Season3
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
話し合いを終え、蒼兄と焦凍くんと一緒に轟家に向かい梨央と寛太を迎えに行き蒼兄と一緒に自宅に戻った。蒼兄はあんなこと言っていたけど次の休みの前日に泊まりに来るって言ってた。何でも今日は存在を知ってもらって泊まりに来た時に2人との関係を築く土台を作るとか何とか言ってたな。蒼兄は基本的にコミュ力が高いからすぐに2人も慣れるだろうな。
私は、一度蒼兄たちと自宅に戻ったけど焦凍くん達と話したいことがあるから今日は轟家に泊まることを伝えた。両親は、今日は梨央と寛太とたくさん話しをするって言っていたから今後親としてあの人たちがどう変わっていくか私も見守ることにした。
**
in 轟家
冬美「お話しできた?」
『うん、思ったより冷静に話せた』
轟「とりあえずよかったな」
『うん、ありがとね。冬ちゃん、焦凍くん。昨日3人がああやって言ってくれたから心強かった』
冬美「昨日?」
『うん、戻ってきていいって言ってもらえたから。そうやって言ってもらえる人がいる、私は1人じゃないって思えたから』
冬美「莉紗ちゃん...そっか!
あ、ねぇねぇ。今日近くの神社でお祭りあるんだって。2人で行ってきたら?」
轟「祭り?」
『いいのかなー、出歩いて』
冬美「パトロールにプロヒーローが結構歩いてるみたいだし。今朝おばさん達に話したら気晴らしも必要だから行かせてあげてって言ってたよ?何かあったら今日はおばさんも動けるから連絡するようにって」
『...焦凍くんお祭りとか苦手じゃない?』
轟「さあ、行ったことねぇから」
『あ、そうなの?』
轟「ああ、行くか?」
『いいの?』
轟「おう」
冬美「うん!実はね、2人の浴衣買っといたの♪」
轟「『え』」
流されるまま浴衣を着せてもらうことになった莉紗。
冬美が用意してくれたのは、普段原色カラーを選ぶことが多い莉紗が選ばないようなパステルブルーに大きなピンクの花や小さい黄色のラインが入った浴衣だった。
帯や帯留めは黄色で揃っていって巾着は浴衣と同じ色のものだった。
ヘアセットもしてあげた冬美。
右サイドでポニーテールにした後、毛束を半分くらいくるくると巻き付けピンで固定したあと残った毛先に逆毛を立ててセットした。そしてゴムに差し込むように黄色の向日葵のかんざしを差し込んだ。軽く薄化粧を施してもらい莉紗は姿見で自分の姿を見た。
『なんか、私のイメージとちがう...//』
冬美「可愛いよ?焦凍はもう隣の空き地で待ってるからね」
『んー、なんか見せるの恥ずかしい...』
冬美「大丈夫!きっと焦凍も可愛いって思うよ」
安心させるように笑った冬美。
『ん、ありがとう冬ちゃん。行ってきます』
-莉紗side-
冬ちゃんに言われた通り、焦凍くんの家の隣の空き地に行くと焦凍くんが壁に寄りかかってスマホを見ている。
紺色の浴衣を着ていて、元々大人っぽい焦凍くんが、一層大人っぽく横から見たその姿は色っぽくも見えた。
『しょ、焦凍...くん』
恥ずかしさを堪え、たどたどしく名前を呼んでみると焦凍くんはこちらに振り向くや否や目を見開いてジッとこちらをみている。
『あ、あの...焦凍くん?そんな見られたら、恥ずかしいんですが..////』
轟「あ、ああ...悪りぃ」
『なんかイメージと違うなとか思ったんでしょ』
轟「いや...似合うなって」
『...ホントに?』
轟「おう」
『.....』
轟「...行くか」
『ん』
気恥ずかしくて言葉に詰まる私に、焦凍くんが空気を変えるように言った。
-轟side-
『しょ、焦凍...くん』
姉さんが浴衣を着せてくれて空き地で待ってろと言われたためスマホでヒーローニュースを見ていると、たどたどしく名前を呼ばれ振り返って見ると今まで見たことないような華やかな格好の莉紗がいた。いつもは黒や紫と言った原色を好んでいた莉紗が、薄い青に黄色の帯。
髪型も見たことない髪型で化粧もしてるようだ。女らしい莉紗の格好に思わず見入っちまった。
『あ、あの...焦凍くん?そんな見られたら、恥ずかしいんですが..////』
本当に恥ずかしいらしくあまり俺の方を見ずに言う莉紗。
轟「あ、ああ...悪りぃ」
『なんかイメージと違うなとか思ったんでしょ』
俺が引いてると思ったらしく少し不貞腐れたように言ってきた。
轟「いや...似合うなって」
そう言えば、再び照れ臭そうに頬を赤く染め俯き加減に視線をキョロキョロと動かしながら確かめてきた。
『....ホントに?』
轟「おう」
『.........』
正直俺も目の前の莉紗を見て心臓が速度を上げていくのを自覚した。隠すように神社の方に視線を向けた。
轟「...行くか」
『ん』
**
轟「お前、何まわりたい?」
『お腹すいたからなんか食べたいかな』
轟「何がいい?『チョコバナナ』
すげー即答で返ってきた。好きなのか?
轟「飯じゃねぇのか」
『いや、飯も食いますよ』
轟「チョコバナナと一緒にか?」
そう聞くと、顎に人差し指をあてて考え出した。
『んー...食後にしよっか』
合わないと思ったらしい。
結局焼きそばとたこやきとフライドポテトを買って食べながら他の出店を回る。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんデートかい?」
ふと、射的屋台のおじさんが声をかけてきた。
轟「デート?」
『デートではない...あ、でも男女で出掛けたらデートか』
轟「ならデートか?」
『んー....』
※作者解説:普段は轟の天然のインパクトが強く、また学校だとボケキャラが多い為ツッコミ担当のように感じる莉紗だが彼女も案外天然ボケな面を持ち合わせている為時折2人でいると収拾のつかないボケワールドが発動することがある。
おじさん「??
まあいいや!お兄ちゃん、お姉ちゃんの為に何か取ってやんないかい?」
轟「....何か欲しいものあるか?」
『んー...あ、あれ欲しい』
轟「あれ?」
莉紗が指差したのは確かディズニーのキャラのボールペン。名前は確か...
轟「.....ルナウドだったか?」
『それ海外のサッカー選手みたい...ドナルド!』
轟「好きなのか?」
『最高に』
轟「よし」
『でも、射的って意外と倒れないよ?』
轟「倒れるまでやる」
『いやいや、そこまでしなくていいよ..苦笑』
射的は1Play200円で3回。
1回目は的に当たらず、2回目は違う物に当たった。3回目にしてようやく目的のものに当たったが後ろにズレるだけで倒れなかった。
それから5Playやってみたが意外と難しい。追加投資をする度に莉紗が止めてくるが、ここは譲れねぇ。絶対落としてやる。
そして、6Play目の2個目だから....17回目か?ようやく
パコン、パタッ
轟「『あ』」
箱に入ったボールペンは見事倒れ棚の後ろに落ちていった。
「おめでとう!兄ちゃん頑張ったな!ここまで頑張った人中々いないぞ?愛されてんな〜姉ちゃん!」
『え、あ...』
「兄ちゃんにも特別に好きなもんやるよ!どれがいい?」
轟「いいんですか?」
「おう!健気でおじさん感動しちまったからよ!」
轟「じゃあ...」
とは言っても自分が欲しいもの、とは考えてなかった俺は何にしようか困ったが、とあるものを見て即決した。
轟「俺もそのボールペンください」
「お、柄なしだけどお揃いだな!ほらよ!仲良くな!」
轟「ありがとうございます」
『ありがとうございました』
莉紗が頭をぺこっと下げて射的屋を後にした。
こいつ口は悪いが意外と礼儀正しいんだよな。
**
去り際に射的屋のおじさんからもうすぐ花火が上がるというのを聞き莉紗が人混みじゃない穴場スポットを探そうと、途中チョコバナナを買って歩き回っていた。神社の背後にある山林の中を突き進むと拓けた土地が姿を見せた。ここなら空もよく見えそうだ。
『焦凍くん、なんかごめんね?』
轟「何が?」
『頑張らなくても良かったのに、ありがとね。嬉しい』
そう言って笑った莉紗の顔を見て努力が報われた安堵感や、自分が笑顔にしてやれたことで心が満たされていくのがわかった。
轟「....お前が欲しいと思うもん、やりたかったから」
『...え?』
轟「今まで、お前にもらってばっかだったからな」
『.....何かあげたっけ?』
キョトンとした顔で俺の顔を見る莉紗。
当たり前のように隣にいて、一緒に育ってきた奴。
なのに、目の前にいる莉紗は俺が知らない姿で目の前にいる。兄弟同然で育ってきた。はずだったのに、俺はいつからこいつにこんなにも女を感じるようになったんだ。
俺よりも20cmも低い華奢なその身体も...
轟「俺がどんなに変わってもお前は変わらずにいてくれた。変わらず、俺が欲しい言葉をくれた」
俺を見るそのくっきりとした目も...
『焦凍くん...?』
俺の名前を呼ぶその声も...
轟「好きだ」
『え?』
今ではこんなにも、お前の全てを愛しいと思ってる。
俺の言葉を理解したのか、目の前で徐々に頬を赤らめていくお前を見たらどうしようもなく抱きしめたくなった。
俺の腕に、閉じ込めたくなった...
『?!
しょ、と..くん..?』
もう二度と、あんな思いはしたくねぇから。
轟「お前が好きだ、莉紗....」
伝えたかった事はたくさんあった。
お前が攫われた時怖くて堪らなかったこと...いつからこの気持ちを自覚したのか、どんなところが好きなのか。
全部話して、それからこの気持ちを伝えようと思ってた。
だけどそんなことも全部俺の頭の中からは飛んで、"好きだ"って言葉だけが俺の頭の中に残った。
俺の腕の中にいる莉紗はそっと俺の背中に腕を回し遠慮がちにしがみついてきた。
そして聞こえた小さな一言....
『わた、しも....////』
その言葉を聞いた途端、莉紗がどう思うかなんて考えることもせず俺は莉紗の唇を奪った。
その瞬間、ドンっと言う花火の音が静寂の中鳴り響いた。
.