Season1
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私は風舞莉紗。
母も父も街を守り、人を守るプロヒーロー。おおらかで優しくて強い、自慢の両親。
...だと思ってるのは世間だけ。
記憶の残ってる頃には既に仕事で家を不在にすることが多く、知り合いの家に預けっぱなし、夜は使用人を雇い面倒を見させていたいわゆる育児放棄状態。
親との楽しい思い出はこれっぽっちもない。あるのは、壮絶な特訓の記憶と過剰な圧力。
私が2歳の時には父の粘着糸を操る個性が発現し4歳の時に母の風を操る個性が発現した。
それからというもの、両親は私への期待が高まりヒーローになること、自分達の事務所を継ぐことなど自分達の理想を押し付けプレッシャーという名の圧力がすさまじくなった。
兄が父の個性を受け継いだものの中々上手く扱うことが出来ず自身喪失した兄はヒーローを嫌い、サラリーマンの道を選んだことで父と大喧嘩になり家を出た。
それゆえに二人の個性を両方受け継いだ私に飛び火が向いたのだ。
毎週日曜日に家族で出かけることもない。
家族でクッキーやケーキを作った習慣もない。
誕生日のお祝いも、クリスマスもお正月も...。
家族で行うイベントも全て私の人生にはなく、私は個性の訓練をさせられ続けていた。
皮肉な事にもそのおかげで個性は自在に操れて、学校でも優秀な方にはなったがそんな両親への反発心からか勉強は全くする気が起こらずいつも赤点ぎりぎりだった。
両親の敷いたレールを辿るのが嫌だった。
だからヒーローになるかどうかも迷っていた。
だけど、自分が思い出すのは幼少期ずっと一緒に夢を語った幼なじみの男の子。
中学の時突然会う事を拒絶され、一時期はヒーローを目指すこともやめた。
早々と家に帰るのも嫌で時間つぶしにテニス部のマネージャーなんかやったりして。これはこれで楽しかった。
でも何故か個性の練習は辞めようとは思えず、以前ほどじゃないにしても毎日続けていた。
きっと内心は、ヒーローになる事を望んでたんだと思う。
そう本気で自覚したのは進路を考えるようになった3年になった時。
やっぱりヒーローになりたいという思いが湧き、最難関である国立雄英高等学校で推薦をとることにした。
勉強ができなかった私にはかなりの高難度なミッションだったが、実技試験は何をするまでもなく合格出来るから勉強に専念しろ、と進路指導の時に進路担当の先生に言われた。
だから、同じく雄英のサポート科志望の同級生に勉強を教えてもらった。
これが、私の物語の始まりだった
**
雄英高校推薦入試の日。
筆記試験はとりあえずは全部埋めた。
あれだけ勉強に時間を費やしたのは人生で初めて。以前なら多分何にも埋められなかった、というより問題を理解できなかっただろう。
それもこれも無駄に頭が良いクラスメイトのおかげだ。
あとは、実技試験だけだった。
筆記試験は絶望的な私だけど、実技の方ならそこそこ自身はある。
何せ、壮絶な特訓をさせられ死ぬ思いで生きてきた。
実技試験会場への案内アナウンスが流れ、私は誘導されるがままに会場へ向かった。
『(え...)』
見知った白と赤のツートンカラーの頭の少年を見つけた莉紗。
『(焦凍、くん...)』
久しぶりに見るその姿に内心かなり動揺しているが、周りに悟られぬよう必死に平然を保つが向こうにも気づかれたらどんな顔して話せばいいかとひやひやしていた。
名前順で番号が振り分けられているらしいが何故かそこそこ遠いはずの私の番号は彼の次だったらしい。
番号順に横に並ぶように言われて足取り重く彼の横に立つ。
その途端、彼と目が合った。
轟「あ」
向こうも私に気づいたらしく、目を見開いて何か言おうとしたようだが彼の言葉を遮り、試験官の先生が実技試験の概要を説明し始めた。
隣の彼のことが気になり、全く耳に入ってこなかったけどとりあえずいわゆる個性使用ありで、色々な障害物がある3kmマラソンだと言うことだけはわかった。
レース順番は番号順じゃないらしく、彼とは別の組だった。
個性の性質上、レース系は得意だけど焦凍くんが気になって仕方ない。
焦凍くんの個性がどれほど強くなったか...。
焦凍くんは氷結の使い方進化してる...。自分の進行ルートに氷を出してそこを滑り抜くように進んでいる。
私も風の力を使って自分のレーンで1位になったけど全体でのカウントは3位。
悔しいけれど、自業自得だな。
焦凍くんのこと気になって焦凍くんの事ばっか見てたし、全く集中出来てなかったから。
何はともあれ、無事に推薦入試は終わりを迎えた。
『はぁ...』
精神的に大分しんどかった。どんな顔して会えばいいのか全く分からない。そんな中、今まさに気まずい相手が目の前に現れた。
轟「『あ.....』」
玄関で偶然ばっちり遭遇してしまった。
『しょ....あ、轟くん...久しぶり』
昔の呼び方で呼びそうになったけど周りに人が多くいる。
どんな関係かと気にされるのも問い詰められるのも嫌だからあまり親しさは見せないようにしたい私は呼んだことのない苗字を口にした。
轟「何で苗字...?」
『あー、周りに人いるし。名前で呼んでたらどんな関係だとかなんとか聞かれたら面倒だし』
轟「そういうもんか?」
『そんなもんだよ』
轟「そうか。
お前も、雄英受けたんだな」
『うん、まあね』
轟「......じゃあ、また入学式でな」
『あ、うん。じゃあね』
焦凍くん....さすがだな。
もう合格を確信してる。
私は筆記が非常に心配だってのに。
お互い手を振ることもなくその場を別れた2人。
だけど帰路がほぼ同じということを知っているから私は少し寄り道をしてから家に帰った。
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