Season2
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八百万「(脱出ゲートまであとどのくらい...?もっと最短ルートがあるのでは?轟さんは無事?これでいいの?時間を犠牲にしてでも移動用のアイテムを作るべき?これでいいの?私はこのまま逃げ切れる?私どこ走ってる?!ダメ...考えが...これでいいの?!)」
頭がパニックになってる八百万。
そんな八百万を庇いながら進む莉紗。ゴールを目指しひたすら走る2人の背後に迫った相澤。
『ちょ、もう?!(焦凍くん、時間稼ぎ短いよ!)』
相澤「(八百万...体育祭以降、自身の喪失が見て取れる)」
相澤が捕縛布を投げた。
『ハァっ!!』
莉紗が八百万の前に出て風でいなした。
相澤「痛いところは突いてくぞ!手数勝負しようか!」
『(あれ、個性が....使える?)ヤオモモ!私が足止めするから行って!!』
八百万「でも...『早く!!』
八百万に反論の余地を与えずにゴールに向かうよう促す莉紗。
八百万「は、はい!!」
慌てるように走り出した八百万だが、その方向はゴールとは反対の方向だった。
『ちょ、ヤオモモ?!
(テンパり方が尋常じゃない...)』
相澤「(判断を委ねにいったな。轟や風舞と自分を比べ格上だと決定付けてしまっている。良くも悪くも迷いの少ない2人を見て、自分の考えに自信が持てなくなったってとこかな。精神的にまだまだ15の子供、取り戻させてやりてぇが..それは俺の役じゃねぇ)」
相澤が八百万に気を取られてる間に莉紗は相澤の死角に入った。
相澤「(まあ、俺の今日の仕事(メイン)はこっち..)
風舞、俺はお前に1番言いたいことがあったんだが、よく聞け。
まず、お前も轟もそろって八百万を足手まとい扱いか?」
『(何言って....)』
突然放たれた予想外の言葉に莉紗が眉間に皺を寄せた。
相澤「今回のこの作戦考えたのはお前か?いや、違うだろうな。轟がいない時は自分の頭使って動いてのに、何で轟がいると考えねぇんだ?轟がそういうことに劣ってるとは思わねぇがお前の方が適任だろうが。今日もそうだ、轟の作戦を聞いてお前少しは自身の頭で考えたか?」
『(焦凍くんの作戦は最善だった。常にヤオモモが小物を作って、個性の発動確認。対敵したら焦凍くんが足止めして、私とヤオモモがゴールへ。焦凍くんがダメだったときは私が......あれ?)』
相澤「お前と轟の間に何があんのか知らないが、随分と轟に対して絶対服従じゃねぇか。お前、自分の考えや作戦があってもあいつが別のこと言い出したらいつもそれに従ってるだろ」
『(焦凍くんに、絶対服従...?)』
相澤「お前にその気はなくても俺から見りゃただのイエスマンだ。
ヒーローになってもずっとあいつの側にくっついて轟のイエスマンでいるつもりか?」
『(そう言われたら何で私が足止めなんだっけ?私とヤオモモなら、万能個性のヤオモモが足止めで、ダッシュウィンドを使えば私が一番速いんだから私がゴールに向かった方が最善だったんじゃ...)』
考えれば考えるだけ的を得ていく相澤の言葉達。
『(そういえば、私始まる前に作戦色々考えてたっけ。何で焦凍くんに話さなかったんだろ。
あぁ、そういうことか。先生の言う通り。私はいつも焦凍くんの言うことただ聞いてただけ。
今まで気づかなかった。
焦凍くんが言うなら間違いないんだって心の奥底で無意識に思ってたのかな。
焦凍くんだって完璧じゃないのに。
こんなんで、焦凍くんの事支えられるの?
このままでいいの?私。
いいわけない。ダメだ、このままじゃ....。
このままじゃ....
このままじゃ、ダメ!!)』
莉紗は粘着糸を細くして相澤に近づけ相澤の足元の周囲に張り巡らせた。
『(マズイ..光が反射して..)』
天井がオープンな為太陽光が入ってきて粘着糸が反射して視界に移りやすくなってるのに気づき焦り始めた。しかし、相澤は粘着糸を探る仕草も避ける仕草も見せない。その様子に莉紗の中である仮説が浮かんだ。
『(相澤先生...もしかして)
突風青嵐!』
再び莉紗は陰から相澤に向けて範囲を狭め威力の高い大突風を起こした。強烈な風の中では人間目を開けていられないものだ。相澤が目をつぶったのを見てダッシュウィンドでその場を離れ、莉紗は八百万の後を追いかけた。
相澤「(フッ...スイッチが入ったようだな)」
**
相澤「もう少し話し合っても良かったんじゃないか?
お前ら揃いにも揃って八百万を守ってるつもりか?
....お前の頼りは自分に従順な風舞だけか?」
轟は拘束され宙ずりになったまま相澤に言われた言葉の意味について考えていた。
轟「(そういや、八百万...何か言いたげだったな。莉紗も、八百万に何か言おうとしてた。
莉紗が、俺に従順..?確かに、昔からあいつに嫌っつわれたり反対されたことってなかったな...。
俺が、そう...させてんのか?)」
八百万「轟さん!!轟さん!!」
ぶら下がりながら考え込む轟の元に八百万が1人で戻ってきた。
轟「八百万...?」
八百万「すみません、私!やっぱり!」
轟「おい!相澤先生来てるぞ!」
八百万の後方から相澤が追ってきてるのを見つけ、轟が叫んだ。
八百万「え?!」
キョロキョロと当たりを見回し動揺する八百万。
『ヤオモモ!』
八百万「風舞さん!」
建物の上を渡っていく相澤から身を隠すようにして、相澤に竜巻と突風を交互に飛ばし続け自分を視認させないようにかつ、2人に近づけないようにする莉紗。
『ヤオモモ!私が引き付けておくよ!』
轟「八百万!何かあるんだよな!?
悪い、聞くべきだった。これでいいか、って。何かあるんだよな?!」
八百万「...でも、轟さんの策が通用しなかったのに..私の考えなんて...」
轟「良いから早くしろ!そういうのはお前の方が適任だったって言ってるんだ!」
八百万「え...?」
轟「学級委員決めたとき、お前2票だったよな?!1票は俺が入れた。そういう事に長けた奴だと思ったからだ!」
『ハァっ!!』
突風を起こした後に竜巻を立て続けに相澤に向けて4個飛ばした莉紗。
相澤「意外と芸がないな。同じ手をそう何度も喰らうか」
『そりゃどーでしょうね』
相澤が何かを企んでるような莉紗の表情に周囲に意識を向けると何かが自分に近づいてくるのが見えた。
相澤「(粘着糸か...!)」
かろうじて竜巻の陰に隠れている粘着糸を視認でき、思わず距離を取って3人の視界から消えた相澤。
相澤「(この数の竜巻を操りながら目視で見つからない細さにした粘着糸を微操作。グルーガンさんより粘着糸の扱い方上手いだろ。
あいつの個性を活かす技術と想像力は1番厄介だ。それだけなら下手なプロよりも俄然上だからな)」
後一歩という所で相澤を取り逃がした莉紗は悔しそうに舌を鳴らした。
『チッ...ヤオモモ!始まりの時になんか色々言ってたこと。何か私達に対して劣等感みたいなの感じてるみたいだけど、私はヤオモモが私達より劣ってるなんて思ったこと1回もないよ!
ヤオモモの武器はその知識量と、それを戦略に活かせる能力でしょ?馬鹿な私には到底真似出来ないよ!』
相澤から視線はそらさず背後にいる八百万に言葉を投げかけた莉紗。迷う八百万の背中を押すように2人が必死に言葉を投げかける。
八百万「っ....
(みっともない...みっともない!!)」
相澤「済んだ?」
突然頭上に飛び出してきた相澤。
八百万「お二人とも目を閉じて!」
八百万がコスチュームの腰元に入れてあったマトリョーシカを投げた。それは瞬く間に激しい光を放った。そう、マトリョーシカは仕込み閃光弾だった。相澤の視界を奪った隙に莉紗が風で轟の足元に散らばっているまきびしを飛ばした。
八百万「あります、私ありますの。相澤先生に勝利する....とっておきのオペレーションが!」
激しい光に一時的に視力を奪われた相澤は目を擦った。
相澤「(USJの後遺症...気づいてついてくるようなら、上出来だ!)」
相澤は宙に飛び跳ね捕縛布を投げた。
轟「八百万!」
轟が八百万の前に出て左の炎を発動させようとしたが個性を消され発動しなかった。
轟「(って、消されてるか..!!莉紗は?!)」
『突風 青嵐!(アオアラシ)』
相澤が目を擦った隙に再び相澤の死角に入っていた莉紗は個性を消されていなかった為突風で捕縛布をいなした。
『今のうちに!』
八百万「隠れるんです!3人で!」
『竜巻旋風陣!...て、消された!』
3人は死角になる路地に入り込んだが、その際にほんの一瞬視力を復活させた相澤の視界の中に入ってしまったようで個性を消されてしまったがまずは距離を取ろうと言う事で相澤の視界から姿を消し走った。
『さっきサシになって分かったんだけど。相澤先生の目、おそらくUSJの時の後遺症で視力や持続時間、それに発動条件が不安定になってるみたい』
八百万「風舞さんも気づいておられましたか」
轟「あの時の怪我か。で、それを利用すんのか?」
八百万「いえ、ともかく一旦視界から外れませんと!時間さえあれば、私たちの勝ちですわ!」
轟「時間...?先生の視界から外れるって..出来るか?個性使えねぇんだぞ!」
『瞬きの瞬間を狙うしかない』
轟「瞬き?」
八百万「そうです!今から話すとおりに!お2人は常に氷結と風の発動確認を!」
作戦を話しながら走る3人にあっという間に追いついた相澤。
相澤「追いついちまうぞ!」
相澤が最後尾にいた轟に向かって捕縛布を投げた。
八百万「"個性が使えない"は悪い思い込みですわ!一瞬、必ず隙が生じます。相澤先生が瞬きし、再び見られるまでの一瞬!発動順序は風舞さんの風、轟さんの氷結です!」
轟「『!』」
2人が常に個性を発動しようと右手に意識を集中していると轟の右手に氷、莉紗の右手に風が宿った。
八百万「お二人ならその一瞬で出せるでしょ?体育祭の時に見せたあの...超広範囲突風と大氷壁を!」
そう、莉紗が爆豪戦で見せた会場全体に吹き荒れる程の超広範囲の突風を相澤に向け相澤との距離をとらせた上に、目を瞑らせ個性抹消の解除時間を延長させた後に、轟の巨大氷壁で壁を作り視界を塞いだ。
相澤「(風舞と轟の最大出力!狙ってきたな...。フッ、痛いところはそうだ。ついていけ!)」
氷の壁で遮り個性を問題なく使えるようになった3人。
轟「復活した瞬間に風舞の風で解除時間を延長させて、壁で遮った」
『これで個性使えるね』
轟「ああ、今のうちに作戦の全容を...」
2人が八百万の方を向くと向こう側を向いてはいたが、コスチュームの胸元を大きく開けて何かを創造していた。
莉紗は慌てて轟の肩を押し反対側を向かせた。轟も珍しく気まずそうに視線を逸らした。
轟「相澤先生の武器?」
八百万「ええ、素材や詳しい製造工程が分からないのでまったく同じ物は作れませんが、その代わりある素材を織り込んだ私verですわ。
住宅街である以上、被害はなるべく抑えなければいけません。そしてあの捕縛武器による、素早く捉えづらい動き...私の考えはこうです」
2人は八百万の作戦を聞いた。
八百万「どうでしょう...轟さん、風舞さん。これなら先生から逃げ切るより成功率は高いはずです。勝負は一瞬...よろしいですか?」
轟「ああ」
『文句なしだよ』
轟「なら、風舞。先生引き付けんのはお前に任せるぞ。今んとこお前の風、先生に有効だろ」
そう言う轟に首を横に振った莉紗。
『ううん、むしろ逆だよ』
轟「逆?」
『今のところ、私の風は先生にまばたきを強制出来てる。先生も分かってるはずだし、粘着糸もあるから私への警戒が1番強いはず。
だからこそ、2人が引き付けて私は物陰に隠れてサポートに回った方が先生の警戒意識を2分割出来る』
────
相澤「(風舞の風で目は乾くしどうしてもまばたきさせられちまうな..。
だが、脱出ゲートは俺の背後。なら、追撃するよりじっくり出方を伺おう)」
話し合いの末、3人が出した答えはこうだ。相澤先生が最も警戒しているのは莉紗のはず。
強制的に目を閉じさせられる風と、死角から隠密に襲ってくる粘着糸。
そして...
相澤「(来たな..)」
轟と八百万は黒い布を被り相澤の視界に入った。
相澤「布かよ、たしかに見えなきゃ消せねぇが...デメリットの方がデカイだろ、それ!」
相澤は布を被った右側にいる方の頭を捕縛布で捕らえた。
しかし、相澤の捕縛布に捕らえられたのは頭を模した人形だった。
布から八百万の姿が現れ、カタパルトを発射しようと手をかざしたが空振りしてしまった。
相澤「(カタパルト?!)」
突如視界に入ったカタパルトに相澤は一旦距離を置き後ろに下がった。
相澤「(ここで粘着糸かよ!)」
莉紗の粘着糸が相澤に向かって何本も伸びてきた。
それを相澤が避けているところに八百万がカタパルトを発射させ相澤の周りに八百万特性の捕縛布が散乱した。
八百万「轟さん!地を這う炎熱を!」
八百万のその声に布が舞い落ち、中から轟が現れた。轟の左手に炎がまとい放たれたが炎は相澤には向かって来なかった。
相澤「(当てにこない?一体何を...)」
3人の作戦。それは、相澤相手に個性での攻撃を決めようとするのは極めて不安かつ難儀。そのため攻撃ではなく捕獲する事にシフトをおいた。
八百万「ニチノール合金...ご存知ですか?!加熱によって瞬時に元の形状に復元する、形状記憶合金ですわ!」
八百万がカタパルトから発射した捕縛布が瞬時に形状を変え相澤を捕らえた。
相澤「(大したもんじゃねーか)」
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