Season2
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轟の元からA組の元に戻ってきた莉紗は、なんとなくすぐ終わってしまう気がしたため座らずそのまま自分もスタンバイに向かった。
緑谷「あ、風舞さん」
呼ばれた名前に振り返ると、緑谷が松葉杖をつきながらこちらに向かって歩いてきていた。
『緑谷、動いて大丈夫?』
緑谷「うん、歩ける程度には治してもらったから。それに..みんなの試合ちゃんと見ておきたいし」
『そっか。ごめんね、緑谷』
緑谷「え?」
『私があんなこと言ったから、気負わせちゃったね...』
眉尻を下げて申し訳なさそうに言う莉紗。
緑谷「...違うんだ。
ただ、悔しかったんだ。風舞さんの言う通り、轟くん。僕の事なんて眼中になくて...。見て欲しかったんだ、目の前に立つ敵として、ライバルとして。そして全力で戦いたかった。途中から、頭の中がそれでいっぱいに..」
『緑谷...』
緑谷「風舞さんは次、かっちゃんとだよね?」
『そう、まだ無策だけどね』
少し、思い詰めたような様子の緑谷だったが冗談っぽく言う莉紗に少し笑顔を見せた。
『見てたらスロースターターっぽいから序盤で決めた方がいいとは思うんだけど』
緑谷「うん、かっちゃんは掌の汗腺から分泌される汗を爆破の起動源としてるから動けば動くだけ爆破の威力が上がるんだ。けど無限に上がるわけじゃなく、個性も身体機能の1つだし、威力の上限はあるとは思う」
『......なんかすごい重要事項聞いた。これもうフェアじゃないね』
緑谷「これでギブアンドテイクでしょ?」
『! そう、だね』
2人はお互い顔を見合わせて笑った。
『よし、じゃあその情報を元に出来たらぶっ飛ばしてこよ』
緑谷「頑張ってね」
『..ありがとう、緑谷』
緑谷「!!」
通り過ぎ様に呟かれたその言葉、そしてふと見せた微笑み。それは、決して爆豪の個性についての情報をくれた事に対して言ったわけではない。
それを何となく感じ取った緑谷も小さく微笑んだ。
緑谷「うん!」
**
マイク「準決勝第1試合!お互いヒーロー家出身のエリート対決だ!ヒーロー科、飯田天哉!バーサス、ヒーロー科、轟焦凍!」
『(飯田としては、爆豪や緑谷みたいに焦凍くんの氷結を真っ向から壊すような直接的な物理攻撃がないし左への警戒もある。
狙うとすれば開始早々のレシプロでの加速で焦凍くんを場外に持っていくだろうな。あのスピードは焦凍くんの氷結をもってしても捕らえることが出来ない。けど、だからこそ焦凍くんは端から捕らえることは考えずに、捕らえられてから飯田の身体を直接凍らせるパターンになるかな)』
マイク「スタート!」
開始早々、轟が飯田に向かって氷結を繰り出した。
飯田は全速力で氷結の攻撃から逃げ回った。しかし、飯田の行く手に氷結で壁を作り飯田の進路を絶った轟。
マイク「あーっと!飯田囲まれた!」
そして今度は飯田の正面から氷結を出した轟。
しかし、飯田は今度は宙に浮き立ち幅跳びの要領で、轟の間合いに詰め寄った。
飯田「レシプロ、バースト!」
空中に浮いたままレシプロを発動し轟に向かって右足で蹴りを入れたが轟は頭をさげ、なんとかそれをかわした。
1度地に降り立つと目にも止まらぬ速さで方向転換し再び空中から今度は左足で轟の頭に蹴り落とし地面に叩きつけた。
轟「ガハッ..!」
瀬呂「大分重いの入ったぞ!」
上鳴「速すぎだろ、あの蹴り!」
轟もすぐさま起き上がり氷結を出すも飯田は飛び跳ねて避け、轟のジャージを鷲掴みすると場外に向かって走り出した。そのまま場外に轟が投げ飛ばされる!誰もがそう思っていたが....
飯田「!?」
飯田の足が止まった。
そう、轟が飯田のマフラーを氷結で詰まらせたのだ。
飯田「(マフラーを?!)いつの間に?!」
そして轟は、動けなくなった飯田の腕を掴むと足元から氷結を出し飯田の身体を氷で包んだ。
轟「蹴りンとき、範囲攻撃ばかり見せてたから。こういう小細工は頭から抜けてたよな」
飯田「クッ....」
轟「警戒はしてたんだが、レシプロ。避けられねえな、さすがに」
ミッドナイト「飯田くん、行動不能!轟くんの勝利!」
マイク「轟!炎を見せずに決勝戦進出決定だ!!」
**
マイク「さあ、続いては派手な爆破で暴れ回るやんちゃボーイ!ヒーロー科爆豪勝己!バーサス、ベスト4唯一の女子。未だ底力が見えない実力者!ヒーロー科、風舞莉紗!」
『(底力が見えないって...なんか、さらっとハードル上げられたんだけど)』
マイク「スタート!!」
『(掌の汗を爆破の起動源にしてる....か、それなら私の個性で対応出来るかもな。ただ、あいつも結構勘がいい。策に感づかれないように攻めないと)』
爆豪は先制攻撃で潰しにかかってくる。見た目の派手さの割に機動力のある爆豪は、あっという間に莉紗の間合いに詰め寄ってきたが、莉紗もまずはダッシュウィンドで攻撃を回避しながら爆豪に向けて自分サイズの竜巻をぶつけた。
爆豪「テメェ!なんだこのみみっちぃ攻撃はよぉぉっ!舐めんてのか....よっっ!!」
爆豪が連続爆破の猛攻で莉紗を攻め立てた。
爆豪「!!」
『バカ正直に100%出したってしかたないでしょう.....がっ!!』
莉紗も負けじと爆豪の爆破で巻き起こった煙に隠れ、爆豪の体に粘着糸を巻き付け動きを固定し、今度は自分の2倍サイズの竜巻を出した。
爆豪「んな小細工..俺には通用しねぇ!!」
爆破の熱で粘度が緩まった粘着糸を力づくで切断し自分に向けられていた竜巻を爆破の勢いでいなした!
『へぇ、あんた結構単細胞だと思ってたんだけどね』
爆豪「んだと...このクソアマァァァア!」
端からみれば、莉紗の挑発に乗って爆豪がキレてるように見えるが実の所はそうではない。爆豪のこの素行、暴言は通常運転。見た目以上に冷静なのである。
『(こいつやっぱり想像以上に冷静だ。中々攻撃が単調になってくれない。けど...)』
「なぁ、あの爆豪って子の爆破段々威力落ちてないか?」
「やっぱりそう思うか?俺もそう思ってた」
緑谷「!!(そうか、だから風舞さんは範囲攻撃ではなく威力を抑えたポイント攻撃ばかりを...)」
周囲から聞こえた会話で何かに気づいた緑谷。
『(奴の個性は、汗を原動力としている、か。それならスロースターターってのも頷ける。もし、奴を倒す策があるとすれば風で奴の起動源の汗を奪う!爆破を起動できないうえに奴の動きも抑えることが出来るかも。
汗は体にこもった熱を放散する役割がある。けど、夏の真昼間のこの外気温の中で、直接的に風を浴び続けることで熱がこもったまま汗だけが乾いてしまい、その状態を続ければ、こもり続ける熱に熱中症のような症状を起こす可能性がある。もちろんそうなれば動きも鈍るし、判断力も低下するはず。ヒーローらしからぬやり方だけど...。
私の個性は爆豪との相性が悪いわけではない。でも、奴の爆破を妨害は出来るけどそこから攻撃パターンに持っていく為の攻撃力が私にはない。このままじゃ膠着状態だし、勝つ策はこれしかない....)』
爆豪が爆破で間合いを詰めて、莉紗に向かって手のひらをかざし爆破した。
対して莉紗は、爆豪に策がバレないよう時折範囲攻撃を混ぜつつ、部分攻撃で爆豪の手を狙うように体幹付近を狙って風を発生させた。
マイク「お互い引かずに激しい攻防!!しかし、爆豪の勢いが少し弱まってきたかぁぁっ?!」
爆豪「(こいつ、全然範囲攻撃使ってこねぇ。なんか狙ってやがんのか.....)」
『(勢いが弱まったところを....捕獲!)』
竜巻に混じって粘着糸を伸ばし爆豪の足と上腕、そして体幹に巻き付けた莉紗。
爆豪「クッソガァァァっ!こいつが熱に弱いのには気づいてんだよ、クソアマ!!」
そう言って爆豪は右手で左腕を拘束してる糸を、左手で右腕を拘束してる糸を爆破し粘着糸を切断した。
『気づいてたか...』
爆豪「ちまちまちまちま.....企みがあんのか知らねぇが、癪に障るんだよクソアマァ!!」
爆豪が莉紗の意図に気づいたかどうかは不明だが、先程までのように爆破で風をいなすのではなく風を避けるようになった。
爆豪「(クソっ、風で汗が飛ばされる...下手に爆破で吹き飛ばすのはこっちがジリ貧になるだけだ...)」
爆豪も、このままでは自分が不利だということを理解し風から逃げるようにし汗を溜めていった。
瀬呂「おいおいおい、これどっちが勝つんだよ!」
峰田「おい爆豪!風舞の服が塵になるくらい爆破しろー!!」
耳郎「ゲスの極みかよ....」
尾白「緑谷、この勝負どうなると思う?」
緑谷「おそらく、風舞さんはかっちゃんの爆破の元である汗を吹き飛ばして爆破そのものを封じようとしてる。だから範囲攻撃よりも、ポイント攻撃でかっちゃんに感づかれないようにかっちゃんの身体に風を飛ばし続けてるんだと思う。対してかっちゃんは、まだ風舞さんの意図に気づいてはいなさそうだけど、風に汗を飛ばされて威力が弱まってる現状に気づき対処してる。爆破で風を相殺するのをやめて風を避けながら汗を溜めてるんだ。正直、この試合がどう転ぶか分からない..」
『(ここからどう攻めるか全く思いつかない....)』
膠着状態が続けば自分が不利になる。やっぱ難しかった。私はここまでか...そう考えた莉紗の脳裏に常闇との試合が始まる前に轟に言われた言葉がよぎった。
「今度は俺が見てる」
『(そうだ....焦凍くんが見てんだ。このままあっさり諦めて終わりにするわけにいかない。
散々焦凍くんのこと焚き付けておいて私が簡単に諦めますってわけにいかないんだよね!
このまま膠着してても爆豪に汗を溜めさせるだけだ。意図に気づいたか分からないけど、風を避ける戦法に出たなら吹き飛ばさざる得なくすればいいだけ!)』
その瞬間全身から力が湧くような感覚がした莉紗。
『悪いけど、これなら避けれないでしょ!』
莉紗が思いっきり両腕を振り上げた。すると、今まで見た事がないほどの規模の風が吹き荒れた。観客席の一番上にいる人すら吹き飛ばす勢いの、会場全体に吹き荒れた超広範囲の突風。
爆豪も避けきれず風を浴びてしまうが、突っ込んではこず場外に飛ばされない程度にのみ右手だけを後方に向けて爆破し、なんとか堪えた。
爆豪「クッ!..クソがぁぁぁあ!!」
『(マジか。あいつ、堪えやがった...!!)』
「うわっ!高校生がどんな範囲攻撃だよ!」
「この威力、下手なプロより上だぜ?!」
「ウィンドリアさんこんなん出した事あったか?!」
会場全体に吹き荒れた風に耐えながら、観客たちもその超広範囲突風にざわついた。
マイク「これは風舞!すごい範囲攻撃を見せてきたぞ?!やばくねーか!?この威力!プロでもこの範囲と威力はそう多くねぇぞ!?」
爆豪も負けじと、風が止んだところを莉紗の間合いに右手の連続爆破で一気に突っ込んできた。
莉紗は爆豪の攻撃をなんとか避けるものの場外ラインに近づいていることに気づいた。
『(左手の汗を温存してるのに意識持ってかれて気づけば誘導されてた!)』
そして、莉紗が再び放たれるであろう爆破を避けようとした時...
バァァアンッ!
突如莉紗の真横で大きな爆発が起こった。
警戒してなかった場所からの爆破、そして場外ライン、ギリギリにいたことが災いし莉紗は場外に出てしまった。
『な、火を使ったの?!』
爆豪「文句あっかよ」
爆豪は手のひらが乾燥しないようにと、風で汗が飛ばされないように途中から左手のひらを握りしめて動いていたため、汗を溜めることが出来た。また、爆破をただがむしゃらに撃っていたわけではなく、進路を断ちながら場外ライン近くまで誘導していたが、それだけではない。
ステージの四隅に設置されたコンクリートの松明。爆豪はこの松明近くに誘導し莉紗の真横の火の近くで爆破することによって威力を大幅に上げた。
『クッソ....』
爆豪「ちまちまやりやがって、このクソアマ」
『派手なら良いってもんでもないでしょ』
ミッドナイト「風舞さん場外!爆豪くんの勝利!」
爆豪は観客席を見渡し、誰かを探していた。見つけた相手は、轟焦凍。轟を睨むように見上げ、そして轟もまた爆豪を鋭い眼差しで見下ろしていた。
**
1Aのみんながいる観客席に戻ってきた莉紗。
麗日「莉紗ちゃん、おつかれ!」
響香「おつかれ」
『おつかれ』
切島「あの爆豪とまともにやり合うとはな...さすがだな、風舞!」
峰田「ちくしょう、爆豪のやつ....何でもっと服が破れるように狙わねぇんだよ...」
耳郎「『おい、そこのクソ野郎....』」
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