Season3
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
莉紗side
去り際に射的屋のおじさんからもうすぐ花火が上がるというのを聞き人混みじゃない場所で見たいと思い途中チョコバナナを買って穴場スポットを探し歩き回っていた。
神社の背後にある山林の中を突き進むと拓けた土地が姿を見せた。ここなら空もよく見えそうでここで見ることにした。
『焦凍くん、なんかごめんね?』
轟「何が?」
『頑張らなくても良かったのに、ありがとね。嬉しい』
確かに見た瞬間、欲しい気持ちはかなり強かったがまあ射的って何回かやった事あるけど全然倒れないからそこまで求めてはいなかった。だけど、焦凍くんが頑張ってくれて申し訳ない気持ち以上に自分の為に焦凍くんが頑張ってくれたのが嬉しくてお礼を言った。
轟「....お前が欲しいと思うもん、やりたかったから」
『...え?』
突如そう言った焦凍くんはどこか切ない表情を浮かべた。
轟「今まで、お前にもらってばっかだったからな」
『.....何かあげたっけ?』
そんなに何かプレゼントした記憶はないんだけど。
職場体験の時に言ってた手打ちそばも色々あってまだ道具を買った所で止まってしまっている。焦凍くんが何を言ってるのか分からず、次の言葉を待って焦凍くんを見た。
体が触れ合いそうな距離で向かい合わせで立ってる私達。
思えば、こんなにも近くに立つことはなかった。
だから私よりも20cmも背が高い焦凍くんが余計に大きく見えた。
轟「俺がどんなに変わってもお前は変わらずにいてくれた。変わらず、俺が欲しい言葉をくれた」
体育祭の後に焦凍君に言われたその言葉。
あの時よりも、穏やかな口調で呟く焦凍君。
『焦凍くん...?』
何故またその言葉を伝えてくれたのか、分からず名前を呼んだ。
轟「好きだ」
『え?』
焦凍君が一言呟いたその言葉。
聞き間違いではないんだろうか...
焦凍くんが、私を...?
確かに、紡がれたその言葉は自分が彼に伝えようとしていた言葉だった。
段々と鮮明に理解していくその言葉の意味。分かった時には恥ずかしさでいっぱいになり、自分の頬に熱がこもってくるのがわかった。そんなとき、ふわりと焦凍くんの香りがした。
『?!
しょ、と..くん..?』
私は今、焦凍くんに抱きしめられている。
抱きしめられたのは、初めてじゃない。
1回目は体育祭の途中。
あの時は、焦凍くんが私に縋るように抱きしめてきた。抱きしめるその腕は優しく、ぬくもりを求める子供のように...
2回目は焦凍くんが神野に助けに来てくれた時。その時と似てる。
まるで、放さないとでも言うかのように力強く。
こんなに力が強かったんだと男女の差を実感させられるほどに焦凍くんの腕は強く私をとらえて離さない。
でも、そんな力強さも心地いい。
轟「お前が好きなんだ、莉紗....」
再び紡がれた焦凍くんの想い。
親と話し合いを終えたら、私が伝えようとしていた言葉。
まさか、焦凍くんから聞くと思わなかった。
自分と同じ気持ちだった。
それが、嬉しくてたまらなくて私の気持ちもちゃんと伝えたくて..
そっと焦凍くんの背中に腕を回ししがみつくように抱きしめてみた。
そして小さな焦凍くんの胸板に顔を押し付けてそっと呟いた。
『わた、しも....////』
その言葉を口にした途端、突然離れたぬくもり。考える間もなく、今度は目の前に必死な焦凍くんの顔があった。
そう、私と焦凍くんの唇が一つになっていた。
その瞬間、背後でドンっと言う花火の音が静寂の中鳴り響いた。
-轟side-
ほんの数秒だったはずだが随分長く感じた。
ゆっくりと唇を離すとさっきとは比べ物にならないほどに顔を赤くしている莉紗がいた。
轟「フッ...顔真っ赤だな」
『だ、だって...焦凍くんのせいだから..///』
轟「悪りぃ悪りぃ」
『絶対思ってないでしょ...』
そう言って怒ってるつもりなのか、そっぽ向いて不貞腐れたような表情を浮かべた莉紗。そんな顔しても可愛いだけなんだがな。
轟「赤くなってるお前可愛くて」
『っ...////』
轟「莉紗」
『ん?』
俺は、莉紗が攫われた時に落としていったネックレスを渡した。
『!! これ...』
轟「あの時、落としてった」
ネックレスを見た途端莉紗は泣き止んだと思ったはずの涙をまた流し俺からネックレスを受け取り両手で包み込んだ。
轟「ど、どうした?」
『無くなったと思ってたから...う、嬉しくて....』
見つかった事が泣くほど嬉しいと思ってくれると言うことは無くなった時もそれほどまでにショックを受けていたのか...。自分がプレゼントしたものでそこまでの感情を持ってくれているのがこんなに嬉しいとは思いもしなかった。
轟「....ちゃんと話すか」
『うん』
轟「ん」
了承の返事が聞こえ、右手を差し出すとその手を取った莉紗。近くに設置されていたベンチに座り、手を繋いだまま花火を見ながら話し始めた。
轟「お前がさらわれた時...頭が真っ白になった。何も考えられなくなっちまって。
時間が経って段々冷静になると、今度は悪い事ばかり考えるようになった。
お前が、このまま戻ってこねぇんじゃねぇかって...
そう考えた途端、怖くて堪らなくなった。お前を失うかもしれないことがあんなにも怖いと思った」
思い出すだけで、怖くなるあの日の出来事。思わず握っていた手にも力が入っちまってることにも莉紗が強く握り返してくるまで俺は気づかなかった。
『焦凍くん...』
轟「切島に今にもビルから飛び降りそうな顔してるって言われた。
家に帰って部屋に籠って、ガラにもなくスゲェ泣いた。泣いても泣いても、恐怖や絶望感は晴れなくて..
ずっと一緒にいた奴だからだって思ってた。けど、その時気づいたんだ。
隣にいないだけで、苦しいくらい...
俺はお前の事がスゲェ好きなんだって」
『.......ごめんね。不安にさせて』
轟「お前のせいじゃねぇよ」
俺の話しを聞いて申し訳なさそうな表情を浮かべた後、莉紗も静かに口を開いた。
『私...奴らの所にいる間。ホントは一度諦めてた。囮になって爆豪だけでも逃がしてあげようって考えちゃったんだ』
轟「は...?」
諦めてたって何だ...?囮?
つまり何だ、死のうとしたって事か...?
『でも、爆豪がツラと言葉が合ってねぇって喝入れてくれてね。
"轟の野郎に会いたいってツラしといて囮だぁ?!ツラとセリフが合ってねぇんだよクソアマー"って』
爆豪の真似をしたのか冗談っぽく小さく笑って見せた莉紗。
『言われて私そんな顔してんだなーって...思ったよ。でもホントは気づいてた。
だってね、そんなこと考えながら私の頭の中はずっと焦凍くんでいっぱいだったもん。
焦凍くんに借りた上着からする、焦凍くんの匂いとか...
焦凍くん心配してるだろうな...とか。
ワープで引きずり込まれるときの焦凍くんの顔も見てて辛かったけど、そんな顔させたのは私なんだって....
謝りたいな...
焦凍くんに、会いたいな..
声、聞きたいな...』
話しながら段々と涙を堪えているのか言葉が途切れ途切れになっていく莉紗。
『もう、そこまで考えてたら..あー、私焦凍くんが好きだったんだなってさすがに気づいたよね』
轟「........」
前を向いて話していた莉紗が横を見て俺を見上げた。
『私も、焦凍くんが好きだよ。大好き』
轟「..っ、ああ。俺も、大好きだ」
勢いでしたさっきとは違い今度は触れるだけのキスをした。
莉紗の唇は想像以上に柔らかかった。
**
その後は、花火を最後まで見た。
そして、今は帰り道..
出かけるときと違う、繋がれた手。
それが、たまらなく幸せだと思った。
轟「もうすぐお前の浴衣姿も終わりだな」
『焦凍くんもね、浴衣似合ってるよ』
轟「お前も、似合ってる」
『ん?』
轟「浴衣も、髪型も化粧も。可愛い」
『...言ってて恥ずかしくないですか//』
轟「恥ずかしがってんのはお前の方だろ?」
バカだな、って笑ってやると手を繋いでいないほうの拳で俺の腕を殴ってきたが全く力が入っていない。
轟「お前、祭りとか行ったことあったのか?」
色々と詳しかったから俺と違って初めてではないんだろうとは思っていたがなんとなく聞いてみた。
『うん、お祭り好きだから毎年行ってるよ?小学校の時は特別仲のいい友達いなかったから1人で行ってたけど、中学の時には忙しくなってあんま行けなくなったけど1回部活のみんなで帰りに行ったかな』
"部活のみんな"という言葉が俺の中で引っかかった。
確か、中学の時マネージャーやってたと聞いていたが確か...。
轟「お前、男子テニス部のマネージャーだろ?」
『うん?』
轟「男に囲まれて行ってたのか?」
『....語弊のある言い方だけどそうなる、のか』
無性に腹が立つこの気持ちがなんなのかよくわからず返す言葉を考えた。
『焦凍くん?』
轟「つーか、お前なんで女子じゃなくて男子だったんだ」
『え、あー。時期が半端な時期だったからマネージャー募集してる所男テニしかなくて...』
轟「...........」
『焦凍くん...もしかして、妬いてる?』
遠慮がちに莉紗が聞いてきたその言葉に俺は考えた。
なるほど、この腹が立つ気持ちが前に切島の言ってた"ヤキモチ"ってやつか。じゃあ俺は何にヤキモチを妬いているんだ。
轟「よくわかんねぇけど..このイラつく気持ちがヤキモチなら、俺は何に妬いてんだ?」
『え、だから...周りにいたのが男子ばっかりな事とか、焦凍くんが初めて行ったお祭りに、私は他の男子と行ったことがあった事、とか..かな』
詳しく説明してくれて感謝するぞ、莉紗。
俺は、莉紗の説明で自分の中に沸き上がった"ヤキモチの答え"を理解した。
これが、独占欲ってやつなんだな。
轟「ああ、よく分かった」
『...妬いてくれるんだね。なんか、嬉しいよ』
轟「そういうもんか?」
『人による...かも。焦凍くんは?私が、他の女の子と2人で出かけないでって言ったらどう?』
轟「そもそも、2人で出かけねぇよ」
『いや、そこは例えばの話しね。言われたらどう思うか?っていう..』
轟「.........」
『ダメだね、その顔絶対分かってない』
苦笑いを浮かべた莉紗。
轟「どう思うかはよく分かんねぇけど、お前が1番大事だから、お前が嫌だと思う事はしねぇよ」
『...そ、ですか///』
そうこう話してる内に、俺ん家に到着した。
『あっという間だったね』
轟「ああ、けど今日はうちだろ?」
『うん』
轟「なら、今日はずっと一緒だな」
『..っ..ホント、サラッとそういう事言うんだね///』
轟「嫌か?」
『嫌じゃないです...///』
轟「お前は今日ずっと顔赤くしてんな」
『うっさい』
-莉紗side-
冬美「おかえり~」
轟「ただいま」
『ただいまー』
ドアを開ける音を聞いて冬ちゃんが出迎えてくれた。
その時、冬ちゃんの視線が下向きで止まった。
冬美「やった♪浴衣効果あったかな?」
私達は二人して素っ頓狂な顔をしていた、と思う。
冬美「やっと通じ合ったんだね?」
轟「何の事?」
冬美「恋人同士になれたんだよね?」
冬ちゃんが指をさしたその先には、私達の繋がれた手。
『~っ?!///』
恥ずかしさのあまり勢いよく手を離してしまった。
轟「あー...莉紗、俺らって今そうなのか?」
『え...いや、確かに..どうなんだろ?』
言われてみれば、お互い好きとは言ったけど付き合おうとは言ってない。
冬美「お互い好きなんだから付き合うでいいんじゃないのー?」
轟「...?姉さん、何で俺らの気持ち知ってんだ?」
冬美「...2人共、もしかして自分達の気持ちバレてないと思ってた?」
『え...』
冬美「っていうか、お互い相手の気持ちに気づかなかったの?」
・・・・・・・。
轟「..俺らそんなに分かりやすかったか?」
冬美「分かりやすいっていうか...2人共、思いっきりお互いが好きですって顔してたよ?」
轟「...そうか」
『え、何でそんなツラっとしてられんの?!////』
轟「? なにが?」
冬美「でも、ほんと良かった!なんか見てるこっちがむず痒かったから」
そう言って笑い飛ばす冬ちゃん。
轟「姉さん、親父にはまだ言わないでくれ」
冬美「うん、分かってるよ♪」
家に入り、お互いお風呂に入っていつもの見慣れた姿に戻った。お風呂上がり、冬ちゃんに明日仕事に早く行かなきゃならないから焦凍の朝ごはんお願いね、と言われ朝ごはんの仕込みを簡単にした。
一応私の部屋もあるけど、今はもう少し焦凍くんといたくて私は真っすぐ焦凍くんの部屋に向かった。焦凍くんは何も言わず招き入れてくれたから私は布団に寝転がり、焦凍くんは私のすぐ近くに座椅子とテーブルを移動し座ってお茶を飲んでいる。
『下駄は履きなれないから足痛くなる...』
轟「そうだな、俺も少し痛ぇ」
『...焦凍くん』
今日の出来事を思い出し、満たされる気持ちとまだ信じれない気持ちと半分半分。
夢ではないだろうか、と少し不安になって焦凍くんの名前を呼んでみた。
轟「ん?」
『.........』
私が何も言わないからか、焦凍くんは私の頭を撫でた。
『...最近、何か頭よく撫でるよね?』
轟「ああ、そうだな。なんかお前見てると撫でたくなる」
『..私小動物?』
轟「いや、大抵お前が可愛いと思って」
『いや、それ小動物見る目と同じじゃん?』
轟「ちげーよ」
そう言って焦凍くんは私の後頭部に手を回し引き寄せると自分も体勢を低くして、キスをしてきた。
轟「小動物にキスしたくなるか?」
『なら...ない..///』
轟「だろ。んで、どうした?」
優しい声で聞いてくれる。
焦凍くんは無理に聞いてくる事はほぼない。
私が自発的に言うのを待ってくれる。
だから私がだんまりになっても急かしてこない。昔からそうだ。ホントに優しいんだよね。
『私達、今日から恋人同士?』
轟「よく考えりゃ恋人同士じゃなきゃキスしねぇだろ?」
『...確かに』
笑っていう焦凍くんにつられて私も笑った。
.