Season3
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あの後、高速道路に入ってもらい4時間くらいかけて家に帰った。
両親やおじさまは帰宅して早々、出動要請が来たようで慌ただしく事務所のサイドキックの人たちと連絡を取り合ってた。
やはり今までの経緯や私に言われた事を考えると、すぐさま行くことは出来なかったんだろう。
『行ってきなよ。こんな非常時は別でしょ』
楓子「莉紗....」
『どっちにしろ今すぐ話しする気にはなれない』
寛治「莉紗...すまない」
冬美「梨央ちゃん達は私が見てますので、行ってきてください」
楓子「冬美ちゃん、焦ちゃん。娘たちをお願いします」
そう言って、莉紗の両親と炎司は現場に走っていった。
**
冬美「莉紗ちゃん、お風呂沸いてるから入っといで?着替えとか全部置いてあるから」
『ありがと、冬ちゃん』
轟「大丈夫か?」
『うん、ごめん。先に使わせてもらうね』
轟「おう。気にしねぇでゆっくり入って来い」
そう言って莉紗の横を通り過ぎざまに頭を撫でた轟。
『(最近、よく撫でられる気が....)』
轟の行動に少し疑問に思う所もあったが、早くお湯に浸かりたかった莉紗はお風呂場に向かった。
服を脱いで全身を見るも、傷自体はそんなに多くない。
多少切り傷や擦り傷がある程度。体を洗えば滲みるがそれほど酷くはない。無駄に大きすぎる檜の浴槽に入る。莉紗は昔から轟家のこの檜風呂が何より大好きだった。この檜の匂いも落ち着く。
お湯が傷に滲みることで、自分が無事に帰ってこれたということを実感出来る。
しかし、落ち着いていると思い出されるのはオールマイトの事。
自分がこんな目に合わなければ、オールマイトがあんなに苦しむことはなかったんじゃないか...。
そう考えること、そう自分を責めることをオールマイト自身は望まないというのは分かる。
けど、考えずにはいられない。
もし、携帯で見た記事通りオールマイトがホントに引退だとすると、オールマイトのヒーロー人生に、自分は終止符を打たせるきっかけになってしまったことになる..。
そして、日本中から希望を奪ったことになる。そう考えると....胸が罪悪感で押しつぶされそうだった。
だが、考えることはそれだけでなかった。
いずれは、親と話し合わなきゃいけない。
梨央や寛太は、冬ちゃんと同じでみんなでどこかに出かけたり出来る普通の家族というものに憧れている。
焦凍くんとおじさまみたいに探り合い、ぶつかり合い模索し合いながら私達も徐々に家族ノカタチになっていくとして。そしたら...?
皮肉なことにある意味、両親があんなんだから私は焦凍くんや冬ちゃん、夏くんと一緒に暮らしていられた。
けど、私が両親と和解したら...?焦凍くんたちとの関係はどう変わるんだろうか。ただの幼馴染?ご近所さん?
両親が私に省みなかったから私はこの家にお世話になっていただけ。だから、和解したら今までみたいに我が家のように来るわけにはいかなくなる。
そう考えると、今の関係を壊したくないが故に両親と話し合いをすることに抵抗感が産まれる。
いくら考えてもまとまらない...
私はどうしたら..
考え事をしていると頭がボーッとしてきた自分に気づきお風呂から上がった。居間に行くと、なぜか夏くんがいて冬ちゃんがご飯の準備をしてくれていた。
夏雄「莉紗ちゃん!大丈夫?!」
私が居間に入ると夏くんが飛び上がるように立ち上がり私の肩を掴み聞いてきた。
『え、夏くん?うん、大丈夫だよ』
夏雄「そっか、良かった。TVでニュース見てびっくりしたよ。莉紗ちゃんが戻ってきたって姉ちゃんが泣きながら電話かけてきてさ。俺も居ても立ってもいられなくて帰ってきちゃったよ」
『そうだったんだ...心配かけてごめんね』
夏雄「ううん、無事でよかったよ」
冬美「あら、莉紗ちゃん。上がった?お腹すいてるかな?」
『うん、なんか帰ってきたら急にお腹すいちゃった』
冬美「安心したんだね。どうぞ、たくさん食べてね!」
『ありがと』
梨央と寛太を寝かせに行ってくれたという焦凍くんも呼びに行って4人で食事を食べた。
『冬ちゃんも焦凍くんもご飯待っててくれたんだ...ごめんね。夏くんも休日でもないのにわざわざ..』
夏雄「気にしなくていいよ、最近帰ってきてなかったしさ」
冬美「莉紗ちゃん、なんか謝ってばっかだね」
いつものにっかり笑顔で言う夏くんに、クスクスと笑いながら言う冬ちゃん。思い返したら、ありがとうを言ってないわけではないがさっきから謝罪の言葉ばかり...。
『冬ちゃん、夏くん、焦凍くん...』
冬美「んー?」
轟「どうした」
『ありがと....待っててくれて。何か、ここに来たら安心しちゃった』
冬・夏「「え?」」
轟「莉紗...」
涙を流しながら言う莉紗に3人は驚いた。
冬美「莉紗ちゃん」
冬美に呼ばれ顔を上げた莉紗。冬美が優しい笑顔で莉紗を見ていた。
冬美「ここは、莉紗ちゃんのお家で...莉紗ちゃんは、私たちの家族だよ」
『!!』
夏雄「前にも言ったじゃん。莉紗ちゃんの事ホントの妹だと思ってるって」
轟「お前がこの先、おじさん達と家族に戻れたとしても....ここもお前の家で、帰ってくる場所には変わりねぇんだ。だから、安心しておじさん達とぶつかって来い」
『焦凍くん...気づいて....』
轟「お前は、梨央達のために自分の思い無視してでも家族に戻れるならそうしてやりたいって思ってることは薄々気づいてた。
だからおじさん達がお前と向き合おうとしてるのが本心だって気づいて、お前も向き合うつもりでいたんだろ」
『..........』
轟「けど、お前は話しする事を怖がってる。おじさん達と和解したらうちとの関係が変わると思ってんのか?」
『だって、今までは両親が私のこと見ないからお世話になってただけで...和解したのに今までみたいに寄り付くわけには...』
冬美「莉紗ちゃん、それは違うよ?」
『え?』
冬美「確かに最初のきっかけはそうだったよ。でも、今はみんな莉紗ちゃんの事大好きで、本当の家族だと思ってるんだよ?」
夏雄「少なくとも家出た俺より莉紗ちゃんの方が家の事やってくれてるしな」
そう言ってイタズラに笑う夏雄。
轟「受け入れるとか迎え入れるとかじゃねぇよ。お前が帰ってきて当たり前だと思ってんだ」
そう言って莉紗の頭を撫でた轟。その表情が驚くほどに優しくて、穏やかで。そんな轟の表情を見た瞬間、張り詰めていた糸が切れたように泣き出した莉紗。
轟がそんな莉紗の頭を引き寄せて抱きしめた。
轟「余計なこと考えねぇで、おじさん達にお前の思ってきた事とかお前の気持ちちゃんとぶつけて来い。俺たちはここにいる。どこにもいかねぇから」
『ヒック...っ、うん...グスッ..あり、がと』
**
翌日、梨央と寛太は冬ちゃんにお願いして焦凍くんには、私の部屋にいてもらった。なるべく、私も冷静に話し合おうと思う。が、何せ今日はもう何年も会ってなかった兄も話し合いに戻って来る。親だけでなく、親のせいで兄弟仲が不仲だったため物心ついた頃には蒼兄が家を出るまでの間衝突が耐えなかった。そのため、正直私自身も冷静でいられる自信はない。
基本キレてもそんなに大きな声を出さない私だけど2階の私の部屋まで声が聞こえるくらい大声出していればそれは多分もう私はあまりにも手に負えない程自制の利かない状態だと思うから止めに来て欲しいと頼んだ。
蒼弥「んで、突然呼び出して何?今更話すこともないんだけど」
楓子「蒼弥...莉紗...」
敵意むき出しの蒼兄。鋭い目つきで私や両親を睨んでいる。
自分達で呼んだくせに両親は気まずそうに俯いてしまい、誰かが口火を切らないと..と思った私は静かに口を開いた。
『....私は、ヒーローを目指して雄英に通ってる』
伝えなきゃ...私の想い全部。
大丈夫..たとえどんな結果になっても、私には居場所がある。
私を待っていてくれる居場所が。
冬ちゃんや、夏くんが。
私の事を親以上に慕ってくれる、梨央や寛太の存在が。
そして、焦凍くんがいてくれる。
私は、1人じゃない。
だから、私は逃げないで向き合う。
『ヒーローを目指してるけど、それは親のためじゃない。私自身がヒーローになりたいと願ったから雄英にいる。だから、ヒーローになってもあんた達の事務所には行かない』
楓子「..........」
寛治「...........」
『私が子供の頃は、焦凍くん達がいたから。寂しいとかはなかった。正直、一緒に過ごした時間も少ないしむしろ嫌な思い出しかないから何とも思ってなかった。
けど、梨央と寛太は違う。あんた達が自分達の都合のいい時だけ半端に関わるからずっと我慢してる。梨央は物分りがいいから何も言わないけど、家族みんなで過ごしたり遊びに行ったり出来る、そんな普通の家族に憧れてる。
寛太だって、イヤイヤ期で普段はワガママばっかなのにあんた達のことでワガママ言ったりしない。期待してないのか、求めてないのかは分からないけどね。
今からでも遅くないよ。
幼い2人のためにもっと家族を大切にしてやって。ただご飯食べさせて、寝かせるだけじゃなくて。2人が今日何をして、何を見て、どんなことを思ったのかもっと聞いてあげて欲しい。私が望むのはそれだけ』
楓子「莉紗....」
寛治「...お前は、優しく育ったんだな。俺たちがこんなんだったのに」
『冷さんや焦凍くん達のおかげだよ』
私の言葉に何か思う所があったのか蒼兄の表情からどんどんと鋭さがなくなり暗くなっていった。
蒼弥「俺だって、冬美達と一緒に過ごしてた時は楽しかったよ。
けど、俺はお前とは逆で。本当の家族じゃないって段々虚しくなって次第に寄り付かなくなった。
俺は、どんな理由であれ..父さんや母さんから期待を向けてもらえるお前が羨ましくもあり妬ましくもあった。
嫌いだったよ。期待されてるのに、それに反発してるお前が。
けど、1番嫌いだったのは....たった1人だった妹に。傷ついて泣いてるお前を助けもせずにそんな嫌悪の感情を向ける自分だったんだよ」
『蒼兄....』
蒼弥「でも、体育祭の時のお前を見て少し気持ちが変わった。
お前はこの人達からヒーローになることを強要されて押し付けられてきて、それに反発してたのに体育祭でのお前は、イヤイヤヒーロー目指してるようには見えなかった。体育祭でのお前を見て、初めて兄貴として応援してやりたいって思うようになって...」
蒼兄の言葉を聞いて頭を下げてきた両親。
寛治「今更気づいても遅いと思うが、すまなかった」
楓子「莉紗、蒼弥...ごめんなさい。私達も、体育祭で友達と切磋琢磨頑張ってる莉紗を見て間違ってたって気づいた。貴方があんなに生き生きとしてる所を見たことがなかった。こんなに生き生きしているこの子は何でヒーローを目指してるのか、どんなヒーローを目指してるのか考えた時私達は何も分からなかった。聞いた事も話したこともなかったんだから当然よね....」
寛治「その時気づいた。人々の笑顔を守るヒーローである俺たちが自分の子である莉紗の笑顔も蒼弥の笑顔も奪っていた事にな...お前達が何を思っていたか聞こうともせずないがしろにしていた」
楓子「本当にごめんなさい....」
『....すぐに家族らしいことしたり、親らしいことされたり言われたりするのを受け入れるのは無理』
楓子「...うん。そうだよね」
『けど、今まで交わさなかった言葉を少しずつでも交わしていくようにする。家庭内業務連絡だけじゃなくて。
それと、私は私の思うヒーローを目指す。もちろんプロヒーローの2人から見て気になる部分とか口出したくなる部分はたくさんあるだろうけどまだそれを素直に聞く気持ちにはなれないからしばらくはそっとしておいて欲しい』
楓子「うん、分かった」
寛治「分かってる」
蒼弥「莉紗」
『なに』
険しい表情で私を呼んだ蒼兄。
蒼弥「この人達に言われたとはいえ。お前、何で皆で話そうと思った?」
蒼兄がふと私に聞いた。
そりゃ、蒼兄からすれば急に家族で今までについて話そうなんて突然だよね。
『...焦凍くんが、ぶつかってこいって』
蒼弥「焦凍が?」
『焦凍くんも、色々あって今頑張っておじさまと向き合ってる。私も梨央たちの為に頑張ろうかなって思えた。梨央達がいなかったらわかんなかったけど...』
蒼弥「...そっか。
俺さ、今mulch hero'sで働いてるよ」
『え?ヒーローサポート会社の?』
蒼弥「そ。個性は結局上手く使えなかったからヒーローは向いてなかったみたいだけど。高校の時の選択コースでサポート系選んでたからさ。それで興味湧いて」
寛治「だから工学部のある大学に行ったのか」
蒼弥「お前や焦凍がヒーローになったときには助けてやれるようになってるかもな」
『蒼兄....』
蒼弥「まあ俺も今すぐ普通には無理だけど、でも少しずつ帰って来るようにするよ。何の罪もない血を分けた幼い兄弟たちに可哀想な思いさせてるのもあれだし。
まずは少しずつ兄貴と認識してもらえるようにしないとな」
『そうだね、梨央もあんま覚えてないだろうし寛太に至ってはまるで知らない人だからね』
蒼弥「まあ、雄英だからサポート科も工房もあるだろうけどさ。コスチュームのこととか何でも。なんかあったら相談してこいよ。焦凍にも言っとけ」
『....ん』
蒼弥「あ、自分で言いにいくか。冬美とも会っとくかな」
『うん、冬ちゃん喜ぶよ』
楓子「莉紗、蒼弥」
立ち上がり焦凍くんの所に行こうとした私達を引き留めた母さん。
『なに?』
楓子「今まで向き合ってこなかったこと。傷つけてきた事。ちゃんと償っていく。必ず」
寛治「俺たちに親としてのチャンスをくれるか...?」
そう言って立ち上がりまた頭を下げてきた両親。
蒼弥「どうすんだ?莉紗」
『ダメとは言わないでしょ、普通。何の為の話し合い』
蒼弥「ま、そうだよな。莉紗」
『んー』
蒼弥「俺も悪かった」
『..何が?』
蒼弥「兄貴としてお前の事ちゃんと守ってやんなきゃなんなかったのに。勝手に妬んで、恨んで、泣いてる幼いお前を助けなかった」
『....もういいよ、別に』
寛治「親なのに子供たちの好きなものも知らない。嫌いなものも、夢も...」
楓子「もっとたくさん話しをする。話して、皆を知る事から始める。何か知りたい事があったら連絡して聞いてもいい?」
『ん。あんまり突っ込んだ質問じゃなければ』
楓子「ありがとう」
蒼弥「焦凍んとこ行こうぜ」
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コンコン
蒼弥「焦凍ー、俺」
ガチャとドアが開くと中から焦凍くんが出てきた。
轟「蒼兄?」
蒼弥「久しぶり...って、お前すげー背伸びたな!?何センチあんだ?」
焦凍くんを見上げた蒼兄。
轟「176?」
蒼弥「何で疑問系だよ。お前イケメンで個性強くて背も高いって。マジ恵まれすぎだろ」
※ちなみに蒼弥は164cm
轟「そんな事ないだろ」
蒼弥「謙遜?」
『いや、焦凍くんは本心...』
蒼弥「お前モテるだろ?」
轟「さあ、そうでもねぇと思う」
蒼弥「さあって...お前もっと高校生満喫しろよな...」
『そうでもあるよ』
こうして、風舞家の話し合いは幕を閉じた。
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