Season3
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林間合宿前日。
休日で保育園も学校も休みのため、莉紗が梨央と寛太を轟家に連れていっていた。
寛太「しょーとくん、あーぼ?」
(訳)焦凍くん、遊ぼ?
轟「おう、何して遊ぶんだ?」
『焦凍くんも大分翻訳しなくても寛太の宇宙語分かるようになったね?』
轟「ああ、慣れたらそんなに難しくねぇ」
冬美「梨央ちゃん、寛ちゃん。お昼何食べたい?」
「「ホットケーキ!」」
冬美「了解!梨央ちゃん、一緒に作ろっか?」
梨央「うん!たまには皆でどっか行きたいなぁー」
ふと呟いた梨央。笑顔は浮かべているもののその言葉が単に遊園地に行きたいという単純な想いではない事が分かった莉紗。
『ごめんね。今日友達と約束あって』
冬美「梨央ちゃん、寛ちゃん。ホットケーキ食べたら遊園地行く?」
寛太「いく!」
梨央「お姉ちゃん達は?」
『合宿帰ってきたら連れてってあげるね』
梨央「..うん!分かったよ」
轟「...............」
その後、轟が子供の相手をしてくれている間に、と莉紗はキッチンでホットケーキを焼いている冬美に声をかけた。
『.....冬ちゃん、休みなのに子守りさせちゃってごめんね』
冬美「ううん?可愛いから良いのっ!」
『これ、遊園地代とか雑費。絶対あれ欲しいこれ欲しい言うと思うから』
そう言ってお札を1枚冬美に差し出す莉紗。
冬美「そんなのいいのっ」
『え、でも...』
冬美「だって、最近は莉紗ちゃんがいるから私遅番や会議の時は莉紗ちゃんに任せてるでしょ?」
『? それが?』
冬美が言わんとしてる事がわからず首を傾げる莉紗。
冬美「焦凍も莉紗ちゃんの所でよくご飯ご馳走になってるからってこーと!」
『えー、そんな事?』
冬美「私にとっては同じことだよー?莉紗ちゃんも焦凍も大きくなっちゃったからまた子供と関われる!」
『仕事でも子供と関わってるだろうに...』
冬美「私この仕事転職だと思うんだ」
『うん、私もそう思うよ。じゃあそんなに遅くならないと思うからお願いします』
冬美「うん、任せて!」
莉紗は今日、せっかくの夏休みだが外出自粛令が出てしまった為学校なら..と言う芦戸の提案の元、八百万が許可を取りクラスの女子と学校のプールで遊ぶ約束をしていた。最初は、兄弟の面倒を見なければならない為1度は断ったのだが教室で話を聞いていた轟が2人を見ていてくれるから行って来いと申し出てくれた。話しを聞いていた冬美からも見ててあげるから行っておいで、と言われお言葉に甘えることにしたのだ。
ブーブー
莉紗が準備をしていると轟の携帯が鳴った。
轟「緑谷?」
『緑谷?』
轟「...男子も学校のプールで体力強化するから来ねぇか、だとよ」
『男子"も"って、女子は遊ぶんだけどね』
冬美「良いじゃん!焦凍も行っといでよ」
轟「ああ。寛太、友達に誘われちまったんだが。夜遊んでやるからちょっと行ってきていいか?」
寛太「ゆびきり!」
轟「おう、指切りな」
寛太「ゆーびきりげまーん、うそちゅいたー はーせんのーます。ゆーびきった!」
『(焦凍くんの指切りとかめちゃレアシーン...)』
轟「悪りぃな」
そう言って寛太の頭を撫でた轟。
寛太「いってらたーい!」
『(イヤイヤ期真っ只中の寛太が大人しく引いた....何で焦凍くんにはこんなに聞き分けいいんだ?)』
轟「準備してくる」
『うん』
出かける準備を終えた2人は学校に向かうため家を出ると、息苦しくなるほどのムッとする空気と、容赦なく照り付けてくる日差しに思わず顔を歪めた。
『あっつ...』
轟「ああ、大丈夫か?ほら」
そう言って、右手を莉紗の首に当てて冷やす轟。
『ありがと、1家に1人焦凍くんいたら貢献度デカいね』
轟「俺は1人しかいねーぞ?」
莉紗が笑ってそう言うと真に受けたらしい轟が真面目な顔をして返した。
『いや、んなもんわかっとるよ』
轟「?」
**
それぞれ更衣室で着替え別々にプールに向かった莉紗と轟。莉紗はあらかじめ八百万に創造してもらっていたスクール水着(※峰田対策)を着てプールに行くと女子は既にみんな集まっていて、男子もちらほらと集まっていた。
『ごめん、遅くなった』
耳郎「あ、莉紗来た!」
葉隠「莉紗ちゃーん!」
麗日「わぁー!莉紗ちゃんが着るとスク水も色っぽいなぁ〜」
『そんな事ないと思うけど』
八百万「では、さっそく準備運動しましょう!」
女子が準備運動をしていると、緑谷、峰田、上鳴がやってきたのが見えた。何故か峰田と上鳴は思いっきりプールに入ってくるや否や滑り転んでいたが...。
峰田「おいおいおい!何でお前らがここにいるんだよ!」
緑谷「プールで体力強化するから、みんなも一緒にどう?ってメールしておいたんだ!」←LINEじゃないんかい
真面目か!と緑谷にツッコみ、そして女子の方を見て途端にげんなりする上鳴と微笑む峰田。
峰・上「「ぐおっ!」」
突如、2人の首を莉紗の粘着糸がホールドした。
『お前らの目的は体力強化だよな...?えぇ?こら』←2人の視線の意味を理解した。
いつの間にか2人の元にやってきていた莉紗が鬼のような形相で2人に問いつめた。
峰・上「「そ、そうです....グハッ!」」
葉隠「莉紗ちゃーん?」
耳郎「莉紗、どうしたの?」
『何でもないよー』
そして何事も無かったかのように女子グループの元に戻って行った莉紗。
砂藤「やっぱ風舞は怒らせちゃいけねぇよな」
瀬呂「瞬殺されんな」
尾白「あの二人が生きてるから...俺らは大丈夫じゃない、かな?」
苦笑いしながら話す男子達。
**
麗日「いくよー?えいっ!」
芦戸「はいっ!」
蛙水「ケロッ!」
耳郎「んっ!」
葉隠「それー!」
八百万「はいっ!」
『はっ!』
日光浴という名の遊びの目的で許可をとった女子は極々普通にビーチバレーを始め、体力強化という名目で許可を取った男子はそれはそれは地獄の強化トレーニングに励んだ。
飯田「よし、15分休憩!俺からの差し入れだ!飲んでくれ!」
そう言って飯田が持ってきたオレンジジュースを天からのお恵みかのように味わった男子。
『結構日差し強いし、私達も休もうか』
葉隠「そだね~!」
『ジュース買ってきたからどうぞ、温くなっちゃってるけど』
芦戸「風舞気が利く~!」
八百万「莉紗さん、ありがとうございます!」
女子もバレーを中断し莉紗は途中で買ってきた様々なジュースを女子に配った。
しばし休憩していると...
爆豪「ったりめーだ!でなきゃこの俺が、テメェみてぇなクソナードに負けるわけねぇだろ!」
緑谷「かっちゃん?!」
緑谷と飯田が何か話していてその会話が聞こえたのか爆豪は登場早々、いつもの調子で緑谷を貶した。
切島「遅れて悪りぃ!爆豪連れ出すのに手間取って!」
爆豪「おいクソデクー!!なんなら今すぐ白黒付けるか?あぁっ?!」
緑谷「あ、やっ...」
飯田「確かに、訓練ばかりじゃつまらないな。みんな!男子全員で誰が50mを1番早く泳げるか競走しないか?」
上鳴「おお!」
瀬呂「面白そう!」
砂藤「やろうぜ!」
八百万「飯田さん!私達もお手伝いしますわ」
男子の会話が聞こえ面白そうと女子が男子の方に集まった。
飯田「ありがとう!」
尾白「個性は?使っていいの?」
飯田「学校内だから問題はないだろう。ただし!人や建物に被害を及ばさないこと!」
爆豪「ぶっ潰してやるよ、デク!もちろんお前もだ!半分野郎!!」
端の方で壁によりかかり座っていた轟に向かって爆豪が啖呵を切った。
轟「...........」
八百万が審判台に座り、男子はレーンの前で待機。女子は横の方から応援することにした。
-1組目-
峰田、常闇、口田、爆豪、上鳴。
八百万「それでは位置について、よーい!」
ピィーっ
ホイッスルの音とともに最初に駆け出したのは爆豪。...は、いいのだが。
爆豪「爆速ターボ!!」
水の中を泳がず爆破で浮遊したまま反対レーンへたどり着いた。
爆豪「どうだ、このモブ共!」
瀬呂「どうだじゃねぇ!!怒」
切島「泳いでねぇじゃねぇか!怒」
爆豪「自由形っつっただろうが!!怒」
『(自由形の意味ちがうだろ....苦笑)』
-2組目-
瀬呂、青山、轟、砂藤、切島
八百万「位置について、よーい!」
ピィーっ!
今度は、先程泳げと爆豪に怒っていた瀬呂が自身のテープを使い、青山がレーザーでそれぞれ滞空したまま、反対レーンを目指したが途中で衝突しリタイア。そして、水面を氷結で凍らせ滑っていた轟が1番に到着した。
峰・上「「だから泳げって!!怒」」
轟「?」
『(爆豪の挑発に当てられたな....焦凍くんも案外負けず嫌いなとこあるからなー;)』
-3組目-
飯田、緑谷、尾白、障子
八百万「位置について、よーい!」
ピィーっ
緑谷、障子、尾白はちゃんと泳いでスタートしたがまさかの言い出しっぺの委員長飯田が個性エンジンの加速でこれまた泳がずにスタートした。
上鳴「飯田もかよ!」
飯田が圧勝かと思ったら、緑谷が物凄いスピードで追い上げ、飯田を追い越して1番でたどり着いた。
砂藤「すげー!!」
瀬呂「なんだ?!緑谷!」
飯田「やられたよ、緑谷くん」
緑谷「飯田くんも、すごかったよ」
轟「緑谷....」
みんなと離れた場所から緑谷と飯田を眺める轟。
『焦凍くん、お疲れ様』
轟「...ああ」
轟に声をかけた莉紗も轟と同じように緑谷たちに視線を向けた。そして、それは2人だけではなく緑谷と飯田も同じように轟と莉紗を見た。そう、今4人の頭には共通の出来事である保須事件のことが思い巡らされていたのだ。
飯田「(轟くん、改めて誓おう。俺は兄さんのようなヒーローになる)」
轟「(俺だって..俺の求めるヒーローに)」
緑谷「(僕もなる。笑顔で人々を助ける、オールマイトのようなヒーローに!)」
『(私だって、なってみせる。私がなりたい...私の思い描くヒーローに)』
言葉はない。だが、4人それぞれ心の中に秘めたヒーローへの決意をお互いに伝え合った。
飯田「各予選の勝者、爆豪くん、轟くん、緑谷くんの3人で優勝者を決める!それでいいか?」
緑谷「うん!」
轟「ああ」
『(焦凍くんと爆豪のあれを勝利と言っていいのか謎だけど....)』
爆豪「おい、半分野郎!体育祭の時みたいに手加減なんかすんじゃねーぞ。本気で来やがれ!」
轟「....分かった」
爆豪「お前もだ!このくそデク!」
緑谷「わ、わかったよ!かっちゃん」
飯田「それでは、50m自由形の決勝を行う!」
切島「行ったれ爆豪!!」
上鳴「相手殺すなよー!」
瀬呂「轟も負けんな!」
麗日「デクくん頑張れー!!」
八百万「皆さん、ファイトー!」
飯田「位置について!」
爆豪「(一気に駆け抜ける!)」
手のひらをバチバチとさせる爆豪に...
轟「(滑り抜く..)」
右腕が一気に霜に覆われた轟。
『(あの二人泳ぐ気は毛頭ないらしいね...苦笑)』
飯田「よーい!」
ピィーっ!
3人が同時にスタートし個性発動で一気に進もうとした瞬間...
「「「?!」」」
3人ともなぜか水の中に落ちていった。
上鳴「な、なんだ?!」
瀬呂「個性が消えた?!」
相澤「17時、プールの使用時間はたった今終わった。早く家に帰れ」
突然の相澤登場。
上鳴「そんな、先生!」
瀬呂「せっかくいいとこなのにー!」
文句を垂れた2人に相澤の目が光った。
相澤「なんか言ったか?」
「「「「なんでもありませーん!!」」」」
A組一同は半ば相澤に追い出されるように更衣室に向かっていった。
峰田「なあ上鳴」
上鳴「んあ?」
峰田「風舞って、スク水映えてると思わねぇか?」
上鳴「お、峰田!奇遇だな、俺も思ってた!」
峰田「だよな、あの健康的に程よくムチっとした太ももとか..」
上鳴「デカすぎない胸も逆に色気そそるよな...」
2人がコソコソとそんな不埒な会話をしながら歩いてるのが聞こえ最後尾を歩いていた轟の眉間に皺が姿を現した。
切島「おーい、轟?」
不機嫌オーラが出てるのに気づいた切島が轟の隣にやってきて小声で話だした。
轟「..........」
切島「お前最近ちょいちょい機嫌悪りぃよな」
轟「んなことねェだろ」
切島「...お前と風舞。付き合ってねぇっつってたよな?」
轟「風舞は幼馴染だ」
切島「じゃあ、お前は風舞の事どう思ってんだ?」
轟「どう、って何だ?」
切島「お前は風舞が好きなのか?って事」
轟「? そりゃ、好きだろ」
切島「人としてじゃねぇよ?女としてっつーか、恋愛的な意味で」
轟「そういうのはよくわからねぇ」
切島「けどお前。最近よく嫉妬してるよな?」
轟「...嫉妬?」
切島の言葉に目を丸くした轟。
切島「お前、自分で気づいてねぇの?最近風舞が絡む事でよく嫉妬してんの」
轟「......」
切島「分かってねぇみてぇだから言うけどよ。期末の後、上鳴が風舞に抱きついてた時は火出してたし、峰田が更衣室で風舞の身体の事言った時も氷出してただろ。イラついてたんだろ?」
轟「..........」
切島「それ、つまり嫉妬だろ?」
轟は切島の言葉に思い当たる部分があったのか言葉が返せなかった。
切島「お前らほど仲良くねぇけど、俺も幼なじみっつーのいるけど嫉妬とかしたことねぇし。そういう独占欲って、ただの幼馴染に抱かないと思うぜ?」
轟「そうか....」
切島「けど、おめェ確かに鈍そうだよな、そういうの。俺もアドバイスできるほど経験豊富ってわけじゃねぇけどよ。話しくらいなら聞くぜ!」
チャームポイントの八重歯を見せてにっこり笑った切島はポンと轟の肩に手を置いた。
轟「ああ...サンキュ」
先に行く切島の背中を見ながら先ほど言われた言葉達を思い返し轟の心には消化しきれぬもやもやとした感情が残った。
**
轟side
プールの帰り道、俺と莉紗は並んで帰路を歩いている。
『勝負お預けで残念だったね』
轟「ああ」
『てか焦凍くんと爆豪、水泳無視もいいとこだからね?』
俺の少し前を歩いていた莉紗がこっちに振り向き後ろ向きで歩きながら言った。
轟「...?自由形だろ?」
『自由形ってバタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、クロールの中の好きな型で泳いでいいって意味だよ?』
莉紗の自由形の説明に、クロール以外あまり聞き馴染みのない言葉が出てきて俺は初めて自分の認識に間違いがあった事を知った。
轟「そうなのか、俺はてっきり....」
『あーもう、そうだよね。焦凍くんそういう人だよね』
莉紗が呆れた顔をしていたと思ったら、今度はどこか憂いを含んだ表情を浮かべ、急に静かになったと思ったらふと俺の名前を呼んだ。
『......焦凍くん』
轟「ん」
『合宿、頑張ろうね』
空を見上げて言った莉紗。俺も莉紗の視線の先を追った。そこには、まるで全てを飲み込む炎のように空一面を赤く染め上げる夕日がゆっくりと沈んでいくのが見えた。
轟「...ああ。莉紗」
『ん?』
今度は俺が莉紗の名前を呼んでやった。
轟「一緒になるぞ。
.......ヒーロー」
『! ......うん、絶対。なろう』
切島が言っていた言葉の意味とか気持ちはまだ分からねェ。
分かるのは、俺が莉紗と一緒にヒーローになりたいという気持ちが幼少期から変わっていないという事。
そして、いつも守られてばかりだったから。
今度は俺が、こいつの笑顔を守りたい。
守るのは、いつだって俺でありたい。
その気持ちだけだった。
_____
弔「さすが先生だ。あんなに調べても分からなかった奴らの目的地を、こうも容易く見つけてくれた」
黒霧「彼らを待機させてた甲斐がありましたね、死柄木弔」
弔「ふっ、まあな」
義爛「組合から連絡が来た、明日の朝までに届けるそうだ。急ごしらえなので見てくれは悪いが品質は保障するってよ」
黒霧「無理なお願いをしました。申し訳ありません」
義爛「なあ、死柄木さん。組合があんたの無茶なお願いを聞いた理由がわかるかい?皆、あんたに期待してるんだとよ。ヴィラン連合が活気づけば、闇の中で燻ってる連中が動き出す。そうなりゃあ俺たちみたいな者たちも、そのおこぼれに預かれるってね」
弔「安心しろ、時期忙しさで手が回らなくなる」
義爛「ハハ、そりゃ楽しみだ。じゃ、毎度」
弔「目的地に手駒...獲物が揃った。なら、ゲームスタートだ」
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