Season3
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翌朝
『ん.....』
莉紗が目を覚ますと、窓から太陽の光が差し込んでいた。
左側に感じる暖かい温もりに、隣を見ると昨日心も体も結ばれたばかりの彼が、自分を抱きしめたまま未だ目を閉じてすやすやと眠っている。
『.........不思議な感じ』
離れていた期間があるとは言え、記憶にすら残っていない、生を受けた日からずっと一緒にいた人との今までの関係がガラリと変わったことに不安などは全くなくむしろ心が満たされていき幸せな気持ちにすらなってきてボソッと一言呟いた。
今まで寝顔は何度も見てきたが、今目の前で寝ている彼の顔は見たことがないほどにあどけなく、そして穏やかな顔で眠っている。
彼の腕を抜けて、身体を起こすと彼のサラサラな紅白カラーの髪を優しく撫でた。
轟「ん、莉紗...?」
『あれ、こんなんで起きるなんて珍しい...』
轟「腕ん中から居なくなったから....」
『そんなので起きる人だっけ?』
眠そうに目を擦りながら言う轟にクスクス笑いながら言う莉紗。
轟「ん....はよ」
『おはよ』
冬美は滅多に部屋に顔を出すことはないが、さすがに行為後の姿のまま寝るのは....と寝る前に服を身につけていた為ちゃんと衣服は着ていた。
轟「身体、大丈夫か?」
身体を起こしながら莉紗の手を掴みギュッと握ると、遠慮がちに聞いてきた轟。
『ん?うん、ちょっとお腹ずしっと来るけど平気』
轟「悪い、無理させた..」
『ううん、初めての時はこんなもんなんじゃないかなー。それに生理の初日の方がシンドイ』
轟を安心させるように笑って言う莉紗に轟も少し安心したのかホッと息を吐いた。
轟「悪かった、いきなりこんな事...」
首に手を当て、バツが悪そうに言う轟。
『何で謝るの?自分で決めた事だよ?』
轟「..莉紗」
轟は莉紗の手を引き、力強く抱きしめた。
轟「大切にする」
『うん、私も』
身体を離し、笑い合うとどちらからともなく触れるだけの優しいキスをした。
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冬美が朝7時には出勤の為、2人が起きた頃には家には誰も居ず、2人きりだった。
『お腹すいた?』
轟「ああ」
『じゃあご飯作るね』
『外出もできないし、暇だねぇ』
莉紗が作った朝ごはんを食べ終え2人並んで後片付けをしている時にボヤいた莉紗。
轟「勉強でもするか?」
『せっかく2人きりの時間を勉強....』
轟「何かしたいのか?」
『特にないけど...ん?』
ふと、莉紗は自分の身体に異変を感じた。
轟「どうした?」
『いや、私さっき手洗った後拭かなかったっけ?』
轟「拭いてたな」
『何でこんなに濡れてんだろ?』
莉紗の言葉に轟も彼女の手を見ると、確かに先程タオルで拭いたとは思えない程手が水で濡れている。
轟「拭き忘れか?」
『って濡れ方じゃないよね..変なの』
そう言って莉紗は再び手をタオルで拭いた。
轟「あ、莉紗」
『ん?』
轟「お前、中学の時言ってたよな。いつかコンビ技作りたいって」
『言ってた、よく覚えてたね』
轟「今なら作れんじゃねぇか?」
『..やっちゃう?笑』
轟「やるか」
そう言って顔を見合せ笑い合うと2人で訓練場に足を運んだ。
轟「なんかイメージあるか?」
『んーと言っても焦凍くんの炎と私の風くらいしかないよね』
轟「まあな」
『でも、私思ってたよ。私が風の個性持ったのは焦凍くんの為だって』
轟「何でだ?」
『火は風の力で勢いを増すでしょ?私は焦凍くんの炎を強くするために風の力を手に入れたんだって思ってたよ』
冗談で言ってる訳ではなく本心で言っているのは彼女の顔を見れば分かる。遺伝性のものとは言え引き継ぎが必須ではないランダムに受け継がれるその力を受け継いだ事をまるで運命とでも言いたげなその様子に。そして、その運命の相手に当たり前のように自分を指してくれることに堪らなく愛しさを覚え轟は莉紗を抱きしめた。
『焦凍くん?』
轟「お前...可愛いな」
『え....///』
相変わらず"可愛い"という言葉への免疫がない莉紗はすぐに顔を赤くする。そんな姿さえも轟の心を掴んでいることを本人は分かっていない。
『まず、私たちの火と風を合わせる練習から始めない?小さい規模で』
轟「ああ、そうだな」
『焦凍くん、手のひらだけでいいから火出してもらっていい?』
轟「ああ」
轟が言われた通り手のひらサイズの炎を出すと莉紗がその炎に手を添え小さな竜巻を出した。竜巻に火を巻き込み火柱のようにするイメージだったが、炎が散ってしまい中々上手くいかない。
『.....そう簡単にはいかないんだね』
轟「ああ、竜巻の威力もう少し弱くしてみろ」
『ん』
竜巻の回転数を減らし威力を抑え再度チャレンジすると...
『あ!』
轟「俺がある程度先に空気を暖めて上昇気流を作っておいた方が上手くいきそうだな」
轟のその言葉通り、轟がある程度左の熱で空気を暖めておいて轟の放った炎に莉紗が勢いは弱めでかつ範囲は大きめの竜巻を放った。すると炎が竜巻に巻き込まれ炎をまとった竜巻が出来上がった。
いわゆる災害などで起こる火災竜巻。熱波の上昇によって煙と炎と粉塵(ふんじん)が巻き上げられ、炎の上で渦を巻く現象。
轟の言う通り、先に空気を温めて置く方が成功率は高そうだ。
『これは規模を大きくすれば武器になるんじゃないですか?』
轟「ああ、なるべく毎日特訓するぞ」
『うん!』
2時間程訓練した後、休憩を挟もうと居間で隣同士にピッタリと座りゆったりお茶を飲んでいる2人。
『焦凍くん..』
轟「どうした?」
『...ううん、なんでも』
そう言って轟に寄りかかり頭をコテンと預けた莉紗。
轟「莉紗」
『ん?』
突如顎を掴まれ、轟の方を向けさせられるとチュッ、とリップ音を立てて唇を奪われた。
轟「好きだ」
『....わ、たしも//』
轟「お前意外と照れ屋だな」
『うるさい...』
轟「可愛いから良いけど」
そう言って莉紗の頭を撫でた轟。
『焦凍くんは意外とそういうのはっきり言う人なんだね。愛情表現が全然なくて不安になりそうだなとか思ってた』
轟「俺はっきり言ってるか?」
『...やっぱ天然だったか』
轟「ん、こっち来い」
そう言って自分の足の間をポンポンと叩いた轟。
『なに?』
轟「もっとくっついてたいと思ってんのは俺だけか?」
『っ、焦凍くん...絶対恋愛初心者じゃないと思う...////』
照れながら憎まれ口を言う莉紗だが、しっかり膝を立てて座っている轟の開いた足の間に入り轟はそんな莉紗を後ろから抱きしめた。いわゆるラッコ座り、バックハグというものだ。
轟「恋愛というものはお前以外とした事ねぇ」
『すごい上級者テクしてる気が..』
轟「じゃあお前もイチイチ可愛い反応すんのは上級者テクか?」
『ちがいます...////』
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その後も、ラッコ座りのまま焦凍くんは離さないぞと言わんばかりに私をギュッと抱きしめたままホントに離れなかった。昔のことや学校の事、個性の話しなど色々な話をした。その合間合間にキスは忘れない焦凍くん。
1時間程そうして二人の時間を堪能してたら段々と空腹感に見舞われてきて昼食を作って食べた。
『私1回家帰るけど焦凍くんどうする?』
轟「あー、俺も行く。合宿終わったら寛太と遊ぶ約束すっぽかしたままだったから」
律儀にちゃんと3歳児との約束を守りに行こうとする焦凍くんに苦笑いした。
『あそこまで懐かれたら可愛い通り越してウザくない?苦笑』
轟「いや、むしろ構い甲斐がある」
『前向きだなぁ、焦凍くん』
轟「そうか?
遊んで欲しいって気持ちには応えてやりたくなんだ。俺がそうだったから」
『焦凍くん.....』
その言葉を聞いて胸が切なくなった。
遊んで欲しくても、遊ばせて貰えず言葉すら交わすことを滅多に許されなかった焦凍くん。
だからこそ、寛太の要求をきいてあげたくなるんだろうな。
自分のような辛く、寂しい思いをさせたくないから.....。
轟「それに、俺が寛太と遊んでたらお前も家事はかどるだろ?」
寛太のため、自分が放っておけないって気持ちはウソじゃない。
だけど最終的には私の為に。
そうだ。忘れてた。焦凍くんはそういう人だって。
いつだって私の為を思ってくれる。
私が辛い思いをしたり傷つくところを見ていられない人。
そんな焦凍くんが、私はやっぱり大好きだ。
『焦凍くん...大好き』
だから、普段は恥ずかしくて自分からは出来ないけど。
身体を伸ばして私よりも背の高い焦凍くんの唇に自分の唇を重ね合わせた。
今だけは、特別。
赤くなった顔を隠すように思いっきり焦凍くんに抱きついて焦凍くんの鍛えられた胸板に顔を埋めた。
どんな顔をしてるかは分からない。
でも、きっと焦凍くんも私と同じ顔をしているに違いない。
だって、今抱きついた瞬間...。
さっきくっついてた時とは比べ物にならないくらい心臓が全速力で動いているから。
**
2人で私の自宅に行くと、寛太が目をキラキラさせながら走って焦凍くんの元に飛び込んできた。
寛太「しょーとくん!!」
轟「おう、遊んでやるの遅くなって悪かったな」
寛太「だいどーぶ!かんた、いいこしてた!」
(訳)大丈夫、寛太いい子にしてた
轟「そうか、偉かったな」
焦凍くんが寛太の頭をよしよしと撫でるその姿はどこからどう見ても兄と弟だった。
寛太「しょーとくん、とみかかってもらった!あーぼ?」
(訳)焦凍くん、トミカ買ってもらった。遊ぼ?
轟「おう」
寛太が私になんか目もくれず焦凍くんの手を引っ張り、部屋の中に誘導して行った。
『姉、ガン無視だしさっそく焦凍くん拉致られるし...苦笑』
私は焦凍くんに寛太を任せ、居間に向かった。
楓子「お帰りなさい」
寛治「焦凍も一緒か?」
『うん、今寛太の相手してくれてる』
梨央「お姉ちゃん..?」
梨央がじっと私の顔を見つめてくる。
『ん?』
梨央「あのね、昨日みんなでご飯食べに行ったんだよ!」
と思ったら急に満面の笑みで何処に行ったか、とか何食べたか、とか何の話ししたか、とかマシンガンのように話し始めた。
その様子を見て、私が望んだようにこの人達が今までちゃんと見てこなかったこの子達の事を知ろうと向き合ってくれたのかなと少しホッとした。
『そっか、良かったね』
楓子「梨央の好きな男の子の話し教えてくれたもんね?」
梨央「お母さん!それは言わない約束!///」
『隣のクラスの悠太くんだっけ?』
梨央「お姉ちゃん、何で知ってるの?!///」
『梨央、よくその子の話し嬉しそうにするから好きなのかなーって』
梨央「もー...。お母さんも突然好きな子いるでしょ?っていうし。2人とも鋭い...」
楓子「女の勘ね」
『梨央が顔に出すぎなんだよ』
あれ、ていうか私今普通にこの人達と会話してた気が..。梨央が間に入ってはいるけど。
居間に入ってきた時も普通に受け答えしてたかも。
前なら話しかけられるだけでも不快だったのに。
焦凍くんもおじさまも変わろうとしてる。
それは父さんと母さんも。
みんな、今までを変えようと...変わろうと努力してる。
でももしかして私も、変われてるのかな。
梨央「焦凍お兄ちゃん、大丈夫かな?」
『あー、梨央見てきて?』
梨央「分かった!」
梨央は小走りで、2階の寛太のおもちゃ部屋に走っていった。
そして、居間には両親と私だけ。
『......梨央があんなに嬉しそうなの見たらあんた達が、昨日あの子達とちゃんと話ししたんだなっての分かるよ』
楓子「うん、こんなに学校楽しんでるの、全然知らなかったよ」
寛治「ああ」
その時見た両親の顔は、今まで見たことない程に穏やかな表情をしていた。
『....私も、楽しいよ。学校』
楓子「え?」
『こんなに学校楽しいって思ったことなかった。毎日学校に行くのが楽しみで..そう、思ったの。初めて』
寛治「そうか...友達は、出来たか?」
『うん、皆良い奴らだから』
楓子「そう、良かったわね」
『勉強は、中学の時放棄したツケで苦手だけど焦凍くんが教えてくれてるからなんとかなってる。頑張れてるから』
寛治「ああ」
楓子「そう、焦凍ちゃんに感謝だね」
『...ん』
その時..
寛太「まーだーあしょぶ!」
(訳)まだ遊ぶ!
梨央「寛ちゃん、ワガママ言わないよ」
轟「梨央、俺は別に大丈夫だぞ」
賑やかに1Fに降りてきた3人。
『焦凍くん、今日夜ご飯食べてく?』
轟「え?」
莉紗の言葉に轟だけではなく莉紗の両親も目を見開いた。
楓子「莉紗...一緒にご飯、食べてくれるの?」
『...どっちにしても、寛太が焦凍くんのこと解放しなさそうだし』
梨央「うん!皆で食べよ!お姉ちゃんも焦凍お兄ちゃんも!」
寛治「ああ、莉紗や焦凍が良いなら皆で食べよう」
轟「俺は全然大丈夫です」
『せっかくだから冬ちゃんも呼ぼっか』
轟「ああ、喜ぶと思う」
莉紗はすぐに冬美に連絡を入れ、冬美も二つ返事で快諾。
夕方に、仕事を終わらせた冬美が合流し、莉紗と楓子で支度をしていた食事の準備に混ざり、轟と寛治と梨央が寛太の相手をした。
楓子「家のことも随分任せてしまったから、料理も上手ね莉紗」
『教えてくれたの冬ちゃんだから。冬ちゃん料理上手なの』
普段轟家にいる時より数倍低い声のトーンにツンとした態度。表情もお世辞にも笑ってるとは言えない真顔だが母親と並んでキッチンに立っている莉紗を見て確実に前に進んでいることを実感した冬美。
また、今まで莉紗にプレッシャーや圧力をかけてる所しか見た事がなかったのに今自分の目の前では母親が娘の料理の手際を褒めている。
話しで聞いていたよりもよっぽど関係性は変化していることに冬美は自分のことのように嬉しくなった。弟の方を見ると目が合い冬美と同じ気持ちで2人を見ていたようでどちらからともなく微笑みあった。
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『寛太、ちゃんと座って食べて』
冬美「こんな大人数で食べたのいつぶりだろう。楽しいです!」
冬美が本当に嬉しそうに言うもんだから、その場の誰もが微笑んだ。
楓子「私達も食事を誰かと楽しむってこと、昨日梨央たちとするまで忘れてたわ」
寛治「会話をしながら食べるってのは、良いもんだな」
轟「そうですね」
楓子「あ、そうそう。莉紗。そういえばね、学校から郵便が届いてて」
『学校から?』
楓子「何でも、これまでのヴィラン騒動に対する生徒への安全策として雄英高校の教員及び全校生の全寮制への移行を進めてるんですって」
轟「え..」
『全寮制..?』
冬美「あ、そうなの。うちにも今朝来てて帰ったら話そうと思ってたんだ」
楓子「それで、先生方が意向の確認をしに全生徒のお宅に訪問するらしいんだけど貴方たちはどうしたい?」
轟「『入る』」
何の迷いもなく、さも当たり前のようにピッタリと声を揃えて言う2人。
まるで2人がそう言う事が分かっていたかのように大人達が笑った。
寛治「だと思ったよ」
楓子「全寮制になったら寛太も梨央も寂しくなるわね」
『まあ、気持ちはそうしたいけど実際私が寮に入ったら寛太達の面倒誰がって話しになるから現実は難しいけど』
楓子「その事だけどね、実はもう考えてるの」
寛治「母さんはいつ要請が来るかわからないからな。夜は父さんが家にいてリモートで仕事をしながら家のことをしようと思うんだ」
『家のこと出来るの?』
楓子「ご飯は私が夜ご飯を作ってから出勤すればいいし、家で子供たちといてくれればいいからね」
冬美「おじさま、おばさま。夜や週末なら言って頂ければ私も見れますからね?遠慮なく言ってください」
楓子「ありがとう、冬美ちゃん」
寛治「ありがとな」
大人達の会話を聞いて轟が莉紗に微笑みかけた。
轟「良かったな」
『ん』
家族の在り方の正解なんて存在しない。
だけど、少なくとも今までの自分家や轟家が正解であるはずがない。
だって、誰も幸せじゃなかったから。
だからこそ、それに気づいたみんなが少しずつ変わっていってる。
轟家も
風舞家も
これから、あるべき家族ノカタチに変わっていくと...
そう信じて、皆が前を向き努力を続けていく
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