Season0
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
幼なじみの男の子がいた。
名前は轟焦凍くん。
焦凍くんとは父親同士が学生時代からの旧友でお互いヒーローとして事務所を構えたあとも主に仕事のことでやり取りをしたりチームアップを組んだりすることが多く家族ぐるみで仲が良かったらしい。
1番古い記憶は幼稚園の頃だけどその頃にはもう既にクラスで1番焦凍くんと仲が良く幼稚園でも、幼稚園が終わったあとも毎日のように一緒に遊んでいた。
『しょーとくん、きょうはなにしてあそぶ?』
焦凍「りさちゃんのこせいであそぼー!」
私も焦凍くんも2歳の時にそれぞれ粘着糸と氷結の個性が発現した。
もちろん両親から扱い方は学んでいたが、多分個性コントロールの習得としては2人とも早い方だったと思う。
3歳の時には個性を出して遊んだりしていた(もちろん怒られていたのだが..)
私の家にも焦凍くんは来ていたけど、どちらかと言うとうちは親不在で兄はクラブ活動に明けくれていて1人の事が多かったため、兄姉が3人いる焦凍くんの家に行くことの方が俄然多かった。
幼少期は轟家で育ったと言ってもいいくらい自宅より轟家にいる時間の方が長かったのだ。
『れいさーん、しょーとくんがおそばたべたいって』
冷「じゃあ今日はお蕎麦にしよっか」
『やったー!しょーとくん、おそばだって!よかったね!』
焦凍「うん!」
いつも優しい笑顔を向けてくれる焦凍くんのお母さんの冷さん。
冬美「莉紗ちゃん、焦凍、公園行く?」
「『行くー!』」
いつも明るくて、私達をよく公園に連れてってくれていた焦凍くんの7つ上の姉の冬ちゃんこと冬美さん。
夏雄「莉紗ちゃん、焦凍、アンパンマン始まるよー」
いつも元気な焦凍くんの4つ上のお兄ちゃんの夏くんこと、夏雄くん。轟家のみんなは私を本当の家族のように大事にしてくれる、私の大好きな人達。
この頃は、まだ焦凍くんのお父さんもかなり厳しくはあったけどまだ普通の厳しいお父さんだっだと思う。
けれど、4歳になってから焦凍くんは、お父さんの炎の個性が発現した。
その頃からおじさまは、焦凍くんに個性の特訓を始めるようになった。
私と遊ぶ機会が減ってしまったが、おばさまが、家に帰っても1人だと可哀そうだから...とおじさまに頼み込んで家には居座らせてくれた。
だけど焦凍くんとは遊ばせてもらえずに、冬ちゃんや夏君たちと遊ぶことが多くなっていき焦凍くんとは顔を合わせることすら日に日に減っていった。
うちはうちで相変わらず仕事が忙しいと食事だけ用意して2人とも不在の事が多くなり1人寂しく食事をとることがほとんど。事務所にそのまま泊まることも増え、お金だけを置いていくようになっていった。
その事情を知って冷さんは泊まっていきなさいと言ってくれるようになり小学校に入る前にはもう轟家に半ば居候のような形で居座ることが多くなった。
『しょうとくん、個性のれんしゅう...大変そうだけど、大丈夫?おじさまきびしいの?』
焦凍「きびしいなんてもんじゃないよ...あんなん....」
轟家に居候するようになってからは、おじさまが仕事中や夜特訓が終わってから焦凍くんと話が出来るようになった。
『なんか...しょうとくん、すごく辛そうだからしょうとくんが特訓してるの嫌だ...』
焦凍「ぼくも...ホントは嫌だ。もっと、莉紗ちゃんとあそびたい...」
このころから、轟家は壊れて行った。
いや、もっと前から壊れていたのかもしれないけど、私がそれに気づいたのはこの頃だった。
気づけば焦凍くんは泣いてる事が多くなり冷さんもあまり笑わなくなった。
冷さんとおじさまは口論が増え、私と冬ちゃんと夏君がそれに怯え部屋の隅で丸くなって息を潜め落ち着くのを待つ...そんなことが増えて行った。
そして、事件は起こった。
冷さんが、焦凍くんに沸騰したやかんのお湯をかけ、焦凍くんの左目の周りには大きなやけどの痕が残った。
冷さんは精神病と診断され、入院することになった。
そして、弱々しくありながらも仲裁に入っていた冷さんがいなくなったことでおじさまの焦凍くんへの鍛錬はさらに拍車をかけひどくなっていった。
『おじさま...しょうとくん可哀そうだから、やめてあげて』
耐えきれずに私は勇気を出しておじさまに訴えかけた。
炎司「お前には関係ない、下がれ!」
そう言っておじさまは私を殴った。
轟「莉紗を殴るな!お母さんの次は莉紗をいじめるのかよ!!」
炎司「お前は余計な事を考えるな!個性の訓練のことだけ考えていろ!」
私が殴られたのを見て、焦凍くんが怒っておじさまに反抗したがおじさまは見向きもせず焦凍くんや私に罵声を浴びせた。
その出来事以降、おじさまは私を焦凍くんに近づけさせなくなった。
同じ屋根の下にいるのに、顔を見ることもなくなり焦凍くんの事が心配でたまらなかった。
それでも心配な私は焦凍くんの部屋に向かい様子を見ようとした。
炎司「何をしている」
『あ...しょうとくんがしんぱいで..』
炎司「心配することなど何もない。向こうへ行け。焦凍に近づくな」
『............』
小学校に入っても焦凍くんの生傷は絶えなかった。
『焦凍くん...おはよ』
轟「おはよ」
同じ家に住んでるのに、学校でしか顔を見れない。この頃にはもう、焦凍くんはほとんど笑わなくなっていて、感情というものを表出することがなくなっていた。
『焦凍くん...帰り、公園とか寄ろう?』
轟「いい、行かない」
『...そっか』
焦凍君が辛いなら少しでも気晴らしを...と思って言いだしたことだったが焦凍くんはその手を取ってくれず悲しかった。
私は焦凍くんを助けたいだけなのに...何で応えてくれないんだろう..と。
そんなある日...
授業中もずっと俯いてる焦凍くんが気になって声をかけたが焦凍くんは話しかけても返事もしてくれずうつむいたままどこかに行ってしまった。
追いかけると学校の裏庭に焦凍くんはいた。
『焦凍くん!!私に出来ることない?焦凍くんが辛いの、私いやだよ...』
私が必死にそう言って言葉をかけると、焦凍くんは言葉を発することなく泣き出した。ただひたすらに...。
私はかける言葉も見つからず、ただ焦凍くんの隣に座って泣き止むのを待った。
30分くらい泣いていただろうか...焦凍くんは調子が悪いと言って保健室に行きそのまま早退してしまった。
早退した焦凍くんが心配で私も調子の悪いフリをして早退した。
家に帰るとおじさまが事務所に呼ばれているらしく不在だったためこっそりと焦凍くんの部屋に向かった。
『焦凍くん...』
轟「?!
莉紗..出てけよ!」
『だって焦凍くん!!』
轟「いいから.....
莉紗、出てけ!」
炎司「何をしてる」
『!!
おじさま..』
運悪くおじさまが帰ってきてしまい、焦凍くんの部屋にいるのを見られてしまった。
炎司「莉紗、こっちに来い」
『え....』
焦凍「..........」
そう言って私はおじさまに腕を引かれて焦凍くんの部屋から離されて玄関に連れていかれてしまった。
炎司「お前はもうこの家の敷居を跨ぐな。焦凍がNO.1になるのにお前は不要だ。焦凍もお前を必要としていない」
『え...待って!焦凍くんがそう言ったの?』
炎司「お前には関係ない」
『おじさま、焦凍くんの話しも聞いてあげて』
おじさまの腕を掴んだその時...
炎司「お前に言われる必要はない!」
おじさまが私の両肩を掴んで方向転換をさせた時おじさまは両手に炎を出したようで肩に熱さと痛みが同時に走った。
『あつっ...!』
炎司「次はこんなもんでは済まないぞ」
玄関のドアから顔を出して、夏くんや冬ちゃんが泣きながら様子をこちらを見ているのが見えた。
結局、その日私は何年振りかの自宅に帰った。
家に私がいることで何があったか両親が聞きに来たが、今までの話しをしたにも関わらず心配よりも先に個性の特訓はきちんとやってるのか..とかどうでもいいことばかりを聞いてきた。
その日から私は両親による地獄のような鍛錬の日々を送ることになる。肩に出来た火傷は今でもくっきりと痕が残っている。
.