Season2
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無事相澤にハンドカフスをかけた3人。
轟「八百万の作戦通りだが、こんなすんなり行くか?」
腕を組みながら言う轟に莉紗も同調するように頷く。
『確かに文句なしな作戦ではあったけど、上手く行き過ぎだよね』
八百万「正直不可解ですわ。カタパルトの発射で、私...ミスを冒しました。先生は気づいた上で距離を取った。
あの隙に防げたはずなのに...先生は故意に策に乗ったように見受けられました」
相澤「隣の轟を警戒しただけだ。お前は見えてたが、轟は布を被っていたからな。凍らされると考えた」
『なるほど』
相澤「何より、俺に取って一番相性の悪い風舞が終始身を潜めていたからな。轟への警戒は囮で風舞に捕獲される可能性も浮上した」
轟「お前の言う通りだったな。お前が死角に入った方が警戒意識を2分割出来るってやつ」
『うん、言う事聞いといて良かったでしょ?』
轟「そうだな」
相澤「......だから迂闊に手を出せなかったわけだ。俺が最善手だと思って引いて、それがお前の策略通りだったわけだ」
淡々と言う相澤だが、その言葉の節々には八百万の能力を認めている事が分かる。
轟「うん、言った通りホント時間さえありゃ、だ。ありがとな」
『ヤオモモ、助かったよ。ありがとね』
八百万「っ....」
八百万が安堵と感激のあまり涙が溢れ、口元を手で覆った。
轟「どうした、気持ち悪いか?」
『あのね...;』
八百万「な、何でもありませんわ!」
轟「吐き気には、足の甲にあるツボを押すと「何でもありませんから!!」
『轟くん、察してあげて』
相澤「風舞」
3人でわーきゃー盛り上がっていると相澤が莉紗を呼んだ。
『はい?』
相澤「お前の課題、今日の試験で見えただろ」
『...はい』
相澤「今日はクリアだが、お前がホントに課題を克服出来てるかどうかは今後にかかってる。しっかりチェックしてるからな」
『!....はい!』
「轟、風舞、八百万チーム。条件達成」
**
試験会場を出ようと歩いている3人。
八百万「改めてお二人の実力を実感致しましたわ」
『大袈裟な...』
轟「普通だろ」
『轟くん....それはイヤミっぽいよ』
轟「俺は微調整が上手くねぇからそこが課題だな」
八百万「課題は次へのステップです!」
轟「ああ、そうだな」
『あーあ、これでなんとか合宿固いかなー』
轟「筆記はクリアしてそうか?」
『多分、手応えはあったからね』
先ほどまで一緒に会話をしていた八百万が突然黙り込み足を止めた為2人も足を止め振り返った。
轟「八百万?」
『どうしたの?』
八百万「轟さん、風舞さん...ありがとうございます!」
八百万が随分真剣な顔をしてると思ったら勢いよく頭を下げ突然お礼を言われたもんだから、何故自分達はお礼を言われてるのか、皆目見当も付かず分からない2人は顔を見合せた。
轟「いや、こっちこそ。助かった」
『ヤオモモいなかったら2人して捕縛されてクリア出来なかったかも...』
そう言う2人の言葉に八百万がとびきりの笑顔を見せた。
八百万「...っ、ありがとうございます//
あの、風舞さん!」
『ん?』
八百万「あの..他の女子のみなさんみたいに...その...///」
『........?』
八百万「...っ、名前で...
莉紗さんと、お呼びしてもよろしいですか?!///」
『え....?そんな、わざわざ許可取らなくていいから、好きに呼びな?』
ものすごく溜めに溜めて何を言われるのかと構えていたが、言われたその内容が許可を取るような事なのか?と思わず脱力し言葉が途切れ途切れになってしまった莉紗だがその返答を聞いてとびきりの笑顔を見せた。
八百万「~っ!///
はい!ありがとうございます!では、私はモニタールームに他の皆さんの試験を見学しに行きますわ!お二人はいかがいたしますか?」
『私はいいや。行っといで』
轟「俺も遠慮しとく」
八百万「はい、では後ほど!」
八百万は周りに音符でも飛んでいそうなほど軽やかな足取りで2人の横を通り過ぎ出口に向かって行った。
『最近ヤオモモなんか可愛いよね』
轟「.....莉紗」
『ん?』
轟「話したい事がある」
『....ん、私もある』
**
焦凍くんと試験場の敷地外に出てすぐ近くにあるベンチに座った。2人きりで静かに話したかったのと敷地外にもモニターがある為、皆の試験の様子を見ながら話しがすることが出来るからだ。
轟「『.........』」
話したい事があるけどそれは焦凍くんも一緒で。焦凍くんをちらっと見ると目が合いどちらから話し出そうかお互いに様子を伺っているのが分かった。
轟「『あのさ』」
思い切って自分が口火を切ろうと言葉を発すると全く同じ言葉が聞こえた。思わず焦凍くんを見ると焦凍くんも同じ事を思っていたようで私を見てきた。なんだか可笑しくなって私達は顔を見合いクスッと笑い合った。
轟「いいか?」
『うん』
私が中学の時に知った事。焦凍くんから脈略も主語もなく発せられる"いいか"という一言。
これは、聞いてほしい話がある時に、聞いてくれるか?の意味を含めた言葉。それを分かっていたから私は頷いて、言葉の続きを待った。
轟「相澤先生に言われた。
お前らは八百万を守ってるつもりか。
お前の頼りは従順な風舞だけかって」
『..........』
轟「先生に言われるまで気にした事もなかったし、気づかなかった。
八百万を足枷にしたつもりはねぇ。
あの時はそれが最善だと思ってた。
けど、ちゃんと考えればそれは間違いなく見当違いだった。
第2の足止めはお前じゃなく八百万。俺らの中で1番機動力があって1番早く移動出来て、迎撃力も持ちあわせてるお前をゴールに向かわせるのが最善だった」
『...そうだね』
轟「けど、どうしても自分の個性と同じくらいお前の個性を理解してて、考え方や動き方が分かっちまう分戦闘中は特にここ一番でお前に頼る傾向があった」
『焦凍くん....』
焦凍くんに頼られているという事実。それは素直に言えば嬉しい事だったが、今回に関して言えばよく知り、理解するお互いの関係性に互いが依存していた課題点であると言う結果だった為喜ぶべき所じゃないと思った私は黙って焦凍くんの言葉の続きを待った。
轟「お前昔から俺の言うことに反対したり嫌って言ったことなかったよな」
『...それ私も言われたよ。
"何で自分で最善を考えようとしない""ずっと轟のイエスマンでいるつもりか"って。
私も、自分でそんなつもりなかった..言われて初めて気づいた』
ハハ、と乾いた笑いを浮かべると私の様子を見た焦凍くんが悲しそうな表情をした。
轟「...聞いていいか?」
『何?』
轟「俺が...そうさせてんのか?お前に」
『え?』
轟「お前が俺の言うことに反対したりしなかったのは。俺が何か..そう、させてんのか?」
『え....あ、違う違う!』
轟「じゃあ....」
『昔から、私言ってるでしょ?焦凍くんは、私の憧れでライバルだって』
轟「............」
『でもさ、やっぱ憧れの方が強い。だって、私はヒーローを目指す焦凍くんに憧れたのとそんな焦凍くんの力になりたくて自分もヒーローになるって決めたから。
だから心のどっかで無意識に、焦凍くんが言うことは間違いない、とか...焦凍くんが言うなら...って思っちゃってたんだよね、きっと』
轟「....そうか」
『でも、このままじゃダメだね。焦凍くんを支えられるヒーローになんてなれない。だから私、変わるよ』
空を見上げながら言った私。だけど焦凍くんからは何の言葉も紡がれず不思議に思った私は焦凍くんを見ると自分の左手を見つめていた。
轟「......お前テーブルゲームとか強かったよな」
『え?』
轟「俺も姉さんも、オセロも将棋とか。ポーカーだって1度も勝った事ねぇ」
『まあ...確かに』
轟「お前の中学の友達が言ってた。カードゲームもほとんど負け知らずだったって」
『(いつどこでそんな話し聞いたんだろ...)
でも何?急に』
突然話し出した脈絡のない話し。
確かに中学の時に、オセロとか将棋とか囲碁とか花札とかポーカーとか色々...やった事がないと言う焦凍くんにやり方をレクチャーした。元々地頭が良い焦凍くんはすぐにルールを覚えて普通に対戦出来るようになった。冬ちゃんと焦凍くんは結構いい勝負してたけど、焦凍くんの言う通り幾度となく対戦して私は2人に負けたことがない。何ならポ〇モンとか遊〇王なんかもテニス部の皆と暇時間によくやってたけどよっぽど引きの悪い時じゃなければほとんど負けた事ない。だけど、このタイミングで何故そんな話しになるのか何が言いたいのか分からず首を傾げていると焦凍くんが射抜くような視線で私を見た。
轟「お前は昔から俺のことを憧れだって言うけど、俺の方こそお前に憧れてた」
『.....え』
轟「お前は、駆け引きが上手い。分析するのも考察するのも速ぇし相手の手を読むのも上手い」
『そう、かなー?』
轟「俺はどうしても力押しになりがちだから作戦もそれに準じちまう。目の前の状況への対応だけじゃなく、2.3手先まで読んで対策する能力。すげーと思ってた」
『私そんな能力あったのか....』
轟「先生はそれを自覚して強みにしろって言いたかったんじゃねぇか?」
『!』
焦凍くんのその言葉に私は相澤先生に言われた事を思い出した。
"何で轟がいると考える事をやめる?"
轟「それに、左の個性を親父のものだと思い使うことを拒み続けた俺と違って、その個性を自分の力だと受け入れ最初から使ってた。
俺と違ってお前は、自分の力で状況を打破し乗り越える力を持ってるから。そんなお前の強さに俺はずっと憧れてた」
『焦凍くん.....』
焦凍くんが私の事をそんな風に思っていてくれていた事を始めて知った。嬉しくないわけがない。憧れていた焦凍くんに言われたその言葉で私の心はどんどんと高鳴っていく。
轟「俺も、変わる」
『変わる...?』
轟「ああ、体育祭でお前に聞かれたこと。まだ答えてなかったな。
どんなヒーローになりたいか...」
『あ...』
轟「安心させられる....そんなヒーローに、なる」
『焦凍くん.....』
そう言った焦凍くんの表情は以前よりも穏やかな表情だった。
『うん、きっとなれるよ。焦凍くんなら』
轟「え?」
『だって...』
轟「?」
私は、焦凍くんがいたらすごく安心する。焦凍くんが近くにいるだけで、焦凍くんが一緒にいるだけでどんな事でも乗り越えられる気がする。私にとって焦凍くんは昔から、安心させてくれるヒーローだった。だけど、今はまだ胸に秘めておこう。
今のままじゃ、私は焦凍くんの事を支えられるヒーローになれない。焦凍くんがいなきゃ価値のないヒーローにはなりたくない。
だから、私が焦凍くんを支えるヒーローになるその時まで。
『.....焦凍くんは強いもん。それは、私が誰より知ってる』
轟「莉紗...」
いつまでも焦凍くんの背中を追いかけるだけじゃダメだ。
焦凍くんの隣を...時には、前に出て焦凍くんを引っ張っていけるようにならないと。
待ってて、焦凍くん。私はいつか、時に焦凍くんの手を引いてあげられるヒーローになるって誓うから。
『頑張ろうね、お互い』
轟「おう」
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