Season2
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あの時、クソ親父が莉紗と話してるのを見てイライラしていた気分が更に助長されたような感覚になってこれ以上親父を視界に入れておくと抑えられなくなりそうで莉紗の手を引いて奴のもとから離れようとしたが奴の余計な一言で危うく理性を失くすところだった。
莉紗が止めてなきゃ殴りかかってたかもしれねぇ。
『焦凍くん』
轟「...........」
ふと自分の名前を呼ばれ、視線だけ動かし莉紗を見た。
奴に何を言われたか聞いたが莉紗の個性の話しだけだったようだが、俺が現れなきゃ余計な事をペラペラ言っていただろう。莉紗は近くにある大きな岩に寄りかかって座っている俺の隣に座り込むと静かに話し始めた。
『あのね、体育祭始まってからずっと思ってた。
焦凍君は何を見てるんだろうって...。』
莉紗が何を言わんとしてるのかが分からなくて問い返した。
轟「何が言いたいんだ?」
『焦凍くんは、ヒーローになりたいん...だよね?』
その問いにすぐに答えられなかった俺は無言を貫いた。
『こんなこと言って気悪くしたらごめんね。
何か、雄英入ってからの焦凍くんを見ててね。
昔みたいなヒーローになるって思いがいまいち感じられなくて...
何ていうか、ヒーローになりたい気持ちが0とは思ってないけど、それよりおじさまを見返したいって思いの方が強い気がしてならないんだ...』
轟「..............」
『もちろん目標は人それぞれだよ。けど、今日は。焦凍くん、誰の事も見えてないと思う』
轟「...言ってる意味がわからねぇ」
『目の前に立つライバルの向こうにエンデヴァーを見てるってこと』
轟「...!」
『どんな相手が目の前にいても焦凍くんはその相手にエンデヴァーの姿を見てる。
どんな状況でも、どう相手を攻略するか考える向こう側でどうしたらエンデヴァーが表情を歪ませるかを考えてる』
轟「......っ....」
莉紗の言葉達に、自覚があったわけじゃねぇが、そう言われるとその通りかもしれねぇと思った。
何か作戦考えていても、対策考えていても...最終的には奴はどうしたら悔しがるか...そればかり考えていた気がする。
『だから、騎馬戦の時とっさに出した左の炎...あの時だけは、エンデヴァーじゃなく緑谷自身を見ていたんじゃない?』
轟「あの時は...」
思い出すのは、無意識に左の炎を出していたあのシーン。その理由が何故かはわからなかったが莉紗に言われてその答えが分かった気がした。
『焦凍くんはどんなヒーローになりたいの?』
轟「俺は.....」
自分がどんなヒーローになりたいか...。
莉紗に聞かれ、俺はそんな事考えたこともなかった事に気づいた。
『...大丈夫、焦凍くんがどんな答えを出したって。私はいつだって焦凍くんの味方。応援してるよ』
莉紗がそう言った時、腕に何か触れる感じがして目線をやると俺の右腕に粘着糸を1周緩めに巻いた莉紗。
轟「..........」
俺は腕に巻かれた粘着糸を数秒見つめ、莉紗を見ると莉紗は笑っていた。いつも見るどこか遠慮がちな笑顔じゃない、幼い頃にお母さんが泣いてる俺を慰めるときのような優しく包み込んでくれるような微笑み。
『お守り、なんてね』
そう言って莉紗は静かに立ち上がり俺の元から離れて行った。1人残された俺は再び莉紗の言葉の意味をもう一度考えた。そして、親父への嫌悪のせいとはいえ俺はあいつに残酷な言葉を吐いた。
"俺に莉紗は必要ねぇ"
あいつが必要じゃなかった事なんかねぇ。
幼い俺の心の拠り所は、お母さんと莉紗だけだった。
中学の時、あいつを守るためとはいえ、冷たく残酷な言葉で突き放したのにあいつはそれをあっさりと許しこうしてまた側にいて、俺の拠り所となってくれている。なのに、俺は...
後悔したって取り返しがつかないのはわかってる。
俺は、先程の言葉を放った自分を殴りたくなるほど後悔した。
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