Season0
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「莉紗ちゃん、遊ぼう!」
「いいから..出てけ!!」
莉紗がふと目覚めたときにはまだ、外は真っ暗な闇。
久しぶりに夢というものを見たな、と頭を抱えるとうなされていたのかそれなりに汗をかいている自分に気づいた。
『何で急に....』
夢の子は轟焦凍。
私の両親がネグレクトと言われてもおかしくないくらい仕事浸りで私や家のことを放置するもんだから私は幼少期、轟家で育っていた。
轟家の色んな事情もあって、小学校低学年の時に半ばおじさまに追い出されるように轟家を出て自宅で家政婦の手を借りて1人で生活するようになった。
家も近いため、登下校で見かけることもあるが気まずくなり段々と避けるようになった。学校に行けば焦凍くんもいるにはいるが、3年生になってクラスが離れてしまった。
それに、最後に会った時が何とも言えない気まずい形で離れてしまった為わざわざ自分から会いに行きにくくなってしまいぱったりと交流がなくなってしまった。
両親は家に帰ってきたかと思ったら地獄のような個性の特訓..自分達がいない普段はわざわざサイドキックをうちに寄こして特訓させていた。
おかげで小学校を卒業するころには個性は自在に操れていたし、クラスの男子よりも強いたくましい女子に成長した私。
けど、子供の頃の私が欲しかったのは強さじゃない。
妹や弟が産まれてから自分の時とは全く違う親の顔を見せる両親に憎しみ、怒り、悲しみ...
色んな感情が私の心に湧き上がっていた。
その為、最近では部屋に閉じこもってばかりで顔を合わすことすら避けていた。
そうして気づけば中学生となっていた。
入学して3か月ほど経って中学校での生活にも慣れてきたころ。
友人は出来たが放課後に遊んだりするような友達はいなかった。
いつも放課後には家から徒歩10分くらいのところにある空き地で個性の練習をしていた。
周りに家などもなく拓けた土地で人も通らない為、安心して個性を発動できるからだ。
その日もいつものように個性の練習をしていた時。
『ハッ!』
竜巻のサイズはだいぶでかくなった。自分と同じくらいのサイズまで成長したからね。
あとは、飛ばしたい方に飛ばすだけ。
と、いつも通り竜巻飛ばしてみた。
シャキーン..
『?!....氷?』
突如目の前に氷山が現れた。
記憶の中とはスケールが違うものの目の前に現れたそれにとても見覚えのある個性だった為固まっていると氷の向こうから声が聞こえた。
「危ねぇ」
『え?...しょ、焦凍くん?!』
轟「莉紗...?」
『あ、久....しぶり』
轟「よお」
『何、してんの?』
轟「個性の特訓できる場所探してた」
『わざわざ...家でやればいいのに』
轟「あいつとの接触をなるべく減らしたいから時間潰してんだ」
『あー...なるほど』
素っ気なく会話してるように見えるかもだけど、実のところは久しぶりに会って話せたのは純粋に嬉しい。
しかし、昔いろいろあってずっと会ってなかった手前、気まずさや気恥ずかしさもあり顔は見れないでいた。
轟「お前も個性の特訓か?」
『うん、理由は大体同じ。そういえば中学校どこ行ったの?うちの中学にいないよね?』
轟「ああ、凝山(こるざん)中。親父に無理やり通わされた」
『え、私立の?』
轟「おう」
『そっか。エリートね。ほんと久しぶりだね、元気してた?』
轟「ああ、お前は?」
『見ての通り。でも、最後に会ったの小学校低学年の時なのによく私だってわかったね』
轟「普通に気づく」
『そっか..ね、せっかくだから一緒に個性の練習しない?』
轟「ああ、そうだな」
昔よりも伸びた背、低くなった声....焦凍くんを見てると会わなくなってからの月日を実感させられる。
『氷結の威力あがったね』
轟「ああ、お前の竜巻もだいぶデカくなったな」
『その内焦凍くんの氷結よりデカいの出して見せるよ』
それからというもの放課後にここにきて2人で個性の練習をするのが習慣となった。
-轟side-
4歳の時に炎が使えるようになってから地獄のような特訓の日々...それは中学生になった今も変わらず、家に帰れば親父の特訓が待ってる。
どんなに抵抗しても、その抵抗を訓練の一環としてとにかくめちゃくちゃに痛みつけてきやがる。そして奴は炎の特訓をさせたがり、逆にお母さんの氷の個性を使わせないようにしてくる。が、俺は奴の個性を使いたくねぇ。
なるべく1人で右..即ち氷の練習をしたくて、静かに特訓出来る場所を探し、人気のない空き地にやってきた。
すると、空き地の中から急に竜巻が現れた。
台風なんて来てねぇのに...と思い、咄嗟に氷結で防いだ。
左の熱で氷を溶かしていると、見慣れた女が現れた。
轟「危ねぇ」
風舞莉紗。
小学校の低学年の頃までうちで一緒に暮らしていた。毎日一緒にいて、一緒に遊んでいた。
しかし、親父の個性が発現してから親父は姉さんたちや莉紗と関わらせないようにした。そしてそのうち、うちから姿を消した。
それから会ってなかった。
かれこれ7年ぶりくらいか.....
久しぶりに会ったそいつは、昔よりも大人びていて凛とした女になっていた。
けど、やっぱり時折見せる笑顔は昔と変わらなかった。
お互い個性の練習のためにこの場所に来たからと、その日から放課後はこの場所で莉紗と個性の練習をすることが日課となった。
**
とある日曜日
特に予定を合わせてはいなかったがなんとなく午前中に合流した2人は今日もひたすら個性の練習中。
『焦凍君、そういえば冬ちゃんと夏君元気?』
轟「ああ、会いに来るか?」
『え、でも...おじさまに怒られそうだな』
轟「今日は遅番って姉さんが言ってたから、大丈夫だ」
『ホント?嬉しいー』
焦凍くんも冬ちゃんに連絡してくれて歓迎されたらしく、こうして私は7年ぶりに轟家にお邪魔することになった。
冬美「莉紗ちゃん!久しぶり!会えてうれしい!」
『冬ちゃん!私も!』
冬ちゃんと抱擁し合い会えた喜びをかみしめていた。
轟「.........夏兄ももう帰ってきてんの?」
冬美「うん!莉紗ちゃん来るって連絡したら寄り道もしないで急いで帰ってきたよ」
『夏くんも久しぶりだ』
3人で居間に向かうと、既に次男の夏雄は座ってテレビを見ていた。
『夏くん!』
夏雄「莉紗ちゃん!久しぶり」
そう言ってニカっと笑う夏くんのその笑顔は昔と変わってない。
昔話に花を咲かせながら、4人は夕食を取っていた。
冬美「莉紗ちゃん、ご家族元気?」
『あー、多分..両親とはもうほぼ顔を合わせないから』
冬美「一緒に住んでないの?」
『住んでるけど、会いたくないから親がいる時間は部屋に閉じこもっちゃうから...私。会ったらなんか色々とうるさいし..』
冬美「そっか...」
夏雄「莉紗ちゃんの両親も厳しかったもんな」
『厳しいっていうか、押し付けてくるのが嫌なんだよね..自分たちのやりたい事とか理想とかを』
夏雄「誰かと同じだな」
轟「............」
冬美「蒼くんは?」
『一人暮らししてる』
冬美「そっか。ご家族の事だしそこは軽々とは言えないけど...でも、辛かったらいつでも頼ってね。うちにも来たい時に来たっていいし。なんなら昔みたいにうちにずっと居てくれていいし!」
冬美の思いもよらぬ言葉に俯き加減で話していた莉紗が顔を上げた。
『え?』
冬美「そうしたのはお父さんとはいえ、うちの身勝手な都合で突き放すことになってしまったのにこんなこと言うの勝手だけど...私莉紗ちゃんの事、ホントの妹のように思ってたから」
夏雄「あー、それ俺もだよ」
轟「..........」
予想もしていなかった2人の言葉に胸に熱いものがこみ上げた。
戻りたかった...でももう戻れないと、そう思っていた場所に自分を受け入れてくれる居場所が今もあると知ったこと。
自分を想ってくれてる人が昔と変わらずこの場所にいることが嬉しくてたまらなくなった莉紗。
『ありがと、夏くん!冬ちゃん!』
轟「なあ」
『ん?』
轟「さっきから話しが読めねぇんだけど、都合とか突き放すとか...何の話しだ?」
焦凍のその言葉にその場の3人が固まった
冬美「そっか...焦凍は知らないよね」
轟「何を?」
夏雄「莉紗ちゃん、小学生の時くらいにうちから出てっただろ?」
冬美「お父さんが....追い出したんだよ」
轟「え...」
夏雄「莉紗ちゃん、追い出された後も時々お前の様子見に来てくれてたのに、あいつよっぽどお前に会わせたくなかったのか家に上げなかったんだよ」
2人のその言葉に、轟の表情に怒りが垣間見えた。
『..あ、でも...まあそれはさ、いつまでも他人の家に居候してるのも失礼だし...』
轟の様子に慌ててフォローを入れた莉紗。
冬美「でも、生活拠点をうちに置くことはちゃんと莉紗ちゃんのご両親も承諾のうえだからね」
『そう、かもだけど...』
夏雄「仮にそうだとしても、怪我させたのは許せねぇ」
『ちょ、夏君...』
慌てて止めに入るも既に遅しと言ったところで轟の表情は完全に怒りに震えている形相だった。
轟「お前、あいつに何されたんだ」
『あ、いや...』
夏雄「莉紗ちゃん、これを機会に焦凍にちゃんと話した方がいいよ」
『...........』
轟「教えてくれ、莉紗」
『私も...悪いから。学校でいつにも増して焦凍君の様子が変だった時があって気になっていつもみたいに、様子見に来てさ。焦凍くんに帰れって言われた時のこと覚えてる?』
轟「ああ、覚えてる」
『あの後おじさまに部屋から出されて焦凍くんの話し聞いてあげてって言って、おじさまの腕掴んで引き止めちゃって。
肩掴まれて回れ右させられてね。その時、おじさま多分怖がらせたかったんだと思うけど少しだけ炎出してきて...それでちょこっと火傷しちゃって..』
轟「............」
『でも、ほんとちょこっとだよ。大したことない』
冬美「ごめんね莉紗ちゃん、焦凍。あのころの私達...気づいてたのに、知ってたのに止めることが出来なかった..」
夏雄「ごめん..」
『あ、あやまらないで...』
冬美「焦凍もごめんね」
轟「いや、俺も全然気づいてなかったから」
『もっとさ、せっかく会ったんだから楽しい話ししようよ!ね?』
冬美「そ、そうだね..あ、莉紗ちゃん。こんな時間だし良かったら今晩泊まっていって?」
『え、でも..』
冬美「私から連絡入れておくから、ね?」
『おじさま、大丈夫?』
冬美「仕事立て込んじゃったから今日は事務所に泊まるってさっき連絡きたの」
『...いいの?』
隣にいた轟に思わず問いかけた莉紗。
轟「別にダメな理由なんてねぇだろ」
『っ...じゃあ、お世話になります』
そう言ってお辞儀をすると冬美が、お風呂用意してくるから部屋でくつろいでて!と走っていった。
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