Season0
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人口の8割が生まれながらに手にする個性。そんな超人社会において、それら個性を悪用するヴィラン達を抑制すべく為に生まれた職業。それがヒーロー。
これは、とある1つのヒーロー家族の古い物語。
「ウィンドリア!頼んだ!」
ウィンドリアと呼ばれた女性。緑色がモチーフの派手なコスチュームに身に纏うヒーロー。
ウィンドリア「任せてください!スピントルネード!」
伸びきってしまったヴィランを警察が回収する。
「さすがだな、ウィンドリア!」
ウィンドリア「無事に解決して良かったです」
愛嬌ある笑顔で労ってくれた警察に対応する若手ヒーローのウィンドリア。
雄英の歴史において、黄金世代と言われる程に才能と個性を有する者が揃った世代。圧倒的な実力と事件解決数でNo.2を不動の物とし君臨し続けるエンデヴァー、育成の匠と呼ばれるほどにプロヒーローの育成の才覚を発揮するグルーガン、正確無比な判断力とその大らかな人柄で支持を集めるリューキュウなどがいる。ウィンドリアも黄金世代の中の1人で、実力はもちろんの事圧倒的なカリスマ性で学生時代から何かと話題性に富みヒーローとしての将来性も見せつけてきた彼女が卒業と同時に就職した事務所。それが、当時雄英において将来有望株とされる者皆がこぞって就職していた最大手のヒーロー事務所"ブリーダーヒーロー事務所"だった。
プロヒーロー ブリーダーはその目で見た者の身体能力を数値化してみることが出来る個性"フィジカルセンサー"を持ち、肉体強化の育成者として右に出る者はいなかった。
エンデヴァー達も共にこの事務所でサイドキックとして就職し戦友としてヒーロー活動をしていた。しかし、瞬く間にエンデヴァー、ウィンドリア、リューキュウは数々の功績をあげ、あっという間にトップヒーローの座に付くと就職から数年後には早々と独立しプロヒーローとして成功の道を歩んでいった。
「グルーガン、お前。育成者になるのは良いがお前自身はプロヒーローとして功績を上げなくていいのか?」
グルーガン「自分が功績を上げなくてもエンデヴァー達が俺の分まで事件を解決してくれてますから。それより俺は、どんな状況においても活躍できるプロヒーローを1人でも多く育成することの方が先を考えた時に大事だと思うんで」
「若いのにしっかりしてんなぁ、お前」
グルーガンは自身の経験値の為に最初の2年程は現場での活動をとにかく多くこなしたが3年目に入ると事件解決はそこそこに、"他人を育てる"と言う事に着眼し、ブリーダーに他を育成する為の心得を学んでいた。学生時代から教師などの育成・教育の仕事に関心があったグルーガン。個性で悪事を働くヴィランの数が激増した近年においてヒーロー不足が度々問題に上げられていた。
グルーガンは気づいていた。ヒーローの数が少ないのではなく質の高いヒーローが少ないという事に。
ヒーローは周囲環境への影響を考慮し救助や被害者のメンタル・身体的ケアなどの応急処置。他にも警察や他職種との連携や他職種が到着するまでの橋渡し等すべき仕事は山ほどある。とは言え、ヒーローがそれをやらねばならないというわけではない。もちろんヒーローは対ヴィランとの戦闘の為に設けられた資格ではあるが、その場に居合わせた者としてヴィラン討伐しか考えていないというのはいかがなものだろうかとグルーガンは考えていた。
救命救急士ではないから応急処置はしないでヴィラン討伐だけして待機。
目の前に燃えてるビルの中に人がいても消防士ではないからヴィラン討伐だけして待機...。
グルーガンはヒーローとしての在り方そのものを考えていかなければならないと思っている。そうして、事件解決よりも自らブリーダーの元で新人育成の経験を積み始めたグルーガン。
そして、ブリーダーは気づいていた。彼の人の可能性を見抜く力はヒーロー社会を変えるべき逸材だという事を。
数年後、ヒーローと言う職業が身近に目指す存在となりその数をどんどんと増やしていった。
ヒーローの在り方を考え改革していくべきだとブリーダーと共に、大手のコネや発言力を使いヒーロー社会に変革をもたらしていったグルーガンはいつからかヒーロー育成の風雲児と呼ばれるようになっていた。そして、グルーガン自身も独立し事務所を立ち上げた。
一方で、その実力と愛らしいルックス
。そしてその愛嬌でアイドルのような人気を博していたウィンドリア。自身のヒーロー事務所を立ち上げヒーロー活動をする傍ら、メディアへの露出もオファーが来れば何の迷いもなく出た。
グルーガンヒーロー事務所は後進育成に躍動し、また育てた後進を他のヒーロー事務所へあっせんする動きも積極的に行っていた。ウィンドリアは自身のキャリアを積むことよりも後進を育成する事に重きを置いたその考え方や方針に心を打たれ、自身のヒーロー事務所を閉じ雇用していたサイドキック達を引き連れグルーガン事務所に移籍した。
**
炎司「お前達が結婚とはな」
寛治「全くだ、俺も想像してなかった」
日本らしいその庭園を背景に酒を交わす炎司ことエンデヴァーと寛治ことグルーガン。
寛治と、ウィンドリアこと楓子が結婚をすることになった為、炎司の元に2人で報告に来ていた。
ウィンドリアがグルーガン事務所に移籍し、2人が惹かれ合うのに時間はかからなかった。いつしか恋仲になった二人は交際期間1年を経てウィンドリアの妊娠が発覚したのをきっかけに結婚を決めた。
楓子「炎司くんもお見合いしたんでしょ?」
炎司「ああ、氷を操る
寛治「お前は家庭に収まるタイプとは思えんがな」
炎司「どういう意味だ」
楓子「確かに、お相手の子苦労するかもね」
ガハハと声高らかに笑う寛治にクスクスと笑う楓子。
炎司がむぅとへそを曲げたような表情を浮かべた。
しかし、炎司が途端に表情を固くし寛治に向き合った。
炎司「寛治、お前は自分の子をどうしたい」
寛治「そうだな。俺はどうもこの個性を上手く扱い切れていない。この個性を上手く使ってくれればと思う」
炎司「よくヒーローになれたものだ」
寛治「お前は?」
炎司「俺は....必ずオールマイトを超えるヒーローにする」
それから3か月後。炎司と氷叢冷の結婚が決まりその1か月後には冷の妊娠も判明した。
楓子「冷ちゃん、男の子と女の子どっちがいい?」
冷「どっちでもいいわ、自分の子ならばどちらでも可愛いはずだもの」
楓子「冷ちゃん、既にお母さんらしい」
冷「楓子ちゃんは?」
楓子「んー、そうねぇ。私が長女だから男の子が先でその後に女の子がいいかな?」
冷「あら、もう2人目の事考えてるの?」
楓子「3、4人は欲しいわ、きっとにぎやかで楽しそうよ!」
冷「クスッ、そうね」
そうして時は過ぎ、楓子が男の子を出産。蒼弥と名付けられた。そしてその半年後。予定日より少し早く冷も男の子を出産。燈矢と名付けられた。同い年となった2人は生まれた時から一緒に育ち良き親友、よきライバルとして育っていった。
そして、この日から轟家も風舞家も少しずつ変わっていった。
**
気づけばグルーガンは育成の匠と呼ばれる程に、育成者としての能力を高く評価されるようになっていた。
それと同時にグルーガンとウィンドリアの子供はどれほどの実力者に育つのかと世間の注目は高いものだった。
グルーガンは少しずつだが確実に変わっていった。
蒼弥が3歳の頃には粘着糸の個性を受け継いでいる事が分かり、訓練をするようになった。
「蒼弥、違う!指先から出すイメージだ!」
言葉もまだ完璧ではない3歳児に個性の訓練は無謀としか言いようがない程に難しい事であったが、グルーガンは"育成の匠"と呼ばれているその肩書と自身の子への期待で日々訓練は激しさを増していった。
グルーガン「何度言ったら分かる! もっと長く伸ばすんだ!」
育成の匠と呼ぶにはなんとも荒々しすぎる指導に5歳になった蒼弥も嫌気が差していた。
蒼弥「お父さん、俺たまには燈矢たちと遊びたい」
グルーガン「余計な事は考えずに訓練の事だけ考えろ!」
始めは少し厳しすぎやしないかと感じていたウィンドリアも世間からの2人の子への期待や重圧と蒼弥の個性の成長具合の落差に焦りを感じ始め次第に止める事もしなくなっていった。
そして、その頃ビルボチャートNo.5に登り詰めそれと同時に家庭に意識が向かなくなるほどに多忙を極め蒼弥とウィンドリアは会話どころか顔を合わせる事するままならなくなっていった。
親の期待が過度に蒼弥を追い詰めていく。蒼弥は、どんどんと言葉を発しなくなり食事も摂らなくなっていった。
そんな中...
「おぎゃーおぎゃー!!」
寛治「今度は女の子か」
楓子「可愛らしい子に育てばいいわ」
風舞家に娘、すなわち蒼弥の妹...莉紗が生まれた。両親の期待は完全に莉紗に向き、蒼弥は家での居場所をなくしたと感じた。
莉紗は成長と共に、明らかに蒼弥とは違う才能の片麟を見せ始めた。それは莉紗が2歳の頃。
2歳で個性を理解してるわけもなく、まして自分の力を理解するわけがないその齢で、莉紗は人差し指から粘着糸を出していた。
楓子「あなた!」
寛治「ああ、莉紗は才能がある。しっかり育てないとな」
しかし、その頃からグルーガン事務所は多忙を極めるようになった。オールマイトが平和の象徴となった頃から世間のヒーローへの注目と憧れはより一層強まり、それと同時に年々増えていくヴィラン犯罪に対応する為のヒーローの数が不足していた。
その為、政府がヒーローの数を増やす事を目的としヒーロー科やヒーロー免許試験の受験資格や合格難易度を下げた結果、軽い憧れでヒーローを志す者が激増した。資格を持っただけの名ばかりのヒーローが増え現場で戦力にならない者が増えたのだ。その為、後進ヒーロー達を育てて欲しいとグルーガン事務所に依頼が急増した。
グルーガンとウィンドリアは事務所に泊まり込み、家に帰らない日が増えた。その為、家政婦を雇い家事と子供たちの面倒を見てもらうようになったが2人は家政婦に懐いているとは言い難く、家政婦も与えられた仕事をこなしていくだけで淡々とした関係だった。轟冷がそんな2人を案じ轟家に招いた。
冷「莉紗ちゃん、蒼弥くん。自分の家だと思ってね」
蒼弥「うん、ありがとう」
子供たちが生まれる前から良好な関係を築いていた轟家と風舞家。生まれた時には既に顔見知りであった轟家の子供たちと過ごす轟家での生活に2人が慣れ、懐き居付くのに時間はかからなかった。
冷「蒼弥くん、今日何食べたい?」
蒼弥「んー、カレーかな」
燈矢「蒼弥、お前聞けばカレーばっかじゃん!」
蒼弥「いいだろー、別に!冷さんのカレー美味しいんだからさ!」
燈矢「分かるけどさ、カレー小僧!」
蒼弥「何だよ、燈矢!!」
冷「クスクス..うん、わかったよ」
同い年の燈矢の存在は蒼弥にとっては兄弟のような、親友のような、ライバルのような存在であった。
その存在が蒼弥の日常に様々な刺激を与えていた。
蒼弥「冷さん、迷惑かけてごめんね」
轟家での生活が居心地良いものになっていくと同時に蒼弥は轟家に対する罪悪感に苛まれていった。そしてどんなに居心地が良くても燈矢たちが兄弟同然のように接してくれても自分達は所詮家族ではないとふとした時に考えてしまいどんどんと苦しくなっていく蒼弥。
冷「2人は生まれた時から知ってる我が子も同然だし気にしないで?燈矢たちも2人が居て嬉しそうだしね」
蒼弥「......うん」
しかし、
そんな楽しかった日々もいつまでもは続かなかった。
燈矢は父親に見て欲しいが故に自分を傷つけるだけとわかりながら個性の特訓をしてしまい毎日のように全身火傷だらけで帰ってくる。
蒼弥「燈矢、また個性の特訓してきたの?」
燈矢「おう!これならお父さんもスゲェ!って言ってくれるはず!」
蒼弥「それはいいけど...その前にお前の身体大丈夫?」
燈矢「平気平気!」
そして、その頃から焦凍の左の個性が発現し、エンデヴァーが特訓を強いるようになった。傷つく焦凍を見るたびに妹が泣きそうな顔をする。そして、何より成長していくにつれ親から見放されるように期待されなくなった自分と違い親からの手ほどきなどなくても日に日に個性を扱えるようになり親の期待を一手に受ける莉紗への嫉妬心、何より血の繋がった妹に対しそんな感情を抱く自分に対する嫌悪感。蒼弥の中の様々な感情は晴れるわけなく、むしろ日に日に膨れ上がっていく。小学校の高学年にもなるとクラブ活動、そして地域の少年チームに入団しスポーツに明け暮れるようになり次第に轟家に寄り付かなくなった。
『お兄ちゃん...』
燈矢「大丈夫だって莉紗。蒼くんな、今サッカーにハマってるらしいよ!」
『サッカー?』
燈矢「おう、莉紗の個性の特訓付き合ってあげるから元気出せ!」
『燈矢兄....うん!』
兄が側から離れ、寂しさに押しつぶされそうになっていた莉紗。いつも一緒で心の支えであった焦凍もエンデヴァーに強いられる特訓のせいで一緒にいられない時間が増えた分、燈矢が莉紗の個性の訓練をしてあげて気を紛らわしていた。
しかし蒼弥13歳、莉紗5歳になった頃事件が起こった。
エンデヴァーが県外への出張があり厳しい特訓もなく久しぶりに一緒に遊んだ焦凍と莉紗。
同じ布団で昼寝をしていた2人だったが、ふと目を覚ました焦凍が添い寝をしていた冷がいないことに気づいた。
焦凍「お母さん...?」
『ん...しょうとくん?』
焦凍「お母さん、いない...」
『トイレかな?探しにいこっか!』
焦凍「うん」
2人が居間に行くと何やら冷が誰かと話しているようだった。
焦凍「お母さん?」
焦凍が母を呼ぶと、冷はまるでおぞましいものを見るかのよな目で焦凍を見たあと自分のすぐそばで激しい音を立てているやかんを手にし焦凍の左顔面に煮え湯を浴びせた。
焦凍「あぁあ!!あっついよ!!」
『しょうとくん!!冷さん!!』
使用人から騒ぎを聞きつけたエンデヴァーが仕事が終わるなり戻ってきた。冷を怒鳴りつけると病院に連れて行き、その後冷が家に戻ってくることはなかった。それからの焦凍は見るからに変わった。笑うことはなくなったし、常に怒りに満ちた表情を浮かべていた。
しかし、事件はまだ続いた。
そう....燈矢が死んだ。
父親に自身の成長を見せようと個性を発動していた際、上がり過ぎたその燃焼の個性のコントロールが出来なくなったのか山火事が起こる騒ぎとなった。そして、燈矢の遺体も最後まで見つかることはなかった。
『冬ちゃん....燈矢兄どこ行っちゃったの?』
冬美「莉紗ちゃん....」
幼い莉紗にはまだ死を理解できなかった。
そして焦凍は完全に莉紗や冬美達とは引き離され同じ家にいても顔を合わせる事すらなくなってしまった。
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