風の動きが定まらなくて..
たとえば扇風機みたいに風を横方向に送る装置が拳に向かってついてたら拳に風を纏わせる時、その装置がある程度竜巻の土台を作ってくれると、もしかしたら自分で1から作るより安定するかもと思ったんだ』
不二「う~ん、なるほど。これはやり甲斐があるね」
『頼める?』
不二「明日パワーローダー先生に相談してみるよ」
『ありがとう、よろしくね』
それから毎日、個性伸ばしや必殺技の特訓。莉紗と轟はその後19時~20時にコンビ技の特訓を行った。そんな中..
『ん?あれ...』
轟「どうした」
『私、いつ土に触ったっけ?』
轟「?何言ってんだ?」
『だってほら..なんか手が土だらけ』
そう言われて広げられた莉紗の手は確かに土だらけになっていた。
轟「なんか若干、水で濡れてねぇか?」
『え?あ、ほんとだ..』
よく見れば確かに水滴が手のひらについている。
轟「お前、俺ん家でもなかったか?拭いたのに濡れてるって」
『あ、あった...何なんだろ?』
轟「先生に相談した方がいいんじゃねぇか?体になんかあったら困るだろ」
『うん、そうする...焦凍くん、一緒に来てくれる?』
轟「ああ、いいけど」
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『相澤先生、いますかー?』
相澤「ん?何だお前ら揃って」
『ちょっと相談が...』
相澤「相談?お前らから相談される日が来るとは思ってなかったよ」
『どういう意味...』
相澤「こっちこい」
そう言って、来客用の椅子に通された2人。
相澤「相談って何だ?」
『最近私の身体がなんか変で..』
相澤「変?」
『気づいたら手が水で濡れてたり、さっきは触った記憶ないのに手が土だらけになってたり..って事がここ数日頻発してて...なんか身体変だなーって思って』
相澤「.....」
オールマイト「それは、ナチュラリウムの個性の前兆かもしれない」
『オールマイト...って、ナチュラリウム?』
相澤「けど、オールマイト。それじゃ1世代ぶっ飛ばしてますよ。ウィンドリアさんは風しか持ってませんよね?」
オールマイト「過去に事例が全くないわけではない。稀だがね」
目の前で繰り広げられる会話の内容を理解できず、莉紗と轟は顔を見合わせた。
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