Season3
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八百万「ここが発信機の示す場所ですわ」
俺たちの目の前には、薄暗く人気のないビルが立っていた。
切島「あれがアジト...いかにもだな」
八百万「アジトかどうかは分かりません。ただ、私が発信機で確認した限りヴィランは丸一日ここから動いていません。そのヴィランがここにいるからと言って、莉紗さんや爆豪さんがいるとも限りません。私たちが今どれほどか細い情報でここに立っているか...冷静に考えてみてください」
飯田「この中には、耳郎くんや葉隠くんのようなスニーク活動に秀でた者はいない。少しでも危険だと思ったらすぐ止めるぞ。友であるからこそ、警察への通報も辞さんからな」
緑谷「..ありがとう、飯田くん。出来る範囲で出来ること、考えよう。前提条件は、僕らが個性を使わずヴィランとの戦闘を避けること..」
緑谷がぶつぶつ何かを呟き出した。こいつ得意のいつものアレが始まったようだ。
切島「久々に見るな、ぶつぶつ...」
八百万「緑谷さん、って感じですわ」
莉紗...お前に伝えなきゃならねぇことがある。必ず、助ける。だから待ってろ。
**
しばらく付近で様子を伺っていた轟達だが何の動きも見られない。
八百万「ここまで近づいても何の反応もありませんわね」
切島「電気もついてねーし、中に人がいる感じもねぇな」
轟「木を隠すなら森の中、廃倉庫を装ってるわけか」
「Hey!何してんだよ、ホステス~俺たちとぉ、飲みましょう?」
「やめとけぇバカ!」
「ごめんなぁ」
それぞれがここからどうすべきか思案していると酔っ払いが八百万を見て、ホステスだと思い絡んできたものの飯田や緑谷が庇うことですぐに退散した。
轟「一旦離れよう」
こんな人気のない廃倉庫の近くに長居するのも悪い意味で目立つと思った轟がそそくさと皆に声をかけその場を離れた。
轟「多くはねぇが人通りはある」
八百万「目立つ動きは出来ませんわよ、どうされますの?」
轟「(早く助けてやりてぇのに..何の手がかりもねぇなんて..)」
焦りばかりが募り、進展しないこの状況に拳に力が入る轟。普段は常に冷静、ポーカーフェイスで感情が分かりにくい轟の顔に悔しさが表出しているその様子に友人たちは心配そうな面持ちをした。
緑谷「轟くん、気持ちは分かるよ。必ず助けよう」
そんな轟の様子に緑谷が笑顔で声をかけた。
轟「....ああ」
緑谷「裏に回ってみよう、どれだけか細くても僕らにはここしか情報がない」
緑谷の言葉に路地と路地の間、人が1人入れるか入れないかの細さしかない道をすすんでいく5人。
緑谷「あの高さなら中の様子を見れそうだよ!」
2階の窓を見つけ指さした緑谷。
轟「この暗さで見られるか?」
八百万「それなら私が暗視鏡を」
切島「あ、いや。八百万..それ持ってきてんだよ、実は」
緑谷「すごい..何で?」
切島「やれること考えた時に...いると思ってよ」
緑谷「でも、それめっちゃ高いやつじゃない?僕もコスチューム考えてた時にネットで見たけど..確か5万くらいしたような」
切島「値段はいいんだよ、言うな」
轟「よし、じゃあ緑谷と切島が見ろ。俺と飯田で担ごう」
飯田の肩に切島が、轟の肩に緑谷が乗り切島が暗視鏡で中の様子を覗いた。
切島「汚ぇだけで、特には....な?!」
突然動揺し体勢を崩した切島。
緑谷「切島くん?!」
轟「どうした?!何が見えた、切島!」
切島「左奥...緑谷!左奥、見ろ!」
緑谷が切島から暗視鏡を受け取り中を見ると...
緑谷「?! ウソだろ..あれ、全部...脳無?;」
切島と緑谷が見たのは倉庫の中いっぱいに置かれた水槽のようなものの中に収められているおびただしい数の脳無だった。
と、その時...
ドォォン!!
飯田「何だ?!」
緑谷「爆発?!」
遠くの方で爆発音が聞こえたかと思った矢先の事、突如辺りに地響きが起こった。
地面に放り投げられた5人。何が起こったか様子を探るために切島を飯田が、八百万を緑谷が担いだ。
切島「Mtレディにギャングオルカ!No.4のベストジーニストまで!」
八百万「虎さんもいますわ」
ジーニスト「脳無格納庫、制圧完了」
緑谷たちが見ていたのは脳無格納庫だったようで、Mtレディの突撃を合図に機動隊が突入し、ベストジーニストやMtレディが制圧していた。Mtレディが、「こんな簡単な仕事でいいのか」「オールマイトの方に行かなくていいのか」とボヤいているのをジーニストが一蹴している。
飯田「ヒーローは、俺たち何かよりもずっと早く動いていたんだ!」
切島「スゲェ..」
飯田「さあ、すぐに去ろう!俺たちにもうすべきことはない!」
緑谷「オールマイトの方ってことは...かっちゃん達はそっちにいるのか」
轟「.......」
八百万「オールマイトがいらっしゃるなら、なおさら安心です!さあ!」
轟「...ああ」
5人はその場から立ち去ろうとしたが...
「すまない、虎...前々から良い個性だと。調度いいから貰うことにしたんだ」
意識がないのか虚ろな目をしたラグドールを発見し、抱き上げている虎に誰かが語りかけた。
虎「連合の者か?誰かライトを!」
「こんな身体になってから、ストックも随分と減ってしまってね」
建物から1人の男が出てきたところをジーニストが捕縛した。
ドォォォオンッ!
突如大きな物音が聞こえたと共に煙が上がった。
煙が晴れて視界が開けるとベストジーニストが目を見開いて地面に倒れていた。
よく見ればベストジーニストだけではない。Mtレディも、ギャングオルカも虎も....爆発の衝撃で気を失っている。
男が1歩、また1歩とこちらに向かって近づいてくる。
緑谷達は突然の出来事と衝撃に動くのをやめ、息を潜めた。
何が起きたのか分からなかった...ほんの1秒にも満たない出来事だった。
しかし、息をすることすら躊躇ってしまう...
それほどまでに、その男の気迫は緑谷たちに死を錯覚させた。
「さすがNo.4、ベストジーニスト。僕は全員消し飛ばしたつもりだったんだ。皆の衣服を操り瞬時に端へ寄せた判断力、技術...並の神経じゃない」
ベストジーニストが何とか立ち上がり攻撃を仕掛けるも、男の何らかの攻撃がベストジーニストの腹部を貫いた。
ジーニストは瞳孔を開いたまま微動だにしなくなった。
轟「(な、なんだあいつ....何が起きた?!;;)」
切島「(一瞬で全部..かき消された?!;;)」
八百万「(逃げなくては...わかっているのに...;;)」
飯田「(恐怖で...身体が....;;)」
緑谷「(身体が...動かない...!!;;いったい..何なんだ、あれは....)」
5人は恐怖に怯え、足が竦んで動けずに震える身体を抑えただ息を潜めた。
爆豪「ぶはっ!くっせー!!ゴホッゴホッ」
『なに、この匂い....ゴホッゴホッ!』
息を潜めていた緑谷たちの耳に突然聞き馴染みのある声が聞こえた。
緑谷「(かっちゃん!)」
切島「(爆豪!)」
轟「(莉紗!)」
八百万「(莉紗さん!)」
「悪いね爆豪くん、風舞くん」
爆豪「ゴホッ、あ"ぁっ?!」
周りからバシャッと言う音が聞こえた為2人があたりを見回すと、ヴィラン連合の連中もヘドロから出てきていた。
トガ「なんなんですか....」
トゥワイス「なんかくっせー!!」
弔「先生...」
「また失敗したね、弔。でも決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい。こうして仲間も取り返した。この子達もね。君が大切なコマだと考え、判断したからだ。いくらでもやり直せる。その為に僕らがいるんだよ。全ては、君のためにある」
弔は男の言葉に心を奪われたように何も言わない。
爆豪も莉紗も今自分たちが逃げる最善の策を考えるもあまりの不利な状況に何も思いつかないでいた。
緑谷「(思い出せ、何のためにここに来た...!あの時、身体が動かなくて助けられなかったんだろ..
怖いから動けないなんて..目の前にいるんだぞ..!!
僕らにはまだ気づいてないはずだ。じゃなきゃ悠長に話してないはずだ...ここからかっちゃん達の所まで6、7mくらいか。フルカウルで飛べば1秒以内に届く。その後は?逃げ切れるのか?どこへ?!みんなが危なくなる...どうすれば...!!)」
轟「(目の前に...こんなに近くにいるのに。何でこんな遠く感じるんだ...。
ちくしょう...!!何怖気付いてんだよ!!
あいつが攫われた時に嫌ってほど思い知っただろ。
あいつを失うかもしれないことより、怖いもんはねぇってこと...。
なら、今動かねぇでどうする..!!
考えろ!助ける方法を!!そして動け!)」
先程まで自分たちと同じように恐怖に怯えていた2人の表情が、爆豪と莉紗が視界に入ったことによって意を決した表情に変わったことに気づいた飯田と八百万が緑谷と轟の腕を掴んで止めた。
飯田「(俺が...!)」
八百万「(私が....)」
飯田「(守るんだ...!!)」
八百万「(考えるのよ..)」
飯田「(考えるんだ!!)」
飯・八「「(どうすれば、ここから...!!)」」
「やはり、来てるな」
ふと聞こえた男のその言葉に、5人の背筋が凍った。
絶体絶命..自分達の存在に気づいてる..逃げなければ...どこに?!
そう考えていた5人だったが...
「全てを返してもらうぞ!!オール・フォー・ワン!!」
「また僕を殺すか?オールマイト」
オールマイトが空から男に拳を突き落とした。
オールマイトが呼んだ名、オール・フォー・ワンと呼ばれたその男はオールマイトの拳を受け止めた。
2人の拳がぶつかりあった際の衝撃で爆風が発生し周囲にいたヴィラン連合や爆豪は吹き飛び、莉紗は自身で風を発生させて堪えた。その爆風は物陰に隠れている緑谷たちでさえ、少し力を抜けば吹き飛ばしてしまいそうな程だ。
AFO「随分遅かったじゃないか。バーからここまで5km余り。僕が脳無を送り優に30秒は経過しての到着...衰えたね、オールマイト」
オールマイト「貴様こそ何だ、その工業地帯のようなマスクは...大分無理してるんじゃないのか?」
爆豪「(オールマイトを素手で弾きやがった...あいつが、ヴィランのボス?!)」
『(オールマイトが来たってのに、涼しい声色は変わらない...何なの、あいつ!)』
オールマイト「6年前と同じ過ちは犯さん。オール・フォー・ワン。
爆豪少年と風舞少女を取り返す!そして貴様を今度こそ刑務所にぶち込む!貴様が操るヴィラン連合もろともぉおっー!!」
拳を強く握るとオール・フォー・ワンの元に向かって地を駆けたオールマイト。
AFO「それはやる事が多くて大変だな、お互いに」
オール・フォー・ワンがオールマイトに手のひらを向けるとそこから衝撃波のような爆風が産まれた。オールマイトも構わず拳を突き立てたが弾き飛ばされビルに突撃した。
AFO「空気を押し出す、プラス筋骨バネ化、瞬発力×4、膂力増強×3。この組み合わせは楽しいな...増強系をもう少し足すか」
爆豪「『オールマイト!!』」
AFO「心配しなくてもあの程度じゃ死なないよ。だから...
ここは逃げろ、弔。その子達を連れて。
黒霧、みんなを逃がすんだ」
気絶してる黒霧に黒く伸びる触手のようなものを伸ばし、身体に突き刺したオール・フォー・ワン。
マグネ「ちょ、貴方!彼やられて気絶してんのよ?!よくわかんないけど、ワープを使えるならあなたが逃がしてちょうだいよ」
AFO「僕のはまだ出来たてでね、マグネ。転送距離はまだ短い上...彼の座標移動と違い僕の元へ持ってくるか、僕の元から送り出すことしか出来ないんだ。ついでに、送り先は人。なじみ深い人でないと機能しない」
"個性強制発動"
黒霧が気絶してるのに、何故か黒霧のワープゲートが開いた。
AFO「さあ、行け」
弔「先生は?」
AFO「.......」
オールマイト「逃がさん!」
AFO「常に考えろ、弔。君はまだまだ成長出来るんだ」
Mr「行こう死柄木、あのパイプ仮面がオールマイトを食い止めてくれてる間に。コマ持ってよ」
爆豪と莉紗を見ながら言ったコンプレスに2人も戦闘体制となった。
爆豪「めんっ、どくせェ...」
『そう何度も捕まってやんないよ』
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