Season3
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
轟達は警察やヒーローに誘導されて避難している人達の流れに紛れこんだ。莉紗は俯き加減で、顔は見えないが暗い影を落としながら轟に手を引かれるまま歩いている。
轟「...緑谷に連絡してみる」
八百万「ええ」
轟は莉紗の手を握っていない方の手でスマホを取り出し、緑谷に電話をかけた。
轟「緑谷!そっち無事か?」
【うん、轟くんの方は?逃げ切れた?】
轟「多分な、奴の背面方向に逃げてる。プロたちが避難誘導してくれてる」
【良かった、僕らは駅前にいるよ。あの衝撃破は圏外っぽい。奪還は成功だよ】
轟が緑谷と会話している電話の向こう側で爆豪が色々と憎まれ口を叩いているが気にしない轟。緑谷との電話を終え、スマホをポケットにしまうと相変わらずだんまりのまま、手を引かれるままに歩く莉紗の様子が気になったのと数秒じっと見つめると莉紗の手を引いて進んでた方向とは別の方向に歩き出した。
轟「ちょっと、こっち来い」
八百万「..轟さん?」
人の波から逸れ、建物と建物の間の路地裏に入ってきた轟。莉紗は誘導されるがまま歩き、八百万もその後をついていった。
轟「大丈夫か?」
少し屈んで莉紗の頭にポンと手を乗せながら聞いた轟。
『....うん』
その声色は、大丈夫というにはあまりにも信ぴょう性に欠けてしまうほどにか細く震えていた。
八百万「莉紗さん...」
その声色に八百万も不安が込み上げた。何故なら、八百万の知ってる彼女はどんな時も冷静で凛としていて、みんなの背中を押してくれる強い女子というイメージが強く、不安がったり怯える姿を見たことがなかったからだ。
轟「八百万、近くにコンビニあったよな?何か暖かい飲み物でも買ってきてくれねぇか?」
八百万「承知しましたわ」
八百万がすぐ近くのコンビニに買い出しにいった。
轟「怖かった、よな」
轟は莉紗を引き寄せ腕の中に収めるとギュッと抱きしめた。
『........ううん』
轟「え?」
『不思議と...怖い、はなかった。なんとかしなきゃって思ってた、から..。
でも、苦しかった...オールマイトの、足手まといになってるのが...。
私達の存在がオールマイトの首を絞めてるのが...』
轟「お前...」
莉紗の言葉を聞き轟は表情を歪め莉紗の体を離し彼女の顔を見た。自分の安否よりも、オールマイトが全力で戦えないその要因に自分がなってることに彼女は今こんな辛そうな顔をしている。その思いを聞いて、轟は何とも言えない気持ちになった。
彼女は昔からそうだった。他人の心配ばかりで、本当に自分の事は顧みない。そんな彼女に幾度も自分も守られ、助けられてはきたがそのおかげで傷つく彼女を見て轟は何度も苦しくなり居た堪れない気持ちになってきたと言うのに...。
轟「バカ野郎。お前は....ホントに、昔からそういう所変わらねぇ。
もっと、自分の心配...しろ」
端正な表情を歪め再び彼女を抱きしめた轟。
轟「こっちは、心配しすぎて死にそうだったんだぞ」
『...ごめん』
轟「お前になんかあったら...梨央や寛太はどうすんだよ」
『..っ、うん』
轟「俺だって!!お前になんかあったら...っ」
普段どんなピンチな時でも冷静さを失わない轟の声がわずかに震えている事に気づいた莉紗。
それほどまでに彼に心配をかけてしまった事に胸が傷んだ。
『ごめんね、焦凍くん...心配かけて』
轟「いや、悪い。莉紗は悪くねぇのに...。
とにかく、無事で良かった」
『ありがと..助けてくれて。
やっぱり焦凍くんは私のヒーロー、だね。昔から助けてもらってばっかで...』
そう言って弱弱しく笑って言う莉紗。
轟「んなことねぇよ..
(俺だって..お前に助けられてばっかだ)」
その後、八百万が買ってきてくれた肉まんと温かいお茶で落ち着いた莉紗。轟に自分が抱えてた想いを吐き出し、少し楽になったのか、八百万が戻ってきた時は小さく微笑んだ莉紗に八百万が飛びついた。
八百万「莉紗さん....心配しましたわ!」
泣きながら莉紗を抱きしめる八百万に莉紗も八百万の頭を撫でた。
『ごめんね。ありがとう、ヤオモモ』
轟「よし、落ち着いたなら移動するぞ」
『うん』
八百万「はい!」
轟は再び莉紗の手を握り人の波に入っていった。
流れに沿って移動していると街中の大型ヴィジョンでオールマイトとオール・フォー・ワンの戦いが中継されていた。
街中ではオールマイトが1人で戦っていることに対する、他のヒーローたちへのアンチが繰り広げられていた。
そして、オール・フォー・ワンが放った一撃を食らったオールマイト。立ち上がる地煙が晴れるとそこには見たこともないやせ細った男が肩で呼吸をし血だらけになって立っていた。
[皆さん、見えますでしょうか!
オールマイトが..しぼんでしまっています!!]
『あれが...オールマイト?』
轟「何だよ、あの姿..どういうことだ...」
意気消沈してしまったようにだらりと落ちたオールマイトの腕..
オールマイトの背後には倒壊したビルに挟まれた女性の姿が。
助けを求めるようにオールマイトに手を伸ばしている。
「あんたが勝てなきゃ誰があんなの倒せるんだよ...」
「助けて!勝って!オールマイト!」
「オールマイト!」
No.1ヒーローの衝撃の姿に戸惑いはあったものの、皆の平和の象徴への希望は絶やされていずオールマイトを必死で応援する声が街中に響き渡った。
緑谷「勝って!」
爆豪「勝てや!」
緑・爆「「オールマイトぉおぉっ!!!!」」
すると、オールマイトの右腕だけが先ほどのやせ細った腕ではなくマッスルフォームの太くて筋肉隆々とした腕に変化した。
オールマイト「ああ、そうだよ...守る物が..多いんだよ、ヒーローは...オール・フォー・ワン!!だから、負けないんだよ!」
かつて、オールマイトが師匠に告げたオールマイトの原点。
"みんなが笑って暮らせる世の中にしたいです"
オール・フォー・ワンがオールマイトに手をかざしたその時...!
オールマイト「!!」
オール・フォー・ワンに炎熱が飛んできた。
エンデヴァー「何だ、貴様!!その姿は何だオールマイトぉぉっ!!!」
エンデヴァーとエッジショットが駆けつけた。
エッジ「(塚内[彼]は分かっていた...こういう状況になるのを...)」
AFO「ほぉ、全てミドルレンジとはいえあの脳無たちをもう制圧したか...さすが、No.2に登り詰めた男」
エンデヴァー「オールマイト...
何だその情けない背中はぁあぁっ!!!」
AFO「応援に来ただけなら観客らしく大人しくしててくれ」
そう言ってオール・フォー・ワンは今度はエンデヴァーに向けて攻撃を放った。しかし、オール・フォー・ワンの攻撃は突風にいなされた。
ウィンドリア「ちょっと、エンデヴァー!いくらオールマイトが心配だからって救助を私に押し付けて行くなんて、それでもヒーローなの?!」
オールマイト「エンデヴァー...ウィンドリア...」
ー----
その姿を大型ヴィジョンで見ていた轟と莉紗。
轟「親父...」
『母さん...』
2人にとって初めてみる姿だった。
今まで憎しみの感情しか抱けなかった自分の親の存在。
見下ろすような、冷たい眼差ししか見たことがなかった。
しかし、今画面に映ってる2人はオールマイトの為に必死な形相で邪悪な悪と戦っている。
その姿は、まさに...2人が今目指している"ヒーロー"そのものだった。
その光景に、戸惑いや焦燥感が沸き上がった。
2人はどちらからともなく、繋いでいた手に力を込めギュッと握った。
エッジ「ぬかせ、破壊者!俺たちは助けに来たんだ!」
カムイ「それが我らの仕事!!」
シンリンカムイは気を失っているMtレディをウルシ鎖牢で救出した。
カムイ「頑張ったんだな、Mtレディ」
オールマイト「シンリンカムイ...」
虎「オールマイト..我々には、これくらいしか出来ない。貴方が背負うもの...少しでも!」
オールマイト「虎....」
エッジ「あの邪悪なものを、止めてくれ!オールマイト!」
ウィンドリア「この国の人は、老若男女..そして私達ヒーローも...あなたの勝利を願ってるのよ、オールマイト!あなたは、平和の象徴!!」
エッジ「どんな姿でも貴方は!皆のNo.1ヒーローだ!!」
グラントリノ「(俊典...お前は、柱じゃ。決して折れてはいけない柱..聞こえているだろう?弱り切った姿を見ようとも、お前を応援し続ける声が..お前の勝利を願うみんなの声が...
お前に憧れ、お前のようなヒーローになりたいと願う..生徒の声が)」
AFO「ふん、煩わしい」
オール・フォー・ワンが放ったひと振りで、エンデヴァーをはじめとするヒーローたちが吹き飛ばされた。
AFO「精神の話しは止して、現実の話しをしよう。
筋骨バネ化、瞬発力×4、膂力増強×3、増殖、肥大化、鋲、エアーウォーク、槍骨..」
オールフォーワンの言葉に合わせるように、彼の右腕がどんどんと変形していく。
AFO「今までのような衝撃破では体力を削るだけで確実性がない...確実に殺すために今の僕が掛け合わせられる最高・最適の個性達で君を殴る!」
AFOは先ほどの手合わせで確信していた。
オールマイトの中に、ワンフォーオールの力はもう残っていないことを..
今使っているのは譲渡した後のわずかな残り火だけで戦っているんだと言う事を....。
AFO「緑谷出久!ワンフォーオールの譲渡先は、彼だろう。資格もなしに来てしまって、まるで制御出来てないじゃないか!存分に悔いて死ぬといい、オールマイト。先生としても、君の負けだ!」
AFOはもはや人の形として原型を留めていない右腕をオールマイトに向かって振り下ろしてきた。
オールマイトも残ったパワーを右腕に込めて、オールフォーワンを迎え撃った。2人の拳がぶつかった瞬間その場に大きな爆発が起こったかのようにあたりが破壊された。
AFO「衝撃反転」
オールマイト「グッ...!(そうだよ...先生として、叱らなきゃいかんのだよ。私が...叱らなきゃいかんのだよ!!)」
しかし、オールマイトの全力も虚しくオールフォーワンの拳からの衝撃破により全身から血が噴き出て押しこまれている。
オールマイト「(象徴としてだけではない...お師匠が、私にしてくれたように!私も、彼を育てるまでは!!
それまでは...まだ!!)」
AFO「そこまで醜く抗っていたとは、誤算だった!」
オールマイト「まだ死ねんのだぁぁあ!!」
オールマイトは右腕のパワーを左に移し、右腕を囮にし左腕でオールフォーワンを殴った。
AFO「らしくない、小細工だ。誰かの影響かな?!浅い!!」
オールフォーワンも左腕を増強させた。
オールマイト「そりゃあ...腰が入ってなかったからなぁああ!!うぁぁあああ!!!
ユナイテッド・ステイツ・オブ・スマッシュ!!!」
オールマイトの右腕が再びマッスルフォーム化し、オールフォーワンの身体に叩きこまれそのまま地面にねじこまれた。
さらばだ、ワンフォーオール...
そして今....オールマイトの中から、ワンフォーオールの灯が消えた。
動きが止まったように静かになったテレビ画面は煙が立ち込め何も見えなくなった。
ゆっくりと、煙が晴れて行くと..
動かなくなったオールフォーワンと、血反吐を吐きながら両手両ひざを地面について肩で呼吸をし今にも倒れそうなオールマイトが映っていた。
『(こんな弱弱しいオールマイト...)』
しかし、オールマイトは倒れるどころか弱弱しくもゆっくりと左腕を天にかかげていった。皆がその左腕の行く末を見届けると、その左腕はマッスルフォームとなった。平和の象徴のその姿に、街中が歓喜の声を上げた。
どんなに弱っても、最後は腕を振り上げたその姿は、皆にとってのただの心の拠り所ではない。
まさしく皆の心に希望を与える平和の象徴そのものだった。
[ヴィランは、動かず!!勝利!!オールマイト!!]
そして、立ち上がり全身をマッスルフォーム化したオールマイト。膝が抜けそうになるものの、必死に立ち続けた。
エッジ「な?!今は無理せず..」
グラントリノ「させて、やってくれ...仕事中だ」
グラントリノは察していた。
これが、No.1ヒーロー、"平和の象徴"としての最後の仕事になることを...。
そして、この瞬間...
日本中でオールマイトコールが絶え間なく続いた。
爆豪「..........」
オールマイトの姿を切ない眼差しで見る爆豪。
緑谷「.........」
そして、苦し気な表情で見つめる緑谷。
『オール..マイト...』
オールマイトをここまで追い詰めるなんて...
私達が生き延びたのは、奇跡ともいえる..
ヒーロー殺しの時と同じ。
目的が違うから、殺さなかっただけ。
殺そうと思えば、殺せた...
私はまた...生かされた。
悪からも..
正義からも...
オールマイトからも...
私達がヴィランの手に落ちなければ、これだけの被害にならなかったんじゃないだろうか...
プロヒーローたちがこんなに負傷することはなかったんじゃなかろうか?
オールマイトはここまで追い詰められることはなかったんじゃないだろうか..
ヴィランやヒーロー殺しと戦い、強くなった気でいた。
しかし、この瞬間思い知らされた。
自分がいかに、守られるだけの子供か...
自分の無力さを...
私は、痛感した。
.