Season3
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緑谷「かっちゃんと常闇くんを返せ!!」
私達は仮面の男を地面に叩きつけ、かつ自分達の着地への衝撃もやわらげた。そして私は粘着糸を細くして仮面の男がずっと手を入れている右ポケットの中に侵入させ中に入ってる物をこっそりと抜き取り自分のポケットに隠した。
「おいおいおいおい!知ってるぜ?!このガキ共!!」
「「「『!?』」」」
荼毘「....好都合。ミスター、避けろ」
「ラジャー」
そういうと、ミスターと呼ばれた仮面の男の姿が消え顔中継ぎ接ぎの男が青い炎を私たちに向けて放ってきた。
緑谷「ぐぁあっ!!」
障子「ぐっ!!」
『ぐっ!!』
轟「風舞!緑谷!障子!」
炎を掠り悶えた3人に意識が向いた焦凍くんに全身タイツを着たような容れ立ちの男が攻撃を仕掛けた。
「死柄木の殺せリストにあった顔だ!その地味ボロ君とお前、なかったけどな!!」
男が出したメジャーを焦凍くんが避けながら氷結を出し応戦した。だけどどれだけ氷結を繰り出しても避けられ、しまいには体から出したメジャーで切られてしまう。
轟「クッ...何なんだ、こいつ」
**
『グッ...』
炎が掠った左腕を抑えながら立ち上がると目の前に顔中継ぎ接ぎの男が立った。
荼毘「ようやく会えたな...風舞莉紗」
『何で、私の名前.....』
荼毘「お前は、貰うぞ」
『なっ?!』
私は咄嗟に自分の身が危険だと察知し自分の前に竜巻を出し距離を取って近くで応戦してた焦凍くんの元に走った。
轟「大丈夫か!」
『うん、轟くんこそ!』
轟「ちきしょう..」
トガ「トガです!出久くーんっ!」
トガが緑谷を地面に抑えつけ馬乗りになってナイフを刺そうとした所を障子がトガを殴り飛ばした。
障子「大丈夫か!」
トガ「...そうですか。邪魔するんですか。貴方少しも好みじゃないけど、刺してあげます」
障子「クッ、イカレてるな」
Mr「いてて..飛んで追ってくるとは、発想が飛んでる」
荼毘「爆豪は?」
Mr「もちろん、ここに」
そう言ってMrコンプレスがポケットをまさぐるも目的のものがなかったのかポケットの中を見た。
『?!
みんな、逃げるよ!今の行為ではっきりした。個性の仕組みは分からないけどあんたがさっきから見せびらかしてたこの緑の玉が爆豪と常闇なんでしょ。着地の時に粘着糸で奪っといた』
緑谷「風舞さん!」
Mr「ほほー、あの短時間でよく」
私の言葉で形勢逆転をしたと踏んだ緑谷たちが敵から距離を取るように走り出したのを確認して私もすぐ走り出した。
轟「よし、でかした風舞!!」
焦凍くんが最大氷壁を作り敵を遮ると私達の後に続いた。
Mr「いや、待て」
逃げる私達の目の前にUSJの時のもや男が立ちはだかった。
緑谷「?! 脳無!?」
轟「こっちだ!」
『!!』
轟「!」
障子「こ、こいつは...!」
轟「USJにいた...」
緑谷「ワープの..!」
黒霧「合図から5分経ちました。行きますよ、荼毘」
トガ「ごめんねぇ、出久くんまたね?」
ヴィランたちが次々にワープに入っていく。
荼毘「待て、まだ目標が」
Mr「あー、あれはどうやら走り出すほど嬉しかったみたいなんでプレゼントしよ」
「「「『?!』」」」
Mr「癖だよ、マジックの基本でね。物を見せびらかす時ってのは...見せたくないものがあるときだぜ」
そう言って仮面を外した男が口を開くと舌の上に2つの玉があった。
緑・轟「「ま、まさか!」」
『?!』
男が指を鳴らすと私の手にあった2つの玉が突然変化し氷塊が現れた。
『これは?!』
轟「俺の氷か!!」
Mr「そう。氷結攻撃の時にダミーを用意し右ポケットに入れておいた」
緑谷「クソ!!」
私達は玉を取り返すために走り出した。
Mr「右手にあったものが右ポケットに入ってたら、そりゃ嬉しくて走り出すさ」
緑谷「待てぇえ!!!」
継ぎ接ぎの男は一足先にワープの中へ消え仮面の男もゲートの中に入って行こうとした。しかしどこからかビームが発射され男の仮面が吹き飛ぶと、仮面男の口の中から玉が飛び出した。
障子と焦凍くんが勢いよく手をのばした。
『(粘着糸で...!!!)』
私も粘着糸で玉を確保しようとしたけど突然背後から継ぎ接ぎの男が現れ後ろから羽交い絞めにされワープの中へ連れていかれた。
風で吹き飛ばそうとしたが、男が私の首を絞めていないもう片方の手で炎を出し今風を出そうとした私の手を掴まれた。
『グッ..あぁあっ!!』
荼毘「やっと、捕まえたぜ」
**
俺と障子は必死に手を伸ばし、障子の複製腕は玉に手が届き掴むことが出来た。しかし...
轟「なっ?!」
ワープに入っていったと思っていたヴィランが左腕で莉紗を羽交い絞めにし、右手で玉を掴んだ。
俺は、仲間に一歩手が届かず....その上、先ほどまで自分達と一緒にいたはずの莉紗が、敵の手中にいる事に頭の中が真っ白になった。
轟「何、で..」
荼毘「悲しいなぁ...轟、焦凍。
確認だ、解除しろ」
Mr「俺のショーが台無しだ!」
仮面の男が指を弾くと障子が掴んだ玉は常闇に、そして継ぎ接ぎの男が掴んだ玉が爆豪に変わった。そいつは莉紗を羽交い絞めにしたまま爆豪の首を掴みワープの中に入っていった。
緑谷「かっちゃん!!!」
轟「莉紗!!!」
俺は莉紗を取り戻そうと走り出し手を伸ばした。
『ッ...しょ、とくん...』
それなりに力を込めて締められているのか、苦しそうに顔を歪めながら途切れ途切れの言葉で俺の名前を呼び必死に手を伸ばしてきた莉紗。
轟「莉紗!!」
その手を掴もうと俺も手を伸ばすが、俺の手が莉紗に届かずヴィランや爆豪と共にワープの中に消えて行く。引きずり込まれた時に、莉紗の首から銀色に光る物体がカサっという音を立てて草の上に落ちた。
緑谷「かっちゃーん!!」
爆豪「来んな...デク...」
爆豪もワープの中へ消えていった。
緑谷「うぁあああぁっっ!!」
轟「んで....莉紗が....クッ...クソっ!クソォッ!!!」
落ちていたそれは、俺が職場体験の時にプレゼントしたネックレスだった。俺はそれを拾いあげ手に握り締めた。
莉紗がさらわれた....。
信じられない気持ちが勝り現実を受け止められていなかった俺だったが、莉紗のネックレスで清明になっていく。
莉紗は、攫われた...。奴らの手に...。
色々な感情が俺の中を支配し、俺は拳を地面に殴りつけた。
痛みなど感じなかった。それよりも、目の前で莉紗が連合に連れていかれた悔しさや喪失感、そして怒りの方が痛みよりも何倍にも上回った。
俺たちは、この日。
ヒーローを目指す者としてヴィラン達に、完全敗北した。
**
ブラド先生が通報し、ヴィランが去った15分後。
救急や警察が到着した。
生徒42名のうち、ヴィランのガスにより意識不明の重体15名、重軽傷者12名、無傷で済んだのは13名だった。
そして、行方不明2名...
プロヒーローは6名のうち、1名が頭を強く打たれ重体。1名が、大量の血痕を残し行方不明となっていた。
一方ヴィラン側は3名を現行犯逮捕。
彼らを残し、他のヴィラン達は跡形もなく姿を消した。
重軽傷者が合宿所近くの総合病院に連れられた。ヴィランとの交戦で多少傷を負ってた俺も病院で手当てを受けた。
緑谷、葉隠、耳郎、八百万は意識不明の重体。
俺、障子、常闇、蛙吹、麗日は軽傷で済んだ。
全員が手当を終え、軽傷者は帰宅の流れになった為ブラドキングに連れられ、病院を出ると無傷で済んだ奴らが病院の前で待っていた。
切島「お前ら、大丈夫かよ!」
障子「心配ない、俺たちは軽傷だ」
飯田「緑谷くんたちは?!」
轟「入院の奴らは全員意識不明だ」
芦戸「そんな...」
麗日「面会は明日から良いってお医者さんが..」
飯田「なら、明日みんなで見舞いに来よう」
それぞれが帰路についた中...
切島「おい、轟!」
別方向だったはずの切島が俺を追いかけてきた。
轟「切島、どうした」
切島「おめぇ、大丈夫か?」
轟「...何がだ」
質問で返したものの、切島が何について聞いているのかはなんとなくわかる。
切島「風舞の事。ホントは触れない方がいいかと思ったんだけどよ...けど、なんつーか」
切島が言いにくいのか言葉を詰まらせながらどもっている。
切島「お前...自分が今どんな顔してっか気づいてるか?今にもビルから飛び降りそうな顔してるぞ。そんなん放っとけねぇつーか...」
そんな酷い顔をしてるとは自分では気づいてなかった。
轟「いや...正直今は何も考えらんねぇ」
俯いた顔を上げる事ができないまま答える俺に切島は、そうだよな...と呟いた。しかし、すぐに笑って俺の肩をポンと叩いた。
切島「お前にとって、風舞は特別な奴なんだもんな」
轟「特別...。
まあ..幼馴染だから、そうだな」
切島「..?それだけじゃねえだろ?」
轟「何の話だ」
切島「ポーカーフェイスのお前が、ただの幼馴染にあんな優しい顔したり嫉妬したりしねーと思う」
轟「嫉妬....そういや、前にも言われたな」
切島「風舞が男と触れたり、他の男子があいつに下心見せんのがムカつくんだろ?」
轟は最近の自分で思い当たる出来事があり何も返せなくなった。
切島「風舞もそうだけどよ。風舞といる時のお前ぇは、ただの幼馴染じゃねーと思うぜ」
轟「..........」
切島「っと。悪いな、関係ねぇ奴がこんな...」
轟「いや..ありがとな。切島」
切島の言葉が妙にしっくり来て。
よくわかんねぇけど、何だかスゲェよく分かった。
**
冬美「しょ、焦凍...大丈夫?」
警察に送り届けられ自宅に戻ってきた俺を姉さんが出迎え、涙を浮かべながら聞いてきた。
轟「...ああ」
冬美「なん、で...莉紗ちゃん....莉紗ちゃんが...」
轟「.....悪りぃ」
今1番聞きたくない名前が聞こえ、救えなかった罪悪感から逃げたくなり俺は素っ気ない言葉を残し部屋に戻った。
部屋のふすまを閉めると突如襲ってくる虚無感。
いつも一緒に過ごしていた俺の部屋は莉紗の笑った顔や怒った顔がどんどんと浮かんでくる。
轟「......っ」
手の中にあるネックレスを握りしめ思い出されるのは、手を伸ばした時のこと。俺の名前を呼んで、手を伸ばして助けを求めてくれたのに...俺はその手を掴めなかった。
助けられなかった...。
必死に堪えてみても溢れてくる感情は抑えられず静かに悔しさや怒りや、喪失感と一緒に涙が流れてきた。
だが、涙を流してもそれらの感情が消えることはなかった。
このまま、会えなくなってしまうんじゃねぇか..
そんな考えが頭をよぎった時に、ふと思い浮かんだのは笑った莉紗の顔だった。
子供の頃、ずっと一緒に過ごした存在...
俺の為に、自ら傷つきにいっちまうような奴。
自分勝手に傷つけて、突き放したにも関わらずそれを笑って許して昔と変わらず一緒にいてくれる。
一緒に泣き、一緒に笑ってくれた。
そんな、当たり前に隣にいた存在。
俺の事を誰よりも理解してくれる。
そんな特別な存在であった自覚はしていたが、それは幼少期から酸いも甘いも一緒に乗り越えてきた幼なじみだからだと思ってた。
でも、違う。
恋愛なんて、知らなかった。
切島の言葉を理解なんてしてなかった。
けど、スッキリするほど俺の中にストンと落ちて馴染んだ。
人を好きになった事がねぇ俺でもこの気持ちが何なのか分かる。
俺は、あいつが...
莉紗が好き。
あいつを失うかもしれない。
それが堪らなく怖いと感じる...
失いたくねぇ、側にいて欲しい。
隣で、笑っていて欲しい。
好きだ....好きなんだ、莉紗。
今ここにいない、お前を思うだけで苦しくなるくらい。
伝えたい。今すぐにでも..
お前と、話したい。
莉紗に会いたい
**
ガスにより意識不明となった耳郎、葉隠、頭部を強打した八百万、戦闘にて重傷を負った緑谷は合宿所近くの病院に運ばれた。
クラスの皆で見舞いに来て、今は緑谷の病室に来ている。
上鳴「緑谷!目覚めてんじゃん!TV見たか?学校、今マスコミでやべーぞ」
砂藤「春の比じゃねぇ」
峰田「メロンあるぞー!みんなで買ったんだ」
常闇「迷惑かけたな、緑谷」
緑谷「僕の方こそ、A組みんなで来てくれたの?」
飯田「いいや...耳郎くん、葉隠くんはヴィランのガスによっていまだ意識が戻っていない...そして八百万くんも、頭を酷くやられここに入院している。昨日ちょうど意識が戻ったそうだ。だから、来てるのはそのうち3人を除いた...」
麗日「15人だよ」
轟「爆豪と風舞いねぇから」
芦戸「?!ちょ、轟...」
俺の言葉を聞き表情を曇らせた緑谷。
緑谷「オールマイトがさ...言ってたんだ。手の届かない場所には、助けに行けないって。だから、手の届く範囲は必ず助けるんだって。僕は、手の届く場所にいた...必ず助けなきゃ行けなかった。僕の個性は...その為の個性なんだ...
相澤先生に言われた通りになった」
緑谷が目に涙を浮かべ声を引きつらせながら話し始めた。
こいつも、色々辛い事があったんだな。
緑谷「体、動かなかった....ヒック、洸太くんを助けるのに精一杯で...っ、目の前にいる人を」
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